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MSIがCESで多数の新製品を発表、300Hz液晶のゲーミングノートやモバイルサイズのゲーミングモニターなど多数

CES 2020 MSI記者発表会レポート text by 石井英男

MSIの記者発表会は、ラスベガスのベネチアンホテルの一室でおこなわれ、CES会期中は製品展示会場としても利用されていた。

 MSIは、1月6日(北米太平洋時間)に米国ラスベガスで記者発表会を開催した。

 この発表会は、1月7日~10日に開催されたCES 2020にあわせて行われたもので、CES 2020の会期中も、この発表会で発表された新製品を含む、さまざまな製品が展示されていた。各ジャンルごとの注目製品については、別途記事化する予定なので、そちらを見ていただきたいが、まずは発表会全体のレポートからお届けしよう。

AIの活用でデバイスをより便利に、ゲーム向けユーティリティ「Dragon Center」も強化

 発表会ではまず、MSI CEOのCharles Chiang氏が登場し、MSIは特にゲーマーとクリエイター向けの製品に力を入れていくと挨拶した。

MSI CEOのCharles Chiang氏が登場し、開会の挨拶をおこなった。
MSI Product Management DirectorのClifford Chun氏のAIの活用に関しての紹介から発表会はスタート。

 具体的な新製品や新技術の紹介に関しては、ここ数年同社が注力しているというAIに関する話から行われ、Product Management DirectorのClifford Chun氏が解説を担当した。

 「AIはMSIにとっての未来」とのことで、SyntiantのAIチップ「NDP 100」を活用し、音声コントロールによるデバイス制御を実現するほか、ゲームのハイライトシーンの自動録画なども可能になるという。また、「CROSSOVER」と名付けられたゲームを一緒にプレイし、シェアする技術により、複数ディスプレイを用いて、ゲームのコーチングなどが可能になる例が紹介された。

2019年にSyntiantのチップによる音声コントロールを実現し、第3四半期に向けて、ディスプレイ用のAIアプリを開発している。
SyntiantのAIチップ「NDP 100」を利用し、RGBの音声コントロールやカスタムコマンドを実現している。
性能のブーストやゲームのハイライトシーンの自動録画など、AIはゲーマーやクリエイターに最高の体験をもたらすという。
CROSSOVERは、ゲームを一緒にプレイし、シェアする技術。
ゲームコーチモードでは、3画面を利用できる。1つのサブ画面でマップなどの追加情報を表示し、もう1つのサブ画面をコーチが見てアドバイスをおこなう。

 これに続き、MSIのゲーミングモデル向けのユーティリティ「Dragon Center」の新機能も紹介。

 「Dragon Center」からはオーバークロックをはじめさまざまな制御をおこなうことができるが、2020年版の新たな機能として、FPSゲームの照準の形を見やすい形や色に変更できる「Crosshair Display」、ゲームのハイライトシーンを自動録画する「Game Highlights」をはじめ、「Gaming Mode 2.0」や「MSI Companion」などが新機能として追加されることが紹介された。

「Dragon Center」の2020年の新機能は「Game Highlights」「Gaming Mode 2.0」「MSI Companion」「Crosshair Display」の4つ。
機能の一つ「Crosshair Display」は、FPSゲームの照準の形を見やすい形や色に変更できる。

 MSIはゲーミングだけで無くクリエイター向けのデバイスのにも力をいれているが、クリエイター向けのデバイスにはユーティリティの「Creator Center」が提供されている。

 Creator Centerは、白を基調とした見やすいUIを採用しており、クリエイターの作業効率を高めるための機能を搭載。アプリケーションごとに割り当てるCPUスレッド数を設定できる機能や、一番上に持ってきたウィンドウのパフォーマンスを最大化する機能などがあり、クリエイターの快適な作業環境を提供できる点アピールされた。

クリエイターモデル向けのユーティリティ「Creator Center」。
アプリケーションごとに割り当てるCPUスレッド数を任意に設定することも可能。
一番上に持ってきたウィンドウのパフォーマンスを最大化するなど、性能の最適化を自動的に行ってくれる。

リフレッシュレート300Hz対応のゲーミングノートを発表「GE66 Raider」と「GS66 Stealth」が2020年後半に登場予定

 ハードウェアの新製品でまず紹介されたのが、ノートPCで世界初となるリフレッシュレート300Hz対応液晶を搭載した「GE66 Raider」。

300Hz表示対応のゲーミングノートPC「GE66 Raider」。
リフレッシュレート300Hz対応は、ノートPCとしては世界最速。

 リフレッシュレートが高いほど、FPSのように素早い動きで狙いをつけるゲームなどでは有利とされ、これまでのゲーミングノートPCは最高240Hz対応までだったが、より高いリフレッシュレートを求めるプロゲーマーの要望に応える製品として投入される。液晶の解像度は1,920×1,080ドットで、サイズは15.6インチ。

