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水冷/空冷どちらにする? 猛暑に備えてCPUクーラーを買い換えよう!製品選びの基礎知識をチェック
CORSAIRのクーラーを例に基本や最新トレンドを総ざらい text by 石川 ひさよし
- 提供:
- CORSAIR
2025年6月28日 00:00
6月のうちから連日の30℃超、今年の夏も暑そうだ。PCやPCパーツは、ケース内に取り込んだ空気で冷却するため、外部の温度、つまり室温の影響が大きい。最近、ファンの音が大きくなった気がする、時折動作がカクつくような気がする、もしかするとそれは「PCが熱に耐えられなくなっている」サインかもしれない。あなたのPC、あるいはあなたがこれから組むPCは今夏を安定して乗り切れるだろうか?
PCの冷却において特に重要で、かつユーザーの自由度も高いのがCPUクーラーだ。今回は、そんなCPUクーラーに注目して、“夏のPC冷却”を改めて点検していこう。
CPUクーラー選びの基本中の基本を整理
PCを安全に、かつ高いパフォーマンスで運用したいなら、よりよい冷却性能を備えたCPUクーラーを選びたい。しかし、ただ冷えればOKというわけでもないのが今のCPUクーラーのおもしろいところだ。
まずは現在のCPUクーラーの基本スタイルからチェックしていこう。CPUクーラーは大きく“空冷”と“水冷”に分けられる。
扱いやすいスタンダード「空冷クーラー」
空冷CPUクーラーはPCのもっとも標準的なスタイルだ。CPUの熱を受け取って逃がすための“ヒートシンク”と、ヒートシンクに風を当て温度を下げて空気を循環させる“ファン”で構成される。多くの自作PCユーザーが最初に手にするCPUクーラーは、CPUに付属するいわゆる「リテールクーラー」と呼ばれるタイプだろう。
空冷クーラーの基本構造は、ヒートシンクに対して真上からファンで風を当てる“トップフロー型“と、ヒートシンクに真横から風を当てる“サイドフロー型”の2種類に分類できる。CPU付属のリテールクーラーはトップフロー型、市販クーラーの多くはサイドフロー型を採用するが、サイドフロー型のほうが大型化しやすいため、冷却性能を高めやすい傾向にある。
ただ、クーラーが大きくなると、その分PCケースの側面パネルやPC内部のほかのパーツ(マザーボードやメモリ、ビデオカードなど)と接触・干渉する恐れが増す。特に重要なのがCPUクーラーの高さで、大抵のPCケースには“使用可能なCPUクーラーの高さ”が明示されている。空冷クーラーを選ぶ際は必ずチェックしよう。これを見誤ると、ケースのフタが閉まらなくなってしまう。
冷却性能とルックスが魅力「水冷クーラー」
パフォーマンスを追求するハイエンドCPUでは大消費電力(=発熱の増大)が進み、一般的な空冷クーラー以上の冷却性能が求められるようになってきた。そこで近年急速に普及したのが「水冷CPUクーラー」だ。現在は、冷却ヘッド、ラジエーター、ホース、ファンが一式となった「簡易水冷」と呼ばれる製品が主流となっている。
水冷CPUクーラーも“ファンの風を当てて冷やす”という基本は空冷CPUクーラーと変わらないが、水冷ヘッド~ラジエーターの間の冷却水の循環でCPUの熱を移動し、巨大なラジエーターを複数のファンで冷却することで冷却水を冷やす、という構造になっている。
CPUとヒートシンクの位置関係が近い空冷に対し、水冷はホースによってラジエーターをCPUから離れた、かつPCケース内の外気を取り入れやすい位置に移動し、冷却機構の大型化も実現した。これにより、冷却性能としては空冷を上回るものも多い。
冷却性能の違いは、ラジエーターのサイズ、取り付けるファンのサイズと個数に影響を受ける部分が大きい。ラジエーターのサイズは、長辺12/24/28/36/42cmの4段階で、よく利用されるのは24cmと36cm。ラジエーターに取り付けるファンは12cmだと1基、24cmと36cmは2基、36cmと42cmは3基、取り付けるファンのサイズは12/24/36cmが12cm角、28/42cmだと14cm角を用いるのが一般的だ。
