忍者増田のレトロゲーム忍法帖

忍者とゲーム開発会社社長が『いたスト』で対戦! 勝敗はいかに?

~『いただきストリート』対談編 前編~

忍者増田氏と『いただきストリート ~私のお店によってって~』のファミコンカートリッジ。

 今回と次回、2回に渡り、『いただきストリート』についての対談を掲載する。ゲストはゲーム会社会社 アールフォース・エンターテインメントの横山裕一氏。

 横山氏は昔からの『いたスト』プレイヤーであり、現在はゲームクリエイターとして数多くのゲーム制作を手掛けるゲーム会社の社長。このふたつのポジションから興味深い意見が飛び出すのだった。



『いたスト』は画面内での情報の詰め込み方が見事

忍者ポーズをキメる横山裕一氏(左)と増田氏。

横山裕一氏。株式会社アールフォース・エンターテインメント代表取締役社長兼シナリオライター。25歳までフリーターとして様々な職業を転々としながら、インディーズでゲーム制作を手伝う。その後、様々なゲーム会社の求人に応募をするも不採用になり続け、一念発起して会社を設立、現在に至る。プランナーやシナリオライターとして300本以上のゲーム制作に携わる。

[忍者増田](以下、忍増):横山さんの『いただきストリート』歴をお聞かせください。

[横山裕一](以下、横山):ファミコン版の初代『いたスト』からやっていますが、一番遊んだのはスーパーファミコン版の2作目『いただきストリート2 ~ネオンサインはバラ色に~』ですね。ほんっとーに面白かった。

[忍増]:『2』になって、新要素がドーンとたくさん導入されましたよね。

[横山]:はい。コンピューターキャラもより賢くなっていますしね。個性がより出ていて、すごく熱中したのを覚えています。その後、PlayStation版などもやりましたけど、スーファミ版ほどはハマっていなかったと思います。

[忍増]:『2』で、高い店を選んで止まってくれる、マハラジャというコンピューターキャラが出現したんですけど、そのマハラジャが、何作目かで高い店のほうに行かなくなっちゃっていて、残念に思ったことがありましたね。

[横山]:マハラジャ、いましたねえ。


初代『いただきストリート』のタイトル画面。
『いたスト』は一画面に数々の情報が詰め込まれ、状況を瞬時に読み取れるのが見事。

[忍増]:横山さんが思う『いたスト』のすごさってどのあたりでしょうか?

[横山]:ボードゲームって、情報が多いですよね。そして、画面で情報を出し過ぎると盤面が隠れてしまう。でも、『いたスト』は画面の上下にうまく情報を詰め込んで、更に情報部分だけがさりげなく替わるようになっていて、極力画面の断絶が発生しないように作られています。僕はこの見せ方が見事だと思いますね。

[忍増]:意外と語られていない部分ですけど、おっしゃる通りですね。

[横山]:そのあたりは、子供ながらに、すごく感心していました。

[忍増]:子供のころからすでに感じていた部分だったのですね。当時からそういうユーザインターフェイスに目がいっていたというのは、横山さんならではという気がします。

今回の対談にあたり、横山氏と増田氏を含めた4人でアメリカ大陸のマップをプレイ。4人の実力が伯仲し、非常に熱い戦いとなった。
高額店をうまく避けながら心理戦を繰り広げるなど、ボードゲームならではの醍醐味を充分に堪能した戦いに。

デジタルゲームなのに「交渉」の駆け引きが味わえる

コンピューターキャラから交渉を持ちかけられることもある。

[横山]:当時は『いたスト』どころかファミコンも持っていなくて、友達の家で遊びまくってましたね。で、友達に「お前、この店売れよ」とかひどい交渉の仕方をしていまして(笑)。当時、意外に交渉をしていた人は少ないんじゃないかと。

[忍増]:「売れよ」は確かに少ないかもです(笑)。

[横山]:『モノポリー』も、最終的には、「ココとココ交換しようよ」という駆け引きが一番の面白さになってくると思うんですけど、『いたスト』はデジタルゲームなのに、そういう要素もちゃんと採り込んでいるところがすごい。

[忍増]:そうですね。プレイヤー同士でも、コンピューター相手でも、交渉してお店の交換ができますからね。

[横山]:そして今回、増田さん達と久しぶりに初代『いたスト』をプレイして、改めて思ったんですけど、キャラクターが魅力的だなと。もちろん、今見るとドットは粗いですけど、それでも魅力的です。最初のまりなの案内のときも、パンツ見えるんじゃないかなと(笑)。

[忍増]:ゲーム前の導入部分で、まりなが足を組むシーンですね。当時拙者もこれぐらいでドキドキしていましたよ(笑)。

ゲーム案内時にまりなが足を組む演出。当時の横山氏と増田氏がドキリとしたという。

「いただき」と「株儲け」、どちらの収入が気持ちいい?

