あなたのPC大改造計画

勉強部屋でひっそりと使っていたPCをゲーミング&静音仕様に大改造!!(後編)

静かさと性能のバランスは……? text by 加藤勝明

依頼者Mさんは今回の応募にあたって“マシンをパワーアップする千載一遇のチャンス”と大蔵省を口説き落としたそうだ。果たしてその目論見は奏功するのか……?
MさんのPC環境はお子さんの勉強部屋の一番奥。写真手前側がお子さんの勉強机で、Mさんはほぼ背中合わせの状態でPCを使うという

 第8回目の依頼者となった千葉県のMさんはCeleron 300A時代からの古参自作erだが、約4年前に組んだAthlon II機で時間が止まっていた。

 そのPCで音楽や動画を鑑賞することで魂の癒しとしていたが、そろそろPCゲームへの挑戦もしてみたいと意欲を燃やす。しかし元々低予算で組んだPCだけにゲーム系のベンチを回しても良好な結果は得られない。そして何より今まで物理4コアのCPUを使い続けてきたが、そろそろタスクマネージャーで8コアが見える環境にも憧れるという。そんな中出会ったのがこの「あなたのPC大改造計画」……というわけだ。

 前編記事の取材を通して明らかになったのは、MさんのPCには静音性も求められる、ということだった。MさんのPCデスクは狭く、お子さんの勉強机とほぼ背中を合わせるように設置される。PCを使う時間の工夫や遮音タイプのヘッドフォンを使うなどして“ひっそりと”使っていたが、使用時間が重なる時はPCの発するファンノイズも気になるという。

 今回は性能と静音性のバランスをどうとるか、が焦点となることは明白。Mさんの予算70,000円とASUSとAKIBA PC Hotline! 編集部からのパーツ援助をどう割り振るかがポイントとなる。

あなたのPC大改造計画:記事一覧
第1回:「3万円で組んだスタイリッシュPC」は
「快適RAW現像+最新ゲームPC」になるか?
[前編後編]
第2回:「奥さんのストレス軽減用PC」は
ちゃんと安定して動くのか?
[前編後編]
第3回:TITAN XのSLIで最強ゲームPCに!
ただでさえハイスペックなPCを
「フル水冷」のモンスターマシンへ強化
[前編後編道のり編]
第4回:Skylake + Win 10なPCはこう作る!
7万円で強化する「多趣味人のためのPC」
[前編後編]
第5回:6年前のCore 2 Duoマシンを
今風な快速マシンに大改造
[前編後編]
第6回:「マインクラフトの実況PC」を快適に!
現役高校生の悲願は3万円+αで達成できるか?
[前編後編]
第7回:「ドラクエXをAPUで快適に!
ゲーム機を超える快適さを目指せ!!
[前編後編]
第8回:勉強部屋でひっそりと使っていたPCを
ゲーミング&静音仕様に大改造!!

[前編後編]
第9回:女子高放送部に快適な動画編集用PCを!
快適環境で「目指せ全国!」
[前編後編]

足らない部分を補いつつ静音よりに

MさんのPCの内部。ケーブルがゴチャゴチャしているのはさておき、ビデオカードのヒートシンクが小さく、さらにそれを高回転型のファンで冷やすため一番騒音を発していた。2番目はCPUのリテールクーラー、また背面と天井のファンも若干だが軸ブレを起こしていた

 Mさんの主訴は【1】「Core i7を使いたい」【2】「今時のPCゲームに挑戦できるパワーとスペックが欲しい」があり、そのうえで【3】「子供が後ろにいても集中力を乱さない静音性が欲しい」というもの。

 条件が多いが【3】は現在のCoreプロセッサやGTX 900シリーズの準ファンレスビデオカードを使えば比較的楽に手に入る。【1】は予算の問題だが、今回は予算70,000円と比較的余裕があり、さらにパーツ提供もあるので達成しやすい。問題は【2】で、まず第1にビデオカード、第2にストレージ(SSD)の容量を増やし本格ゲームタイトルのインストールに耐える環境を作らねばならない。

 以上の要素を合わせて考案した最終的な改造プランは以下の通りとなる。CPUやビデオカードの世代が古いため、PCケースと光学ドライブ以外ほぼ全とっかえというほぼお約束の展開となった。

