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自作のプロの答えはこれだ!MISSION3「高コスパ×ゲーミングPC」【今、本当に欲しい自作PC④】

DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!

高性能、高冷却、高コスパ 三拍子揃ったゲーミングPC

 家でくつろいでいたら、パワレポ編集部から筆者あてにメールが届いた。メールには、高コスパなゲーミングPCを組んでみろ、というミッションが書いてあった。おもしろい、やってみようと二つ返事で引き受け、早速方針と構成を検討してみた。

 今回のマシンだが、高コスパなゲーミングPCということであれば、予算の半分以上をCPUとビデオカードに割り振り、一点豪華ならぬ“二点豪華”な構成を目指すのを基本的な方針として定めた。

 さらに、ゲームプレイの満足度を上げるという意味では、フルHDではなくWQHD環境で重量級のゲームが快適に動作するような構成が望ましい。さすがにコスパを重視しつつ重量級ゲームで4K環境を目指すのは無理があるだろう。

 また“高コスパ”と言っても、安価につられて性能がイマイチなパーツを選んだ結果、望むような性能が発揮されないような事態になってしまっては本末転倒だ。そのため、CPUクーラーを含め、ケース内のエアフローを良好に保つことも重視しながら、全体的な性能と価格のバランスを取って、長く使えるような構成を目指すことにする。

 以上の方針のもと、実際にパーツを選定するにあたって、カギとなるCPUやビデオカードは候補を複数用意し、どれを選ぶのが最適か、さまざまなゲーミングベンチマークテストを行なって検証していこう。

Step1 コストと性能のバランスで選べばRTX 4070だ!

トップのRGBライティングと大型3連ファンを搭載していることが特徴。12VHPWRコネクタを備え、ブーストクロックを2.535GHzまで高めたオーバークロックモデル

 今回のミッションでもっとも重要なパーツであるビデオカードから選んでいこう。WQHDの解像度でゲームを快適にプレイするためには、DLSSやレイトレーシング技術に対応しているGeForce RTX 4070とRTX 4060 TiクラスのGPUが思い当たるが、どちらを搭載したビデオカードが最適だろうか。

長さ22.5cmのコンパクトなサイズのため小型のケースでも搭載しやすい。準ファンレス機能と9cmのデュアルファンで静音性と冷却性能を両立

 RTX 4070はビデオメモリを12GB搭載しており、重量級のゲームに向いている。一方のRTX 4060 Tiはビデオメモリは8GBだが、消費電力も少なく、2万円~ 3万円ほど安く購入できる。

 そこで、定番のベンチマークであるFINAL FANTASY XVとアサシン クリード ヴァルハラにてフルHDとWQHD解像度でそれぞれ比較した。FF15の場合、RTX 4070では両解像度とも「非常に快適(Score 12,000以上)」判定だが、RTX 4060 Tiの場合、WQHDの解像度では「とても快適(同9,000 ~ 11,999)」にとどまる。WQHD解像度ではRTX 4070に軍配が上がった。

 続いて重量級のゲームであるアサシン クリード ヴァルハラのゲーム内ベンチマークを最高設定プリセットにて行なった。こちらもフルHDであればどちらのビデオカードでも平均で120fpsを上回り、快適にプレイは可能だ。ただしWQHD解像度では、RTX 4060 Tiを使用したときは平均フレームレートが100fpsを下回る結果となった。WQHD環境で少しでも高いフレームレートでプレイしたい場合はRTX 4070がよいだろう。

 RTX 4060 TiはフルHD環境でゲームをプレイする場合は非常に高い性能を備えており、さらに消費電力がRTX 4070より50W以上低く、発熱も小さいため、あまり冷却性能を重視していないタイプのPCケースに搭載する場合は候補になる。また価格差もあるため、その差額をゲーミングディスプレイやゲーミングデバイスを購入するのに使うという方法もある。

 今回はWQHD解像度でゲームを快適にプレイするという目的があるため、最終的にRTX 4070を選択することにする。

Step2 CPUは第12世代か第13世代か

 最近のゲームはCPUのパワーも要求するタイトルが増えているため、ビデオカードに続きCPUにも予算を割り振ろう。

最新の第13世代CoreシリーズのPBP 65Wモデル。16コア24スレッドという仕様で性能も高い。オーバークロックには対応しないが、消費電力が低く扱いやすい

 そこで今回は最新の第13世代CoreシリーズからCore i7-13700に注目した。このモデルはPコアを8基、Eコアを8基による合計24スレッド同時処理が可能なCPUだ。PBPが65Wと低く抑えられており、価格も6万円ほどに収まっているため、扱いやすいCPUと言えるだろう。

