あなたのPC大改造計画

6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造(前編)

text by 清水 貴裕

今回の依頼者のOさん。元ショップ店員という経歴の持ち主。自作PCから離れた生活を送っていはいるが…

 AKIBA PC Hotline! 読者のPCが抱える問題を、編集部とライター陣が解決するというASUS後援の読者参加型企画「あなたのPC大改造計画」第5回目がスタートした(4回目までの模様はこちら)。第5回目の舞台は東京都。オーバークロッカーの清水 貴裕が担当する。

 今回の依頼者は、学生時代にPCショップでアルバイトをしていたという経歴の持ち主であるOさん。昔は公私問わずにマシンを組みまくっていたというOさんだが、就職してからは忙しくなり、ここ数年は自作PCから離れた生活を送っていたのだという。

あなたのPC大改造計画:記事一覧
第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?
[前編後編]
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は
ちゃんと安定して動くのか?
[前編後編]
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに!
ただでさえハイスペックなPCを
「フル水冷」のモンスターマシンへ強化
[前編後編道のり編]
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る!
7万円で強化する「多趣味人のためのPC」
[前編後編]
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造

[前編後編]
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に!
現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか?
[前編後編]
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に!
ゲーム機を超える快適さを目指せ!!
[前編後編]
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを
ゲーミング&静音仕様に大改造!!
[前編後編]
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを!
快適環境で「目指せ全国!」
[前編後編]

 「古くなったマシンをアップグレードしたいけど、何をどうしたらいいか分からない」と悩んでいたところ、今回の企画を知り応募して下さったらしい。

 第6世代Coreプロセッサ“Skylake”やWindows 10の発売で自作市場が活気に満ち溢れている今は、マシンをアップグレードするには絶好のチャンス。さあ、大改造スタートだ!

悩みはパワー不足と起動の遅さ

OさんのPCデスク周り。音楽の取り込みや再生に使っているメインマシンの上にはUSB DACが鎮座している。

 まずはアップグレード対象のOさんのマシンをチェックしていこう。

 2008年~2009年頃に組んだというOさんのマシンは、CPUがCore 2 Duo E7500、マザーがDDR2版のP45マザー、ビデオカードがRadeonのHD4650という構成で、ストレージはHDDだ。

 主な用途は「World of Warships」や「World of Tanks」などのPCでしか遊べないゲームのプレイや、CDからの音楽の取り込みだ。

【今回のアップグレード対象PC】

■スペック
CPU:Core 2 Duo E7500(2C2T、2.93GHz)
マザー:GIGABYTE GA-EP45-DS5 Rev.1.0 (Intel P45)
メモリ:DDR2 1GB×4
グラフィック:SAPPHIRE HD 4650 512MB
ストレージ:SEAGATE ST2000DM001(HDD 2TB)他 計4TB
電源:Abee AS Power Silentist S-450EA (450W)
PCケース:Cooler Master Centurion5
CPUクーラー:サイズ ZIPANG
OS:Windows 7 Ultimate 32bit版

●主な用途
・「World of Warships」などのPCゲーム
・音楽の取り込み

ゲームのクライアントを起動してからは、読み込みに時間が掛かるのでしばらくの間この画面のままになる。

 パーツの構成としては6年前のミドルレンジといったところで、当時はかなり快適に使えるマシンだった事が伺える。そして、Oさんの当時のパーツ選択が良かったからこそ、ここまで長く使えたのだと思う。

 いつもOさんが使っているように「World of Warships」をプレイしてもらったが、まず気になったのが起動速度。HDDが原因なのか、ゲームの起動だけでなくWindowsの起動もかなり遅い。

ゲーム画面はビデオカードのパワー不足か滑らかさに欠ける状態。

 気になるゲームの方も、ビデオカードのパワーが不足しているからか描画が不安定でかなりカクついている。さらに、ゲーム中はビデオカードのファンが高速で回転するので動作音もかなり大きい。現状では、お世辞にも快適にゲームをプレイできているとは言い難い状態だ。

[清水]起動速度やゲームの描画も気になりますけど、動作音が結構大きいですね。

[Oさん]そうなんです。マメにメンテナンスをしているのですが、負荷が掛かるとビデオカードのファンの回転数が上がってしまうんです……。

 Oさんにサイドパネルを開けてもらい中の状態を確認するも、手入れが行き届いておりホコリは皆無。ファンの回転数が上昇するのはゲームの負荷がビデオカードにとって重過ぎるからだろう。このマメなメンテナンスも、長くマシンを使えている理由のひとつなんだと取材班は感心。

Oさんのマシンの内部。裏配線対応の製品がほとんどない時代のケースだけに、ケーブルが少し目立つ。
常日頃からメンテナンスされているだけありホコリはほとんどない状態。

[清水]ゲームと音楽の取り込み以外にはこのマシンを使わないんですか?

