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PC初心者でも作れる!?初めての自作PC講座【第2回 パーツの選び方と予算の基礎の基礎編】

自作PCを構成するハードウェアの基礎知識を総まとめ! text by 石川 ひさよし

 自作PCを作るときには、使用するパーツを揃える必要があります。パーツを揃えるには、“完成したPCで何をしたいか”、“予算がどのくらい必要か”を考えることになりますが、そのためには“各パーツの役割”や“各パーツの重要度”を理解しておくのが近道です。

 自作PCは大きく8カテゴリー+αのパーツで構成されており、用途によって“どのパーツに予算をかけるべきか”が微妙に異なります。こちらの記事では、PCを構成するパーツを簡単に紹介しましたが、本稿ではもうちょっと踏み込んで、各パーツの役割や選び方の基本、重要度・予算感の考え方の基礎について説明していきます。

自作PCの内部を2例。使用パーツこそ異なっているものの、基本的な構造はデスクトップ型であればそれほど大きな違いはありません。それだけに、一度基礎知識を身に着けてしまえば、あらゆるタイプのPCに応用することが可能です


パーツの“選び方”や“予算感”の基本

 自作PCを構成するパーツは、“高性能なほど高価”が基本です。もちろん、高価なパーツで固めた高性能PCは、どんな用途にも抜群の性能を発揮しますが、たとえばWebブラウジングやインターネットで動画視聴するだけなら、高性能で高価なパーツは必ずしも必要ではありませんし、せっかくの性能を持て余すことにもなります。一方で、最新の大作ゲームを超美麗映像&高解像度でプレイしたいならビデオカードにはたっぷり予算をかけたいところですが、予算には限りがあるでしょうから、切り詰めるところは切り詰める、という計画もあるのです。

 このように、PCを構成するパーツは、“PCとして最低限必要なもの”、“用途に応じて性能の高いものを選ぶべきもの”、“用途によっては実は省略しても大丈夫なもの”があるのです。本稿では、各パーツの選び方の初歩の初歩を説明するとともに、ごく簡単に“必須度”のワンポイントアドバイスをまとめてみました。それでは、順番に各パーツを見ていきましょう。


CPU

 PCの基本性能を決定付ける“頭脳”であるCPU。自作PCで用いられるCPUは現在、大きく分けで「Intel Core」シリーズと「AMD Ryzen」シリーズの2つが圧倒的主流です。この2つのシリーズの中で、性能の違い(=価格の違い)による複数の製品がラインナップされており、どのグレードのCPUを使うのかで、PCの基本的な性能がおおむね決まります。

 もちろん、高性能なCPUほどよいのですが、実際には、価格、省エネ面の効率、後述する発熱の問題など、扱いやすさを重視したほうがよい場合もあるなど、製品選びにかなり頭を悩ませることになります。また、Intelを使うかAMDを使うかによって、次に紹介するマザーボードも決まります(Intel製CPUを使う場合はIntel対応マザーボード、AMD製CPUを使う場合はAMD対応マザーボードがそれぞれ必須)。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:用途しだいで2万円前後~10万円超までさまざま

安いものから高いものまでレンジが広く、目的に応じてちょうどよいグレードの製品を選べば予算を抑えることも可能です。オフィスアプリを使ったり、Webや動画を見たりする程度であれば安い製品でもOKですが、クリエイティブアプリを使ったり高度なゲームをプレイする場合には、高性能なCPUが欲しいところ。とはいえ「目的に応じたグレードを選ぶ」ということが初心者の方にはとにかく難しいものなので、見極め方のコツは別記事で改めて解説します。


マザーボード

 マザーボード(Motherboard)、またはメインボードとも呼ばれる、PCを構成する基板の中でもっとも大きなものです。CPUをはじめとする各パーツを取り付けるものです。CPUによって選ぶべきマザーボードも変わります。ただ、マザーボード自体は、計算処理を行ったりグラフィックスを描画したりするわけではないので、“性能の良し悪し”がぱっと分かりにくい面があります。

 また、“物理的な大きさ”もマザーボードの重要な要素。基本サイズは規格化されており、標準サイズであるATX、より大型のE-ATX、少し小さなmicroATX、17cm角でコンパクトなMini-ITXがあります(メーカーにより若干アレンジされていることも)。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:2~4万円台がベースライン、こだわるなら5万円以上も

CPU同様に価格のレンジが非常に広いパーツ。最近の傾向では、2万円台後半から4万円程度の製品が「ミドルレンジの製品」となっていて、機能と価格のバランスがよいラインです。とはいえ、“チップセットの型番”、“使用している部品の品質や機能のグレード”など、初心者には分かりにくい点も多数なので、別途改めて解説します。


CPUクーラー

空冷タイプ
水冷タイプ

 CPUをはじめとする半導体は高速に動作する際に“熱”を発し、基本的には性能が高ければ高いほど発熱は大きくなる傾向にあります。CPUは非常に発熱の大きいパーツで、現在の非常に高性能なCPUの発熱は適切に“冷却”してあげる必要があります。そのためのPCパーツがCPUクーラーです。

