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最新HDDはどれだけ進化したのか、2011年の大人気モデルといろいろ比べてみた

現在のSMR採用ディスクは大きく進化、OS用にも使用可能に text by 坂本はじめ

2TBプラッタ採用の最新型HDD「Seagate ST4000DM004」

 HDDは安価に大容量を実現するストレージデバイスであり、PC用ストレージとしてはSSDと双璧を為す存在だ。

 登場以来、凄まじいスピードで性能が向上しているSSDに比べると、HDDの進化は停滞しているように見えるかもしれないが、実際には性能も容量も着実に強化されている。

 今回は、最新HDDがどれだけ進化しているのか、Seagateの3.5インチHDD「BarraCudaシリーズ」の4TBモデル「ST4000DM004」を例に紹介しよう。

 速度はもちろん、ゲームでの使い勝手、動作温度、動作音、外付けHDDで使用した際の挙動など、様々な面を旧型HDDと比較してみたので、是非参考にしてもらいたい。

【記事目次】

~ スペック/ベンチマーク比較 ~(1ページ)
・SMR技術でプラッタ容量は2TBに、8TBモデルも身近になった最新世代のHDD
・進化ポイントは“速度向上 + 低消費電力化”、新旧型HDDをスペックから比較
・CrystalDiskMarkで新旧HDDを比較、2割前後新型HDDが高速に
・プラッタの外周と内周の速度を「HD Tune」で計測、リードは全域にわたって新型が高速
~ 実転送速度/ゲームで比較 ~(2ページ)
・動画の転送も速い新型HDD、旧型と比較して約30%高速
・趣味に使うデータ置き場を高速化するなら新型HDD、ゲームデータの転送も有利
・新型HDDはゲームのロード時間も短縮、10~20%前後の性能アップ
・SMRのHDDは動画録画に使っても大丈夫?ゲームをキャプチャしてみた
~ 動作温度や動作音を比較 ~(3ページ)
・システムディスクとしても利用可能になったSMR採用HDD、一般的なHDDと遜色無し
・アプリケーションの起動も高速に、Photoshopでの差は大きめ
・発熱の少ない最新HDD、負荷を掛けても温度上昇は意外な低さに
・低回転HDDはやはり低騒音、静音HDDを狙うなら低回転でプラッタ枚数が少ないモデルを
・1プラッタ少ないだけでかなり軽量に、運ぶ際に地味に効いてくる重さの差
・SMRのHDDは外付けケースに入れても安全に使える?速度を温度をチェック


SMR技術でプラッタ容量は2TBに、8TBモデルも身近になった最新世代のHDD

 今回のテストでメインに使用するのは、SeagateのBarraCudaシリーズの4TBモデル「ST4000DM004」。インターフェイスに6Gbps SATAを採用する3.5インチHDDで、回転数は5,400rpm、厚さ約20.2mmの薄型筐体を採用している。

Seagate ST4000DM004。デスクトップ向けHDD「BarraCuda」の4TBモデル。
本体裏面。インターフェイスは6Gbps SATA。
厚さ約20.2mmの薄型筐体を採用。
BarraCudaのラベル。現行モデルは色とロゴでラインナップがわかりやすくなっている。

 BarraCudaシリーズの最新モデルでは、トラックを瓦状に重ね書きすることで高密度記録を実現する大容量化技術「SMR (Shingled Magnetic Recording)」を用いた2TBプラッタを採用している。

 SMRを採用したHDDが自作PC市場に登場したのは2014年末で、Seagate Archive HDDシリーズが最初の製品。SMRの恩恵によって容量単価は非常に安価であった一方、SMR特有の記録方式の関係で、書き換えが頻繁に発生するシステムディスクなどには適さない、データ保管に特化した仕様のHDDだった。

 現行のBarraCudaに採用されたSMR技術は、Archive HDDのものから数世代の改良を重ね、システムディスクでの利用にも耐えられるレベルにまで進化したものだ。これにより、ユーザーはSMR技術採用HDDであることを気にすることなく、スタンダードなHDDとして広範な用途に利用できる。

SMR技術を採用する最新のBarraCudaシリーズ。2~8TBまでの容量をラインナップしている。

 SMR技術を採用する製品は、通常のHDDよりも容量の大きいプラッタを採用できることもあり、店頭価格は4TBで8千円前後、6TBで1万2千円前後、8TBでも1万8千円前後と、大容量のモデルでも手が出しやすい。


