特集、その他

“暴れ馬”Core i9-11900Kの性能を存分に引き出せるMSI「MEG Z590 ACE」を徹底テスト!

第4のブースト機能“Adaptive Boost Technology”をより深く試してみた!! text by 加藤 勝明

 “Rocket Lake-S”ことIntelの第11世代Coreプロセッサは、Intelが長年改良に改良を重ね使い続けた14nmプロセスの集大成と言うべきCPUだ。最大コア数は先代(Comet Lake-S)の10基から8基に減ったものの、CPUコアのアーキテクチャそのものは10nmのモバイル向け「Sunny Cove」を14nmで作り直した「Cypress Cove」に入れ換えた最新のものに更新。これにより大きくIPC(クロック当たりの命令実行数)の引き上げを実現したCPUである。詳しい解説は三門氏によるレビューを参照していただきたいが、同じ物理8コアのRyzen 7 5800Xに対し、シングルスレッド性能では上回ることに成功している。Rocket Lake-Sで完全な逆転勝利とまではいかなかったが、「これまでよりも速く、挑戦しがいのあるCPU」という点において、自作PCユーザーを惹きつけて止まない。

Core i9-11900Kのパフォーマンスを最大限に引き出したい人にオススメしたいマザー、MSI「MEG Z590 ACE」。実売価格は5万9,000円前後

 「Core i9-11900K」は、最大5.3GHz動作を武器にするRocket Lake-Sの最上位モデルだが、この14nm時代の最後を飾るCPUにふさわしい最高のマザーは何だろうか? Rocket Lake-Sに合わせIntelは新たに500シリーズチップセットを投入したが、今回はMSI製「MEG Z590 ACE」に注目してみたい。実売価格5万9,000円前後というリッチな仕様のハイエンドマザーだが、ブラック主体のキレのあるデザイン、そしてCore i9-11900Kで最高のPCを組むための設計や工夫にあふれ、PC自作の最先端を象徴する1枚となっている。

今回試用した機材は、Intel×MSIのダブルロゴ入り評価キット。同梱品は、Core i9-11900K、MEG Z590 ACE、そしてMSIの水冷キット「MPG CORELIQUID K360」

冷却や安定性を確保するための数々の工夫

 MEG Z590 ACEはLGA1200を備え、第10および11世代Coreを搭載可能なZ590マザーだ。Comet Lake-Sと同時に登場したZ490世代のマザーよりも多い19フェーズの電源回路、それを冷却するヒートパイプ付き巨大ヒートシンク、2オンスの銅箔層を持ったサーバーグレードの8層PCBなど、MSIがつちかった冷却強化や安定性向上のためのノウハウが存分に投入されている。

Rocket Lakeこと第11世代CoreプロセッサーだけでなくComet Lakeこと第10世代Coreプロセッサーも搭載可能。電源回路を冷却するヒートシンクは大きく、さらにヒートパイプで連結されている
90AのDrMOS等が組み込まれた19(16+2+1)フェーズの電源回路を実装。補助電源コネクタとCPUソケットの間にあるのが、電源回路制御の要となるPWMコントローラ「ISL69269」
補助電源コネクタは8ピン×2。ヒートシンクがギリギリまで迫っているので、PCケース天井とマザー上部のスペースがないPCケースでは、先にここを配線しておこう

 Rocket Lake-Sのメモリクロックは定格でDDR4-3200まで、さらにメモリコントローラとメモリのクロック比1:1動作で動く“Gear1”動作が保証されているのはCore i9-11900K/KFのみという仕様だが、MEG Z590 ACEのメモリスロットは設計上、最大DDR4-5600まで対応できると言う(動かせるかどうかはメモリモジュールも含めたハードの仕上がりとユーザーの腕しだいだが)。ちなみにRocket Lake-SのCore i7やi5をDDR4-3200と組み合わせる場合はメモリコントローラがメモリクロックの半分のクロック(1:2)で動作する“Gear2”になるというのがIntel公式のスペックだが、MEG Z590 ACEでは普通にGear1で動作した(無論CPUやメモリモジュールの個体差もあるので、絶対そうなるとは断言はできない)。

「DDR Boost」設計によりDDR4-5600まで対応するメモリスロット。スロットは「DDR4 Steel Armor」を装備しているため、ちょっとやそっとでは基板が歪むことはない
裏面は半分程度の面積がバックプレートで覆われている。CPUの電源回路の裏とサーマルパッドで連結されており、電源部の冷却にも役立っている

 MEG Z590 ACEに搭載されたM.2スロットは全部で4本と、今季発売されたZ590マザーの中では最多の部類に入る。うちCPUに一番近いM.2スロットはCPUに直結したPCI Express Gen4対応スロットで、ほかの3本はすべてZ590チップセットを上流とするGen3接続。すべてのM.2スロットはSSDを冷却するため、独自のヒートシンク「M.2 Shield FROZR」でカバーされている。両面実装のSSDの冷却に強いSSD裏面用のサーマルパッドを持たないのがやや残念だが、スロット数が多く、ガッチリとしたヒートシンクがあるのは心強い。

MEG Z590 ACEに実装されているM.2は全部で4本あり、うちCPUに一番近い1本がPCI Express Gen4対応(Rocket Lake-S使用時のみ利用可能)
M.2スロットの設計はごくシンプル。両面実装タイプのSSDでもガッツリ冷やせるように、裏面側も冷却できるスロットが1本あるとベターだったが、この仕様でも十分に冷える
MEG Z590 ACEのブロック図。こういう図をマニュアルに「分かりやすく」図示してくれるのがMSIのよいところ。M.2_3はSATA5/6と排他、M2_4はPCI_E5と排他であることが示されている
LEDの組み込まれたヒートシンクの下にはZ590が鎮座している。Z590はDMI3.0のレーン数がZ490の2倍(x8)に増えているが、これはRocket Lake-使用時にのみ有効となる
基板下部にはパワー&リセットボタンやBIOS切り換えスイッチ、各種ピンヘッダが並ぶが、PCI Expressの6ピン電源コネクタも配置されている。大電力を消費する拡張カードを複数使いたいときに威力を発揮するだろう

拡張性の高さもエースの証

 今期のZ590マザーはバックパネルにUSB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)対応のUSB Type-Cコネクタを備えているものが多いが、MEG Z590 ACEのType-CはGen 2x2よりも帯域の太いThunerbolt 4対応となる。Thunerbolt 4対応のキャプチャユニットや外付けストレージなどを接続するときに活躍しそうだが、USB Type-Cコネクタの隣にあるMini DisplayPortを利用することで、ビデオカードのDisplayPortから出力した映像信号を一度マザー側に引き込み、USB Type-Cコネクタから出力させることも可能になっている。これでThunderbolt 4接続のディスプレイはもちろん、液晶タブレットの運用も可能になるわけだ。Rocket Lake-Sをクリエイティブな用途に投入したい人には時に注目すべき要素と言えるだろう。
 そのほかWi-Fi 6(Intel Wi-Fi 6E AX210)や2.5GbのLAN(Intel I225-V)フロントUSB Type-Cコネクタ(ただし5Gbps)など、今時のハイエンドマザーが備える装備は一通り揃っている。

MEG Z590 ACEのバックパネル。縦に並んだUSB Type-CコネクタはThunderbolt 4としても機能する。隣にMini DisplayPortポートが並んでいるが、これはビデオカードの映像をThunderbolt 4にパススルーするためのものだ
バックパネルのアンテナ端子に接続するためのWi-Fiアンテナ
高品質オーディオ部。撮影用に取り外しているが、回路は金属素材で作りこまれたシールドで保護されている