 大きく分けて、ヒートシンクと呼ばれる金属製の放熱ブロックとファンを組み合わせて冷却する“空冷”タイプと、CPUから吸い上げた熱を特殊な装置内を循環する液体を大型の冷却機構(ラジエーターとファン)で冷やすことでCPUを冷却する“水冷”タイプがあります。空冷は構造がシンプルで扱いも比較的容易ですが、高性能なCPUを使うには大型の冷却システムでCPUを冷やせる水冷のほうが有利です。

選び方のキホン
必須度:場合によっては別途購入不要(取り付けは必須!)
予算感:別途購入するなら4,000円~、性能/見た目を重視なら1万円~

一部のハイエンドCPUを除くと、CPUのパッケージには、そこそこの性能の空冷クーラーが付属しています。冷え方はほどほどで、静音性はあまり考慮されていないものもありますが、とりあえず付属クーラーでもPCは動くので、コストを抑えたければひとまずこれを使うのもアリ。IntelであればCore i7、AMDであればRyzen 7以上の“アッパーミドルレンジ”以上のグレードの製品を使うのであれば、性能の高い大型空冷クーラー、あるいは水冷クーラーを積極的に導入すべきです。


メモリ

 PCパーツの「メモリ」といったら、小さめの基板上にチップ(実際にはこのひとつひとつがメモリ)が並んだ“メモリモジュール”を指すことがほとんどです。人間の脳の働きで例えると“短期記憶”に相当し、CPUがすぐ使う情報(データ)を一時的に置いておくための装置です。

 メモリは、使用するCPUおよびマザーボードにより、用意すべき種類が変わるため注意が必要です。現在の主流は「DDR5 SDRAM」というタイプ。メモリの性能を決める指標として“速度”というスペックもありますが、CPUが指定した速度のものを買えばOK、と理解しておきましょう。

 メモリでもっとも重要なのは容量です。現在のPC環境では、容量は2枚のメモリモジュールで合計16GBか32GB用意するのがスタンダードです。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:8,000円前後~

CPUが指定した速度で動くメモリは動作も素直で価格も手ごろな傾向。これを選びつつ、合計容量16GBまたは32GBにすればOK(2枚1組で購入するのが基本)。もっと減らしてしまうと、一時的には安いかもしれませんが、トータルではストレスフルで損かも。


ビデオカード(グラフィックボード)

 ビデオカード(Graphics Card、グラフィックボードとも)は、グラフィックスの描画を専門的に行う高性能なGPU(Graphics Processing Unit)という演算チップを搭載した、映像を画面に出力するためのパーツです。特に、近年一段と高度化が進んでいる3Dグラフィックスを用いたPCゲームでのパフォーマンスに非常に大きく影響し、CPUよりもGPUの性能のほうが重要になる場合も少なくなりません。

 すべての人が必要なパーツかと言うと実はそうでもなく、CPUにもGPUが内蔵されている場合も多いので、ゲームをまったくやらないなら高価なビデオカードは省略して予算を大幅に抑える、というお手軽プランもあります。ただ、現在はGPUも多機能になっており、たとえば、映像再生でCPUの負担を軽減したり、写真や動画の製作作業で一部の処理をGPU/ビデオカードが請け負うことで効率アップさせたり、ということも可能です。また、今大注目の“AI”分野でもGPUが威力を発揮します。

選び方のキホン
必須度:場合によっては省略可/ゲームプレイには必須のパーツ
予算感:ゲームをプレイしないなら0~2万円、ゲーマーなら2万円~数十万円

ハイクオリティなゲームを高解像度でプレイしたい!ということならビデオカードの予算はいくらでも欲しいところですが、持ち帰り仕事をこなしたりWebページや動画を閲覧したり、という程度の作業であれば、高性能なビデオカードは不要。必須パーツであるCPUにGPUが内蔵されているのでそれで済ますもよし、安価なビデオカードを格安で購入するもよし。


ストレージ

 ストレージというのはメモリよりも大容量の記憶装置で、人間の仕組みで例えるなら“長期記憶”のようなものです。ものすごく単純化して説明すると、CPUがすぐ使う情報はメモリに一時的に置き、情報を保管するときはストレージに収納する、と理解すると分かりやすいでしょう。

 今PCで頻繁に使われているストレージは、長らくPC用ストレージとして用いられているHDD(ハードディスク)と、HDDに取って代わり現在はPC用ストレージの中心となっているSSD。データを記録する媒体が異なっていて、HDDは磁気ディスク、SSDは半導体メモリを利用します。容量当たりの価格はHDDのほうがだいぶお安くなっていますが、読み書き速度は数倍から数十倍もSSDのほうが高速。そのため、OSやアプリをインストールするストレージには、SSDが利用されることがほとんどです。

