あなたのPC大改造計画

「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?(前編)

text by 加藤勝明

OさんのPC周り全景。2PCに4ディスプレイ、さらにそれをL字配置。スペースさえ確保できればこういう配置に憧れる読者も多いのではなかろうか。
机にはウィンドスクリーン付きのマイクが。ただこれで配信とかをやっている訳ではなくて、ボイスチャット用として使っているとか。

 読者のデスクトップPCを今風にアップグレード!……という読者参加型企画「あなたのPC大改造計画」がいよいよスタートした。

 3月末の募集開始から約1ヶ月で数十件の応募が寄せられたが、栄えある第1回目はライターの加藤 勝明が担当させていただいた。

 ターゲットは埼玉県在住の大学生Oさん(20)。早速Oさん宅へお邪魔し、お話を伺ってみた。

 Oさんの部屋に入ると、部屋の広さを活かすように鎮座しているL字型の机と、4枚のフルHD液晶に2台のPC(どちらも自作)がお出迎え。色も黒で統一されており、“男なら一度は憧れるPC机”という印象。さらにウィンドスクリーン付きのマイクや2.1chスピーカー等も接続済みなど、様々な要素がバランス良くまとまっている印象を受けた。

今回強化の対象となるメインマシン周辺。メインなので液晶もEIZOの高付加価値タイプのものを使っている。
こちらは今回の改造対象ではないサブPC。ファイルサーバとして使っているとのこと。
わざわざ愛車で迎えにきて頂いたOさん。足回りもガチガチにいじってある走り屋仕様でありました。
今回PCを改造させていただくOさん。大学では情報工学を学び、自動車系サークルでサーキット等へも足を運んでいるとのこと。リア充のオーラに筆者のHPは削られまくりだ。
あなたのPC大改造計画:記事一覧
第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?

[前編後編]
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に!
現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか?
[前編後編]
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は
ちゃんと安定して動くのか?
[前編後編]
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に!
ゲーム機を超える快適さを目指せ!!
[前編後編]
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに!
ただでさえハイスペックなPCを
「フル水冷」のモンスターマシンへ強化
[前編後編道のり編]
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを
ゲーミング&静音仕様に大改造!!
[前編後編]
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る!
7万円で強化する「多趣味人のためのPC」
[前編後編]
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを!
快適環境で「目指せ全国!」
[前編後編]
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造
[前編後編]

今どきのPCゲームで遊びたい!

 OさんのPCまわりの充実度に驚いてばかりいられない。今回の改造にあたって、Oさんが今どんなPCを使っており、改造後のPCで何をしたいのか、現状にどんな不満を抱いているかをチェックする。

 こういう時にメーカー製PCだとスペック把握が面倒だが、自作PCなので本体を開き組み込まれているパーツを見れば強化すべき部分がすぐわかる。このスピード感が自作PCの最大のメリットといえよう。改造対象となるメインPCの構成は以下のようなものだった。

【今回のアップグレード対象PC】

■スペック
CPU:Core i3-3220(2C4T、3.2GHz)
マザー:ASUSTeK P8H77M-LE(Intel H77)
メモリ:D3U1333-B8GBJ(DDR3-1333 8GB×1)
グラフィック:CPU内蔵
ストレージ:AS510S3-120GM-C(SSD 120GB)等
電源:玄人志向 KRPW-L4-400W(400W)
PCケース:Bitfenix RONIN
CPUクーラー:akasa Venom Pico
OS:Windows 7 64bit版

■主な用途
・大学のレポート作成(MS Office使用)
・RAW現像
・Webや動画の観賞

RAW現像アプリをサッと起動。

 このメインPCで主に行う作業は、大学のレポート作成(課題は環境の都合上大学のPCで行っているそうだ)のほかに、Oさんがサークル活動等で撮影したデジカメ写真のRAW現像、そのほかWebや動画観賞とのこと。

 ハイスペックとはいえないが、CPUにCore i3、OSをSSDから起動させるなどツボは押さえているようだ。

 いつも使っているRAW現像アプリを起動してもらうと、右の液晶にブラウザが、左の液晶にプレビューが出るというマルチディスプレイを活かした編集環境が出現。単に見栄えだけでマルチディスプレイにしているのではなく、しっかり使いこなしている点は取材陣一同感銘を受けた。