 99.9Whという業界最大クラスの容量を誇る大型バッテリーを搭載していることも特徴で、最大10時間を超える長時間駆動が可能。CPUとして第10世代Coreプロセッサ(末尾H)、GPUとしてNVIDIAの最新のGeForceシリーズを搭載するとされていたが、細かなスペックは未公表だった。筐体の手前側にはカスタマイズ可能なフルカラーLED「Panoramic Aurora Lighting」が搭載されており、派手さの面でも強化されている。

なめらかかつ猛烈に高速な表示を実現するとのことで、高精度な照準合わせが可能になるという。
バッテリー容量は99.9Whで、こちらも最大レベルだ。バッテリー駆動時間は最大10時間超。
本体前面にイルミネーションLED「Panoramic Aurora Lighting」を搭載。

 また、「GE66 Raider」は、「Iron Man」や「Rogue One:A Star Wars Story」などのコンセプトアートやモデリングを担当したアーティストのColie Wertz氏とコラボした限定モデル「GE66 Raider Limited Edition」も用意される。Limited Editionは、オレンジとグレーを基調としたカラーのモデルで、天板だけでなく、キーボード面やパームレスト面もデザインが施されている。

「Iron Man」や「Rogue One:A Star Wars Story」などのコンセプトアートやモデリングを担当したアーティストのColie Wertz氏とコラボした限定モデルも用意される。
Clifford氏が掲げているのが、Colie Wertz氏デザインの「GE66 Raider Limited Edition」。
オレンジとグレーを基調としたカラーで、天板だけでなく、キーボード面やパームレスト面もデザインが施されている。

 リフレッシュレート300Hz対応のモデルとしては、薄型ゲーミングノートPCの「GS66 Stealth」も紹介された。

 GE66 RaiderとGS66 Stealthは兄弟機の関係にあり、基本スペックはよく似ている。GS66 Stealthは、薄型軽量化を重視したモデルであり、厚さは19.8mm、重量は約2.09kgとゲーミングノートPCとしては最薄/最軽量クラスの製品となっている。なお、GS66 Stealthについては別記事で詳しく紹介するので、そちらも合わせて見ていただきたい。

300Hz表示対応のもう一つのモデルが薄型ゲーミングノートPCの「GS66 Stealth」。
GS66 Stealthは、冷却ファンにレーザーで削った0.1mm厚羽根を採用。羽根の枚数は67枚で、エアフローを10%向上させたという。
また、2サイドのパッシブラジエーターを搭載。低音が15%向上し、高音は26%向上、平均的な音圧は10dB向上した。

 ゲーミングノートPCの2モデルに関しては、2020年後半に発売が予定されており、現時点では価格は未定とのことだ。

ステータスやメニューを表示できる有機ELパネルを搭載、最新ゲーミングデスクトップPC「Aegis Ti5」

 続いて、ゲーミングデスクトップPCの新製品「Aegis Ti5」が発表された。

 Aegis Ti5は、前面上部に大型ダイヤルを搭載していることが特徴。ダイヤルの中央には有機ELパネルが用意されており、CPUクロック周波数や温度などのハードウェア情報が表示され、ダイヤルを回すことで、その表示項目の選択が可能だ。

「Aegis Ti5」は、世界初のヒューマンインターフェースを重視したゲーミングデスクトップPC。
前面上部のダイヤルに、CPUクロック周波数や温度などのハードウェア情報が表示される。ダイヤルを回したり押し込むことで、機能の選択が可能。
冷却機構は、発熱の大きなVRM、GPU、CPU、PSUのそれぞれに独立したチャンバーが用意されている。

 冷却はエリア毎にセパレートされた構造になっており、発熱の大きなVRM、GPU、CPU、PSUのそれぞれに独立したチャンバーを用意し、効率よく冷却が可能。詳細なスペックや価格については現時点では公開されていないが、CPUは最新世代のCore i9を搭載し、ビデオカードにGeForce RTX 2080 Tiを搭載するとされている。

ゲーミングモニターは新たに3製品が登場予定、ウルトラワイドのほか、カーブが大きくなった湾曲モデルやモバイルモデルも

 ゲーミングモニターは3モデルが新たに発表された。

 38インチの湾曲ゲーミングモニター「Optix MEG381CQR」は、ベゼル左下に手で回せるダイヤルと小さい有機ELパネルがあり、有機ELパネルにさまざまな情報を表示できることが特徴だ。解像度は3,840×1,600ドットで、アスペクト比は21:9。VESA HDR 600対応で、リフレッシュレートは144Hzまで対応する。曲率半径は2,300mm。

