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自作のプロの答えはこれだ!MISSION1「4K×ゲーミングPC」【今、本当に欲しい自作PC②】

DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!

一生忘れることのない極上の映像体験をあなたに

 「ゲームにどういう体験を求めるか?」によってゲーミングPCの最適解は大きく変わってくる。筆者の場合、ゲームの楽しさは“極上の映像体験”なしには語れない(これは今も昔も変わらない)。筆者に与えられた「4KレディなゲーミングPC」というミッションは、筆者のゲーミングPCにかける情熱をいかに現実の自作PCに落とし込めるかという問いでもある。

 身もフタもないことを言えば、こういうミッションでは「ハイエンド以外は妥協の産物」となってしまう。フルHDやWQHDでのゲーミングならいざ知らず、4Kはとにかく今手に入る最強構成が正義。だがそれではおもしろみに欠ける。引ける部分は引き、重要な部分に予算を回す。これであれこれ悩むのが自作PC最大の楽しみだ。

 今回のミッションでは、単純に最上位の一つ下を選んでいくということはせず、妥協すべきではないところは全力で、ただし譲れるところは必要とあらばハイエンドではないパーツも積極的に採り入れることにする。それでも費用は40万円近くなってしまったが、将来性という自作PCで重要な要素もある程度残しつつ「サイバーパンク2077」級のゲームも4Kで楽しめるような構成とした。納期や在庫の関係でPCケースとビデオカードの色味を合わせられなかったのは残念だが、長く使い続けられるゲーミングPCになったはずだ。

Step1 手軽で強いゲーミングCPUを選ぶ

1世代前の「Core i9-12900K」と同コア数で、さらに性能を向上。PCの用途として、写真や動画編集などが主でゲームが従ならこちらを視野に入れてもよい
3D V-Cache搭載Ryzenの最廉価モデルだ。3D V-Cacheは動画や写真編集ではほぼ意味がないので、ゲームの速さに特化したCPUと言える

 ゲーミングPCでもっとも重要な要素はGPUだが、その性能を引き出すにはCPU性能も重要だ。この論でいくと「Core i9-13900K」や「Ryzen 9 7950X」のような高クロックかつ多コアCPUを選びがちだが、どちらも実売価格は9万円前後。だが本ミッションではあえて8コア16スレッドの「Ryzen 7 7800X3D(実売価格66,000円前後)」を選択した。

 最大の理由はゲームに特化した3D V-Cacheを載せたCPUで一番安いという点だが、Ryzen 7000シリーズの採用するSocket AM5は2025年以降も使うことが確定しているCPUソケットでもある。将来PCゲームに対するCPUの要求が変化しても、将来のRyzenへの乗り換えられる“可能性”を高く評価した。

 性能と消費電力のバランスにおいてもRyzen 7 7800X3Dは実にゲーム向きだ。Ryzen7 7800X3Dの同価格帯には「Core i7-13700K」があるが、こちらは16コア24スレッド(8コア8スレッド分はEコア)である。動画エンコーダ「HandBrake」による動画の出力速度においては、並列度の高いCore i7-13700Kのほうが圧倒的に強い。しかし高負荷時の消費電力の多さはCore i7-13700K最大のネック。

 そしてゲーム「オーバーウォッチ2」の検証では同じRTX 4080を使ってもRyzen 7 7800X3Dのほうがフレームレートがよく伸びる。4K環境ではGPU側にボトルネックが移るためCPUのパワー差が相対的に小さくなるし、一部ゲームではCore i7-13700Kのほうが伸びる場合もある。だが総じてRyzen 7 7800X3Dは高性能GPUのパワーを引き出しやすいという点を評価した。

Ryzen 9 7950X3Dは導入がちょっと面倒
Xbox Game Barのアップデートなど、最適な状態に持ち込むための条件作りがRyzen 9 7950X3Dだとめんどうになる

 CPUが16コア32スレッドの「Ryzen 9 7950X3D」のほうがCPUのポテンシャルは上だが、「Xbox Game Bar」がゲームと判断しない処理は3D V-Cacheのないコアで実行されるという仕様がネック。これを防ぐ設定もあるが、何よりRyzen 7 7800X3Dなら「どんなゲームも絶対に」3D VCacheの載ったコアで実行される点を評価した。

Step2 4KゲーミングならRTX 4080以上を!