[忍増]:横山さんは、『モノポリー』を先にプレイしていたクチですか?

[横山]:そうですね。ただ、『いたスト』はそこに「株」の要素を付け足したのがすごいなぁと。株は後乗りができるじゃないですか。自分が店を持っていなくても儲けられる、「読み」の要素が絶妙に付加されている。サイコロゲームなので、出目の運に左右されるところが大きいんですけど、その運に頼らず、読みの部分で儲けることができるという。また最後に成績表が出て、「株儲け」額も表示されますよね。そこで「俺は総資産は1位じゃなかったけど、株の売買は巧かったな」とか、そういう部分でも満足感を得ることができる。それは制作側の意図だったんではないかなと。

[忍増]:まったく同意見です。拙者もゲームで負けても、株儲けが1位だったりすると満足感がありました。株の要素を入れて、そういう部分を最後に成績表として見せてくれるのは、コンピューターゲームらしい良いアイデアですよね。『いたスト』をやると、株儲けだけは1位で終えたいというのはありますよね。

[横山]:ありますあります。

株儲けで勝つと気持ちがいいというのは、両者とも共通認識のようだ。

[忍増]:『いたスト』の主な収入源は、「サラリー」のほかに、「いただき」と「株儲け」があります。「いただき」はサイコロの運に頼った感が大きいけど、「株儲け」の場合は、自分で頭を使って儲けた感があるんですよね。横山さんは「いただき」より「株儲け」の収入のほうが気持ちいいですか?

[横山]:はい。もちろん「いただき」も嬉しいですけどね。株は、周りから「あいつはいつの間にあんなに資産を増やしたの?」と驚かれたりして、そこがまた心地いいですね。

[忍増]:株の儲けは、盤面からは読みにくいものですしね。

プレイ後の成績表を確認する2人。横山氏は2位、増田氏は4位という結果だが、株儲けでは横山氏がトップ。


 『いたスト』のポイントとなる「株」については、両者共通の認識があった様子。やはり自分で仕掛けて儲けを出すというゲーム性は、運に左右されずに実力が発揮できる点が魅力なのだろう。

 対談の後半では、「5倍買い」や「株」の買い方で見えてくるプレイヤーの性格や行動、登場キャラクターへの思い入れや考察、さらにはクリエイターから見るた『いたスト』というゲームについて語ります。次回もお楽しみに。

 ※次回掲載は2月28日(火)を予定しています。

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『いただきストリート2 ネオンサインはバラ色に』
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『ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート ポータブル』PSP版(中古品)700円前後
『いただきストリートDS』ニンテンドーDS版(中古品)1,500円前後
『いただきストリートWii』Wii版(中古品)2,000円前後
※2017年1月調べ

注釈

  1. スーパーファミコン
    拡大・縮小・回転の処理やPCM音源などファミコンからパワーアップした性能を売りに、1990年11月に発売された任天堂の家庭用ゲーム機。当時の希望小売価格は25,000円。考えてみると「Nintendo Switch」とそんなに値段は変わらないんですね。
  2. いただきストリート2 ~ネオンサインはバラ色に~
    1994年に発売されたスーパーファミコン用ソフト。通称『いたスト2』。発売元はエニックス。キャラクター、マップとも前作から大幅に増えたほか、空き地などの新要素も追加されている。
  3. マハラジャ
    『いたスト2』から登場したイベントキャラクター。高額店にも止まり、気前よく買い物料を払ってくれるので、ある意味でボーナス的なキャラクターですね。
  4. いただき
    自分のお店に他プレイヤーが止まることで獲得する買い物料のこと。成績表にて、いただきの回数・総額・平均・最大買い物料が表示される。ちなみに、自分が他プレイヤーに支払った買い物料は「ふりこみ」である。
  5. 株儲け
    株の価格の安い段階で購入して、そのエリアの店を増資し、株価が上がれば株儲けとなるわけだ。でも、チャンスカードとかであっさりと株価が下がることもあり、狙い通りに株儲けを出せなかったりもする。
  6. 資産
    プレイヤーの「所持金」と「株」と「お店の価格」の合計金額。これがマイナスになると破産になる。お金として持っておくよりは株やお店につぎ込むのがセオリーである。でも、安全パイのお金は持っておきたいのが人情ってものだったりします。

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。