ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

懐かしのモデム内蔵パソコン「三菱電機 ML-TS2」「NEC PC-8801mkIITR」

今回は、パソコンにモデムが内蔵されたモデルと、当時話題に上ることが多かったモデム4機種を取り上げました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は少し趣向を変え、当時の周辺機器を取り上げる番外編として、この連載記事を読んでいる人なら一度はお世話になったことがあると思われる通信機器を取り上げていきます。

 1985年に、いわゆる通信の自由化が行われると、それまではニッチだったパソコン通信というジャンルに日が当たり、徐々に盛り上がっていきます。それを受けて、いくつかのメーカーが周辺機器としてモデムを発売したり、なかにはパソコンと受話器やモデムを一体化させたモデルを登場させます。今回は、そんなハードたちを紹介していきます(計5回)。

三菱電機 ML-TS2

これは受話器の付属しないモデルですが、ML-TS2H型番にはプッシュボタン付きのハンドセットが付属します。

 統一規格のため、各社が特色を出すべく創意工夫を凝らしていたMSXパソコンですが、通信という方向に活路を見いだしたのが三菱電機とソニー、そしてパナソニックでした。

 その三菱電機が1987年に発売したのが、モデム内蔵MSX2パソコンのML-TS2と、ハンドセットが付いたML-TS2Hです。どちらも性能は同じで、ハンドセットが付いたML-TS2Hなら回線が1本だったとしても(一般的な家庭は1電話番号1回線契約)、家庭電話を占有せずに使えるというメリットがありました。もちろん、使用中に外部から電話がかかってくれば通話中になります。

背面右側に、“回線”と“電話線”と書かれたコネクタが用意されています。ここに、それぞれのコードを挿し込みます。
電源オンで自動起動する通信ソフトは、当時としてはオーソドックスなものでした。

 内蔵されていたのは300/1200bpsの切り替えが可能な全二重モデムで、本体の電源をオンにすると自動的に通信ソフトが起動するようになっていました。MSX-JEにも対応していて、オンライン時にSHIFT+SELECTキーを押すことで画面下1行分が変換エリアになり、そこで入力が行えます。電話帳などで使用する場合は、区点コード入力を使えば単漢字変換が可能でした。さらには、JIS第一水準だけでなく第二水準の漢字ROM、そして通信ソフトのデータ記録用として8kbytesのバッテリバックアップRAMも搭載していたのが特徴と言えるでしょう。

広告では、ホームトレードも可能ということも謳われていました。両親を説得するには、これ以上ないトピックスだったかもしれません。

 MSXパソコンとしては標準的なスペックで、RAMは64kbytes、VRAM128Kbytesを搭載しています。スロットは1つですが、付属するダブルスロットアダプタを挿せば2スロットになるので、FDDインタフェースとMSX-Writeの両挿しで使うといったことも可能でした。価格は、ML-TS2Hが75,000円でML-TS2が65,000円、ハンドセットが10,000円です。

NEC PC-8801mkIITR

 パソコン通信をターゲットとしていた機種としてNECからは、PC-8801mkIITRが288,000円で1985年9月に発売されていました。

 基本的なスペックは同年1月に登場したPC-8801mkIISRと同じで、多機能モデム電話とパソコン通信用高機能ソフトを標準添付したのが主な違いです。ただし、注意書きに“設置に際して取り付け工事およびモデムの調整が必要です。工事、調整のお申し込みは、お買い上げの販売店またはNEC商品サービス(株)にご依頼ください。プッシュ回線では使用できませんのでご注意ください”とありました。

 価格的にはPC-8801mkIISR model30に3万円程度の上乗せで買え、PC-8801mkIISR専用のソフトも使えたのですが、上記のような購入後手続きの煩雑さを嫌ってか、市場にはほとんど出回らなかったようです。なお、通信速度は300bpsで全二重となっていました。