 SSDは、接続方法や基本的な形状の違いで「M.2 NVMe」タイプと、「2.5インチ Serial ATA(SATA)」タイプなどがありますが、1台目のSSDとしてはM.2 NVMeを使うのが速度的にも扱いやすさ的にもオススメです。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:SSDなら8,000円~(1台目のストレージはSSDほぼ必須)

読み書き速度が速く大容量なほど値段は上がっていきます。今なら、“PCI Express 4.0対応のNVMe SSD”がオススメで、容量は1TBまたは2TBが最初の1歩にはちょうどいいでしょう。HDDだともっと大容量でお安くなるものもありますが、パフォーマンスはSSDのほうが圧倒的に速いので、最初の1台はSSDがマストと言っていいでしょう。


電源ユニット

 電源ユニットは、マザーボードを含めたパーツに電力を供給するための装置です。電源ユニットのスペックの指標の一つに、どのくらいの電力を扱えるのかを示す「出力」があります。出力の小さなものでは300Wなどから、出力が大きなものでは1000Wや1500Wなどのものもあります(日本国内で一般的な家庭で使用する場合は1,500Wが上限)。出力が大きいほど電力を大量に必要とする高性能パーツの使用に向きますが、省エネという面では不利も生じます。

 もう一つの判断基準として“エネルギー効率”という観点があります。代表的なものとして“80PLUS”という規格化された基準が設けられているのでこれが目安になります。高効率な製品ほど製品価格は高くなってしまいます。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:6,000円~、高性能なCPUやビデオカードを使う場合は1万円以上

これも価格のレンジの広いパーツです。一般的な用途であれば、500W~800W程度の出力のもののなかから、お財布事情にあったものを選べばひとまずOKです。使い勝手や細かい指標による価格の違いについては、後日改めて掘り下げます。


PCケース

 ここまで紹介してきたいろいろなパーツを収めるのがPCケースです。さまざまなデザイン、サイズなどがあり、近年は個性的な色のものや、透明/半透明のガラスやアクリルパネルなどの素材を使ったものも登場するなど、バラエティがさらに広がっています。

 形状や大きさがまちまちではありますが、基本となる構造(パーツの取り付け位置、必要なスペースの取り方など)は規格化されていて、マザーボードのサイズや基本構造と同じATX、microATX、Mini-ITXなどの規格で定義されています。基本的には、ATXマザーにはATXケース、Mini-ITXマザーにはMini-ITXケース、というように組み合わせて使います。

 ただし、規格で定められているのはあくまで内部構造の基本部分だけで、外観デザインや最終的なサイズは規格に縛られることなく、各社が趣向を凝らすことができます。使いやすそうなもの、大きいものや小さいもの、ゴツいものにシンプルでスマートなもの、そして高いものや安いものなどなど、現物を見ながら選ぶのも一興です。

選び方のキホン
必須度:なくてはならないパーツ
予算感:格安なら5,000円~、こだわり派向けには数万円のものも

たくさんのパーツを剥き身で運用するわけにはいかないので、何らかの製品を用意する必要はあります。ただ、お求めやすいものも市場にはたくさん出回っているので、サイズ感やデザインが自分の感覚にマッチするものがあれば、予算をぐっと抑えることも可能です。ただし、見た目重視で予算をかける、なんて粋な楽しみ方もあるので、その辺りは趣味嗜好しだいでしょう。


ファン(ケースファン)

 PCには何か所かにファンが取り付けられていますが、「ケースファン」と呼ばれるものは、PC内部に外気を取り込み、各パーツが動作することで温度の上がった内部の空気を外に排出する働きをします。PCケースには、ケースファンが最初からついている場合も多いのですが、吸排気を強化したい、あるいはケースにファンが1つも付いていない、と言った場合には、別途ファンを購入して取り付けます。

 ケースによって取り付けられるファンの「大きさ」は決まっていますが、自作PCの場合は、おおむね直12cm前後または14cm前後のファンを使うのが一般的。また、小さいファンほどうるさく、大きいファンほど風量も多くて静か、という傾向にあります。

選び方のキホン
必須度:場合によっては省略可
予算感:格安なら1,000円以下、多機能なものは1万円に迫る場合も

導入するケースファンしだいで状況が変わります。PCケースにもとから複数のファンがついている製品の場合は、追加で購入する必要はありません。1個だけの場合(その場合、たいていケース後方に1個取り付けられています)、使用するCPUやビデオカードのグレードが最上位クラスであればケースの前方にファンを1個以上追加で取り付けるのがベターです。しかし、それ以下なら、省略しても大きな問題は生じないでしょう

 自作PCを構成する主なパーツ類は以上になります。実際にPCを動かすにはこれ以外に、液晶モニターやキーボードとマウス、Windows 11などのオペレーティングシステム(OS)が必要です。

上で紹介したPCパーツを組み込んでみた結果がこちらの自作PC


次回は組み立て全手順を解説!

 自作PCは、これらパーツを入手し組み立てて、最終的にOSを導入して完成します。次回はいよいよ実際の組み立ての流れについて解説していきます。