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買取られたスマホはどこでどうなる?年間50万台を出荷するスマホ再生工場に潜入してきた
マジでこんなにお得なの!? スマホ買取の「今」 第4回 text by 日沼諭史
2020年2月17日 00:01
新しいスマホが欲しいけれど、懐はさみしい……。そんなときに、今使っている機種を現金買取してもらえる専門ショップのスマホ買取がお得で便利で簡単であることを、これまで3回に渡ってお伝えしてきた。なじみのない人にとっては謎の多いスマホ買取専門店だが、意外と気軽に利用でき、すぐに新機種の資金に充てられることがおわかりいただけたと思う。
しかし、もっと謎が多いのは、買取に出した自分の(ものだった)スマートフォンが、その後「どこでどんな風に処理されているのか」というところ。個人情報が残ってしまっていないか、消したデータが復元されないようになっているかなど、不安な面もあるかもしれない。
東京・秋葉原にあるイオシスの買取センターでは、買取後の端末は基本的に「リファビッシュセンター」へ送られ再生作業が行われる。
リファビッシュセンターとは一体どういう施設なのだろうか。今回、東京・江東区にあるイオシスのリファビッシュセンターに潜入し、買取後のスマホの様子を追ってみた。
二重の電子錠と360度の監視カメラで万全のセキュリティイオシスのスマホリファビッシュセンターに潜入
やって来ました! イオシスのリファビッシュセンター。かなり大きな建物だけれど、ここは倉庫などとして使われているところ。いくつかの会社が入居していて、その一角にリファビッシュセンターがある。店舗などで買取られた端末の多くや、宅配買取サービスを利用して個人から送られてきた端末は、このリファビッシュセンターに毎日続々と運び込まれるのだ。
さっそく中に入ってみたいところだが、個人情報を扱う施設ということもあり、関係者でもそのまま建物に侵入することはできない。なので、受付で入館証を受け取り許可を得てから内部へ。リファビッシュセンターの入口手前には従業員が私物をしまっておくロッカーがあり、荷物は基本的にすべてここに置いていく。どうしても内部に持ち込みたい小物があるときは、必ず備え付けの透明の袋に入れ、携帯しなければならない。
入口のセキュリティは電子錠。従業員1人1人がもつICカードで解錠するようになっている。入退室時は必ずICカードをかざさなければならず、その記録はすべてログとして残る。人の出入りは厳格にチェックされているので、めったなことはできない。もちろん、外部の人間が入る際もカードが人数分渡され、ログがとられる。
しかも、リファビッシュセンターの内部は「検品・クリーニング、商品化(梱包)」をするエリアと、「商品化されたアイテムの管理、出荷」を行なうエリアの2つに分けられ、そのエリア間にもう1つ同じセキュリティ扉が設けられている。1つのリファビッシュセンターのなかといえども、異なるエリアを自由に行き来できるわけではない。
また、各エリアには360度カメラが複数台設置され、常時内部を監視している。万一侵入者による盗難などがあっても、その証拠を死角なしに残しておける。リファビッシュセンター内はもちろんのこと、イオシスの別の拠点からも監視映像を常にチェックできる。セキュリティはかなりカッチリといった印象だ。
ADECの認証のデータ消去を徹底、売った後もユーザーが安心できる対応をFeliCaのデータ消去にも対応、出荷までの迅速さもウリ
このリファビッシュセンターにおける全体的な作業の流れは以下のような感じになっている。
1. 送られてきた端末の箱を開封する
2. 買取時や申し込み時の書類などと情報を突き合わせる(検品作業)
3. 検品作業と同時に細部のクリーニングも行う
4. 端末のデータを消去(初期化)する
5. イオシスの店舗在庫として情報登録し、梱包(商品化)する
6. 各店舗へ運ばれる
イオシスでは複数の買取ルートがあり、そのルートによって大まかに2つのチームに作業が振り分けられている。たとえば店舗で買取した端末はAチーム、宅配買取で個人から送付されてきたものはBチーム、といった具合だ。
スタッフは合わせて40名以上。個人以外に法人からの買取もあり、毎日数百台、多い時には数千台という単位で搬入されるとのことで、それぞれに適切なフローを構築したうえで並行作業しなければ間に合わない規模といえる。
店舗で買取られた端末が商品になるまで
店舗で買取られた端末と宅配買取で送られてきた端末は査定作業の有無などがあるため、若干リファビッシュの工程が異なる。まずは店舗買取された端末がどう製品化されるのかを写真で紹介しよう。
宅配買取りで届いた端末が店舗に並ぶまで、1週間ほどで店舗に
宅配買取りでリファビッシュセンターに届いた端末は査定作業もあるので、店舗買取りで届いた端末とは若干工程がことなる。こちらも写真で流れを追ってみよう。
イオシスで買取られたスマホは、ADECの認証を取得した安全・確実なデータ消去、情報管理が行なわれていることが特徴だ。
宅配買取だと、端末がリファビッシュセンターに届いた後、検品、申込者の同意を得て振り込みされるまで通常は5日間ほど。早ければ即日ということもあるそうだ。端末自体はリファビッシュセンターに搬入されてから1週間程度で再び店舗に並ぶのだとか。
宅配買取を担当するエリアの責任者である山崎氏によれば、この早さの秘訣は徹底した効率化にあるとのこと。端末の到着、検品・査定といったステップに応じて現場のシステムに情報入力することで、自動で申込者に確認メールが送られる仕組みになっており、省力化を実現している。宅配買取でも、店舗買取と同じレベルの迅速なサービスを提供したい、という思いがあるようだ。
チャットツールのSlackなどを用いて従業員全員が最新の情報を共有し、円滑な検品作業につなげていることも大きい。最近ではiPhoneの端末初期化時における問題が新たに発覚し、即座に情報共有したことで査定時のトラブルを防ぐことができたという。
その他、競合にはあまりないポイントとしては、FeliCa(おサイフケータイ)のデータ消去にも対応していること。店舗買取と宅配買取のいずれでも、スマホのストレージ内のデータ消去に加えて、おサイフケータイ対応端末についてはFeliCaチップ内部のメモリに記録された情報も削除する手順になっている。
このFeliCaチップのデータは、端末のデータとは別管理。ユーザーが端末をリセットしただけでは消えない仕組みで、買取業者でも消去できるところは少ない。このため、ショップによってはFeliCaのデータが残っているために買取不可とされるケースも珍しくないようだ。イオシスなら、その点気にすることなく気軽に買取に出せるのもユーザーとしてはメリットだろう。
中古端末だからこその丁寧な情報管理売った側も買う側も安心できる環境構築に取り組むイオシス
みなさんが店舗で買取ってもらったスマホや宅配買取で送付したスマホは、このようにリファビッシュセンターという場所で丁寧にチェック、クリーニングされ、梱包されたうえで、まるで新品のようになって改めて店舗に並べられることになる。
毎日大量の端末が続々と届けられるなか、1台1台手間ひまかけて丁寧にクリーニングし、データ消去しているのが印象的。ここまできっちり処理されているのであれば、「リーズナブルな中古の端末もいいかもなあ」と改めて思った次第だ。
ところで、今回初めて話題に上った「宅配買取」というサービス。これが具体的にどういうものなのかも気になるところだ。次回はそのあたりを詳しく紹介していきたい。
[制作協力:イオシス]