ラジエーターが小さいほど設置できる場所の制限が少なく扱いやすいが、その分冷却性能は限られる。一方、大型になるほど冷却性能は高くなるが、スペースの制限や周囲との干渉などの影響で取り扱いが難しくなる(特に14cm角ファンを用いるタイプは要注意)。取り付けの可不可は使用するPCケースしだいなので、購入前にPCケースの仕様をよく確認し、 “どのサイズがどこに取り付けられるか”をチェックしておくようにしよう。
一方、CPUに取り付ける水冷ヘッドは比較的コンパクトなので、空冷クーラーのようにCPU周辺のパーツや構造物との干渉を心配する必要はほぼない。
空冷と水冷どちらがよい? 冷却性能だけでは決まらないポイントも
クーラー選びで重要となるのは“CPUの消費電力=発熱量に見合ったCPUクーラーを選ぶこと”だ。まずはその点から空冷or水冷を考えてみよう。ミドルレンジ以下のCPUのパッケージに空冷のリテールクーラー付属となる製品が多いことからも分かるように、TDP 65W以下のCPUの場合は、空冷クーラーでも十分であるケースが多い。TDP 100W強のアッパーミドルクラスのCPUであれば大型の空冷クーラーでもまだ対応可能、24cmクラスの簡易水冷クーラーもよいだろう。

一方、TDP 120~150Wを超えるハイエンドCPUの場合は、メーカー推奨CPUクーラーが水冷になり、ラジエーターサイズも36/42cmクラスが最適となってくる。CORSAIRのA115のようなハイエンド空冷クーラーであればこのクラスのCPUも対応可能ではあるが、冷却性能の安全マージンやCPU性能をより引き出すことを考えるなら、大型の水冷クーラーの導入を積極的に考えるべきだ。
“耐久性”も気になる点ではあるだろう。空冷クーラーと水冷クーラーを比較した場合、構造がシンプルな空冷CPUクーラーのほうが故障リスクは低い。水冷クーラーの場合、冷却液の揮発・減少による性能低下が気になる人が少なくないと思うが、CORSAIRの技術ブログによると、近年の簡易水冷クーラー製品は5~10年使用できるとのこと(環境条件やメンテナンス状況などにもよる)。製品サポートも3~6年と長期間用意されているので、“冷却性能の劣化”を過剰に恐れる必要はない。
また、CPUクーラー選びで冷却性能と同じくらい重要なポイントとなるのが“ルックス”だ。昨今のPCケースはどれもこれもクリアサイドパネルで、中身がバッチリ見えてしまう。その上でCPUクーラーはPCケースの中でもド真ん中に位置するため、かなり目立つパーツでもある。冷却性能だけ考えれば、最も安上がりなリテールクーラーでも十分だが、ちょっとでもこだわったPC自作を目指すなら、性能とルックスの両方がレベルアップするCPUクーラーをよくよく吟味するのがオススメだ。
最近のCPUクーラーのルックス的な特徴は“発光”によるカラーやデザインのアピールだろう。LEDはファンに内蔵されているのが定番で、近年は水冷クーラーのヘッドに組み込まれていることが多い。LEDイルミネーションをどう凝らすかは、製品的にもセットアップするユーザー的にも大きなアピールポイントと言える。
そして最近はLEDから一歩進んでヘッドやトッププレートに小型液晶パネルを内蔵するモデルが増えてきている。CPU温度などのハードウェア情報などの実用的な情報の表示、LEDだけでは表現できないような発光演出やアニメーション表示も可能と、見た目のインパクトはかなり強烈だ。
一方で、LEDや液晶は一切なし、という“光らないCPUクーラー”ももちろんある。シンプルでミニマルな見た目だと、たとえクリアサイドパネルでも室内照明を落とせばPC内部は漆黒、というコンセプトもシックな大人のプライベート空間にマッチするし、ほかのインテリアや照明でトータルコーディネイトするという考え方もあるだろう。機能面でも、LEDや液晶がない分、配線が減り、制御もシンプル化できるというメリットもある。もちろん、部品点数が少ない分お安くなる、というのもポイント。
“動作の管理“もチェックしておきたいポイントの一つ。CPUクーラーは、CPUの負荷や温度と連動してファンを制御し、動作音と冷却のバランスを取りながら効率よく使用するのが定石。空冷クーラーの場合、ファン回転数制御はマザーボード任せで制御することが多いが、水冷クーラーは専用の管理ソフトウェアを使うことが多い。また、LEDや液晶パネルを搭載した製品も発光・表示の制御に管理ソフトウェアを使用する。
