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無償でデータ復旧が利用可能に、Seagateが「Rescue」サービスを多くのモデルへ提供
ゲーミングモデルもサポート対象、より安心して使えるSeagateのストレージ text by 坂本はじめ
2020年12月25日 00:01
2020年、Seagateはデータ復旧サービス「Rescue」の適用範囲を拡大した。これにより、その費用の高さから自作PCユーザーにとっては縁遠い存在であったデータ復旧が、Rescue対象製品ではデータ保護の最後の砦として無償で利用可能となっている。
ストレージは製品が壊れないことが一番良いことではあるが、万が一壊れてしまった際にどう対処するのかも重要だ。トラブルへの対応方法として、データ復旧は最大級のサービスといえる。
今回は、データ復旧の無償化を実現するSeagateのRescueについて、なぜデータ復旧サービスが無償で提供されるのか、どの製品を対象にしてどのような手順でサービスを受けられるのかなどを確認し、ユーザーにとってどのくらい便利なサービスなのか紹介しよう。
無償で利用できるSeagateのデータ復旧サービス「Rescue」信頼性向上でストレージが壊れにくくなり、自社内に復旧ラボがあることから実現
SeagateのRescueは、特定のSeagate製ストレージ製品に無償で付与されているデータ復旧サービスだ。2020年9月に対象製品が追加され、該当製品のユーザーは3年間のうち1回に限り、無償でデータ復旧サービスを受けることができる。
利用手順は後ほど紹介するが、データ復旧費用はもちろん、送料や復旧したデータを記録したストレージの代金もSeagateが負担するため、ユーザーは本当に無償でデータ復旧サービスを受けられる。
冒頭でも触れたように、データ復旧サービスは本来高額なサービスであり、故障理由が軽微なものでも数万円、ハードウェア故障を伴う困難な復旧作業の場合は数十万円もの費用がかかる。これは多くの自作PCユーザーにとって、失われるデータの価値と天秤に掛けたとしても大きすぎる金額であり、データ復旧サービスが縁遠い存在となっていた理由だ。
では、Seagateはなぜ、高額なデータ復旧サービスを無償で提供しているのか。その理由の一つは、ユーザーが保管するデータこそが最も価値のある資産だとSeagateは考えており、大切なデータを保護するためのサービス向上を目指した結果、データ復旧を保証として多くの製品に付与することになったという。
また、製品自体が壊れないことはデータを守るうえで非常に重要なので、製品自体の信頼性や品質を向上させることで、Seagateの製品全体での故障が少なくなり、その分、サポート費用を僅かな故障品に集中できるようになった面もあるとのことだ。
なお、Seagateは自社内にデータ復旧サービスを行う専用ラボを有しており、40年以上に渡って蓄積されたデータ復旧の専門知識や高い技術を備えていることも、無償でのデータ復旧サービスを提供できる理由である。ストレージを製造するメーカーが蓄積した技術と知識に基づくサービスであるため、無償だからと言って有償のデータ復旧サービスに劣るということもない。
ゲーミングSSDも保証対象、データ復旧サービス「Rescue」対象製品をチェック
Seagateのサポート範囲拡大により、24時間稼働を前提に設計されたNAS用HDD「Ironwolf」や監視カメラ向けHDD「Skyhawk」といった信頼性重視のストレージだけでなく、ゲーム用SSDである「FireCuda」や、外付けHDD/SSDなど自作PCユーザーにとって身近な製品が、2020年9月1日発売分よりRescue対象製品となっている。
ここで、どのような製品がRescue対象なのか確認してみよう。
ゲーミングSSD「FireCuda」
ゲーマー向けに設計されたSSD「FireCuda」では、PCIe 3.0 SSDの「Fire Cuda 510」と、PCIe 4.0 SSD「FireCuda 520」がRescue対象製品となっている。
「ゲーマー向け」という明確に一般ユーザー向けの製品であるFireCudaが、データ復旧サービスの対象となっていることは、Segateが取り組むユーザーエクスペリエンスの向上の象徴的な例である。ゲーミングモデルは性能が重視される傾向があるが、こうしたサービス面の向上は歓迎すべき点と言えるだろう。
NAS用HDD「Ironwolf」
NAS用ストレージでは、「Ironwolf」と「Ironwolf Pro」のHDDがRescue対象製品となっている。
このうちIronwolfは、24時間稼働対応の高信頼性HDDとしては容量単価が安いことから、自作PCユーザーにとっても個人用NASやデータ用ストレージとして身近な存在となっており、このような製品がRescue対象となっているのはありがたい。
監視カメラ向けHDD「Skyhawk」
監視カメラ向けに設計されたSkyhawkシリーズでは、デジタルビデオレコーダー(DVR)やネットワークビデオレコーダー(NVR)用の「Skyhawk」と、AI対応NVR用の「Skyhawk AI」のHDDがRescue対象製品となっている。
こうした監視カメラ向けHDDも動画の記録などで一般ユーザーに使われることもあり、Rescue対象であることはポイントになるだろう。
ポータブルHDD/SSDも「Rescue」で保証
内蔵ドライブだけでなく、Seagate製の外付けドライブもRescue対象製品となっており、「One Touchシリーズ(HDD/SSD)」「Ultra Touchシリーズ(HDD/SSD)」、「Expansion SSD」、「Expansion Portable HDD(グローバルモデルのみ)」、「Expansion Desktop(グローバルモデルのみ)」に、3年間無償のデータ復旧サービスが付与されている。
