ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

マイナーチェンジとPC-8801FEの影に隠れたNEC「PC-8801MA2」

前機種となるPC-8801MAと比べても、デザイン的に大きく異なる部分は少ないです。見た目がほぼ変わらなかったことも、宣伝がしづらかった要因の一つかもしれません。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、PC-8801FEと同時に発売されたものの、FEがメインで宣伝されたために影に隠れてしまった機種・PC-8801MA2となります。本連載でも、取り上げるのを忘れていました……。

本体正面は左からキーボード接続端子、リセットボタン、4MHz/8MHz切換スイッチ、マウスポート、イヤホン端子、ボリュームつまみ、電源スイッチと並んでいました。

 1980年代後半、NECは秋になると新機種の発表をほぼ毎年行ってきました。1985年に登場したPC-8801mkIISRは、その年末に価格を抑えたPC-8801mkIIFRと2HDドライブを搭載するなどしたPC-8801mkIIMRをリリース、翌年にはスピードアップさせたPC-8801FH/MHを市場へと送り出します。さらに、その次の年となる1987年にはサウンド面での機能をアップさせたPC-8801FA/MAを生み出すのですが、この時点でほぼ機能強化ネタは出尽くしたかと思われました。

 しかし、そんなタイミングで1988年の10月に発表され、同月27日から29日までの3日間、品川パシフィックホテルで開催されたNECパーソナルフェア'88で来場者にお披露目されたのが、ビデオ出力を可能としたPC-8801FEと同時デビューとなった機種、PC-8801MA2です。価格は、PC-8801MAの198,000円から3万円ほどお安くなり、168,000円となっていました。

 スペックですが、前機種にあたるPC-8801MAからほぼ変わっていません。違いといえば、デジタルRGB端子がついに引退となったことと、V1S/V1H/V2モードの切換スイッチがソフトウェアに取り込まれ、その部分には背面からマウスポートが移動してきたことが挙げられるでしょう。

背面は左からサービスコンセント、オーディオ入力端子、オーディオ出力端子、アナログRGB端子、RS-232Cコネクタ、プリンタポート、その上に拡張スロット×2となっています。マウスコネクタが前面に移動して、ディスプレイ水平周波数切換スイッチとCRTクロックジャンパ、デジタルRGB端子が取り払われたことで、かなりスッキリとした印象を受けます。

 特に、マウスポートが前面に移動したことに関しては、月刊『マイコン』1988年12月号の記事によると「これは、88ユーザーの意見による。CGツールを使用する際はマウスを使い、ゲームをする際はジョイスティックを使う。このとき、マウスの接続端子が背面にあると、マウスやジョイスティックを交換する際に多少面倒くさくなり、操作性の向上の為にも端子を前面につけて欲しいということなどから採用されたもの」と、その理由が詳しく書かれていました。

 筆者としては、PC-88用ゲームはジョイスティックを使わずテンキーでのみプレイしていたため、この一文を読んで“そんなにジョイスティックを繋いで遊んでいる人がいるのかな?”と思ったのですが、皆さんはどうだったでしょうか?

 ちなみに、同時期に登場したPC-8801FEでは残念ながら省略されてしまった前面のイヤホンジャックですが、PC-8801MA2ではPC-8801MAから引き続きそのまま残されたので、深夜にゲームをプレイする場合にはありがたい存在でした(笑)。

PC-8801MAとPC-8801MA2を、無理やり重ねてみました。色の違いが何となく分かるかと思いますが、経年劣化してしまっていることもあり、ハッキリとしないのが残念なところです。

 PC-8801MA2本体のカラーですが、アーバンホワイトと呼ばれる、わずかにグレーみがかかったホワイト色を採用しています。従来機種と比べると若干明るくなった感じがしますが、実際には見比べないと分からないほどの違いしかありません。それでもホワイト系のカラーリングは、掃除をしなくてもホコリが目立たないことが便利な部分でした。

 電源ボタンやリセットボタンは、PC-8801MAとは違い本体と同系色になっています。身体が覚えてしまえばなんてことはありませんが、目立つカラーリングではなくなったために、少々分かりづらくなっている印象はありました。

 本機に付属するキーボードは、外観は従来のモデルとほぼ変わりませんが、カラーリングが本体と同じくアーバンホワイトとなり、文字キーのキートップも同色になっています。また、内部的にもキースイッチに新しいものを採用していました。

 PC-8801MAなどに付属していたキーボードは押し始めが重めで、押し続けるとストンと下がり“カチャッ”と音がする、いわゆるタクティルフィードバックタイプのキータッチでした。これがPC-8801MA2付属のキーボードでは、同じくタクティルフィードバックタイプではあるものの、押し切ったときの“カチャッ”音が出ないようになっています。

広告はいくつかのパターンがありましたが、いずれもPC-8801FEがメインであって、PC-8801MA2はオマケのような扱いでした。かろうじて本体写真が載っているバージョンのほかは、機種名だけという悲しいものも……。

 前者のキーボードは、音が出るため“いかにもタイピングしています”という感じがありますが、うるさいという意見もあったとのことでした。それに対して本機種に付属するものは静かなので、若干タイピング感が薄れるものの静かに叩けるので、イヤフォンジャックの件と合わせれば深夜でも安心して使うことができます。

 宣伝には恵まれなかったPC-8801MA2ですが、現時点で市場に出回っている数を見ると広告の少なさなどは関係なく、新機種が出ればそれなりに売れた……と思うくらいには流通していたようです。

 この後、PC-8801“M”シリーズはデザインを変え、ラストエンペラーとなるPC-8801MCへと進化していくのでした。