最後に“組み立てやすさ”もできれば事前に把握しておきたい。CPUクーラーのセッティングは、基本的にはドライバー1本あれば誰にでもできるのだが、それなりに手順が複雑で、製品によってはちょっと苦戦する場合もある。特に、3連ファンで発光機能付きの水冷クーラーは部品やケーブルの点数が増えがち。ある程度経験がないと判断が難しいとは思うが、製品のサポート情報などで事前にマニュアルを確認してみて、どんな作業が必要か、自分でも扱えそうかどうかをチェックできるとベターだ。
最近ではPDFによるマニュアルだけでなく組み立て解説の動画が配信されていることもあるので、こちらもチェックしてみることをオススメする。
また、高機能化に伴ってケーブルが増える一方だった水冷クーラーのセッティングをシンプル化しようという取り組みも進みつつある。その代表格がCORSAIRの「iCUE LINK」という仕組だ。iCUE LINKでは、セッティングに必要なケーブルの本数が従来の半分以下になり、手間的にも見た目的にも大幅に簡略化されつつも、従来と同等以上にこまやかな制御を実現している。
ハイエンドユーザー向けの空冷、水冷モデルを展開中今夏オススメなCORSAIRのCPUクーラー
それでは最後に、CORSAIRのオススメCPUクーラーを、水冷/空冷各1製品ずつ紹介する。いずれも、冷却性能だけでなく、ルックスや組みやすさも磨き上げられた、トレンドの最先端とも言える逸品だ。
最新トレンドを詰め込んだ簡易水冷「iCUE LINK TITAN 360 RX LCD」
36cmクラスの簡易水冷CPUクーラー。本機は水冷クーラーのセッティングを大幅に簡略化する「iCUE LINK」に対応した製品。水冷ヘッドとファン、制御ハブを起点に専用ケーブルで数珠つなぎに接続するだけで、冷却機能の管理、ファンと発光の制御、電源供給が可能となっている。3基のファン同士はケーブル不要で直結できる構造となっているため、ファンの総数は従来型の水冷クーラーに比べると非常に少ない。
iCUE LINK対応の簡易水冷クーラーは便利で仕上がりもキレイな分、従来型のクーラーよりも若干高価ではあったが、本機では液晶パネル内蔵ヘッドを採用しつつもこれまでよりも手頃な価格になっているところがオイシイポイントだ。
ファンは同社の「iCUE LINK RX120 RGB 」。磁気ドームベアリングを採用し、優れた静圧と静音性を実現すると言う。また、アールを落とした四角い水冷ヘッドは、中央に円形の2.1インチIPS LCDパネルを搭載し、周囲にLEDを配置。表示制御のためにUSB接続が必要だが、どハデな演出も可能だ。
上位CPUにも対応できる高性能空冷「A115 Twin Tower CPU Air Cooler」
14cm角のデュアルファンを用いた大型のツインタワー、サイドフロー型の空冷CPUクーラー。ヒートシンクおよびヒートパイプはブラック塗装されており、LED非搭載、ブラックアウトされた引き締まった見た目も魅力の一つだ。
ファンは同社AF140 ELITEが2基。14cm角サイズで独特な形状の9枚ブレードが風を中央に集中させ最大1.73mm-H2Oという高静圧、最大84.5cfmの大風量を実現。動作音は最大33.9dBとこのクラスとしては優秀。ファンの固定方法にガイドとレールによるスライド式を採用し、高さのあるメモリを組み合わせた際の位置調整(干渉回避)が柔軟にできるほか、中央ファン含めて着脱が簡単なので、CPUクーラー自体の着脱もスムーズに行える。
冷却性能という点ではCPU接触面の構造も紹介しておきたい。昨今ではCPUクーラー装着時のリテンション圧によってCPUのヒートスプレッダーがへこむ形で湾曲、それにより熱伝導性が損なわれるといったことも問題化している。A115では、凸型銅製冷却プレートを採用し、IntelとAMDのどちらのCPUと組み合わせてもしっかり密着、優れた熱伝達を実現。細部までこだわることで性能をとことん追求した空冷クーラーだ。