アップグレード前アップグレード後想定購入価格(税込)
CPUAthlon II X4 631(4C4T、2.6GHz )Core i7-6700(4C8T、3.4GHz、最大4GHz)40,000円
マザーGIGABYTE A75-D3H(AMD A75)H170 PRO GAMING(Intel H170)※編集部より提供(実売17,000円前後)
メモリDDR3-1333 16GB(4GB×4)Crucial CT2K4G4DFS8213(DDR4-2133 4GB×2)6,500円
グラフィックスMSI R4850 2D1G-OC(Radeon HD 4850)STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING(GeForce GTX 950)※メーカーより提供(実売25,000円前後)
ストレージKingmax SME35 Xvalue(SSD、120GB)Crucial CT240BX200SSD1(SSD 240GB)11,000円
光学ドライブBD-ROMなど
電源玄人志向 KRPW-L4-600W(600W)Antec EA550G(550W、80PLUS Gold)9,000円
CPUクーラーCPUに付属be quiet! SHADOW ROCK SLIM BK010※編集部より提供(実売7,000円前後)
PCケースZalman Z9 Plus(ATX)
OSWindows 7 Home Premium 64bit
合計66,500円
Mさんが秋葉原を回って購入したもののリスト。上のプランとほとんど変わらない価格で調達できたのが幸いだ

 前回の取材終了時点で大まかな方針は決まっていた。筆者のスケジュールの都合から一緒に秋葉原めぐりができなかったのが残念だが、ほぼ想定価格でMさんが負担するパーツの調達ができた。

 あとはひたすら組むだけだが、その前にそれぞれのパーツを“選んだ理由”を解説していこう。

今回使うパーツをチェックする

CPU:Intel Core i7-6700

Intel Core i7-6700

 Athlon II X4よりパワーのあるCPU、かつ可能であればCore i7を使ってみたい、というMさんの希望を叶えるには『Core i7-6700』がベストな選択だ。

 Haswell世代のCore i7-4790(実売37,000円前後)も予算的には魅力だが、今更型落ちのCore i7を買うよりも省電力性能やクロックあたりの性能が上がったSkylake世代のCore i7を買う方がよい。

 クロックが一番高いCore i7-6700Kは前編取材時(11月下旬)ではやや予算オーバー気味、最も低発熱なCore i7-6700Tは入手性の問題から除外した。

マザー:ASUS H170 PRO GAMING

メモリ:Crucial CT2K4G4DFS8213

ASUS H170 PRO GAMING
Crucial CT2K4G4DFS8213

 CPUがCore i7-6700なのでOC非対応のH170チップセットを搭載したマザーのうち、ゲーマー向けの『H170 PRO GAMING』、メモリもこれにあわせ最安クラスのDDR4-2133の4GB×2構成を選択した。元のメモリ構成は16GBだったが、PCの使用目的をヒアリングする限り、8GBでも十分と判断した。

R.O.Gシリーズ譲りの高音質サウンド回路を搭載しているのも音楽鑑賞が主体のMさん向きと判断。インピーダンス300Ωまでのヘッドフォンに対応したアンプも搭載されているため、ヘッドフォン派のMさんにとってはヘッドフォン選びの幅が広がるというメリットも得られる

 ここで「なぜDDR4対応マザーにしたか?」を解説しておこう。

 CPUがSkylakeでも第6回で採用したDDR3メモリ対応のマザーを用意すればメモリを新規購入する必要はない。だが今回メモリをDDR4にした理由は、Skylake&DDR3対応マザーでH170 PRO GAMINGに匹敵するサウンド回路を搭載した製品が(ASUSでは)存在しないことだ。MさんはPCI接続のサウンドカードを使っていたが、R.O.Gシリーズ由来のサウンドチップ「SupremeFX」やオーディオグレードのコンデンサといった要素の方が優れていると判断したためだ。もちろん、現在主流のDDR4にしておけば後々増設用モジュールも手に入れやすかろう、という目論見もある。

 DDR4メモリはMさんの予算から、H170 PRO GAMINGは編集部より提供させていただいた。

メモリ:ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING

ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING
OC版なのに補助電源が6ピン×1で済むという省エネ設計なのも長所だ

 PCゲームにも挑戦したい、というMさんの希望を叶えるためにはGPUの強化は必須。そこでASUSから提供いただいたのがGTX 950のOCモデル『STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING』だ。低負荷または低温時はファンが停止するため静音性を重視する今回の改造目的にも見事にハマる。

 ではなぜ「今回GTX 960でなく950を選択したか?」だが、静音化も大きな課題だったため、少しでも発熱量の少ないものを選びたかったこと、さらにGTX 950でも設定次第では最新ゲームも十分高画質&快適に動くことが分かったためだ。Mさんはまだゲーム面に目覚めたばかりであるため、あまり強烈なものは不要だろう、という目算もある。

