パワレポ連動企画

空冷だって十分イケる!Alder Lake時代の空冷クーラー選び ~ 第12世代Coreで変わったことのおさらい ~【1/4】

DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!

 AMDとの競争激化により、Intel CPUも性能向上のため高クロック化やメニーコア化が進んだ。コア数は第12世代では最大で16コアとなり、ブーストクロックは5GHz超えもめずらしくなくなった。ここ数年14nmのプロセスルールを改良して使い続けてきたIntelだが、第12世代CoreとなるAlder Lakeではついに10nm(Intel 7)へと微細化を一歩進めた。

 一般的に製造プロセスが微細化すると発熱が減少する傾向にあるが、AMD Ryzenに勝つためか、第12世代Coreではその分の余裕をブーストクロック向上へと充てている。そのため、K付きモデルやCore i9の発熱の大きさは第11世代とあまり変わらない。K付きモデルでは手動OCに近いレベルまでブーストするため、空冷クーラーでは力不足となり、水冷クーラーが必須とまで言われるほどの発熱となっている。こうした事情から水冷クーラーが広がりを見せているわけだ。

Alder Lake時代になっても空冷だって十分イケる!

 しかし、多くのユーザーが手に取るであろう、Core i7以下の無印モデルは第11世代よりも発熱の面では扱いやすくなっている。人気の高いミドルレンジ以下のクラスは空冷クーラーで十分冷却可能なのだ。そういう意味で空冷クーラーは多くのユーザーにとって引き続き主力であると言える。実力も人気もある製品が3,000円台から存在し、簡易水冷クーラーと違ってポンプがないので静音性や耐久性にも優れる。

 また、簡易水冷クーラーはラジエータをケースに取り付ける必要があり、配線も複雑になりがちだが、空冷は取り付けも配線もシンプルなため、初心者にも分かりやすい。簡易水冷モデルにはないメリットも多く、ハイエンドやフラグシップを目指さないのであれば、まだまだ魅力的な製品なのだ。

空冷CPUクーラーのメリット
手に取りやすい価格は空冷クーラーの最大のメリット。3,000円前後の製品でもCPU付属のリテールクーラーと比べれば冷却力は十分高い
Noctuaをはじめとし、静音性にこだわったファンを搭載する製品が多く存在する。ノイズ発生源がファンのみというのが強み
簡易水冷の故障原因はポンプ関連が多く、水漏れなどの可能性も付きまとう。空冷は可動部品がファンのみなので信頼性に優れる

2022年1月に第12世代中位・下位モデルが追加

 2021年中はハイエンドモデルばかりだった第12世代Coreのラインナップに、一気にミドルレンジ〜エントリーまでの製品が追加された。このクラスなら空冷でも十分冷却できるものばかりだ。

2022年1月に追加された主な第12世代Coreのラインナップ
製品名コア数/スレッド数定格/最大ブーストクロックMTP実売価格
Core i7-1270012(8P+4E)コア/20スレッド2.1GHz(P)1.6GHz(E)
4.9GHz(P)3.6GHz(E)
180W44,000円前後
Core i5-126006(6P)コア/12スレッド3.3GHz/4.8GHz117W30,000円前後
Core i5-125006(6P)コア/12スレッド3GHz/4.6GHz117W28,000円前後
Core i5-124006(6P)コア/12スレッド2.5GHz/4.4GHz117W26,000円前後
Core i3-121004(4P)コア/8スレッド3.3GHz/4.3GHz89W17,000円前後
Pentium Gold G74002(2P)コア/4スレッド3.7GHz46W(PBP)9,500円前後
Celeron G69002(2P)コア/2スレッド3.4GHz46W(PBP)7,000円前後

第12世代Coreで変わったことのおさらい

第12世代の最新リテールクーラーをチェック
銅製のベース部分は接地面積がCPUに合わせて従来品よりも拡大され、見た目もスタイリッシュになった。とはいえ実力はそれなり止まり

 第11世代までのCoreプロセッサは消費電力の基準としてTDP(Thermal Design Power)が使われていた。その設定は三つのパラメータからなり、長時間の電力制限値であるPL1と、短時間の電力制限値のPL2、PL2の持続時間であるTau(Turbo Time Parameter)が存在した。PL2はベースクロックではなく、Turbo Boostが有効になっている間に消費される最大値で、Tauの設定時間しか有効にならないようになっていた。

 これが第12世代からはTDPに代わってPBP(Processor Base Power)とMTP(Maximum Turbo Power)という値に改められた。PBPはTDPと同義で定格時の消費電力値だが、MTPは従来のPL2を制限時間なしに持続させることを想定した値となっている。そのため、マザーボードの電源回路やヒートシンクなどの作りがこれまで以上に重要となっている。

 MTPが設けられた理由だが、マザーボードベンダーごとにPL1/2の設定を独自に行なうことが多い現在において、ピーク時の性能や発熱の最大値の基準をIntel自らMTPとして示すという意図があったためと思われる。

 多くのマザーボードがMTPを長く持続することを目指す設計となっているため、性能向上の恩恵と引き換えにCPUの温度は高くなる傾向にある。とくにIntel Z690マザーにおいてはほとんどが電力値を無制限にしているのでこの傾向はさらに顕著だ。以前のような感覚で使いたい場合は、UEFIからPL1とTauの設定を手動で行なって、ブーストが最大値で持続しないようにする必要がある。

電力基準がTDPからPBPとMTPに
新たに設けられたMTPはブーストクロックを長時間持続させることを目標にしている。その分、CPUクーラーやマザーボードのVRMに厳しい
K付きモデルはMTPの値が無印モデルよりも高く設定されている。Core i9-12900Kにおいては241Wとかなり高く、冷却の重要性も大きい
ブーストクロックの加減はUEFIで設定できる
MTP(PL2)はUEFIから設定可能。PBPやMTPに名称変更されたが、マザーボードの設定項目はPL1やPL2のままとなっている。MTPを変更する際はPL2を変更するべし
独自プリセットを用意するところも。マザーボードによってはプリセットが用意されている場合がある。CPUクーラーの種類に合わせて設定できるので初心者には便利だ

クーラーの冷却能力が低いとCPU性能を発揮できない

 第12世代Coreの場合、MTPが設定されていない特定のモデルを除き、Kなしの無印モデルでも実質無制限設定と同等の挙動をする。そのためCPU温度はマルチスレッド処理時にかなり高くなる傾向がある。

 Core i7-12700を用いた検証だと、リテールクーラーを低価格なサードパーティー製クーラーに交換するだけでCINEBENCHのスコアが21,110から21,556に向上した。もちろんCPU温度も下がるので、第12世代Coreを使う場合はCPUクーラーをリテールクーラーからアップグレードすべきだろう(その2へ続く)。

【TEXT: 清水貴裕、多賀ひろし】


最新号「DOS/V POWER REPORT 2022年夏号」絶賛発売中!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2022年春号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、最新号の「DOS/V POWER REPORT 2022年夏号」は、「買うならどっち!? PCパーツ頂上決戦!」「プレイに差が付く!? 最新ゲーミングディスプレイ」といった特集記事や、PCパーツのアワードプログラム「AKIBA PC Hotline!&DOS/V POWER REPORT PC PARTS AWARD」など、内容盛り沢山となっています!是非ご覧ください!