特集、その他

Mini-ITXでは最強? 12コアRyzen×GeForce RTX 2070搭載のBTO PC「PG-AK」を試す

STORMのコンパクトPCはハイエンドでもよく冷える、「POWERED BY ASUS」の高品質モデル text by 坂本はじめ

STORMの小型ハイエンドPC「PG-AK」
AMDの12コアCPU「Ryzen 9 3900X」を搭載。

 今回紹介するのは、AMDの12コアCPU「Ryzen 9 3900X」とNVIDIAの上位GPU「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載したMini-ITXのBTO PC「PG-AK」。

 BTO PCブランドである「STORM」から販売されているPCで、コンパクトなMini-ITXケースにハイエンドパーツを収めたゲーミングPCだ。

 コンパクトなハイエンドPCは自作PCでも人気のジャンルだが、小型筐体にハイエンドパーツを収める場合、廃熱処理をどうするのかが大きなポイントになる。廃熱が間に合わなければ、せっかくの高性能パーツもサーマルスロットリングなどにより本来の性能を発揮できないので、知識やテクニックが必要になる部分だ。

 「PG-AK」は、Mini-ITXサイズで12コアCPU + 高性能GPUというマニアから見ても理想のPCと言えるようなモデルだが、廃熱処理がしっかり行われパフォーマンスを発揮できているのか、STORMのBTO PCの実力を見てみよう。

ハイエンドパーツを詰め込んだSTORMブランドの省スペースゲーミングPC

 「PG-AK」は、STORMブランドの小型BTO PCの中ではハイエンドに位置する製品。ゲームは当然のこと、様々な用途で高いパフォーマンスを発揮できるモデルだ

両側面に強化ガラスパネルを採用したMini-ITXケース「Raijintek OPHION EVO」ベースの省スペースゲーミングPC。

 CPUにRyzen 9 3900X、GPUにはGeForce RTX 2070 SUPERとハイエンドクラスのパーツを搭載。マザーボードとビデオカードをASUS製品で統一した「POWERED BY ASUS」仕様に仕上げている。

 PCケースにMini-ITX専用ケース「Raijintek OPHION EVO」を採用したことで、Ryzen 9 3900XとGeForce RTX 2070 SUPERを採用したハイエンド仕様のゲーミングPCでありながら、筐体サイズは174×290×375mm(幅×高さ×奥行)というコンパクトなサイズを実現している。

本体正面。中央下部に円形の電源スイッチを備える。
本体背面。
右側面には電源ユニットやマザーボードなどの主要パーツを搭載。CPUの冷却には240mmラジエーター仕様のオールインワン水冷を採用。電源ケーブルは筐体外枠に沿って配線されている。
左側面はビデオカードの搭載スペース。ASUSの外排気タイプのGPUクーラーを搭載する「ASUS TURBO-RTX2070S-8G-EVO」を採用している。ビデオカードはライザーケーブル経由でマザーボードと接続している。
フロントパネルインターフェイス。USB 3.0 Type AとType-Cを各1ポート。
バックパネルインターフェイス。
天板部分は通気口が設けられており、今回のBTO PCではCPU用水冷クーラーの排気口となっている。
マザーボードとビデオカードにASUS製品を採用した「POWERED BY ASUS」仕様。

 今回のモデルは、メモリにはCrucialのDDR4-3200 16GB×2枚(合計32GB)、CPUクーラーにはCooler Masterの水冷モデル「MLW-D24M-A20PC-R1」が採用されていた。

 また、ストレージはSSD(ブートドライブ) + SSD(データ用ドライブ)の構成になっており、ブートドライブ側にはリード3GB/sで512GBのNVMe SSD「Samsung MZVLB512HAJQ」、データ用ドライブには1TBのSATA SSD「Crucial CTM1000MX500SSD1」が搭載されていた。CPUやGPU意外の部分も豪華な構成といえるだろう。

高負荷テスト中でもGPUのブースト動作を維持可能コンパクトな筐体でも冷却システムの余力をしっかり確保

高負荷の状態でもしっかりと廃熱は間に合うのか、GPUに負荷をかけて冷却性能をテストしてみた。
テストに使用したのは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」。

 ケースに採用しているRaijintek OPHION EVOは、省スペース性だけでなくルックスも優れたコンパクトなPCケースだ。

 しかし、小型PCケースにハイエンドパーツを組み込むとなると、各パーツを十分に冷却できるのかという不安が頭に浮かぶ。

 高負荷時に冷却能力が足りなくならないか、ある程度の冷却マージンは確保できるのかなど、安定動作する小型ハイエンドPCを組むには知識や経験が要求される。しっかりと安定動作する小型ハイエンドPCが組めるかどうかといった部分は、技術力の見せ所といえる。

