特集、その他
【SSD&HDDの基礎知識:製品選び編】SSD/HDD選びのポイントは速度だけじゃない! 容量や耐久性、組み合わせにも注目!!
SSDの容量はどのくらいあればいいの? ゲーミングPCにHDDは必要? text by マルオマサト
2021年11月2日 00:00
“PCパーツの基礎知識”シリーズ第2回のテーマは「ストレージ」。今回は、アプリやデータを記録するSSDを選ぶ際にチェックすべきスペックの意味、SSD/HDDを適材適所で使うための選び方のポイント、そして自作PCの用途に応じて検討したSSDおよびHDD組み合わせの実践的なプランなどを紹介する(SSD/HDDの仕組や各部の詳細についてはこちらで解説している)。
・SSDはインターフェースやNANDの種類でパフォーマンスが決まる
・SSDの容量は余裕を見てチョイスしたほうがピーク性能が長く発揮できる
・メーカーが提示する“用途提案”を参考にすると選びやすい
・NASや外付けSSD/HDDの選択が便利な場合も!
SSDのグレードの違い
SSDのグレード、価格の違いはどこにあるのだろうか。インターフェースや公称性能の違いはもちろんだが、NANDの種類やDRAMキャッシュの有無、耐久性(TBW)、保証期間などでも違いがある。スペックシートや製品カタログなどから違いを見極めるためのポイントを整理しておこう。
インターフェース | Serial ATAかPCI Express/NVMeかで基本性能の“上限”が定まる(PCI Expressの場合は世代間でも大きな差が付く)。HDDには十分な性能だったSerial ATAだが、圧倒的に高速なSSDには上限が低い。ただ、PCI Express/NVMeの製品でもすでにPCI Express 4.0の上限に早くも到達しそうだ |
パフォーマンスの指標 | シーケンシャルリード/ライト性能(1秒間に何MB転送できるかで表現されることが多い)、ランダムリード/ライト性能(特定条件で1秒間に何回読み書きできるかを示す“IOPS”という単位で表現されることが多い)は数値で整理されている。販売価格と並んで、製品選びで一番に気になる数値 |
NANDの種類 | NAND型フラッシュメモリは“メモリセル”と呼ばれる単位ごとに書き込み回数の上限があり、それを超えると書き込めなくなる。メモリセルにあたりに記録するデータの量が少ないほど、書き込み回数の上限は高く、性能(とくに書き込み)も高速で、価格は高価になる傾向にある。製品の位置付けや性格付けにつながる情報だが、製品によっては公式なデータが公開されていないことも。そのほかの仕様、専門誌などの実施したテストをもとに推測することが可能な場合もある |
DRAMキャッシュ | 搭載していると読み書きの効率化や、NANDへの書き込みを減らし、耐久性を高める効果などがある。こちらも非公開の場合もあるが、NANDの種別同様、詳細なテストなどからある程度推察できることもある。DRAMキャッシュを持たず、メインメモリを代用する仕組も使う製品も存在 |
TBW(Total Byte Written) | NANDには書き込み回数の上限があり、それを超えると書き込めなくなる(=寿命)。TBWは耐久性の指標で、寿命に到達するまでにどれだけ書き込めるかを示す値。大きいほうが耐久性に優れる |
保証期間 | 保証期間は信頼性、製品の位置付けを判断する指標として有効。長いほど品質に自信がある製品と考えよう |
NANDの種類は、現在はメモリセルあたりに3bitを記録するTLCが主流で、エントリークラスでは4bitを記録するQLCも増加中だ。QLCは低コスト・大容量化に有利だが、1セルあたりに記録できるデータが増えるほど、耐久性や性能は不利になる。その不利をカバーするために導入されているのが「SLCキャッシュ」だ。空き容量の一部をキャッシュとして使う技術で、性能向上に大いに役立つが、キャッシュ切れ後の性能低下には注意。