ポータブルタイプの製品は持ち歩くことが多いこともあり、ある意味最も物損による故障にあいやすいといえる。こうした製品でデータ復旧サービスが利用できるのは心強い。
落下、水没といった事故から、データの上書きなどのケアレスミスまで対応かなり対象範囲が広いデータ復旧サービスの「Rescue」
ここで、あらためてSeagateの「Rescue」がどのようなサービスなのか確認しておこう。
データ復旧サービスである「Rescue」対象製品は、3年間に1回のみSeagateによるデータ復旧サービスを無償で利用できる。不具合の発生したストレージはSeagateのラボに送られてデータ復旧作業を行い、復旧が完了したデータは外付けHDDに暗号化された状態で保存され、ユーザーの元へと返却される。このさいに発生する送料や外付けHDDの費用はすべてSeagateが負担する。
なお、故障の種類としては、落下、水没、破損、データの誤った消去、データの上書きなど、経年劣化などによる故障だけでなく、事故に分類されるようなケースでも対象になるとされている。
この復旧作業と並行して、Seagateサポートでは通常の製品保証に基づくRMAが開始され、不具合が製品保証の範囲内で発生したものであれば、代替品がユーザーのもとへと発送される。こちらの送料もSeagateが負担することになるので、ユーザーの費用負担はない。
Rescueのサービス内容は、数万円から数十万円の費用が掛かることもある有償データ復旧サービスに劣らぬものだ。自社内にデータ復旧専門のラボを保有するSeagateだからこそできる破格のサービスであると言えよう。
なお、すべてのデータ復旧サービスがそうであるように、Rescueも不具合の発生したストレージからすべてのデータを無事に復旧できることが保証されたサービスではない。また、テレビの録画データはRescueによるデータ復旧の対象外となる。無償でデータ復旧サービスを受けられるからと言って、ドライブが壊れてもデータはすべて救済できるから安心などという勘違いをしないように注意したい。
対応が困難なRAIDボリュームのデータ復旧もサポート
SeagateのRescueでは、対象製品を使用したRAIDボリュームの復旧にも対応している。
この際、異なるメーカーの製品やRescue非対象のドライブと混成している場合であっても、RAIDボリュームに不具合を引き起こしたのがRescue対象製品であればデータ復旧サービスの対象となる。
RAIDボリュームのデータ復旧を行う場合、RAIDを構成しているドライブをすべてSeagateに送付する必要があるほか、障害状況次第では、RAIDを構築していたNASやPC本体を発送する必要もあるが、特性上データの復旧が難しいRAIDボリュームもサポートする点はRescueの特長といえるだろう。
Rescueのサービス申し込みからデータ復旧完了まで申請は日本語で、ユーザー側の手間は最小
最後に、Rescueの利用申請からデータ復旧が完了するまでの流れをチェックしてみよう。
Rescueの利用を申請するには、Seagateの「保証/テクニカルサポート」にメールまたは電話で連絡する。いずれの場合でも製品のシリアルナンバーが必要となるので、あらかじめドライブ本体のシリアルナンバーを確認しておこう。
Rescueの利用を申請をすると、サポート窓口から確認事項が記載されたメールが届く。これに回答すると、梱包方法や発送伝票などが添付されたメールが届くので、メールの指示にしたがって配送業者にRescue対象のドライブを引き渡す。
ここまでは全て日本語でやり取りができるので、慣れていなくても安心だ。
Seagateのラボにドライブが到着すると、受領報告のメールが英文で届く。その後は復旧作業の開始、復旧の成功、復旧データの発送などが英文で届く。基本的に返信は不要であり、
メールに含まれるケースナンバーをSeagateのサイトに入力すれば、復旧作業の進捗状況を確認することもできる。工程は4段階に分かれており、どの段階まで進んだのか確認可能だ。
最後に、復旧データを記録したドライブが発送された後、Seagateのラボから暗号化解除用のパスワードが届く。このパスワードを用いることで、外付けドライブに記録された復旧データが利用可能となる。
Rescueの利用申請から、復旧データが記録された外付けドライブがユーザーの手元に届くまでの期間は、おおむね1~1.5ヶ月程度となるそうだ。
なお、Seagateサポートでは、データ復旧ラボがドライブを受領したタイミングで製品保証に基づくRMAを開始しており、ほとんどの場合、復旧されたデータが届く前に代替品がユーザーの手元に届くように手配される。動作するドライブが先に到着するのはダウンタイムを最小にできるので、ユーザー側にはメリットのあるサービスだろう。
個人ユーザーにデータ復旧という最後の希望をもたらすSeagate Rescue
データ復旧サービスは、バックアップなどによるデータの保護に失敗したユーザーにとって、データを救済する最後の希望となるサービスだが、数万円から数十万円という費用ゆえに個人ユーザーにとっては縁遠いサービスだった。それを1製品あたり1度限りとはいえ、無償で提供するSeagate Rescueは、個人ユーザーにデータ復旧という最終手段をもたらす画期的なサービスだ。
Rescue対象製品だからと言ってバックアップが不要となるわけではないが、万が一の時に無償でデータを救済できる可能性が用意されていることは、どのようなユーザーにとってもメリットとなる。今後、ストレージの購入を検討するさいには、無償のデータ復旧サービスの存在を考慮に加えるべきだろう。
[制作協力:Seagate]