 そこで、「PG-AK」が冷却性能も考慮されたモデルなのか、GPUがフルロード状態となる高負荷ベンチマークテスト「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を4K解像度かつ高品質設定で実行し、動作温度をチェックしてみた。

 以下は、ベンチマーク中のCPUやGPU、マザーボードの電源回路(VRM)の温度などをモニタリングソフトで取得しグラフ化したものだ。室温約25℃の環境でテストしている。

高負荷ベンチマークテスト実行中のGPU使用率と各部温度。(テスト時の室温=約25℃)

 各パーツのピーク温度は、CPUが70.5℃、GPUが84℃、VRMが46℃だった。CPUは最大動作温度の95℃まで20℃以上の十分な余裕があり、VRMも問題になるような温度ではない。GPUはブースト動作の上限温度に到達しているものの、GPUクロックは最終盤でもスペック上のブーストクロックである1,770MHzで動作しており、ベンチマーク中は常にブースト動作を維持できている。

 GPUのブースト動作を維持できているということは、十分な冷却が行えていることの証左だ。この動作温度を実現した時の冷却ファンのモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフだ。

高負荷ベンチマークテスト実行中のGPU使用率とファンスピード。

 ファンスピードのピーク値は、GPUクーラーが1,912rpmで、CPUクーラーが1,896rpmだった。ことさら静粛性が高いという訳では無いものの、ノイズの大部分は低周波な風切り音であり、耳障りな高音ノイズは発生していない。

 また、GPUクーラーの冷却ファン制御値は最大で38%であり、ビデオカードのGPUクーラーにはファンスピードをさらに高めて冷却を強化する余力が残されている。CPUクーラーについては、冷却ファンの最大回転数である2,000rpmに迫るピーク速度を記録してこそいるものの、CPU温度に連動して瞬間的に上がっているだけであり、こちらも余力は十分だ。

 今回は室温約25℃で測定したが、このBTO PCの冷却システムなら、より厳しい温度環境でも「十分な冷却」を行うことが可能だろう。

最新の大作ゲームでも高画質設定で楽しめる実力派ゲーミングPCオープンワールドゲーム「Red Dead Redemption 2」の画質優先設定でも60fps付近でのプレイを実現

「Red Dead Redemption 2」。

 Ryzen 9 3900XとGeForce RTX 2070 SUPERを搭載し、それらを十分に冷却できる能力を備えたこのBTO PCは、最新のゲームを高画質設定で楽しめる実力派ゲーミングPCとして完成している。

 その実力を試すべく、先日PC版が発売されたばかりのオープンワールド大作「Red Dead Redemption 2」(RDR2)をプレイしてみた。

精密度プリセットレベルを「画質優先」の最大値に設定した状態で、ベンチマークモードの平均フレームレートは60fpsを超える。

 コンシューマー機でも評価の高かったグラフィックに磨きをかけたPC版RDR2は、高画質設定でのプレイを実現するために要求するPC性能が非常に高いゲームだ。

 「PG-AK」であれば、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)で「精密度プリセットレベル」を最大に設定するという画質優先設定でも、50~70fps程度という60fps付近のフレームレートでプレイすることができており、「G-SYNC」や「G-SYNC Compatible」に対応したディスプレイを用いれば、より快適にプレイすることができるだろう。

 美しいグラフィックで描かれる19世紀末のアメリカの雰囲気に飲まれ、検証そっちのけで数時間ほど連続でプレイし続けてしまったが、その間も発熱等の問題で動作が安定を欠くようなことはなかった。ゲームは一気にガッツリ遊びたいというゲーマーでも安心して使えるゲーミングPCであると言える。

「省スペース」という付加価値が加わった本格派ゲーミングPC

 今回は、STORMが手掛けた省スペースゲーミングPC「PG-AK」を試してみた訳だが、その性能はスペック通りハイエンドゲーミングPCそのものだ。

 省スペースPCで懸念される冷却面に関しても、オールインワン水冷クーラーと外排気タイプのGPUクーラーを搭載したビデオカードの採用で、ハイエンドパーツから生じる熱が筐体内にこもらないように工夫することで解決していた。このあたりの冷却システムの選択には、老舗BTOブランドならではのパーツ選択の妙を感じられる。

 結果として、筐体自体は実際にコンパクトなのだが、性能面において「省スペース」ゆえの制約を感じることは無かった。巨大なタワー型ケースを採用したゲーミングPCを設置するスペースの確保が難しいユーザーにとって、魅力的な選択肢と言えるだろう。

[制作協力:STORM]