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6コアRyzen APUで10万円切りの小型PC「STORM PG-RT」を試す

カジュアルゲームからクリエイター用途まで使える高コスパBTO PC text by 坂本はじめ

STORMの「PG-RT」

 今回紹介するのは、BTO PCブランドの「STORM」が手掛ける第3世代Ryzen APU「Ryzen 5 PRO 4650G」搭載PCの「PG-RT」だ。

 コンパクトな白色の筐体に最新のAPUを搭載したPG-RTは、10万円を切る税込98,800円という価格を実現したコストパフォーマンスを重要視するユーザーに向けた導入しやすい価格帯のモデルになっている。

 シンプルな構成でコンパクトかつ低価格を実現したPG-RTの実力を、ベンチマークテストやゲームでチェックしてみた。

パワフルな最新APU「Ryzen 5 PRO 4650G」を搭載するコンパクトPC

 STORMの「PG-RT」は、デスクトップ版Renoirこと第3世代Ryzen APUを搭載するエントリークラスのコンパクトPC。Mini-ITX専用ケース「RAIJINTEK METIS PLUS」を採用しており、筐体サイズは190×254×277mm (幅×高さ×奥行)。

 今回レビューするモデルは、6コアCPUと7コアGPUを統合した「Ryzen 5 PRO 4650G」と、AMD B550チップセット搭載マザーボードを採用。その他のパーツには、16GB(8GB×2)のDDR4-3200メモリや、250GBのNVMe SSDを搭載しており、販売価格は税込98,800円。

AMD最新のAPUである「第3世代Ryzen APU(Renoir)」と、Mini-ITX専用ケース「RAIJINTEK METIS PLUS」を採用したコンパクトなBTO PCだ。

 ビデオカードを必要としないAPUを搭載しているため、PG-RTはシンプルなパーツ構成となっている。ケースの内部で目立っているのは、RGB LEDを搭載したCPUクーラーのWraith PrismやリングタイプのLEDを搭載する排気ファンで、ケーブルはこれらのパーツのイルミネーションを邪魔しないようにまとめられている。

ケース内部。主要なパーツは右側面に配置されており、ケーブルも主要なパーツの邪魔にならないように束ねられている。
マザーボード裏面側。2.5インチドライブを搭載可能なスペースもある。
CPUクーラーと排気ファンはLEDを搭載しており、アクリルウインドウ越しにイルミネーションを楽しめる。
第3世代Ryzen 5の箱との比較。拡張カードなどが搭載できるので超小型というわけではないが、卓上などにも置けるコンパクトさ。

ビデオカードの増設も可能なケースと電源ユニット

 PG-RTが採用するRAIJINTEK METIS PLUSには、2スロットサイズの拡張カードを搭載できるスペースが用意されており、ショート基板のビデオカードや、キャプチャカードなどを追加可能だ。これに加えて、PG-RTは650Wの大容量SFX電源ユニットも搭載しており、電源側にもゆとりがある。

 これらのケースと電源の仕様は、高性能なビデオカードを追加するのに十分なもので、将来GPU性能に不足を感じた場合、ビデオカードを追加することでPCの性能をアップグレードする道が用意されている。今回のサンプル機ではビデオカード用の電源ケーブルが付属してなかったが、将来的にビデカードを増設する可能性がある場合は、注文時にケーブルに関しても相談すると良いだろう。

ケースには2本の拡張スロットが用意されており、キャプチャカードやLANカードなどはもちろん、ショート基板の2スロット占有ビデオカードなども搭載できる。
PG-RTは容量650Wの電源ユニットを搭載している。パーツ構成的には十分すぎるほどの容量だが、そのおかげでビデオカードの増設にもスムーズに対応できる。

 また、STORMでは、有料サービスとしてビデオカードの追加などを請け負うPCカスタマイズサービスを提供しているので、アップグレード作業に自信がないユーザーでも、必要に応じてPG-RTをアップグレードすることができる。

 PCを長く使っていると、かつては無用に感じていた性能や機能が必要になるというパターンはありがちだ。そうした場合に拡張カードのアップグレードで対応できる余地が存在していることは、特にエントリークラスのPCにおいては魅力であると言えるだろう。

6コアAPUの性能をしっかり発揮、ベンチマークでパフォーマンスチェック

 PG-RTが搭載するRyzen 5 PRO 4650Gは、Zen 2ベースの6コア12スレッドCPUと、Vegaベースの7コアGPUを備えるAPUだ。まずはこのAPUが備える基本的な性能をベンチマークテストでチェックしてみよう。

 実行したのはCPUベンチマークの「CINEBENCH R20」と、ゲームベンチマークの「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」だ。

Ryzen 5 PRO 4650GのCPU-Z実行画面。
Ryzen 5 PRO 4650GのGPU-Z実行画面。

 CPUベンチマークのCINEBENCH R20では、全CPUコアを活用するCPUテストで「3,510pts」、1コア性能を測定するSingle Coreテストで「487pts」。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、フルHD解像度かつ「標準品質(デスクトップPC)」設定で「5,618」を記録して、「とても快適」との評価を獲得した。

 ビデオカードなしでもゲームを楽しめる性能を実現するGPU性能もさることながら、最新設計であるZen 2を採用したCPUの性能は素晴らしい。PG-RTは10万円を切るエントリークラスのPCだが、Ryzen 5 PRO 4650GのCPU性能は、動画や3DCGを扱うクリエイティブな用途でも十分通用するレベルにある。

CINEBENCH R20のスコア。最新設計を採用する6コア12スレッドCPUだけあって、強力なパフォーマンスを発揮している。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークのスコア。APU内蔵GPUながら、ゲームをプレイできる実力を備えていることが伺える結果だ。

