あなたのPC大改造計画

「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?(後編)

予算8万円でアップグレード text by 加藤勝明

依頼者OさんのPCまわり。今回は左側のマシンを改造する。低予算自作のためスペックは絞ってあるが、買い物の上手さが伺える。

 “AKIBA PC Hotline! 読者のデスクトップPCを今風にアップグレードしたらどうなるか?”ということで始まったASUS後援の連載企画「あなたのPC大改造計画」。

 第1回目のターゲットは、ジャンクパーツをうまく使い、3万円台で組んだIvy Bridge世代のCore i3マシンを使っていた埼玉県在住の大学生Oさん。

 予算優先でスペックを絞ったマシンだけに、RAW現像の遅さが気になり、さらに「バトルフィールド」シリーズや「GTAV」等の最新ゲームもやってみたい、と考えたのが応募の動機だ。

 前編では大学生OさんのPC環境を紹介したが、今回の後編では実際にアップグレードを行う模様をお届けする。

・「3万円で組んだスタイリッシュPC」は「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?(前編)
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaizo/20150501_700181.html

あなたのPC大改造計画:記事一覧
第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?

[前編後編]
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に!
現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか?
[前編後編]
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は
ちゃんと安定して動くのか?
[前編後編]
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に!
ゲーム機を超える快適さを目指せ!!
[前編後編]
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに!
ただでさえハイスペックなPCを
「フル水冷」のモンスターマシンへ強化
[前編後編道のり編]
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを
ゲーミング&静音仕様に大改造!!
[前編後編]
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る!
7万円で強化する「多趣味人のためのPC」
[前編後編]
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを!
快適環境で「目指せ全国!」
[前編後編]
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造
[前編後編]

アップグレードの具体的な方針を詰める

 前編でだいたいのアップグレード方針は見えたが、ここで改造に使用する予定のPCパーツ構成を見ておこう。

 まず依頼者Oさんの主な要求は「RAW現像の高速化」と「最新ゲームを遊ぶこと」の2つ。そして、使用パーツの要望は「CPUはIntel製」そして「ASUS製GeForce系ビデオカード」の2つだ。

 Oさんの予算は8万円、これにASUSからのパーツ援助、さらにAkiba PC Hotline!編集部からのプラスα要素が加わる。最後の編集部からのプラスα要素は、秋葉原がOさん分のパーツを買う際に最新パーツをチェックしつつ、本人の琴線に触れそうなものを決定することとなった。

 今回の改造に必要なパーツは以下のようなものだ。RAW現像速度とゲーミングパフォーマンスという2本の柱があるため、CPUとGPUを同時に強化する必要がある。さらに“ビデオカードはASUS製”というOさん直々の指名があるため、ビデオカードはASUSよりパーツを提供してもらい、Oさんの予算はPCのコア部分の改善のために使うことにする。

 編集部のプラスα要素はまだ見えてこないが、これはOさんとの秋葉原巡りや、実際にPCケースに組み込み、動作状況を見つつ決定することにした。

アップグレード前購入予定パーツ想定購入金額(税抜)
 CPUCore i3-3220(2C4T・3.2GHz)Core i5-4690(4C4T・3.5GHz)28,000円
 メモリバッファロー D3U1333-B8GBJ
(DDR3-1333 8GB×1)
CFD販売 W3U1600PS-4G
(DDR3-1600 4GB×2)
8,000円
 マザーボードASUS P7H77M-LE(H77・MicroATX)ASUS H97-PRO GAMER(H97・ATX)14,000円
 ビデオカード無しASUS STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5※メーカーより提供
 SSDADATA AS510S3-120GM-C(120GB)Crucial CT250BX100SSD1(250GB)13,000円
 電源玄人志向 KRPW-L4-400W(400W)Antec EA-550-PLATINUM(550W)9,000円
 CPUクーラーakasa Venom Picoサイズ 虎徹(SCKTT-1000)3,500円
 合計75,500円

 上記パーツに対し“それを選んだ理由”は以下の通りだ。

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CPU:Core i5-4690

Intel Core i5-4690

 2世代前のCore i3は、RAW現像をするにしても今どきの3Dゲームをするにしても馬力不足。OさんはOCする予定はない(安定動作が第一)とのことなので、Kなしモデルから選ぶ。

 これまで使っていた「Core i-3220」はTurbo Boostなしの3.2GHzであるため、4コアがアクティブな時に3.2GHz以上出るCore i5/i7から選ぶことになる。Core i7は魅力的な存在だが、Core i5より1万円は高くなるのでCore i5の上位モデルから選択。これらの絞り込みの結果から「Core i5-4690」が最適と判断。