左の液晶が編集するRAW画像のプレビュー、右の液晶にはRAW現像アプリのファイルブラウザを表示。これぞマルチディスプレイ王道の使い方、といったところだ。

 だがOさんは「現状のPCではRAW現像の速度に遅さを感じてきた」が不満だそう。

 露出や色味を弄る程度の編集が主というが、さすがにCore i3だとCPUパワー不足が気になっているようだ。今後カメラがアップグレードすれば画素数も増えて負荷も上がる。またサークル活動中動画も撮影しているようなので、CPUパワーが上がればそれを編集する、という使い方も生まれてくるはず。CPUはキッチリと強化しておきたい。

 また、Oさんは以前のPCではビデオカードを載せて「AVA」等のFPS系ゲームも楽しんでいたが、現在のPCでは全体的なパワー不足のせいでゲームからはかなり遠ざかっていたとのこと。デスクトップ上には「Minecraft」や音ゲー「osu!」等のアイコンが存在していたが、設定を下げないと楽しめない、等の理由から起動頻度は低い、とのことだった。

 しかし今回改造するにあたり「GTAV」や「バトルフィールド ハードライン」といった今どきのゲームも試してみたいという。ならば、このPC大改造企画に応募したのが運の尽き(?)、ゲームもガッツリ楽しめるPCにしようではないか。

あれ? この人買い物、とても上手いんじゃ……?

机の下のマシンの中を見せて頂くことに。映画「トイストーリー」のキャラのティッシュ箱が良い味を出している。
今回改造するマシン内部。ATXケースにmicroATXマザーを入れるとは、中々玄人っぽい組み方。というかakasa製CPUクーラーなんて、実にレアなものをお持ちのようだ。

 現状のスペックや問題点がハッキリしてきたが、改めて見るとOさんのマシンは非常に面白い構成である。

 ATXケースの中にmicroATXケースを組み込んだ理由については「ATXケースにATXマザーを入れるよりも、ヘッダピン等の抜き差しがしやすい」と、かなり玄人っぽい視点で組んでいるようだった。

電源は400W。Core i3+内蔵GPUなのでこの出力でもお釣りが来そうだが、低出力を求めると逆に割高になるのでここに落ち着いたとのこと。
メモリはまだDDR3が主力なので使い回せそうと思っていたが、DDR3-1333の8GBが1枚なので、1枚買い足してデュアルチャンネル化するにもスペックが微妙なところだ。

 Core i3に内蔵GPU、メモリはシングルチャンネル、電源は80PLUS認証なし(スペック的には80PLUS Standard相当)……と、お世辞にも今風&ゲーム向けといえない。ゲームから遠ざかっていたのも無理からぬ話だ。しかし取材陣が驚かされたのはこのPCにかかった費用だ。

RAW画像や動画保存用として使っているサブマシン。このケースだけで10,000円以上しそうだが、トータルで15,000円してない、との話に取材陣ビックリ。

[加藤]ちなみにこのPCのパーツ代ってどの位の費用がかかりました?

[Oさん]パーツ代としては2万円台……3万円はかかってないですね。サブマシンは14,000円位ですよ。

[加藤]えっ? サブマシンのケースが14,000円じゃなくてトータルでその値段ですか?

[Oさん]CPUはCeleron G1840ですし、ケースは秋葉原でジャンク扱いのを4,000円位で、電源もジャンクで500円でしたね。

 350Wとはいえ、500円でマトモな電源がジャンクとして売られていて、それを探し出してくるとは……秋葉原に四半世紀近く足を運んできた我々の経験はなんだったのだ……とショックを受けた位、このOさんは買い物が上手い。

 PCの定番構成を知らずにこの構成にしたのではなく、頭と足を使って激安で自作したにたどり着いた、という点は秋葉原のいち住人として最大の賛辞を贈りたい。

 改造するにあたり“使ってみたい/使いたくないパーツ”はあるかと聞くと「ASUSTeKのSTRIXシリーズのクーラーがカッコ良いので使ってみたい」「CPUならIntel、GPUはNVIDIA」が希望とのこと。また今使っているパーツに特に思い入れはなく、データ保存用HDD等も必要に応じてサブPCに移し替えられるので、この構成でなければダメ、ということはないとのことだった。

 しかし、いかにも“ゲーミングPCっぽい”ビカビカLEDが光るようなマシンは嫌だ、との意見も出てきた。現在使っている黒いPCテーブルにマッチする、落ち着いた感じでありながら、カッコいいパーツで構成して欲しい、というのが今回のお題のようだ。

予算は8万円+ASUS提供パーツ方針はこれだ!