第12世代Coreシリーズのフラグシップ。倍率ロックが解除されたK型番のモデルで、Turbo Boost時最大5.2GHzと性能が高い半面、MTPが241Wと消費電力も大きい

 ほかにCPU候補はないか検討していたところ、前世代のフラグシップモデルであるCore i9-12900Kが目に付いた。このCPUは第13世代と共通のマザーボードを使うことができ、コア数も最大ブーストクロックもCore i7-13700と同じ。現在は価格が同程度まで下がり、購入するにはよいタイミングになっている。ただし、オーバークロックに対応したK型番のモデルで性能は高いが、TDPが125W、MTPが241Wと高く、冷却が不十分の場合は本来の性能を発揮することが難しい点には注意が必要だ。

主な仕様

 今回はこの2モデルの性能と温度、消費電力を比較した。冷却を万全にするためにDeepCool製の36cmクラスのラジエータを備えた水冷クーラーを使用している。CINEBENCHの結果は、Multi CoreではMTPの値が高いCore i9-12900Kのほうがわずかにスコアが高くなっているが、ほぼ同等のスコアと考えて問題ないだろう。スコア自体も非常に高いもので、最近のマルチスレッドへの対応が進んだ重量級のゲームや各種アプリケーションでも十分に対応可能な性能だと言える。

 CINEBENCH中のCPU温度と消費電力の結果も見てみよう。温度はMTPが低いCore i7-13700が5℃低くなった。消費電力はアイドル時こそ同レベルだが、高い負荷がかかった際はやはりCore i7-13700が26Wも低い結果となっている。

 以上の検証により、16コア24スレッドによる十分な性能を備え、温度や消費電力が低くて扱いやすいCore i7-13700を採用することにした。

Step3 マザーボードはコストを抑えて、その分冷却を強化

 CPUとビデオカード以外のパーツは予算を抑えたい。そのためマザーボードはB760チップセットに注目した。B760はチップセットとしては下位モデルにあたるが、これを搭載したマザーボードは搭載部品が豪華なものから簡素なものまで幅広い。今回作成するのはゲーミングPCなので、価格が抑えられた製品が多いmicroATXフォームファクターから選びつつ電源回路は長時間ゲームをしても安定して動作する製品を選択した。

コスパに優れたmicroATXゲーミング
強力な電源回路により長時間の高負荷にも対応できる。パーツ全体で価格が高騰している中、2万円台前半で購入でき、コストパフォーマンスは高い
この価格帯では豪華な14+1+1フェーズの電源回路を搭載し高負荷時でも安定した動作を実現している。ヒートシンクも大型のもの

 今回選んだのはASRockのB760M PG Riptideだ。本製品は実売価格が22,000円と比較的手に取りやすい金額でありながら14+1+1フェーズの電源回路を搭載し、長時間の負荷に対応できる。また、最近価格が下がってきたDDR5メモリに対応しており、将来の増設も容易だ。機能面も豊富で、高速な2.5G LANや、高性能だが重量のあるビデオカードを搭載したときに破損することを防ぐ強化スチール付きの拡張スロット、高速なM.2 SSDをサーマルスロットリングから防ぐアルミ製ヒートシンクを採用するなどの特徴がある。

定番の36cmクラス水冷クーラー
36cmラジエータを備えた簡易水冷クーラー。ファンはアドレサブルRGB対応でデイジーチェーン配線を採用しているため、ケーブルマネジメントもしやすい
今回は天板に36cmラジエータを搭載。天板に36cmラジエータを搭載できないケースは多いので製品選びのときは必ず確認しよう

 主要パーツが決まったところで、これらを長時間・高負荷時でも安定動作をさせるためにCPUクーラーはDeepCool製の36cmラジエータのLS720を選んだ。このクーラーに付属しているファンはアドレサブルRGBに対応しているため非常に見栄えがよく、ゲーミングPCらしさを際立たせている。