耐久性についてはTBW (Total Byte Written)という明確な指標もある。寿命に到達するまでにどれだけ書き込めるかを示す値で、数字が大きいほうがより耐久性に優れる。容量が大きい(メモリセルが多い)ほうが有利なので、比較する際は容量あたりの数値で見る必要がある点に注意したい。
「用途別」の元祖・HDDの使い分け
HDDでは業界全体で用途別のブランド分けがより浸透している。その元祖はWestern Digitalの“色分け”ブランディングだ。ハードウェア、ファームウェアを用途別に最適化し、色をフィーチャーして明快に性格付けを表現、用途を分かりやすく分類している。現在のHDDの構造はかなり複雑化しており、ファームウェアによる最適化は欠かせない。素直に用途に合ったHDDから選ぶのが、よいシステムを構築する近道だろう。
一般的なPCシステムでは、データ保存用に使うことがほとんどなので、Western Digitalなら「WD Blue」が最有力。PCの利用頻度が高く、信頼性をより重視したい方はNAS向けである高耐久・高信頼の「WD Red」を選ぶのもよいだろう。
また、Western Digitalの製品ラインナップの場合、10TB以上の大容量モデルでは、製造段階で内部に空気の代わりにヘリウムガスを充填することで、プラッタ枚数増による大容量化、精度向上や故障率の低下、空気抵抗低減による省電力化や静音化、発熱低下などを実現した製品がラインナップされる。個人用途でこのサイズのHDDをチョイスするケースは少ないかもしれないが、大容量HDDを求めるならヘリウム充填タイプの性能と安心感は大きい。
「NAS」って何?
HDDの用途の一つとして近年需要が高いのが、NAS(Network Attached Storage)と呼ばれるネットワークに直接接続して利用するストレージ機器だ。PCやスマートホンなどのモバイル端末、AV機器などからネットワーク経由でアクセスでき、NAS上に文書、写真、動画などのファイルを保存したり再生したりすることが可能。複数の端末からアクセスすることができるので、さまざまなデータの共有が可能だ。
複数人同時アクセスや、細かいアクセス制限の設定もできるので、ご家庭なら家族みんなで、会社であれば部署単位や会社全体でファイルを共有する、といったことができるので、データの集約やストレージの効率的な利用にもつながる。
NASは共用するストレージなので、システムが安定稼働し、安心してデータを置いておけることが非常に重要だ。そのため、複数台のHDDを内蔵して組み合わせることで、冗長化(もしHDDに障害が発生してもシステムやデータを維持できるように備えること)や高速化を図る「RAID」という機能を利用できる製品が多い。「24時間365日の稼働に耐えられること」、「RAIDでの運用に向いていること」がNAS用のHDDに求められる重要な要素となっており、一般向けにNAS用HDDを大々的にアピールした元祖と言える製品が、Western Digitalの「WD Red」シリーズだ。
「外付けストレージ」という選択肢
ここまで自作PCユーザー向けに内蔵ストレージの話を中心に解説してきたが、古くからPC周辺機器として広く用いられてきた「外付けストレージ」も引き続き多数登場している。小型HDDの一般化、SSDの普及、そして外付け周辺機器接続用の代表的規格であり取り扱いも容易なUSB規格の高速化という技術的な進歩も手伝って、以前よりさらに多種多様な製品が流通している。
とくに“高速なSSD+高速なUSB”という組み合わせの外付けSSDは、コンパクトな形状と内蔵HDDを上回る読み書き性能から、自作PCユーザー視点でも注目すべきスペックに到達している。小型PCケースを愛用していてストレージ増設の余地がもうない、ノートPCなどとストレージを気軽に共用したい、空いているUSB 3.2ポートを有効活用したい、などといった場合に、選択肢に含めてみてはいかがだろうか。
用途・機能別 ストレージフル活用術