世界初のヒューマンインターフェース重視の湾曲ゲーミング液晶ディスプレイ「Optix MEG381CQR」。左下に指で回せるダイヤルが用意されていることが特徴
ダイヤルを回すことで、リアルタイムに右のディスプレイに表示されている内容を変えることができる

 31.5インチの湾曲ゲーミンモニター「Optix MAG342CQR」は、世界初の曲率半径1,000mmを実現した。曲率半径が小さいほど、湾曲が強く、複数台並べたときの占有スペースが狭くてすみ、没入感も向上する。解像度は3,440×1,440ドットで、アスペクト比は21:9、対応リフレッシュレートは144Hz。

 「Optix MAG161」は、MSI初のポータブルゲーミングモニターで、ポータブルモデルながら240Hzという高いリフレッシュレートに対応することが特徴。USB Type-Cケーブル1本で接続でき、携帯性も高い。Optix MAG161についても、別途記事で詳しく紹介する。

世界初の1000Rの湾曲ゲーミング液晶ディスプレイ「Optix MAG342CQR」。半径1,000mmと、曲率が大きく、複数台並べたときの占有スペースが狭くてすむ。
MSI初のポータブルゲーミングディスプレイ「Optix MAG161」。ポータブルディスプレイながら240Hzという高いリフレッシュレートに対応することが特徴。
Clifford氏が手にしているのが、Optix MAG161。

クリエイター向け製品も多数投入、新デザインのビデオカードや静音仕様キーボード/マウスなど

 MSIは、最近クリエイター向けノートPCなどに力を入れているが、今後はノートPCだけでなく、クリエイター向けのビデオカードやキーボード、マウスなども積極的に投入していくことが発表された。

 クリエイター向けキーボード「CK40」は、静音性を重視した薄型ワイヤレスキーボードであり、WindowsとMacだけでなく、iPadやiPhoneにも対応していることが魅力だ。クリエイター向けマウス「CM30」も静音性にこだわった製品で、Bluetooth 4.2と独自無線に対応している。CM30については、別途記事で詳しく紹介する。

クリエイター向けワイヤレスイヤフォン「CH40」は、Bluetooh 5.0対応で、重量が5g未満と軽く、充電式バッテリーで24時間の連続利用が可能だ。

GeForce RTX搭載のクリエイター向けビデオカードも新たに投入予定。
クリエイター向けキーボード「CK40」は、静音性が高く、iPadやiPhoneでも利用できる。
クリエイター向けをうたうワイヤレスイヤフォン「CH40」。Bluetooth 5.0対応で、重量は5g未満と軽く、24時間の連続利用が可能
こちらはクリエイター向けマウス「CM30」
静音性にこだわり、静音性の高いスイッチを採用。また汚れがつきにくいコーティングが施されている。
接続方式は、Bluetooth 4.2と2.4GHz帯を利用した独自形式の無線に対応する。

ゲーム制作スタジオとも連携、イルミネーション機能をゲームに連動

 Clifford氏からは、新製品のほかに、ゲーム制作スタジオとの協力関係なども紹介された。

 「Assassin's Creed Odyssey」や「Tom Clancy's: The Division 2」、「Ghost Recon」などがMSIのLEDイルミネーション機能「Mystic Light」に対応。ゲームのシーンに応じて発光色やパターンを変えることができる。

 「Ghost Recon」は、MSIの音声コントロール機能やオーバレイ表示機能にも対応しており、音声コントロールによって、ゲームのコマンドを入力したり、小隊全体に指示を与えたりすることができる。

「Mystic Light」の進化。「Assasin's Creed Odyssey」や「Tom Clancy's: The Division 2」といった有名ゲームとの連携を実現。
「Ghost Recon」ではイルミネーションの連動のほかに、MSIの混成コントロールにも対応。音声で自分の小隊全体に指示を与えることや、一人一人個別に指示を与えることができる。
マップを開くなど、ゲームのコマンドも音声入力可能。
ゲーミング液晶ディスプレイやヘッドホンなどMSIのさまざまなゲーミング製品のライトを一括制御でき、サードパーティ製のライティング製品(壁に貼ってあるライト)も制御できる
壁面のライティング制御なども統合することで、ゲームにより没入でき、真のゲーミング環境を実現できる

 また、「Mystic Light」はサードパーティから販売されている照明機器と連携させることも可能で、壁に貼り付けるタイプのLED照明をMystic Lightで制御するデモも行われた。