各部にメッシュ構造を採用
コンパクトだがExtendedATXマザーボードに対応したPCケース。フロントに3連ファンを搭載しエアフローが良好。内部が広く便利なギミックも多く初心者にもお勧めの1台
フロントに3連ファンを搭載しエアフローの管理が容易。フロントパネルは簡単に外すことができるなどメンテナンス性も高い

 PCケースはフロントに3基の12cm角ファンを搭載したAntec P20Cを採用した。今回microATXのマザーボードにExtendedATXケースを採用した理由として、ExtendedATX対応ケースは内部が広く、36cmのラジエータを天板に搭載するスペースが確保されているためエアフローを含めた温度管理を容易に行なうことができるからだ。

 この構成で検証を行なったが、フロントにケースファン3基、天板に水冷ラジエータという組み合わせは効果が高く、CPUの温度を低く抑えることで性能を最大限発揮することができる構成になった。

完成!

 CPUはCore i7-13700、ビデオカードはRTX 4070をベースにしたゲーミングPCが完成した。特徴としてはWQHD解像度でも重量級のゲームを快適に楽しむことのできるゲーミング性能と、36cmラジエータの水冷クーラーによる強力な冷却性能と良好なエアフローを兼ね備えることだ。価格もパーツにメリハリを付けたことで、25万円台に収まった。また、サイドパネルがガラスであるため、ファンのLEDによってゲーミングPCらしい見た目となった。

 大型のPCケースにより内部スペースには余裕があり、メンテナンス性と拡張性が高くなったことで、末永く使うことのできるコストパフォーマンスの高い構成になった。

最終的なパーツ構成

ゲーム性能をチェック!

 完成したPCの実力を、改めてベンチマークテストで総括してみよう。ここでは、軽めの負荷のファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークと重量級のゲームであるサイバーパンク2077にて、フルHDとWQHDの解像度でそれぞれテストを行なった。FF14ではWQHD解像度でも平均で160fpsを超えるフレームレートが出ておりエフェクトが重なるシーンでも快適にプレイすることができるだろう。

 サイバーパンク2077では画質設定はウルトラで検証を行なった。フルHD環境では平均で101fps、WQHDでは平均79.7fpsで最大はわずかに100fpsを下回った。しかしeスポーツ系タイトルと違いこのフレームレートならゲームの体感が大きく変わるものではなく、快適に遊ぶことはできるだろう。

よりコスパを高めるためのカスタムプラン

ツインタワーのヒートシンクでデュアルファン構成、TDP 260WまでのCPUに対応。高さも16cmでさまざまなケースに搭載することができる
ケースがmicroATXだと安価にしやすい。組み込みやすいギミックも多数搭載されているが、水冷ラジエータは24cmまでの対応となるので注意

 この構成から価格を下げるにはCPUクーラーを空冷タイプにしてPCケースをmicroATX対応にするのがよいだろう。

 ただし、空冷クーラーの中でも比較的強力なモデルを選択しないとCPUの性能が発揮されない可能性がある。今回オススメするのは、ツインタワータイプのDeepCool AK620だ。この製品は価格が8,000円前後と水冷クーラーよりも9,000円ほど安価だが、発熱の大きいCPUでも冷却することができる性能がある。

 マザーボードと合わせてmicroATXサイズのPCケースにするのも一つの手だ。しかし、36cmクラスのラジエータを取り付けられるかどうか確認が必要だ。また小型のPCケースは内部の余裕がなくなるため、microATXケースを選ぶにしても、十分なエアフローが確保できるやや大きめのケースがオススメだ。

編集部から

メリハリのあるパーツ構成で買い得感あり

 ゲーミングPCのキモであるGPUとCPUに2/3の予算を注ぎ込み、その他のパーツに値頃感あるパーツを選んだ“2点豪華”なマシン。microATXマザーを使いつつ、36cmラジエータのためにと大型ケースを選んだのがまさに実戦的。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-13700(16コア24スレッド)
マザーボードASRock B760M PG Riptide(Intel B760)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 AMP AIRO(NVIDIA GeForce RTX 4070)
メモリCorsair VENGEANCE CMK32GX5M2B5200C40(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2)
SSDMicron Crucial P5 Plus CT2000P5PSSD8JP[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
電源玄人志向 KRPW-BK750W/85+(750W、80PLUS Bronze)
OSWindows 11 Pro(22H2)
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
アイドル時OS起動10分後の値

[TEXT:Windlass]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、現在発売中の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!