ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
角川書店『コンプティーク』~ 想い出の“20世紀パソコン雑誌”たち ~
2025年7月8日 08:05
現在ではあまり見かけなくなってしまったものの、20世紀には数多くのマイコン・パソコン雑誌が発売されていました。中には、その当時に読者だった雑誌に影響を受けて後の人生が決まった、という人もいるかもしれません。ここでは、それら20世紀に発売されたマイコン・パソコン雑誌を取り上げ、紹介していきます。
第5回目は1983年に創刊され、現在も刊行されている角川書店(現KADOKAWA)の『コンプティーク』を取り上げます。
マイコン・パソコン雑誌の大多数は、1980年代のパソコンブームで売上を伸ばすものの、その後に休刊してしまうものがほとんどでした。そんななかで現存している、数少ない雑誌のうちの1冊が『コンプティーク』です。
元は、米国製ソフト輸入会社コンプティークが、角川書店と提携して1983年11月に発刊したのが始まりでした。目的は、パソコンマニア以外の層にMSXやゲームパソコンの情報を提供し、同時に雑誌と連動したパソコンショップ「コンプティークハウス」のアピールのためとのことです(BCN This Week 1983年10月31日 vol.46に掲載された記事より)。
パソコン雑誌が群雄割拠していた1980年代から1999年頃まで見ていくと、コンプティークは創刊してからしばらくは隔月刊雑誌でした。この時期は、パソコン雑誌としての目玉はそれほどなく、他誌と同じようにアイドルページや映画紹介ページ、ファミコンソフト紹介ページ、そしてゲームプログラム掲載という誌面作りとなっています。
しかし1986年の月刊化後は、BPSの代表作『ザ・ブラックオニキス』『ザ・ファイアークリスタル』の続編『ザ・ムーンストーン』記事や、当時大ヒットを飛ばした『ザナドゥ』の記事などで次第に頭角を現し、さらにメディアミックスの先駆けとなる「ロマンシア」や「ザナドゥ」といったパソコンゲームのマンガ連載をするなど、先見の明があるページ作りを行うようになります。
同年9月には、後にパソコンゲームとしても登場する『ロードス島戦記』のリプレイ連載が始まったほか、1988年には読者参加型ゲームの『ロボクラッシュ』などを開催し、こちらも大好評を得ました。『ロボクラッシュ』は、後にシステムソフトからゲームソフトとして発売もされましたので、知っている人も多いことでしょう。またこの時期には、テーブルトークRPGやウォーゲーム、ボードゲームに精通していた安田均さんや黒田幸弘さんの記事なども掲載されていたこともあり、いち早くテーブルトークRPGを嗜んでいた人には『コンプティーク』は嬉しい情報源ともなっていました。
その後、Windows 3.1などが出てきた1994年には版型を変え表紙も3DCGを採用して、一般的なパソコン雑誌のようなパソコンパワーアップ特集なども組まれたりしますが、メインがパソコンゲームというのは変わらず。Windows 95がリリースされた翌年の1996年には、セガやコナミ、光栄といった大手ソフトハウスがWindows 95でもゲームソフトを発売したことを受け、誌面ではそういった作品も取り上げられるようになります。さらに、声優さんを起用しての連載記事なども登場し、以降のアニメや美少女ゲームを中心とした誌面作りへの布石が見え始めてくるのでした。その後は美少女ゲームが誌面の中心を占めていきますが、今回メインとした1999年まではパソコンゲームを柱として、コンソール機をほぼ取り上げることなく進んでいったのが特徴と言えるのではないでしょうか。
そんな『コンプティーク』ですが、最初は「パソコンと遊ぶ本」というキャッチコピーでスタートします。1986年の月刊化に伴い「闘うパソコンゲームマガジン」を長らく使用していましたが、1996年より「Win95から美少女まで楽しめるパソコンゲームマガジン」に変更。そのキャッチコピーは10月号まで使われ、11月号からは「パソコンで遊ぼう! 高感度デジタル世代のパソコン活用誌」となり、それを簡略化した「パソコンで遊ぼう!」が1998年7月号まで続きました。それも、8月号からは「パソコンユーザーのためのアニメ&ゲーム誌」に変更。このキャッチは2000年9月号まで表紙にとどまることとなります。
ちなみに21世紀に入ると、もはやパソコンゲームだけでなくコンソール機のギャルゲータイトルなども誌面を賑わせるようになったほか、マンガ連載だけで雑誌全体の1/3以上を占めるようになるなど、大幅な誌面刷新が行われました。昔の『コンプティーク』しか知らないと、まるで別の雑誌と思うかもしれません。その後は、付録によって本誌が完売になることもしばしばあるなど、現在も人気のある月刊誌として刊行されています。
そんな『コンプティーク』の目玉といえば、絶対に外せないのが「袋とじ」のコーナーでしょう。袋の端をカッターやはさみで切り取ることで、中に収録されていたいわゆる“ちょっとエッチな記事”を読むことができました。この時代、“エッチなゲーム”の“エッチなシーン”を撮影して、袋とじとはいえ積極的に誌面に載せるということは、他誌ではあまり見られなかったこと。『コンプティーク』の袋とじコーナーを見たさに買っていた、という人もいたのではないでしょうか。“ちょうど小中高校生時代だったので、毎回楽しみにしていた”なんて感想が出てくる読者も多いと思われます(笑)。
その袋とじコーナーも“エッチなゲーム”だけでなく、18禁アニメやマンガなども掲載されるなど、バラエティ豊かになっていきました。合わせて1980年代終わりには、そういったゲームが少しずつ増えだしていったこともあり、この袋とじは同誌の人気コーナーに。「ちょっとエッチな福袋」という別冊シリーズまで発売されるほどになりました。