SSD:Crucial CT240BX200SSD1

Crucial CT240BX200SSD1

 Mさんは自力で120GBのSSDを追加し、OS起動用としていたがCドライブの残量は30GB台と少ない。特にこれからゲームの世界に踏み込むなら、これでは足りない。

 「Star Wars バトルフロント」なら空容量は40GB、「フォールアウト4」でも30GBは必要になるのだから、最近特に安くなってきた240GBクラスのSSDを導入すべきだ。

 「CT240BX200SSD1」はSATAのSSDとしては若干書き込み性能が遅めの部類だが、ゲーム用には安くて容量の大きい本製品がベストだ。

CPUクーラー:be quiet! SHADOW ROCK SLIM BK010

電源ユニット:Antec EA550G

be quiet! SHADOW ROCK SLIM BK010
Antec EA550G

 CPUクーラーと電源ユニットはあえて新調した。

 Core i7-6700なら付属のリテールクーラーでも適度に冷えるし、旧構成で使っていた600Wの電源も十分使いまわせる。だが静音化という課題の完遂度を少しでも上げるためには冷却力の高いCPUクーラーと、80PLUS Gold以上の電源ユニットが必要と判断した。

 特にCPUクーラーはヒートシンクこそ薄めの部類だが、CPUのTDPは160Wまで対応、ファンを全力で回転させてもファンノイズは23.7dBA(公称値)という冷却力と静音性の高さを評価した。

 ちなみに、今回CPUクーラーは編集部より提供させて頂いた。

組み立ては何事もなく……

 パーツが全て揃ったところで改造開始だ。

 とはいえPCケース(Z9 Plus)は安い割に設計がよく考えられているため特に詰まる部分はなかった。事前のテストでケースファンの軸ブレが確認できたし、背面ファンはペリフェラル4ピンから電源を取得するためファン回転数制御が効かないなど、気になる部分もいくつかあった。そこで組み込みと並行してファンの交換&ローテーションにも着手する。天井と背面ファンは筆者のパーツ箱から適当な静音タイプのものを探して組み込み、フロントファンは全く動かしていないサイドファンから移植した。

 結果サイドファンはなくなるが、STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMINGならサイドファンなどなくても大丈夫だ。

ケースの左サイドパネルにファンはあったが、結線されている様子はなく完全に休眠状態。さらに異音を発していた背面ファンはペリフェラル4ピンで駆動するタイプなので速攻で交換することに決定
まずは電源ユニットを組み込んで裏配線。結束バンドを親の仇のように使ってシャーシにコンパクトにまとめていく。マザー裏に2.5インチドライブ用ベイがあったので、SSD用として使用。Z9 Plusビルトインの温度計(温度はフロントパネルにLED表示)はSSDに貼り付けた
SHADOW ROCK SLIMの高さは結構ギリギリだったが、Z9 Plusにすっぽり収まる。CPUクーラーのヒートシンクが薄めのものを選んだ理由は、ATX12Vコネクタやメモリスロットへのアクセスが非常に楽だからだ。ファンは3ピン制御タイプだが、軸ブレしていない静音タイプのものを筆者のパーツストックから提供した
組み込みは完成。素直な設計のPCケースなので、詰まる要素は全くない。心残りなのはフロントUSBポートがUSB3.0対応でないためマザー上のUSB3.0ピンヘッダが空いている、ということ

 組み立ては楽勝だが、ASUS製マザーを使ってPCを静音化したいなら、UEFI BIOS設定中にある「Qfan Tuning」は必ずやっておきたい。ファンの回転数がどこまで下げられるかを自動的に検出し、より高度な静音設定が可能になる。

 特に今回使用したCPUクーラーのように、静音性重視のファンが搭載されているなら、そのポテンシャルを最大限に引き出す意味でも、ぜひやっておきたい。

UEFI BIOS設定内にある「Qfan Control」をクリックすると、CPU温度とファン回転数の関係をグラフで設定できる画面が出現。そこに出現する「Optimize All」をクリックすると、マザーに接続されたファンがどこまで制御できるのかテストされる
Mさんの新パーツ構成の場合、各ケースファンの最低デューティー比(低いほど回転数が下がる)はほとんど変化しなかったが、CPUクーラーのファンは49%から27%へ、ほぼ半分に減らせることがわかった

最新ゲーム迎撃用の戦闘力を手に入れた!

