取材中に見つけた○○なもの

発売からリコールまで話題に事欠かなかった「Intel 820」 ~ 1999年の秋葉原 ~

とあるショップに入荷したi820搭載マザーボードのサンプル。最初のリファレンスデザインではRDRAMメモリ(RIMM)スロットは3本でしたが、すべてのスロットにメモリを取り付けると動作が不安定になる場合があるとして2本に変更されました。

 今回は、1999年に登場したPentium III用チップセット「Intel 820(以下i820)」を紹介します。i820はFSB133MHz対応やSDRAMより帯域の広いRDRAMをサポートするなど、440BXに変わるメインストリーム向けのチップセットとされていました。

※社名、製品名、販売店名は取材当時のものです。

FSB133MHz対応モデルが発売されるも、対応チップセットは延期

 FSB 133MHz対応のPentium IIIが発売。533B MHz(133MHz×4)と600B MHz(133MHz×4.5)の2モデルがラインナップされましたが、同時発売予定だったi820が土壇場で発売延期になったため、互換チップセットであるVIAのApollo Pro 133搭載マザーボードか、既存の440BXマザーボードを保証外の133MHz設定にしないと使用することが出来ませんでした。

FSB133MHzのCPUが登場するもマザーボードはお預け(撮影協力:アイ・ツー DOS/V専科 東京3号店、ピーシーアドバンスド3丁目店)
i820の延期によりFSB133MHzに対応したIntelチップセット第一弾はエントリー向けの「Intel 810E(i810E)」になりました。しかしi810Eはビデオ機能を内蔵したエントリー向けで外部にAGPバスを持っておらず、ビデオカードを取り付けることができませんでした(撮影協力:USER'S SIDE本店)

2次キャッシュをCPUダイに統合した「Coppermineコア」の新Pentium IIIが登場するもチップセットは未発売

 フルスピードで動作する2次キャッシュを内蔵したCoppermineコアのPentium IIIが発売。SECC2(Slot 1)とFC-PGA(Socket 370)の2つの形状があり、一挙に9モデルが登場しました。

 i820はこの時も登場しませんでしたが、その後発表が行われました

FC-PGAと呼ばれるSocket 370版も登場した新Pentium III。過去のSocket 370と互換性が無いため、当初はSlot 1に変換して使用されました(撮影協力:ピーシーアドバンスド3丁目店)

AGP 4X、UltaATA/66に対応したチップセット「i820」が遂に発売、メモリはダイレクトRDRAM

 発売延期から2ヶ月、FSB133/AGPx4をサポートするi820が遂に発売されました。SDRAMと比べて割高なRDRAMが必要でしたが、AGP 4xやUltaATA/66など当時の最新機能に対応していました。なお、リファレンスではRIMMスロットは2本に限定されていましたが、多くのマザーボードが各メーカー独自検証で3本のRIMMスロットを搭載していました。

 また、メモリ変換インターフェース「MTH」を利用しSDRAM(DIMM)をRADRAM(RIMM)スロットに取り付けることのできるRIMM-DIMM変換ライザーカードも発売されました。この後、MTHがi820の命運を決定することになります。

AOpenのAX6C
RIMMを装着
RDRAMとのセット
RIOWORKSのPU82A
メモリスロットに刺さっているのがRIMM-DIMM変換ライザーカード
RIMM-DIMM変換ライザーカードを使った様子
初めて発売されたRDRAMは、メルコ製でPC700対応64MBモジュールでした。価格は驚きの60,800円。RIMMスロットの空きを埋めるためのC-RIMMも発売(撮影協力:クレバリー、Faith、WAVE EYE 秋葉原店)
IntelからはMTHを搭載したSDRAMのみサポートするi820マザーボードも登場しています。安価なSDRAMが使えるIntelの最新マザーボードということで、発売後人気となりました。アースの付いた新型のCPUリテンションキットが付属しています(撮影協力:ぷらっとホーム)
他メーカーからもSDRAMが使えるi820マザーボードが登場。ASUSのP3C2000はDIMMスロットを4本搭載するほか、AGP ProやISAスロットも備えていました(撮影協力:コムサテライト2号店)

高性能チップセットも高額なRDRAMが普及の足かせに

 Ultra ATA/66やAGP 4xなど最新機能への対応で互換メーカーのVIAに水をあけられていたIntelですが、i820が登場したことでようやくこれらに対応を果たしました。しかし、同容量のSDRAMの6倍以上というRDRAMの価格差(1999年12/25のメモリ最安値情報)がネックになり、主流とはなりませんでした。

 そして翌年の2000年5月、MTHの不具合からリコールが告知され、SDRAMが使えるi820マザーボードは市場から消えることになります。このあともi820はRDRAM専用として販売が続けられましたが、当初の予定通り440BXを置き換えることは遂にできませんでした。

MTHの不具合による販売中止を知らせるPOP。不具合を解消した新バージョンが出るという噂もありましたが、MTHはこのままフェードアウトし、i820+SDRAMという構成のマザーボードは姿を消しました(撮影協力:USER'S SIDE本店、ピーシーアドバンスド3丁目店)