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マザー:H97-PRO GAMER

ASUS H97-PRO GAMER

 Core i5-4690でOCを考えないのであれば、マザーはH81/B85/H97チップセットを搭載したものであればよい。

 しかしH81/B85マザーはM.2やSATA Express非搭載、さらに将来的にBroadwell世代へのアップグレードパスも閉ざされているなど、将来性はH97に大きく劣る。折角パワーアップするのだからこの芽を潰してしまうのは忍びない。

 H97マザーもピンキリだが、今回はゲーマー向けと銘打たれた「H97-PRO GAMER」を選択した。M.2やSATA Express等の装備はもちろんだが、安価ながらASUSの「R.O.G.」シリーズの要素が盛り込まれており、高耐久&高音質サウンドを売りにしている。

 特に筆者が気に入っているのはバックパネルのポートのほとんどにダイオードを入れることで静電気による破損リスクを最小限にしていることだ。

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メモリ:W3U1600PS-4G

CFD販売 W3U1600PS-4G

 これまで使っていたメモリでも容量的には十分だが、メモリがDDR3-1333と今どきにしては遅く、シングルチャンネル構成なのが(筆者的に)非常に気になった。

 メモリのクロックを少し上げてもベンチの数値が数%上がるだけという側面はあるが、今回「RAW現像を高速化したい」という要望があるので、メモリをボトルネックにしたくないという理由からDDR-1600のデュアルチャンネル構成に変更させて頂いた。どうせ買い替えるなら8GB×2にすべきだろうが、予算的な理由で総容量は据置きにした。

 既存のメモリにもう1枚追加し、DDR3-1333の8GB×2構成にするということも技術的には可能だが、いくらバッファローのリテール品とはいえ、既存のメモリに1枚足してデュアルチャネル運用するのはリスクが高い。

 自腹ならそのリスクも受容できるが、今回は依頼者がいること、さらにデュアルチャネルにした所でメモリ帯域はDDR3-1600より低い、という点で却下された。

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ビデオカード:STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5

ASUS STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5
フルHD環境のGTAVなら、画質関係ほぼMAX(4X MSAA、ソフトシャドウ)にしてもVRAM消費量は約2.8GB。そこから高度なグラフィックス設定をオンにしていっても3.6GB程度だ。

 OさんからASUS製“STRIXシリーズのファンを搭載したGeForce系ビデオカードが良い”と明確な指定があったため絞り込みはたやすい。

 遊びたいゲームが「バトルフィールド」シリーズや「GTAV」ということなので、描画性能の高いGeForce GTX 960/970/980のどれかから選ぶことになるが、GTX 980では高すぎとNGが出たためセカンドベストのGTX 970を選択。

 GTX 960もコスパが高く悪くない選択だが、メモリバスが128bitと狭く、販売されているモデルの多くがVRAM搭載量2GBと少ないため、将来重めのゲームを試したくなった時にボトルネックになりそうなので却下。

 GTX 970のVRAMは、高速に動作するのは実質3.5GBという話はあるが、Oさんの所有している液晶がフルHDであること、フルHDならGTAVで画質を高めにしてもVRAMの占有は3.5GB程度に納まるため問題はない。

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SSD:CT250BX100SSD1

Crucial CT250BX100SSD1

 従来使っていたSSDは容量が120GBしかなく、GTAVを1本(最低61GB)入れる余裕すらないため増量を決定。

 ただ予算面で480GB~クラスのものは手が出ないため、250GBでコスパのよい人気モデル……ということでこれを選択。

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電源ユニット:EA-550-PLATINUM

Antec EA-550-PLATINUM

 電源ユニット買い替えの理由は、"80PLUS認証のない電源は省エネの点で好ましくない"という点だ。せめて80PLUS Silver以上、可能ならGoldやPlatinumのものが欲しくなるところ。

 幸いCore i5にGTX 970なら、CPUとGPUを全力で回しても電源ユニットの出力は500Wで十分足りる。これらの要素を総合した結果「EA-550-PLATINUM」にたどり着いた。

 ちなみにあえてモジュラー式でないものを選んだのはケーブルを紛失するリスクを考えての結果だ。

いざ秋葉原へ!パーツを購入

 アップグレード構成が決まったところで早速Oさんと秋葉原のパーツショップをまわり、コアとなるパーツを揃えることに。

 店頭ではOさんの買い物上手な部分を随所に見ることができた。電源は550W出力を想定していたが「1,000円アップすれば(GW期間の)特価で650W出力になりますよね?」など、買い物上手ならではの鋭い観察眼を発揮。GW期間中の割引等も手伝って、わずかだが想定予算を下回ることもできた。