 納品前に改造前と後で性能がどのように変化したか検証する。

 まずはCPUの馬力を「CINEBENCH R15」で見てみよう。旧構成が4年以上前のパーツ構成なので相当の伸びが期待できそうだ。OSは改造前・後ともにWindows 7 Home Premium(64bit)だ。

前編取材時にMさんが点数の低さをボヤいていたエクスペリエンス・インデックスの数値(左:改造前、右:改造後)はこの通り。改造後はCPU以外満点を獲得している
「CINEBENCH R15」のスコア比較。Hyper Threadingにより8スレッド処理が可能になったためマルチコア性能は激増。さらにCPU自体もAMD AシリーズからSkylake世代のCoreに変わったため、シングルコア性能も段違いに伸びる

 ではゲームの描画性能のチェックに入ろう。最初に「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチを使用する。旧構成がDirectX11非対応なのでDirectX9の最高品質モードでテストした。

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチのスコア比較。GTX 950なら最高画質プレイも快適だ

 CINEBENCHのスコアが約3倍ならFF14ベンチのスコアはほぼ4倍。GPUの性能差の方が大きいのは、HD 4850の登場時期(CPUより古い)を考えれば当然といえるだろう。

 確かな伸びを感じたところで、Mさんにオススメしたいゲームのベンチを紹介しよう。まずは基本無料系として「World of Warships」をピックアップ。描画エンジンが軽いため旧構成のPCでも遊べるゲームだが、最高画質&フルHD設定にした場合のフレームレートはどの程度違うのだろうか? テストはCo-op戦時のフレームレートを「Fraps」で測定している。

「World of Warships」のフレームレート

 さらに「フォールアウト4(FO)」と「Star Wars バトルフロント(SWBF)」でもFrapsでフレームレートを調べてみた。FO4は画質“Ultra”+フルHD、SWBFは画質“最高”+フルHDに設定している。これは旧構成でのテストは実施していない。

「フォールアウト4(FO)」と「Star Wars バトルフロント(SWBF)」のフレームレート

 FO4の推奨GPUはGTX 780、SWBFはGTX 970とハードルが高いゲームであるが、GTX 950でも改造後の構成なら結構普通に遊べてしまう。時々カクッとフレームレートが落ちるのが気になる場合は、ここを参考に設定をやや下げるとよい。

 続いて動画再生関係の能力の変化もチェックしてみよう。そこでフルHDと4K動画を「VideoLAN Client(VLC) v2.2.1」にて再生した際のCPU占有率を比較する。

AVCHD動画(フルHD@37.2Mbps)再生時のCPU専有率
MPEG4動画(4K@81.37Mbps)再生時のCPU専有率

 現在のVLCはデフォルトでGPU再生支援(アクセラレーテッドビデオ出力)がオンになっているためGPUの再生支援が利用できる状態だが、ご覧の通りAVCHD動画でもCPU占有率はかなり高い。タスクマネージャーに表示される占有率はCPUの論理コア数が多いと相対的に下がる、という大前提をさて置いても、改造後は全体的にCPU占有率が低くなった、というべきだろう。

 最後に消費電力とMさん悲願のファンノイズを測定する。消費電力測定は「Watts UP? PRO」を、ファンノイズは「AR815」を使用。システム起動10分後をアイドル時、「OCCT Pelestroika 4.4.1」の“Power Supply”テストを10分稼働させた際のファンノイズを高負荷時として計測した。騒音計のマイクは暗騒音34.5dBAの室内においてPCのフロントパネルから30cm位置に固定している。

システム全体の消費電力の比較
ファンノイズの比較

 電源を80PLUS認証なしから80PLUS Gold電源に変え、CPUとGPUもワットパフォーマンスの良いものに交換したことで、消費電力もファンノイズも著しく低下した。もちろんCPUクーラーの大型化やファン交換、マザーによるファン制御といった細かい工夫も静音化に貢献していると考えてよいだろう。

 これでお子さんと一緒の時間にPCを使うことになっても、ファンノイズを気にせず使うことができるはずだ。

いざ納品!