メインマシンのSSDは120GBで、普段使うアプリやデータだけでもう3/4以上消費されていた。これでは今どきのゲームは入らない。
筆者が気になったのはキーボード。ゲームを遊ぶにはあまりにも頼りない印象は拭えないが、こればかりは身体的な相性が絡むため、Oさんの選択にお任せしたい。

 さてヒアリングが終わったところで、今回のPC改造の方針を決めて、どんなパーツが流用できるか考えてみたい。Oさんの提示した予算は8万円。

 今回はASUSTeKからのパーツ提供も若干あるが、コアになる部分は8万円で揃える必要がある。CPU~マザー~メモリが現行主力規格より古く、互換性をとるのは難しい(CPUは中古のCore i7を探す、等という話はNGなのだ)ため、思い切りよく内部を総取っ換えすべきだろう。

 使い回しの可能なパーツはケースのほか光学ドライブやデータ保存用のHDD(内蔵・外付け両方使用)があるが、このうちPCケースはいかにもプラスチックな感じでPCデスクの質感に合わない(むしろサブPCの元ジャンクケースの方がゴージャスだ)。

 あえて変えるとしたらPCケースだろう。アルミっぽい質感のケースで雰囲気を盛り上げたい。

【今回の方針】

【目標】
■RAW現像処理をCore i3ベースの現状より高速化する
■「GTAV」や「バトルフィールドハードライン」を快適に遊べる環境を整える

▼CPU
RAW現像が重いと訴えていたのでアップグレード必至。今どきのゲームはCPU負荷もかなり高いので、物理4コアのCore i5以上が欲しい。

▼マザー
Core i3-3220を最新のCore i5に変更すると自動的に買い替えになる。マザーもピンキリだが、ゲーム好き筆者としては良質なサウンド回路を持った今どきのゲーミングマザーを使って欲しい。用途的にMini-ITXでも十分だが、予算も限られているので無難にATXで攻める。

▼メモリ
8GBあれば十分、かつメモリの性能は全体の性能にあまり影響しないという現状はあるが、DDR3-1333のシングルチャンネルというのは今風ではないのでここも変更。Skylakeを睨めばDDR3Lが理想だが、予算的に厳しい。

▼ビデオカード
「GTAV」や「バトルフィールド」がやりたいなら絶対に導入すべきパーツ。GeForce GTX 960か970が射程圏内だが、フルHD&高画質で遊んで頂きたいのでGTX 970あたりが最適解か。Oさんのたっての指名でASUSTeK一択。

▼ストレージ
元々の起動SSDは120GBと少なく、容量も残り20%程度とひっ迫していた。「GTAV」は1本で60GB以上消費するので、SSDはもう少し大容量にすべき。400GB~が理想だが予算的に240~256GBクラスが落とし所。

▼電源
Core i5+GTX 970なら400Wでもなんとか動きそうだが、今の時代80PLUSスタンダード(相当)というのは省エネの観点からは好ましくない。なのでこれも強化決定。

 現状が見え、到達点もかなりハッキリと見えてきた。元々低予算PCゆえに非力さが目立ってきたPCのコアパーツをざっくり今風に交換することによって、最新PCゲームも快適に遊べるようにしてみたい。

 次回はいよいよ新生PCを組み、どの位使えるようになったかをチェックしてみることにしよう…………といったところで後編に続く。請うご期待!

【編集部より】5月2日(土)、ソフマップリユース館のイベントにて、今回のPCのアップグレードに関する考え方、コンセプトなどに関するセッションを実施します。ASUS製品購入者を対象とした、豪華賞品のあたる抽選会も開催しますので、みなさま奮ってご参加下さい。(イベントは終了しました)

後編はこちら

(加藤 勝明)