ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

名作アクションの移植作 X1 テープ版「フロントライン」

アーケード版のポスターに使用されていたイラストが、パソコン版のパッケージでも使われています。裏面には、収録されている4エリアの紹介写真が掲載されていました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、この時期にニデコムキャリーソフトがアーケードのタイトー作品から移植していたソフトのうちの最初となった1本、シャープ X1版『フロントライン』(テープ版)を取り上げました。

 1980年代前半のパソコンユーザーにとって自分の所有機種にアーケードゲームが移植されることは、ソフトを買ってしまえば1コインを投入せずともタダで遊べるため、特にゲームセンターに通っていたユーザーからは熱望されていたことでした。当時は、『ディグダグ』『ギャラクシアン』そして『ゼビウス』などが登場しましたが、同じようなタイミングでリリースされたのが、タイトーがゲームセンターにて稼働させていた『フロントライン』をパソコンへと移植した、パソコン版の『フロントライン』です。広告から調べると、1983年7月に発売された当時の雑誌に発売が告知されていて、8月に発売の9月号には“新登場”と銘打たれているので、おそらく7月から8月上旬にかけてリリースされたのではないでしょうか。

広告には「ついに超大物ソフト登場。ニデコムソフト第2弾はタイトーテーブルゲームシリーズ。ニデコムソフトと株式会社タイトーが提携、ハードウェアの限界に挑む高度なマシン語を駆使して開発された、高速オペレーションによる史上最強のゲームソフトです(以下略)」と書かれていて、その自信のありようがうかがえます。同時期に、『スペースクルーザー』と『ワイルドウェスタン』も発売されていました。その後は、自社ハードと合わせての宣伝も行われています。

 本作の発売はニデコムキャリーソフトからで、これは株式会社ニデコがディスプレイやFDDなどパソコン向け商品を販売するときに使っていたブランド名“ニデコム”と、タイトー作品の移植を担当したキャリーラボの名前を合わせたブランド名と思われます。その株式会社ニデコですが、2007年に株式会社エクセルに吸収合併されていて、さらに株式会社エクセルも2020年に加賀電子株式会社との間で経営統合を実施して、現在は加賀電子の100%子会社となっています。

中のパッケージに書かれた、ロード方法とゲームの説明です。テープ版は3パターン、ディスク版では8パターン用意されているのがわかるほか、煙が出た戦車は一度降りても、再び乗ることができるというテクニックも紹介されていました。

 プレイヤーは、画面内に表示されている主人公の歩兵をテンキーまたはジョイスティックで操作して、最深部にある敵陣地を破壊するのが目的です。アーケード版は縦画面+チャンネルスイッチという、この時期の家庭では再現できない構成でしたが、そのあたりは移植に際して大胆に変更されました。プレイヤーキャラが標準で装備しているピストルや手榴弾、装甲車のマシンガン、戦車の砲弾は自動的に連続発射されるように変更。プレイヤーがするべき事は、出現する敵を狙い撃つことと、戦車や装甲車の乗り降りをZキーまたはジョイスティックのトリガーボタンで指示することです。しかも、プレイヤーキャラのストックはアーケード版と違い初期状態で残9となっているので、そう簡単にゲームオーバーにはならない……と思っていたのですが、慣れるまではあっさりとゲームオーバーになるのが悔しいところでした。

最初のエリアは谷間戦です。両脇から岩は落ちてこないものの、多数の敵が上下左右から出現するので、一瞬たりとも気は抜けません。地雷を破壊した跡にできる穴に入ってしまうと移動速度が落ちるので、上手に避けて進みたいところ。

 エリア構成はアーケード版と同じく、谷間戦、草原戦、砂漠戦、そして敵地戦の4カ所に分かれています。1周目は最初が谷間戦で、ここでは敵の歩兵が回りからワラワラと出現してプレイヤーキャラに襲いかかってくるため、ピストルや手榴弾で倒さなければなりません。この場所は名前の通り谷間になっていて、アーケード版では岩石が左右から転がってくるのですが、パソコン版では省略されています。プレイヤーは木陰に隠れながら手榴弾で敵を倒しつつ、地雷を破壊しながら先へと進んでいけば良いので、慣れさえすればサクサクと次のエリアにたどり着くことができるでしょう。ただし、地雷が爆発した後の穴に落ちる(重なる)と動きが遅くなってしまうので要注意。

草原戦と名付けられた2番目のエリアには、戦車と装甲車が出現します。ここから先は、これらの乗り物を利用しないと先に進むことが困難に。

 谷間を抜けると視界が開け、草原戦が始まります。ここでは草の上を通るとスピードが遅くなってしまうので、なるべく土の上を進んでいくのがベスト。道中には青色の装甲車や戦車を見かけますが、これに近づいてZキーまたはジョイスティックのトリガーボタンを押せば乗車できて、敵歩兵のピストルでやられてしまうことが無くなるだけでなく、敵歩兵を踏みつぶして倒すこともできます。乗っている戦車や装甲車が被弾すると白煙が出るのですが、素早くキーやトリガーを押して降りれば命に別状はありません。戦車は、一度煙が出ても降りれば再度乗ることができるので、このテクニックを駆使して草原を突破しましょう。

草原戦を抜けると、砂漠戦がプレイヤーを待ち構えています。行く手を邪魔するように岩が配置されているので、それも敵の攻撃からの盾に使いながら先へと進めば、2本の橋が架かっている場所へ。

 続いて目の前に現れるのは、広大な砂漠です。途中には岩がゴロゴロしているので、それを避けて奥へと進まなければなりません。ここから先は、敵戦車や装甲車が多数出現してプレイヤーキャラを狙ってくるため、こちらも戦車や装甲車に乗って先へと進まないと、かなり厳しい戦いを強いられます。ただし、砂漠戦の距離はそれほど長くはないので、あまり敵に構わずに強行突破するのもありでしょう。

 砂漠の最後には2本の橋が架かっていますが、どちらかを渡れば敵地へと突入になります。ここは、アーケード版では敵の猛攻撃に晒されるシーンですが、パソコン版ではかなり攻撃の手が緩められているため、あまり労せずに敵陣地へとたどり着くことができました。そこまで行けてしまえば、あとは手榴弾を投げ込むのみ。うまくヒットすれば敵が白旗を揚げて降参し、続けて2周目が始まります。

橋を渡れば、いよいよ最終決戦の地となる、敵地戦が展開されます。最深部にある敵の陣地にたどり着いても、戦車や装甲車では破壊できません。一度降りて手榴弾を投げ込み、ヒットすれば白旗が揚がってプレイヤーの勝利に。

 本作はアーケード版の縦画面から横画面に変わったほか、いくつか省略された要素はあるものの、攻撃がフルオート連射になっているため気軽に遊べるのが良いところといえるでしょう。残念ながら、自宅で練習してゲームセンターで腕を披露……ということには使えないですが……。

 アーケード版を、高い難易度や難しそうに見える操作方法で敬遠していた人にとっては、非常に取っつきやすい仕上がりになっていたので、完全移植にこだわらない人やアクションゲーム初心者ならば問題無く楽しめそうです。現在は、オークションなどでもあまり見かけなくなってしまいましたが、ゲームセンターやアーケードアーカイブス版でクリアできなかった人は、こちらでクリアを目指してみるのも良いかもしれません。

横画面オート連射のフロントラインがどのようなものか、実機プレイを撮影してみました。テープ版では最後のパターンとなる3周目までですが、周回ごとにステージ構成が若干異なっているのが分かるかと思います。

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