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空冷だって十分イケる!Alder Lake時代の空冷クーラー選び ~ 第12世代Coreで変わったことのおさらい ~【1/4】
DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!
2022年7月26日 00:05
AMDとの競争激化により、Intel CPUも性能向上のため高クロック化やメニーコア化が進んだ。コア数は第12世代では最大で16コアとなり、ブーストクロックは5GHz超えもめずらしくなくなった。ここ数年14nmのプロセスルールを改良して使い続けてきたIntelだが、第12世代CoreとなるAlder Lakeではついに10nm(Intel 7)へと微細化を一歩進めた。
一般的に製造プロセスが微細化すると発熱が減少する傾向にあるが、AMD Ryzenに勝つためか、第12世代Coreではその分の余裕をブーストクロック向上へと充てている。そのため、K付きモデルやCore i9の発熱の大きさは第11世代とあまり変わらない。K付きモデルでは手動OCに近いレベルまでブーストするため、空冷クーラーでは力不足となり、水冷クーラーが必須とまで言われるほどの発熱となっている。こうした事情から水冷クーラーが広がりを見せているわけだ。
Alder Lake時代になっても空冷だって十分イケる!
しかし、多くのユーザーが手に取るであろう、Core i7以下の無印モデルは第11世代よりも発熱の面では扱いやすくなっている。人気の高いミドルレンジ以下のクラスは空冷クーラーで十分冷却可能なのだ。そういう意味で空冷クーラーは多くのユーザーにとって引き続き主力であると言える。実力も人気もある製品が3,000円台から存在し、簡易水冷クーラーと違ってポンプがないので静音性や耐久性にも優れる。
また、簡易水冷クーラーはラジエータをケースに取り付ける必要があり、配線も複雑になりがちだが、空冷は取り付けも配線もシンプルなため、初心者にも分かりやすい。簡易水冷モデルにはないメリットも多く、ハイエンドやフラグシップを目指さないのであれば、まだまだ魅力的な製品なのだ。
2022年1月に第12世代中位・下位モデルが追加
2021年中はハイエンドモデルばかりだった第12世代Coreのラインナップに、一気にミドルレンジ〜エントリーまでの製品が追加された。このクラスなら空冷でも十分冷却できるものばかりだ。
製品名 | コア数/スレッド数 | 定格/最大ブーストクロック | MTP | 実売価格 |
---|---|---|---|---|
Core i7-12700 | 12(8P+4E)コア/20スレッド | 2.1GHz(P)1.6GHz(E) 4.9GHz(P)3.6GHz(E) | 180W | 44,000円前後 |
Core i5-12600 | 6(6P)コア/12スレッド | 3.3GHz/4.8GHz | 117W | 30,000円前後 |
Core i5-12500 | 6(6P)コア/12スレッド | 3GHz/4.6GHz | 117W | 28,000円前後 |
Core i5-12400 | 6(6P)コア/12スレッド | 2.5GHz/4.4GHz | 117W | 26,000円前後 |
Core i3-12100 | 4(4P)コア/8スレッド | 3.3GHz/4.3GHz | 89W | 17,000円前後 |
Pentium Gold G7400 | 2(2P)コア/4スレッド | 3.7GHz | 46W(PBP) | 9,500円前後 |
Celeron G6900 | 2(2P)コア/2スレッド | 3.4GHz | 46W(PBP) | 7,000円前後 |
第12世代Coreで変わったことのおさらい
第11世代までのCoreプロセッサは消費電力の基準としてTDP(Thermal Design Power)が使われていた。その設定は三つのパラメータからなり、長時間の電力制限値であるPL1と、短時間の電力制限値のPL2、PL2の持続時間であるTau(Turbo Time Parameter)が存在した。PL2はベースクロックではなく、Turbo Boostが有効になっている間に消費される最大値で、Tauの設定時間しか有効にならないようになっていた。
これが第12世代からはTDPに代わってPBP(Processor Base Power)とMTP(Maximum Turbo Power)という値に改められた。PBPはTDPと同義で定格時の消費電力値だが、MTPは従来のPL2を制限時間なしに持続させることを想定した値となっている。そのため、マザーボードの電源回路やヒートシンクなどの作りがこれまで以上に重要となっている。
MTPが設けられた理由だが、マザーボードベンダーごとにPL1/2の設定を独自に行なうことが多い現在において、ピーク時の性能や発熱の最大値の基準をIntel自らMTPとして示すという意図があったためと思われる。
多くのマザーボードがMTPを長く持続することを目指す設計となっているため、性能向上の恩恵と引き換えにCPUの温度は高くなる傾向にある。とくにIntel Z690マザーにおいてはほとんどが電力値を無制限にしているのでこの傾向はさらに顕著だ。以前のような感覚で使いたい場合は、UEFIからPL1とTauの設定を手動で行なって、ブーストが最大値で持続しないようにする必要がある。
クーラーの冷却能力が低いとCPU性能を発揮できない
第12世代Coreの場合、MTPが設定されていない特定のモデルを除き、Kなしの無印モデルでも実質無制限設定と同等の挙動をする。そのためCPU温度はマルチスレッド処理時にかなり高くなる傾向がある。
Core i7-12700を用いた検証だと、リテールクーラーを低価格なサードパーティー製クーラーに交換するだけでCINEBENCHのスコアが21,110から21,556に向上した。もちろんCPU温度も下がるので、第12世代Coreを使う場合はCPUクーラーをリテールクーラーからアップグレードすべきだろう(その2へ続く)。
【TEXT: 清水貴裕、多賀ひろし】
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