Oさんに同行して秋葉原のショップで買い物。前掲の基本プランは提出済みだったのでパーツ選びはスムース。Oさんの基礎知識は十分にあったため、筆者の“自作のセンセイ”的な先輩風を吹かせる余地は皆無だった。
OさんがEA-550-PLATINUMに1,000円上積みするだけで650Wモデルが買えるのを目ざとく発見。しかし650Wにしても特別なメリットはないので当初の550Wモデルを選択。
Oさん予算枠のパーツ選択は終了。週末特価やクーポン等も併用することで、想定していた価格より少々安くあげることができた。
購入したパーツは全て一度筆者が受け取り組み立てる。とりあえずバラックで組み、チェック用の仮環境を構築し問題なく動作するか等のチェックを行った後組み立て、編集部のプラスα要素をどうするか判断することにした。
とりあえず購入したパーツを仮組みして動作不良をチェック。

編集部チョイスでケースも交換することに、この後付けプランが牙をむく……

Bitfenix「RONIN」はATXケースなので組み込み作業は容易。マザーを置いてからヘッダピンや電源ケーブル等をちょうど良い塩梅に配線していく。

 Oさんが使っていたPCケース(Bitfenix「RONIN」)へ新パーツを組み込んでいく。

 ビデオカードの格納スペースがギリギリだったり、新しいCPUクーラー(サイズ「SCKTT-1000」)が側板にほぼ触れてしまうといった点はあったものの、裏配線用スペースも確保されている製品なので特に問題なく作業は進められた。

 ただ組んでいる最中にメインパワースイッチの建て付けが悪く、たまにスイッチが下がったままになることや、天井付近のプロテイン塗装の隙間に汚れが付着し見苦しくなっている等の問題点も見つかった。

ビデオカードのカバーとケースのシャーシが接触しそうになったほか、CPUクーラー上部が側版にほぼ接触しているなど、ギリギリな部分もあった。

 そこで、未決であった編集部よりのプラスα要素はPCケースとすることにした。流用要素は光学ドライブにSATAケーブルともはや新造ではないか……というレベルの改造になるが、“新しい酒には新しい革袋に盛れ”の言葉通り、新しいコンセプトのPCに生まれ変わるにはそれなりの外見も必要なのだ。

 秋葉原で買い物の中のOさんは、PCケースや車のインパネを模したファンコン等、ビジュアル要素を決定付けるパーツに注目していた。いかにも“ゲーミングPCっぽい”ものより、シンプルだがシャープなルックスのものに心惹かれていること、特にアルミや強化ガラス等の質感に憧れていることも観察できたので、編集部のプラスα要素はファンコンにする手もあるにはあった。

 しかし、車のメーターぽいファンコンは一見派手で写真映えするものの、今どきのマザーでは正直言って使いどころがない。特に今回使用するASUS製のマザーには、UEFI BIOS上の機能だけでも下手なファンコン以上のキメ細かい回転数調整が可能。予算を突っ込むだけ無駄なのだ。

 ということで、編集部のプラスα要素はIn-Win製のPCケース「IW-CF01PLUS-BLA」とすることに決定。ただこの決定が後に筆者への致命打になることに気付いていなかったのだ……。

痛恨のミス、ケースの寸法はしっかり確認しよう……

編集部チョイスの「IW-CF01PLUS-BLA」

 「IW-CF01PLUS-BLA」が届き再度組み立てを開始。

 普通のPCケースなら組み換え作業はなんてことないが、新PCケースは光学ドライブが下側後方、上側前方に横向き3連シャドウベイというやや変則的な設計。

 裏配線スペースに適当にケーブルを詰めると、強化ガラス製の側板が透けるため見苦しい上に、側板を力任せに閉じれば側板が割れる事態も想定される。このため電源や配線系を先に手をつけていくことに。

「IW-CF01PLUS-BLA」の側板を解放した状態。ケースの一番下にあるのが光学ドライブ用5インチベイ、3連横向きのシャドウベイは電源とSATAケーブルが組み込まれており、挿すだけで使えるようになっている。ケースファンは付属しないので、筆者の余った12cmファンを前面下に装着しておいた。
裏配線はケーブルが外に極力膨れないようまとめる必要がある。粘着式のケーブルホルダーや結束バンドが大活躍だ。左上から右下へ伸びる銀色のケーブルは光学ドライブ用のSATAケーブルだが、旧PCやマザー付属のものは長さが足りずないため追加購入した(色を統一するため最終的に黒いケーブルに変更して納品している)。
「STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5」は前後も上下も大ぶりなビデオカードだが、難なく格納できた。