非OCモデルだがTGPはRTX4080の定格よりも高い340W設定なので、より高ブースト状態を維持できる仕様がポイント。高負荷なゲームにオススメだ

 4Kで最高の映像体験をするゲーミングPCを組むのであればGeForce RTX 40シリーズから逃れることはできない。描画負荷の高い4KではDLSSのようなアップスケーラの利用が不可避だが、RTX 40シリーズのみが使えるフレーム生成機能「DLSS Frame Generation(DLSS FG)」の威力が絶大だからだ。

 レイトレーシングを含めた超高画質設定でもDLSS FGのおかげでフレームレートを倍増、場合によっては3倍近くまで引き上げることができる。アップスケーラなしの4Kプレイは現実味のない理想論に過ぎない。

 DLSS FGは対応タイトルの少なさがネックだが、主に新作ゲームで着々と対応を拡大している(近頃大ヒット作に恵まれないが、これはゲーム業界の問題だ)。

 AMDの「Radeon RX 7900 XTX」も視野に入るが、DLSS FG相当のFSR 3の採用が遅れていることと、レイトレーシングのパフォーマンスが低いことからRTX 4080を選択した。最高の映像体験という本ミッションには、性能がバランスよく高いRTX 4080のほうが好適なのだ。

RTX 4080は過大と考えるならRTX 4070 Tiも視野に入るが、ビデオメモリが12GB、メモリバス幅が192bitなので4K設定ではやや性能が物足りなくなる
RTX 4080と同予算ならこれも視野に入る。こちらも高性能だが、まだDLSS Frame Generationに相当するFSR3が使えないのが痛い

 今回RTX 4080では予算オーバーになったときのプランBとして用意した「RTX 4070Ti」も含めて性能を検証すると、RTX 4080は全般的に解像度を問わずフレームレートが伸びる。とくにサイバーパンク2077は、RTX 4080なら最低fpsが80fpsと高く(RTX4070 Tiは60fps弱)。4Kでも性能が期待できる。「Forza Horizon 5」ではRX 7900 XTも健闘したが、DLSS FGが使えるRTX 4080のほうが強かった。

Step3 大型PCケースで冷却力も内部スペースも確保

見栄えも拡張性も良好な大型ケース
近年流行の中身を見せるケースは大型パーツの収容がしやすい。ドライブベイも下部チャンバー内に確保されているので拡張性は十分

 PCケースは物理的にパーツが入れば何でもよいと答える人が多いが、それは大きな誤り。パーツが高性能化し冷却が大掛かりになりがちな今では、PCケースの選択がパーツ選びの方向性を決めてしまう。

 とは言え近年の流行である中を見せるタイプのPCケースはフロントや天板のスペースに余裕があるため、過度の心配は不要だ。

 LANCOOLⅢ RGBは、裏配線用スペースに設けられた配線隠し用カバーや側面下部が開閉式パネルで配線やストレージ増設も容易という使い勝手のよさも選択のポイントとなった。

裏配線用スペースをすっきり見せるのもテクが必要だが、このPCケースは門扉のように開くケーブル隠しでスマートに見せられる
下部チャンバーは両側面がパネルになっており、ネジ不要で簡単に開く。後からここにストレージを追加したくなっても簡単だ

 天板部分にファンや大型ラジエータを搭載できるケースであるため、CPUクーラーは簡易水冷「Galahad Ⅱ Trinity」を選択。CPUのTDPが120Wなので大型空冷でも十分だが、組み立て時の作業性と見栄えを考えて選択した。ラジエータのファンが最初から固定されており、ファンの配線も連結式なのでケーブル配線に悩む必要がない。

PCケースの色に合わせ簡易水冷も白ベースのものを選択した。水冷ヘッドは同梱のキャップ交換で発光の雰囲気を変えられるのがよい
ラジエータにファンを固定して配線をするのは手間がかかるが、この製品では配線は連結式、かつ出荷時に固定済みなのでかなりラク

 マザーは本ミッションにおける隠れたポイントだ。今回Socket AM5のCPUを選んだのはCPU直結のM.2スロットがGen 5対応であるため。安価なB650マザーはM.2がGen 4止まりなのが普通だが、この「MPG B650 CARBON WIFI」はGen 5に対応。SSDをGen 5にしてもゲームの読み出し時間はGen4と大差ないが、ファイルコピー時間のようなタスクは確実に短縮できる。

 本ミッションでのSSDはGen 4対応のものを使用したが、将来的にGen5が使いたくなったらすぐ使える、という将来性を高く評価した(ただしGPUのGen 5については対応製品がまだない)。

CPU直結M.2スロットがGen 4対応の製品が多い中、このB650マザーはGen 5対応。色が黒系なことだけが心残り
CPU直結M.2スロットはSSDの固定のみならずヒートシンクの固定すらドライバー不要。ヒートシンク自体も大ぶりで冷えも期待できそうだ

完成!