 外面は全く同じだが、中身が最新アーキテクチャで一新された改造後のPCをMさんに納品すべく、我々は千葉県へ車を走らせた。

PCの梱包は配送業者のPC輸送用箱を度々利用させてもらっているが、PCの周囲に結構マージンを確保する箱なのでとにかくデカい。いきなりMさん宅の玄関を箱が占拠することに
開腹してパーツ構成の解説。最新パーツのカッコ良さはもちろん、最新CPUクーラーやビデオカードのゴツさに目を輝かせていた
まずは音楽を再生し“これ凄い!”とテンションを上げるMさん。もちろんMさんは遮音タイプのヘッドフォンをしているので、取材陣は大喜びするMさんを見つめるだけである。シュールな絵図だが改造の成功を確信した瞬間

 一通りの解説を終え早速所定の場所に設置。性能云々はさておき、とりあえずヘッドフォン等をセットアップして音楽や動画再生を堪能していただくことに。

 中身の解説をした時からテンションは上がっていたが、お気に入りの音楽を再生させた途端、“クララが立った!”と言わんばかりの勢いでテンションはMAXに。この取材に合わせ映画「スター・ウォーズ」のBDも手配するなど、Mさんも相当楽しみにしていたことがうかがえた(ただしBDは間に合わなかったようだが……)。

音楽を再生し終わったらイソイソと再生ソフトを導入し、PerfumeのBDを再生→音質に歓喜のループ再び。BD再生時のCPU負荷は10%程度と低かった

 だがこれで納品は終わるワケじゃない。

 MさんをPCゲームの暗黒面(?)に引きずり込んで初めてミッションコンプリートとなるのだ。Mさんは『Star Warsバトルフロント』に興味があるようだったが、無料で遊べる『World of Warships』や、じっくり遊べる『シヴィライゼーションV』などを体験して頂いた。

 Mさんのネット環境でゲームのDLや通信対戦を行うのはやや厳しい感じもしたが、ハードの準備は揃っている。あとは回線を整備するだけだ。

SWBF、WoWs、CIV5と次々に体験して頂く。画面の美しさに歓喜、撃った/やられたでまた歓喜。PCゲームの暗黒面に見事魅せられたMさんが、自作魂も再点火してもらえれば幸いだ
あらゆる面で満足いただけた今回のPC。本体をガッツリ静音化したおかげで本体横に置いたデータ保存用の外付けHDDの動作音の方が、PC本体よりうるさく感じるようになってしまった

[加藤]改造後のPCの感触はどうでしたか?

[Mさん]ケースが同じなので“羊の皮を被った狼”を手に入れた気分ですね。オンボードサウンドの音質がこんなに良くなっているとは……

[加藤]まだ気がついてない点が一つありますね。ファンノイズが全然聞こえなくなっていたことに気がつきませんか?

[Mさん](耳を澄ます)……そう言われればPCから全く音がしなくなりましたね! 外付けHDDの音の方がPC本体よりもうるさくなるとは思いませんでした!

まとめ:予算内でも“そこそこ”の性能が期待できた

 最後にパーツ提供なしの予算70,000円のみで、今回の依頼はどう解決できるかを考えてみよう。

 この場合予算を限りなく圧縮する必要があるため、マザーはH170/B150/H110のDDR3対応版にするのが最善手だ。ASUSならば『H110M-E D3』が一番安くてうってつけだ。メモリスロットが2本しかないため、メモリ容量を16GBから8GBに減らす必要があるが、ゲームや音楽鑑賞程度ならこれで十分。さらにH110の制限からM.2やSATA Expressといった新しめのインターフェースが使えなくなるがそこは我慢だ。

 これが決まればCPUは「Core i7-6700」、ビデオカードは『GTX750TI-PH-2GD5』、端数で適当なサイドフロー式のCPUクーラーを購入すれば「8スレッド処理可能なCPU」かつ「軽めのゲームで遊べる性能」は手に入る。

 ただこの場合SSDの容量不足は解消されないので、トータルバランスを向上させるならロマンよりも実利ということでCPUを「Core i5-6600」に変更、浮いた分で『CT240BX200SSD1』を導入すればCPU・ビデオカード・SSDがバランスよくパワーアップできる。ただどちらの場合でもGPUがGTX 750Tiなのでゲームの性能は今回Mさんが手にした構成よりも弱い。さらにマザーのオンボードサウンドも貧弱になるため、音質もそれなりに悪くなる。

 ただ70,000円でも全体に“そこそこのバランスと突出したCPU性能”は手に入る訳で、今回の依頼は比較的楽だったと結論づけることができるだろう。

 という訳で第8回目も無事終了だ。ゲーミングPCにするにはやはりある程度の投資が必要だが、フルHD+ほどほどの高画質環境で良いなら今回程度の投資でマシンのパワーアップとゲーミングPC化を両方達成できる。ぜひ参考にしていただきたい。

[制作協力:ASUS]

(加藤 勝明)