[Oさん]そうですね。ブラウジングはノートやタブレットで十分ですし、ゲーム用にPS4もあるので……。PCにしかないゲームタイトルをプレイする位ですね。

[取材班]?!(思わず絶句)

 以前は活躍していたマシンも今ではすっかりパワー不足に陥り、今ではPS4にゲームマシンの座を奪われているのだという。ゲームも快適に遊べるマシンに大改造してやろうと心に誓った瞬間であった…。

Oさんのリビング環境もといゲーム環境。PS4でのゲームや、音楽や映画の鑑賞を楽しんでいるそう。
Oさんが組立てたというオーディオ雑誌の付録たち。DACやノイズを除去するためのボードが並ぶ。

予算は5万円だったが…
今回の改造方針はコレだ!

 Oさんの悩みやマシンの現状を把握できたところで、今回の改造方針を決めていきたいと思う。ベースが6年前のマシンだけにかなりの大改造になるのは必至な予感だ。

 ちなみに今回の予算は5万円…だった。しかし、パーツの情報をリサーチしていたOさんが当時と現在のパーツ相場の変化に気付く。5万円ではアップグレードが厳しいというOさんの判断により、まさかの予算アップが発生!なんと予算が8万円になったのだ。

 「せっかくやるのだから後悔したくない」どこかで聞いた事のある言葉だ。せっかく組むのだから後悔したくないというのは誰しも思う事で、筆者がOさんの立場でも同じ選択をしていたと思う。

 さて、交換するパーツを見繕ってみよう。ざっと見るとCPUやメモリ、マザーやビデオカードなどの主要パーツは交換決定。CPUクーラーは性能的には問題がなさそうだが、LGA115X系に対応していないので交換が必要だ。電源も高効率な現行の製品に交換したいし、メインストレージにSSDも導入したいところ。

 流用できそうなパーツとしてはケースやOSがあるが、OSが32bit版のWindows 7というのが気になる。しかし、幸運なことにOさんが64bit版を持っているのでそれを使う事になった。

【今回の方針】

【目標】
・長く使えるようにパーツの仕様や耐久性にこだわる
・「World of Warships」などのPCゲームが快適に遊べるマシンにする
・冷却力と静音性を両立する

・CPU
予算や用途から考えるにクアッドコアのCore i5クラスが最適解。OCに対応した倍率アンロックのKシリーズは必要ないので、動作クロックが3GHz台の倍率ロックモデルへのアップグレードを狙う。Skylakeにする場合は現状では6600Kが有力な選択肢。

・マザー
ゲームを快適に楽しむためにサウンドやLANがしっかりとした製品を選びたいところ。ファームファクターはATXクラスでいいが、拡張カードがビデオカード1枚だけなので、価格を抑える意味でmicroATXを選ぶのもアリ。

・メモリ
容量は8GBもあれば十分。メモリの速度はマシン全体のパフォーマンスには大きく影響しないので、速度よりも価格重視で選ぶ方向でいきたい。4GBモジュールのデュアルチャンネルキットが狙い目か。

・ビデオカード
あまり重いゲームをプレイする予定はないらしいので、ワットパフォーマンスに優れる「GeForce GTX960」クラスが今回のアップグレードには適していると言える。静音性を向上させるために、セミファンレス駆動が魅力の「STRIX」シリーズの製品を選びたいところ。

・ストレージ
いくらCPUやビデオカードを強化してもストレージ速度が遅くては、マシンの快適さはスポイルされてしまう。120GBクラスでもいいので、起動ドライブにはSSDを導入したい。音楽データの保存をこれまで通りHDDで行うようにすれば、120GBクラスでも十分使えるはずだ。

・電源
変換効率の良い現行の電源に交換したいところ。ケースが裏配線できないタイプなので、セミモジュラータイプの製品が望ましい。Platinum認証の製品はお値段も張ってしまうので、予算と相談しつつ最良の選択をしたい。容量は500Wあれば十分なはずだ。

 Oさんは「マシンを今後数年は使いたい」と考えているので、このままLGA1150系で組むのは最良の選択肢ではない。しかし、今のタイミングでSkylakeで組むとなると、倍率アンロックでOCに対応した「Kシリーズ」しか選択肢がないのが現状。ただ、大改造実行時に倍率ロックモデルがリリースされている可能性もあるので、状況を見極めつつ最良の選択をしたいと思う。

 「この先長く使えるマシン」をコンセプトにした大改造で、6年前のマシンがどんなマシンへと強化されるのか、後編記事に乞うご期待だ。

後編はこちら

[制作協力:ASUS]

(清水 貴裕)