 PCケースが比較的大型なので組み込み手順でとくに難しい部分はないが、簡易水冷のラジエータはマザーボードの後に設置すると、電源ユニットからの配線(とくにEPS12V)がスムーズに行なえる。裏配線スペースにあるカバーはケーブルを出し入れできる箇所が決まっているので、とくに太いATXメインパワーや12VHPWRケーブルはじっくりと取り回しを考えながら作業するのがコツ。

 マザーボード空間にベイがないため、全長約33cmのRTX 4080搭載カードを入れてもフロント側にはまだ余裕がある。メモリやストレージ容量に関しては多過ぎず少な過ぎずな塩梅を狙ったが、これだけあれば今時の重量級ゲームも恐くない。

最終的なパーツ構成

2023年リリースの最新ゲームも4Kで楽しめる?

2023年の夏に話題になった2本の人気ゲームを最高画質かつ3種類の解像度で検証。StarfieldはGeForceのResizable BAR対策ドライバで検証している ARMORED CORE VI FIRE OF RUBICON:©Bandai Namco Entertainment Inc. / ©1997-2023 FromSoftware, Inc. All rights reserved.
Starfield:© 2023 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Trademarks belong to their respective owners. All Rights Reserved.

 サイバーパンク2077やForza Horizon 5は高フレームレートが出ると実証済みだが、今夏話題を集めた「ARMORED COREVI FIRES OF RUBICON」(AC6)と「Starfield」でどの程度動くか検証してみよう。

 まずAC6は報酬稼ぎで繰り返しプレイすることの多い「テスターAC撃破」で検証。WQHDまでは120fpsのフレームレート制限で頭打ちになる。4Kでも平均110fpsを出せる性能が確認できた。AC6ではミッション成功と言える。一方Starfieldはシーンによりフレームレートの出方が激しく変化する。都市部(ジェミソン)のNPCが多いシチュエーションではフルHDでも90fpsで頭打ち、4Kではなんとか平均60fpsを超えることができた。将来実装が予告されたDLSSではどうなるかに注目したい。

予算を抑えるならWQHD狙いに切り替えを

 以上のように4Kゲーミングを実現するには多くの予算が必要だ。PC本体が4K対応ならば、ディスプレイも4K対応の製品を使う必要がある。ディスプレイも含めた予算で悩むならば、いっそのことハードルを下げ、WQHDゲーミング狙いにすることをオススメしたい。

 GeForceならRTX 4070がDLSS FGが使えるので狙い目だが、CUDAコアが少ないため性能も今一つ伸びきらない。むしろAMD最新モデルの「Radeon RX 7800 XT」がオススメだ。ビデオメモリは16GBと多く、メモリバス幅も256bitと広い(RTX 4070は12GB/192bit)ため、より高負荷な状況に強い。

 WQHD向けのゲーミング液晶も最近はリフレッシュレートや機能面で進化が激しく、価格も下がってきている。4Kにいく前にWQHDに寄り道するのもアリだろう。

RX 7800 XTはRTX 4080と同じメモリバス幅とビデオメモリ搭載量だが、WQHDを標的にしたGPUなので描画性能は20〜50%下となる
27型WQHDでリフレッシュレート180Hz、HDR400にも対応する「LCD-GDQ271JA」。GPUだけが強くても意味がないのだ

編集部から

ゲームの世界感をくまなく味わおう

 ゲームを遊ぶのに高解像度は必須ではないけれど、高精細なテクスチャや美麗なエフェクトによる鮮烈な映像は一生ものの体験になり得えます。このPCはその入り口となるでしょう。

【検証環境】
<LGA1700>マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 HERO(Intel Z790)
<Socket AM5>マザーボードMSI MPG B650 CARBON WIFI(AMD B650)
<共通>メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードGainward GeForce RTX 4080 Phantom(NVIDIA GeForce RTX 4080)
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850X NVMe SSD WDS200T2X0E[M.2(PCI Express 4.0x4)、2TB]
電源Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro
電力計HWBusters Powenetics v2
HandBrake4K@60fps 動画( 約3分)をプリセットの“Super HQ1080p30 Surround”でMP4/MKV形式に書き出すのに要した時間
オーバーウォッチ 2マップ“Eichenwalde”におけるbotマッチ観戦中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
サイバーパンク2077GeForceはDLSS “バランス”およびDLSS FGを有効、RadeonはFSR 2 “バランス”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Forza Horizon 5GeForceはDLSS “バランス”およびDLSS FGを有効、RadeonはFSR 2 “バランス”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生時のフレームレートを「CapFrameX」で計測
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONミッション「テスターAC撃破」で一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Starfieldプレイヤーが最初に降り立つ都市(ジェミソン)のMAST地区を移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

[TEXT:加藤勝明]

最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は絶賛発売中!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、現在発売中の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!