最後に、実戦的な例を見てみよう。ストレージの選び方や使い分けは、PCを快適に使う上で大きなポイントになる。その具体的な例を用途や活用シーン別に紹介するので、製品選びの参考にしてほしい。
ゲーミングPCのストレージ構成
高性能なストレージを利用すると、ゲームの起動やロード時間が短縮され、快適にプレイできる。PCI Express 4.0の高速なSSDをOSとゲームをインストールするドライブにしつつ、プレイ頻度が減ったゲームなどを退避しておいたり、自分の過去のプレイ動画を保存するドライブを用意して併用するのがよいだろう。ちょっとしたゲーム/データ置き場なら、RAIDを用いるような高度な信頼性は必要ないので、コスパのよいミドルレンジ以下のSSDやHDDでよいだろう。
クリエイターPCのストレージ構成
クリエイティブでとくに重要視したいのは、頻繁にアクセスすることになるキャッシュ(仮想記憶)領域。ここにPCI Express 4.0対応のハイエンドNVMe SSDを使えば、作業のパフォーマンスがアップする。OS/アプリドライブはそこそこ高速なミドルクラスのNVMe SSDで十分だ。また、完成作品や素材などを保管しておくドライブには大容量でコスパのよいSerial ATA SSDやHDDを使いつつ、RAID構成のNASや外付けストレージの活用も検討したい。
チョイ古PCが生まれ変わる!?
エントリークラスのSSDでも、ランダムアクセス性能はHDDの数十倍。HDDを搭載した古いPCのOSドライブをSSDに換装するだけでも格段に快適になる。換装の際にはデータ移行ツールが便利だが、Western DigitalのSSDの場合は「Acronis True Image WD Edition」が無償で利用できる。クローン機能で古いHDDから新しいSSDへ環境を丸ごとコピーすることができ、わずらわしい再インストール/環境再構築の手間なくすぐに快適に使える。
覚えておきたい「ストレージ」関連用語
・RAID 1
常に同じ内容を、2台のディスクに書き込んでおく方式で、ミラーリング(Mirroring)とも呼ばれている。データを完全に二重化するため、ディスクの使用可能容量は半分になってしまうが、一方がダウンした際には、ペナルティなしで継続稼働が可能。
・RAID 2
ミラーリングの欠点であるディスク容量の効率の悪さをカバーするため、エラー検出/訂正用のハミングコード(Hamming Code)を用いる方式。一般には使われていない。
・RAID 3
複数台のデータディスクと、エラー訂正用のパリティデータ(ダウンしたデータディスクのデータを算出するための符号)を格納するディスク1台で構成。データを、バイト単位に分割して各ディスクに分散して書き込む。冗長分は、常にディスク1台分だけなので、ミラーリングよりも効率的。
・RAID 4
RAID 3と同じ構成だが、I/Oレートを向上させるために、データを各ディスクにブロック単位に分散して書き込む。一般には使われていない。
・RAID 5
パリティ専用のディスクは持たず、データとパリティを複数台のディスクにブロック単位に分散して書き込む方式。構築には最低3台のディスクを必要とする。パリティ用に1台分相当の容量が必要になるので、使用効率はRAID 3/4と同等。パリティも分散するため、I/OレートはRAID 4よりもさらに向上する。
・RAID 6
RAID 5の信頼性をさらに高めたもの。パリティを二重化することで2台のディスクが同時に故障してもデータの救済が可能になる。ただし、パリティ用に2台分相当の容量を必要とし、RAID 5よりも書き込み速度は低下する。
・冗長性を持たないRAID
信頼性を上げるための冗長性は持たないが、複数のドライブに分散書き込みを行なうことによって、高速性と大容量を実現するタイプもよく使われる。いわゆるストライピング(Striping)と呼ばれるタイプで、これをRAID 0と言い、耐障害性も高めるために、ストライピングにミラーリングを組み合わせた「RAID 0+1(0&1)」あるいは「RAID10」と呼ばれるタイプもある。