 組み換えが終盤に入り完全に勝った気分になっていた筆者だが、ここに来て「CPUクーラーの背が高すぎる」という大ポカをやらかしたことに気がついた。PCケースを選ぶ際にCPUクーラー高さ制限のことをすっかり忘れていたのだ。

 ATXケースで横幅が192mmある普通サイズの製品であると判断したため完全に油断、いや慢心していたためだが、このケースの側板は両方とも強化ガラス製なので、CPUクーラーが使える高さはその分短くなる。

 幸い旧PCで使っていたCPUクーラー(akasa「Venom Pico」)はLGA1150にも対応しているため、これを転用することにした。OCしない前提の構成なので、冷却能力に不安はない。とりあえずOさんが秋葉原で購入したCPUクーラー代は返金することにしよう……。

CPUクーラーの背が高く、このままでは側板が閉まらない。これが発覚した瞬間「あああああ!」と叫び声をあげてしまった。自作PCに慣れているという慢心の恐ろしさを、こんな形で味わうことになろうとは……。
よくよくPCケースの外箱を見れば、CPUクーラーの高さ制限がしっかりと書いてあるではないか! PCケースを買う場合は、こういう表記も見逃してはならないのだ。

どの程度の性能は上がったのか、性能をひと通りテスト

 痛恨のダメージを喰らったが、なんとか新PCが完成したところで、新PCのパフォーマンスはどの程度かをチェックしてみたい。

 旧PCは個人情報の関係でストレージを全部抜いた上で筆者宅へ送られてきたため、筆者側で適当なSSD(インテル「SSDSC2CT120A3K5」)を組み込み、Windows7 Ultimate 64bit版で仮テスト環境を構築した。

 とりあえずOさんの依頼である「RAW現像の高速化」はどの程度かチェックする。普段Oさんがどの程度の編集を行っているか不明なため、12.1メガピクセルのRAW画像100枚(NEFファイル)を、そのまま最高画質のJPEGに書きだす時間を比較する。RAW現像アプリはOさんの環境に合わせ「ViewNX 2」を使用した。

RAWからJPEG形式に書きだす時間を比較。
処理中のCPU負荷をチェックすると、コア全てが6~9割占有されていた。
同じく処理中のCPUクロックを「HWiNFO64」でチェック。クロックは常に変動するが、どのコアも3.7GHzあたりで安定していた。

 「Core i3-3220」から「Core i5-4690」への乗り換えによって、約2割のパフォーマンスアップが得られた。処理中のシステムの挙動をチェックすると、CPUは全コア6~9割占有とかなり高く、逆にストレージへの負荷は非常に小さい。Core i5にすることでL3キャッシュも増えたばかりでなく、Turbo Boostが効いて3.7GHzまでクロックが上がる等の要素が効いたようだ。

 ではゲーム「GTAV」はどの程度快適に動作するのか?

 解像度は1920×1080ドット、MSAAは全て“4X”、影は“ソフト”、その他の画質設定は全て最大、高度なグラフィックス設定は一律オフにした状態で内蔵ベンチマークを回してみた。

 テストは5回実行されるが、画面が見えない(ゲームアプリ内部で計測される)というちょっと変わったもの。そのためどういったシーンで最低fpsが出るか把握が難しいため平均fpsだけを比較する。なおこのテスト以下は旧PCとは比較しない。

GTAVの平均fps。ほぼ平均120fps出せるとみて間違いなさそうだ。
ついでに「バトルフィールド4」のfpsも計測してみた。解像度は1920×1080ドット、画質“最高”、シングルキャンペーン「TASHGAR」開始時のカットシーンにおけるfpsを「Fraps」で測定。かなり重いシーンだがしっかり60fps以上キープできている。

 そして、CPUクーラーを流用したことで冷却力に不足はないかチェックしないわけにはいかない。

 システム起動10分後および「OCCT Perestroika 4.4.1」の“Power Supply Test”を実行し、10分後の温度を「HWiNFO64」で計測する。CPUの温度はコアではなくパッケージ温度をチェックした。

 OCCTのようなテストでは、最近のGeForceは全力を出さない(負荷が高すぎると焼損を防ぐために性能が下がる)ため目安でしかないが、特に過熱する気配もない。消費電力はアイドル時36W、OCCT時最大244W~安定225W。最大負荷でも550W電源の変換効率の美味しい所を使えているようだ。

アイドル時および高負荷時のCPUおよびGPU温度。OCしていないので小さめのCPUクーラーでも十分冷えているようだ。アイドル時のGPU温度が高めなのは低負荷時はファンが止まるため。