進化ポイントは“速度向上 + 低消費電力化”、新旧型HDDをスペックから比較

 最新HDDは進化したとは言われても、SMR技術を採用したHDDであると聞けば、そのパフォーマンスが気になるところだろう。そこで、ディスクベンチマークをはじめとする様々なテストでST4000DM004の実力をチェックする。

 比較対象には、2011年に人気の高かったSeagate Barracuda Greenシリーズの2TBモデル「ST2000DL003」を用意した。当時は2TB HDDが使い勝手の面や価格面で優れており、主流モデルとしてST2000DL003も人気を集めた製品だ。現在のST4000DM004に非常に近いポジションだった製品ということで、古いモデルではあるが選択した。

左はST4000DM004、右は比較用のSeagate ST2000DL003。2010年12月に発売されたBarracuda Greenシリーズの2TBモデル。

 検証に入る前にまずはスペックから比較してみるが、速度が大きく向上し、プラッタ容量やキャッシュ容量が増えている事がわかる。新型の方が回転数が低いにもかかわらず高速化されているのは新世代モデルのメリットと言えるだろう。

 また、プラッタ枚数が少ない分、低消費電力となっており、本体の厚みが減っている点も特徴だ。

 ここからは実際に動作させた際の比較に入るが、テスト機材にはCore i7-8700Kを搭載したIntel Z370環境を用意した。その他の機材やテスト条件については以下の通り。


CrystalDiskMarkで新旧HDDを比較、2割前後新型HDDが高速に

 まずは定番ディスクベンチマークの「CrystalDiksMark 6.0.1」を使って、各HDDのパフォーマンスを測定してみた。

 ST4000DM004のシーケンシャルアクセス性能は、テストファイルサイズ1GiBではリード174MB/s、ライト160.6MB/sで、どちらも142MB/sだったST2000DL003をリードで30MB/s、ライトで18MB/sほど上回った。

テストファイルサイズ 1GiB
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア

 テストファイルのサイズが速度に影響することもあるので、テストファイルサイズを32GiB設定して比較してみたが、ST4000DM004のライトが169.5MB/sに向上し、ST2000DL003との差を約30MB/sに広げる結果となった。

 カタログスペック通りの性能差とはいかなかったが、新型のHDDは順当に高速化されていることがわかる。

テストファイルサイズ 32GiB
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア


プラッタの外周と内周の速度を「HD Tune」で計測、リードは全域にわたって新型が高速

 続いて確認するのはディスクベンチマーク「HD Tune Pro 5.70」の結果だ。HD Tuneはプラッタの外周と内周の速度や、転送レートの推移などを見ることができる。

 まず実行したのは、ベンチマークのリードテストだ。ここでは、ブロックサイズを「8MB」と「64KB」の2通りでテストした。

 ST4000DM004のリード性能は、最外周で180~190MB/s程度、最内周では約70~78MB/s程度となった。比較対象のST2000DL003は最外周で140~150MB/s、最内周で約66MB/s前後なので、全域にわたってST4000DM004がリード性能で勝っている。

 また、ST2000DL003の最内周に相当する2TB地点では130~150MB/sを記録しているので、記録されているデータの容量が同じであれば、ST4000DM004の方がかなり高速にデータを読み出すことが可能だ。

リード性能ベンチマーク (ブロックサイズ 8MB)
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア
リード性能ベンチマーク (ブロックサイズ 64KB)
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア

 ベンチマークのライトテストでも、リードと同じように2通りのブロックサイズでスコアを取得した。

 ST4000DM004の転送レートは、ブロックサイズ8MBでは時折急落し、64KBでは全域で大きくブレてはいるものの、外周は150~170MB/s、内周は70MB/s前後となっている。これは外周で約140MB/s、内周で約65MB/sとなっているST2000DL003よりも高速ではあるが、リード性能に比べややムラのある結果に見える。

ライト性能ベンチマーク (ブロックサイズ 8MB)
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア
ライト性能ベンチマーク (ブロックサイズ 64KB)
ST4000DM004 (4TB/5,400rpm)のスコア
ST2000DL003 (2TB/5,900rpm)のスコア