ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
省電力化も実現、NECが放った小型PC-98「PC-9801UV11」
2025年8月12日 09:08
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、それまでの3.5インチFDD搭載モデルでも大きかった筐体を、更に半分近くまでダウンサイジングしての新発売となった、PC-9801UV11を取り上げます。
デスクトップパソコンとしてデビューしたPC-98シリーズは、元々のメイン基板が大きかったことや5インチFDDを内蔵したり拡張スロットを多数設けるなどの都合から、その筐体容積はなかなか大きなものとなっていました。しかし、3.5インチFDDを搭載したPC-9801Uが登場すると、その容積もやや減少へと向かいます。とはいえ、メイン基板のダウンサイジングには限界もあったため、その後に発売されたPC-9801UV2やPC-9801UV21でも、それ以上はコンパクトになりませんでした。
そんな折、NECは画面制御用のLSIを3個にまとめた新開発のカスタムVLSIを開発・採用します。これにより従来機種との互換性を保ちながらも、PC-98を無理なく小型軽量化ができるようになりました。そして、このカスタムVLSIを使用して作られた新機種が、1988年2月23日と3月9日の両日に発表が行われたPC-9801LV21とPC-9801CV21、そして今回取り上げたPC-9801UV11です。価格は、FDD2基を搭載しメモリ640KBを内蔵して、265,000円となっていました。使われているCPUはV30(10/8MHz)で、メモリアクセスはノーウェイト化されています。
本機は、UV21の後に発売されたPC-9801UX21の後継機種ではなく、UV21の省スペースモデルという位置づけでした。そのUV21は318,000円で発売されていたので、UV11の登場によりかなりお買い得になった計算です。なお、実際に市場へと出荷されたのは3月下旬からでした。
最大の特徴は、なんといってもその大きさではないでしょうか。本体サイズは横幅が305mm×縦(奥行)240mm×高さ87mmとなっていて、横置きした場合のフットプリントはなんと、A4ファイルサイズ(220mm×310mm)とほぼ近くなっていました。重量も、前機種のPC-9801UV21が7.8kgだったのに対して、本機は5.1kgと約65%に、しかも消費電力もUV21の100Wに対してわずか27Wと圧倒的に省エネになるなど、コンパクトなだけでなく電気代にも優しいハードとして完成しています。それでいて背面には拡張スロットを2基備えているので、拡張性にも余念が無い設計となっていました。PC-9801Uシリーズに搭載されてきた、いわゆる26k音源に関しても、PC-9801UV11は標準装備しています。
重量と大きさを考えると、同時にデビューしたPC-9801LV21の5.8kgよりもコンパクトだったわけで、例えば会社と自宅でそれぞれモニタを確保しているのであれば、PC-9801LV21を持ち歩くよりも軽いという利点がありました。もっとも、当時のモニタは14インチでも9万円ほどしていたので、それを2台揃えるというのはなかなか贅沢な環境であったわけですが……。
この時期の広告を見ると、PC-98シリーズはまだまだビジネスメインのパソコンとして売り出している感じがしていますが、この頃はPC-88シリーズはPC-8801FEやPC-8801MA、そしてPC-8801VA2/3などが発売されていて、ゲームもそろそろ98で、という雰囲気も出てきた頃でした。ただ、世の中としてはまだまだ5インチディスクの方が勢いが強く、生ディスクも5インチより3.5インチのほうがやや割高でした。
ちなみに、本機が発売された時期のゲームソフト売上ランキングに並んでいたタイトルは、PC-88シリーズが『ソーサリアン』『ハイドライド3』『ゼリアード』などで、PC-98シリーズが『ティル・ナ・ノーグ』『太平洋の嵐』『ファンタジーナイト』『大戦略II』といった面々でした。徐々に、PC-88向けのタイトルが少し待てばPC-98でも発売されるようになっていったほか、PC-98のパワフルさを活かしたシミュレーションゲームなども売上を伸ばしていき、少しずつPC-88シリーズがフェードアウトしていくタイミングに差し掛かっていた頃だったと言えるかもしれません。