納品の儀!性能を確認してもらう

 一通りのテストを終えたら新PCの納品の儀だ。

 パーツを全部組み込んだPCは重いだけでなく、強化ガラス保護のため大掛かりな段ボールに入れることになったため、筆者宅から出すだけでも重労働だったが、なんとかOさんの元に届けることができた。

 編集部のご好意で車を出して頂いたのでトラブルなく到着したが、いくら強化ガラスとはいえこれを宅配便で送るのはさすがに恐い……。

 あとは内部の解説をしつつ設置とデモンストレーションをするだけ。見た目がカッコ良いだけでなく、内部構造が独特なので解説しがいのあるPCだ。「ほー」「へー」を連発するOさんだったがとりあえずRAW現像やGTAVのプレーを体感してもらい、パワーの差を聞いてみたが、概ね満足のようだ。

デン!とOさん宅の玄関に届けられた新PC。廊下の幅ほぼ一杯なため、設置場所までそのまま運ぶことは断念
仕方なく玄関で開梱してお披露目。Oさんの好みにドンピシャだったようだ。
アップグレードが完了したPCを設置。
最後に筆者の大ポカを報告し、CPUクーラー代を返金。CPUクーラーは筆者が自腹で引き取り、現在は仕事場に慢心のシンボルとして飾っている。

[加藤]RAW現像の速さは体感できました?

[Oさん]沢山の写真の中からこれぞという写真を数枚ピックアップして現像する程度なので、書き出し処理の速さはなんとなく……程度しか分かりませんが、サムネール表示が速くなった感じがします。以前は処理の開始・終了時やアプリの切り替え時等にちょっと固まる感じでしたが、新PCではそれがないのもいいですね。

[加藤]ゲームはどうです?

[Oさん]旧PCでゲームは全くできなかったので比較のしようもないですが(笑)、とにかく絵がキレイですね!

8万円で何とかできる?RAW現像+重量級ゲームがこなせるPCへのアップグレード

 今回のPC改造計画は最終的にPCケースまで流用してしまったため、旧PCから継承されたのはCPUクーラーと光学ドライブ、SATAケーブルにOSのライセンス、というかなり強引なリフォームになってしまった。

 「依頼者の予算(8万円)だけでRAW現像の高速化と今どきのゲーム向けに改造するにはどうすればよかったのか」も考察すべきだろう。ゲームしか眼中にないなら、安価なGeForce GTX 970搭載カードと、残った予算で買える最大容量のSSDを選ぶのが一番簡単だがCPUがCore i3のままなのでRAW現像の高速化は期待できない。

 となれば安めのCore i5にH81マザーの購入となるが「Core i3-3220」の動作クロックはTurbo Boost無しの3.2GHzなことを考えるとTurbo Boostで4コア使用時のクロックが3.2GHz以上のものを選ばなくてはならない。つまり「Core i5-4460(4コア時3.2GHz)」以下では無意味(実際にはCPUの世代が新しい、L3キャッシュが多いといった要素があるので若干速度は改善するだろうが……)、動作クロックで1割以上は上回りたいと考えれば、「Core i5-4590(4コア時3.5GHz)」にすべきだろう。

 シングルチャネルメモリは性能のボトルネックになる危険性を排除したいため買い直し、SSDも容量不足なので買い直し。この2点については先のオリジナルプランと共通にする。それ以外のパーツは基本流用すると、だいたい3万円弱のビデオカード予算が確保できる。

 ここから選び出せる選択肢はGeForce GTX 750Ti搭載の「GTX750TI-PH-2GD5」か、GTX 960搭載の「STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5」となるが、OさんはSTRIXのファンが好みのようなので後者が選ばれる。ほぼ予算ギリギリを使ってなんとかパワーアップも可能なのだ……ただしGTX 960は今どきの重量級ゲームを高画質で楽しむにはやや不安がある。

 やや情けないトラブルもあったが、これにて第1回目のPC改造計画は終了だ。自分のPCの性能に不満を持っているが、どうすれば良いか分からない、あるいは、ある程度の方針は決まっていても自作から遠ざかっているのでヘルプが欲しい、といった人の応募を編集部は待っている。どしどし応募して欲しい。

【あなたのPCも“大改造”してみませんか?】

 当企画では、アップグレード対象となるPCを随時募集しています。読者の皆さんが用意した予算と、ASUSからの提供パーツ(数万円相当)を組み合わせ、プロのライターが最適なアップグレードを検討、組み込み作業まで行います。

 募集要項と応募フォームへのリンクは、以下のページにありますので、内容をご確認の上、奮ってご応募下さい。

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(加藤 勝明)