Androidのエミュレーターの機能強化や、eSportsコミュニティへの出資も

 発表会の終わりには再びCEOのCharles Chiang氏が登場し、ゲストを紹介した。

 最初に紹介されたのが、BlueStacks CEOのRosen Sharma氏。BlueStacksは、MSIのゲーミングノートPCなどで利用できる「MSI App Player」の開発をおこなっているベンダー。MSI App Playerは、Androidスマホ用アプリをPCで動かすためのソフトであり、MSIとの協業によって、独自機能を実現していると、Rosen氏は説明した。

 Rosen氏によると、2017年には性能と互換性を向上させ、2018年にはイルミネーション機能との連動や240Hz表示への対応を実現した。さらに、2019年にはマルチインスタンス(複数同時起動)に対応し、現在は1台のPCで、最大12個のAndroidゲームを同時に起動することが可能になったという。

BlueStacks CEOのRosen Sharma氏
BlueStacksは、MSIのゲーミングノートPCなどで利用できる「MSI App Player」の開発をおこなっている。MSI App Playerは、Androidスマホ用アプリをPCで動かすためのソフトだ
MSIとBlueStacksによる協業で実現した独自機能。2017年には性能と互換性を向上させ、2018年にはMystic Lightのサポートと240Hzへの対応を実現
2019年にはマルチインスタンス(複数同時起動)に対応
2020年には1クリックでのセットアップと最大12個までのマルチインスタンス動作に対応
このようにAndroidゲームを12個同時に起動できる

 MSIはeSportsコミュニティの繁栄にも注力しており、その一つとして、世界最大のeSportsリーグ大会を運営するESLとオフィシャルゲーミングパートナーの契約を結び、大会で使うPCを提供している点をアピール。

 また、2015年のDJランキングで世界1位となった人気DJ、Dimitri VegasとLike MikeによるeSportsチーム「SMASH Esports」ともパートナー契約を結んだという。SMASHのチームマネージャのBob Tielemans氏がゲストとして登場し、MSIとのパートナーシップにより、チーム力が強化されたと感謝の意を表した。

 最後に、モーションデザイナーのためのイベント「Motion Plus Design」の主催者 Kook Ewo氏が登場し、MSIはクリエイターコミュニティにも注力しているとアピールした。

MSIはeスポーツコミュニティの繁栄にも力を入れている。その一つとして、ESLとオフィシャルゲーミングパートナーの契約を結んだ
2015年のDJランキングで世界1位となったDimitri VegasとLike Mikeによるeスポーツチーム「SMASH Esports」
SMASHのチームマネージャBob Tielemans氏
Motion Plus Designの主催者Kook Ewo氏
Motion Plus Designは、モーションデザイナーのためのイベントであり、東京、パリ、ロサンゼルスなどで開催されている

会場には多数の最新製品を展示、技術デモも紹介

 最後に、発表会場で展示されていた製品や新技術を紹介しよう。特に注目すべき製品については、別途記事で紹介する。

300Hz表示対応のゲーミングノートPC「GE66 Raider」。前面に、フルカラーで光る「Panoramic Aurora Lighting」が搭載されている
GE66 RaiderのPanoramic Aurora Lightingはオーロラのように美しく光る
「Iron Man」や「Rogue One:A Star Wars Story」などに携わったアーティストのColie Wertz氏とコラボしたGE66 Raider Edition
GE66 Raider Limited Editionは、天板だけでなく、キーボード部分やパームレスト部分にもデザインが施されている
ゲーミングデスクトップPC「Aegis Ti5」。前面上部に大型ダイヤルを搭載していることが特徴
大型ダイヤルには有機ELパネルが搭載されており、さまざまな情報が表示される。ダイヤルを回したり、押し込んだりすることで、表示内容を変更できる
クリエイター向けノートPC「Creator 17」。世界で初めてMiniLEDバックライトを搭載し、240分割のローカルディミングによる鮮やかな表示を実現
世界初の曲率半径1000mmを実現した湾曲ゲーミング液晶ディスプレイ「Optix MAG342CQR」。複数台設置にも向いている
湾曲ゲーミング液晶ディスプレイ「Optix MEG381CQR」。右下に手で回せるダイヤルと有機ELパネルを装備していることが特徴
ダイヤルを回して各種の設定がおこなえる。有機ELパネルにはさまざまな情報が表示される
複数画面でゲームをシェアする「CROSSOVER」のデモ
Mystic Lightで、壁に貼られたLEDパネルも一緒に制御するデモ
ゲームでプレイヤーがダメージを受けると、壁のLEDパネルが赤くなり、警告する
Android用ゲームをプレイできる「MSI App Player」のデモ。最新バージョンでは最大12個の同時起動が可能になった
MSI App Playerを12個同時起動して、ゲームをプレイしている様子

[制作協力:MSI]