 ストレージ側の速度も確認してみたが、搭載されていたSSDはSamsungのMZVLB256HBHQ-0000だった。ベンチマークの結果はリードが約3.5GB/s、ライトが約2.3GB/sだった。Renoir世代のRyzen APUはPCIe 3.0までの対応なので、十分な速度が出ているといえるだろう。

搭載されているNVMe SSDはSamsung製のモデル。
CrystalDiskMarkの結果。メインドライブには3.5GB/sオーバーのNVMe SSDが搭載されていた。現行のAPUはPCIe 3.0対応なので十分な速度と言える。

小型筐体でもしっかり冷却、ベンチマーク実行中の動作温度をチェック

 コンパクトな筐体で十分な冷却が行えているのかをチェックすべく、モニタリングソフトのHWiNFOを使って、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク実行時と、動画エンコード時の温度データを取得してみた。テスト時の室温は約26℃。

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク実行中のモニタリングデータによれば、CPU温度は最大63.3℃、GPU温度は最大51.4℃だった。このとき、CPUクーラーの冷却ファンは平均1,900rpmで動作しており、比較的小さな動作音でCPUとGPUの温度をしっかり抑え込めているようだ。

 一方、TMPGEnc Video Mastering Works 7で動画エンコードを10分間実行し続けたさいのデータでは、最大CPU温度は79.8℃、最大GPU温度は55.7℃だった。CPU温度のリミット値は95℃なので冷却性能自体はまだ余裕がある。なお、CPUクーラーの冷却ファンは3,000rpm弱で動作しているため、エンコードのようにCPU負荷が高い用途では動作音がそれりに大きなものとなる。

小型PCでもカジュアルゲームがしっかり遊べるゲーム性能「VALORANT」「フォートナイト」「レインボーシックス シージ」でテスト

 さて、PG-RTが搭載するRyzen 5 PRO 4650Gの内蔵GPUで、実際のゲームがどの程度遊べるのかをチェックしていこう。テストしたゲームは、「VALORANT」、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」の3タイトルだ。

「VALORANT」は高画質設定でも余裕でプレイ可能

VALORANT

 VALORANTでは、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)にて、3種類の描画設定(低・中・高)でフレームレートの測定を行った。

 ハードウェアへの要求スペックが低いことで知られるVALORANTでは、いずれの設定でも100fpsを超える平均フレームレートを記録した。VALORANTは場面によって描画負荷の変動が大きいタイトルでもあるのだが、高負荷な場面でも「低」設定なら100fps以上を維持できていた。

描画設定「高」に設定した場合。高負荷な場面では100fpsを大きく割り込むが、ほとんどの場面で60fpsを維持できる。
描画設定を「低」にすると、描画はかなり簡素なものとなるが、高負荷な場面でも100fps以上を維持することができた。

「フォートナイト」では画質にこだわらなければ60fps付近でのプレイが可能

フォートナイト

 フォートナイトでは、DirectX 11のフルHD解像度設定で、描画プリセット「低」、「中」、「高」、「最高」の4通りでフレームレートを測定した。なお、いずれの設定でも3D解像度は100%に設定している。

 滑らかな描画でゲームを楽しめる60fpsを超えたのは「低」のみで、「高」以上になるとプレイアブルの最低ラインとなる30fpsを下回っている。描画プリセット「低」設定では、影の描画やオブジェクトのディティールが簡略化されてしまうが、それでもバトルロイヤルゲームとしてのフォートナイトを楽しむことは可能だ。

描画プリセット「最高」。フレームレートが20fpsを割り込むため、この設定でプレイするのは厳しい。
描画プリセット「低」。影の描画などはガッツリ省略されているが、60fps付近でのプレイが狙える。

中画質設定で60fpsの維持がが狙える「レインボーシックス シージ」

レインボーシックス シージ

 レインボーシックス シージでは、DirectX 11のフルHD解像度設定で、描画プリセットの「低」「中」「最高」の3つをベンチマークモードでテストした。

 ベンチマークの実行結果では、いずれの条件でも平均フレームレートは60fpsを超えている。とはいえ、「最高」設定では64fpsとギリギリの数値で60fpsを下回る場面も少なくない。より安定して60fps以上での動作を狙うなら「中」設定あたりが良さそうだ。

描画プリセット「最高」でも平均フレームレートは60fpsを超えるが、ベンチマーク実行中に60fpsを下回る場面もみられる。
描画プリセットを「中」に落とせば、「最高」設定で60fpsを割り込んでいた場面の多くで60fps以上を維持できる。

APU搭載なので電力効率は良好、消費電力の目安はレンダリング時で100W前後、ゲーム時で80W前後

 最後に、システム全体の消費電力も計測してみた。結果は以下のグラフの通りだ。

 アイドル時は26.2W、レンダリングを行うCINEBENCH R20実行時が103.3W、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク実行時が77.5Wとなった。APUは構成をシンプルにできる分システム全体での消費電力を抑えやすいので、扱いやすいものとなっている。

息抜きにゲームも楽しめる新世代のエントリークラスBTO PC

 PG-RTは税込でも10万円以下で購入できるエントリークラスのBTO PCだが、本格的なクリエイティブ用途でも通用する6コア12スレッドCPUの優れた性能と、息抜き程度のプレイには十分なパフォーマンスでゲームを楽しめるGPU性能を兼ね備えている。エントリークラスとはいえ、その性能は多くのPCユーザーを満足させることができるはずだ。

 また、PG-RTには、購入後にGPU性能の不足を感じた際はビデオカードの追加というアップグレード手段も残されている。性能面の保険を掛けられる点でも、「はじめてのPC」としてBTO PCの購入を検討しているユーザーに勧められる、真の意味でのエントリー向けPCであると言えるだろう。

[制作協力:STORM]