特集、その他
「長持ちするHDD選び」から「徐々に進行するHDDの病」まで、データ復旧のプロにHDDの神髄を聞いてきた
高信頼HDDとしてプロが「WD Red」を業務に採用する理由も text by 石井英男
2017年9月21日 07:01
プロが使うWD Red、高負荷が連続するHDD復旧サービスにも耐える高耐久HDD
――HDD復旧に使用するHDDはWD Redを使用しているという話がありましたが、これは何か理由があるのでしょうか。
[浦口氏]データを復旧する際にHDDのクローンを作成するのですが、例えば、2TBのHDDのクローンを作成する場合、データが書き込まれる側のHDDはその分連続して負荷がかかることになります。HDDにとって結構過酷な状況となるので、信頼性の面から熱や振動に強く、連続稼働にも耐えられるものが必要になります。
過去に別のHDDを使用していたこともあったのですが、いざユーザーさんに納品するという段階で、復元したデータを保存していたHDDに不良セクタが多発し、もう一度作業をやり直したということがありました。
WD Redは低回転で発熱も少なく、振動センサーなども備えています。24時間365日動作も保証されているので、私たちが信頼をおけるHDDということで、WD Redを使っています。また、これまでの経験から、WD Redは復旧依頼に持ち込まれる数が少ないというデータもあったので、その部分も選択した理由になりますね。
――いつごろからWD Redを採用しているのでしょうか。
[浦口氏]WD Redは、2015年くらいから採用しています。弊社のフォレンジックサービスのほうで、警察機関向けに証拠保全を行うツールを提供しているんですが、そのツールに搭載する2.5インチの1TB HDDを選定するということで、様々なメーカーの製品を試しました。
証拠保全の作業は、現場から預かってきたものをできるだけ早く保全して捜査に使いたいというニーズがあるので、なるべく高速なモデルが良いだろうと選定作業を進めました。ところが、各社のHDDをテストしていく中、7,200回転の2.5インチHDDは高負荷な状態で運用し続けると、メーカーを問わず一定期間過ぎるとなんらかの不具合が出てくることが多かったんですよね。2.5インチHDDは小型ですし、発熱の面で高回転モデルは不利な面があります。
データが失われてしまっては意味が無いので、次は低回転のモデルをテストすることになりました。その中で条件をクリアしたのがWD Redだったのですが、5,400回転のわりには想像以上に速い書き込み速度を実現していて、証拠保全をし終わったあとの発熱量も7,200回転のHDDよりだいぶ低いこともわかりました。LBAの先頭から最後のセクターまでずっと書き続けていくという、消耗を促進させるような書き込みテストを毎日毎日繰り返していく中で、最終的にWD Redが一番適しているという結論に至りました。
その後、警察機関に正式採用されてからずっと使っていただいているんですが、今のところ全くトラブルがないので、検証結果通り高い信頼性を発揮してくれています。こうした経験などから、復旧業務に使用するHDDもすべてWD Redに切り替えて使用することになりました。
復旧の話に戻ると、データの復旧が終わって規定の保管期限を終えたHDDは、記録されたデータの抹消処理を行い、再びクローン用のHDDとして使えるように待機させるんです。S.M.A.R.T.にエラーが出るまで数百回はこの作業に使用されるので、耐久性が高いに越したことはありません。速度面で見ても、過去に復旧作業に使用していた7,200回転のHDDと同等の速度が出ており、回転数が低い分発熱が少なく、速度も十分に出ている点も採用する理由になりましたね。
――耐久性の面では低回転で発熱が低いHDDが有利とのことですが、復旧依頼に持ち込まれる率も低いのでしょうか。
[浦口氏]傾向としては、低回転HDDの復旧依頼は少ないと言えるかもしれないですね。ただ、2.5インチHDDに関しては衝撃を受けやすい環境で使われることが多く、落下などが原因の障害で持ち込まれることが多いので、回転数による傾向はあまり見えないかもしれません。
3.5インチHDDであれば、傾向は顕著に出てくるはずです。振動などが少ない場所で長い間利用する場合などでは、発熱によるダメージの進行はかなり変わってきます。また、ファームウェアの調整などでもHDDの消耗度合いも変わってきます。スペックシートだけ見ている分にはあまり違いが見えてきませんが、WD Redであれば「NASware」とファームウェアのチューニングがアピールされていますし、高負荷環境で連続して使用されることが想定されているのかどうかは、HDDを長く使う上で重要な部分になりますね。
――クローンに使用されたHDDは再利用されるとのことでしたが、復旧したデータはユーザーにどう渡されるのでしょうか。
[浦口氏]復旧したデータの納品は、貸し出し用のHDDに入れてお渡しするか、ご購入いただいた新品のHDDに入れてお渡しするか、お客様にご選択いただいてます。ただ、弊社はウエスタンデジタル公認のデータリカバリーパートナーでもありますので、お客様がお求めやすく、受領したデータを安心して取り扱えるように「WD Elements Portable」を購入用のHDDとして容量別に取り揃えています。
「WD Elements Portable」はポータブルHDDの中ではコストパフォーマンスがよく、信頼性も高いため、これまでウエスタンデジタル製のHDDを知らなかったお客様がデータトラブルをきっかけとしてウエスタンデジタル製品の良さを知っていただくための入門機となるよう、弊社なりにマーケティング面で協力をさせていただいてます。