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自作のプロの答えはこれだ!MISSION4「サーバーPC×コンパクト」【今、本当に欲しい自作PC⑥】

DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!

シャドーベイが激減?それならM.2 SSDで小型サーバーPCを作ろう

 サーバーPCと言われて連想するのは、複数台の3.5インチHDDを組み込んで大量のファイルを一括管理するためのPCだろう。当然ながら3.5インチHDDを組み込むためのシャドーベイが必要になるのだが、ここ最近のPCケースはこのシャドーベイが少ない。それなりに筐体が大きいATX対応のミドルタワーケースですら、ほとんどは2基までという状況なので、サーバーPCが作りにくいのだ。

 奥行きや高さが50cmを大きく超えるフルタワーケースなら選択肢は残っているが、ファイル管理のためだけにそんなデカイPCを置きたくはないだろう。

 こんな背景もあって前々から考えていたのが、「M.2 SSDだけを使ったサーバーPC」だ。3.5インチHDDのように専用の設置スペースが必要ないので、コンパクトなMini-ITXケースでもイケるだろう(たぶん)。それにコンパクトなのに大容量サーバーPCというのは、なかなかインパクトが強い。最近では2TB以上の大容量SSDも身近になっており、一番大きな懸念材料だった価格の問題も徐々に解消されつつある。

 そこで今回は、大容量のM.2 SSDや小型のMini-ITX対応プラットフォームを活用したコンパクトなサーバーPCを作った。PCI Express x16スロットに挿すM.2スロットの増設ボードを活用し、合計4台のデータ用M.2 SSDを利用できるようにしたことが最大の見どころだ。

Step1 4基のM.2 SSDを組み込めるM.2スロット増設カード

2基のファンを装備した大型ヒートシンクの下には、PCI Express 5.0x4対応のM.2スロットを4基も装備している

 今回の構成でもっとも重要なのは、ASRockのM.2スロット増設カード「Blazing Quad M.2 Card」だ。これは、4基のPCI Express 5.0 x4対応M.2スロットを追加するための拡張カードである。今回利用するMini-ITX対応マザーボードでは2基のM.2スロットを装備するが、サーバーPCとして使うならまったく足りない。そのため、こうした拡張カードを使ってM.2スロットを追加する。

重量のあるヒートシンクを外すと、4基分のM.2スロットがある。M.2 SSDの上下に熱伝導シートが当たるので、両面実装のSSDでも安心
拡張ブラケット近くに緑のLEDが組み込まれており、組み込んだM.2 SSDに対してアクセスがあると光る

 ちなみにこうしたM.2スロット増設カードは、PCI Express 4.0対応でもっと安いものがある。だがサーバーPCは長く使うものだし、将来的にはPCI Express 5.0対応SSDへの換装もありえるので、Blazing Quad M.2 Cardがオススメだ。厚みのあるアルミプレートに2基のファンを組み合わせた大型のヒートシンクを装備し、冷却性能も高い。

将来性を考えPCI-E 4.0モデルは見送り
大手メーカー製の増設カードの一つだが、PCI Express 4.0までの対応ということと、入手性が低いこともあって見送った

 なおこのカードの本領を発揮するには、マザーボード側が1本のPCI Express 5.0 x16スロットのレーンを複数に分割して利用できる「PCIe bifurcation」機能に対応していなければならない。WebサイトでASRock製の対応マザーボードを確認できるが、後述するようにPCIe bifurcation対応であれば、他社のマザーボードでも利用できた。

Step2 システム用に1基、データ用に4基のM.2 SSDを確保

シーケンシャルリードは7GB/s、シーケンシャルライトも5.1GB/sに達する高性能なM.2 SSDだ

 データドライブ用のSSDとしては、SamsungのPCI Express 4.0 x4対応SSD「SSD 980 PRO MZ-V8P2T0B/IT」を4台用意した。これをBlazing Quad M.2 Card側に挿して利用する。PCI Express 5.0 x4対応SSDも登場しているが、さすがにまだ高い。大容量モデルを多数揃える必要があることを考えると、値頃感があって信頼性が高く、安心して利用できる今回のSSDのほうがよいだろう。

シーケンシャルリードは5GB/s、シーケンシャルライトは3.2GB/sのM.2 SSD。1TBモデルとしては比較的安い

 システムドライブ用には、MSI「SPATIUM M461 PCIe 4.0 NVMe M.2」の1TBモデルを用意した。基本的にたくさんのアプリをインストールするPCではないので、このくらいの容量でも十分過ぎるほどだ。

Step3 マザーボードはPCIe bifurcation対応に注意

AMD B650E搭載の小型マザーボード
AMD B650Eをチップセットとして採用するMini-ITX対応マザーボード。PCIe bifurcation機能に対応しており、Blazing Quad M.2 Cardが利用できた
映像出力端子としてHDMIを搭載し、有線LANは2.5Gbpsに対応する。Wi-Fi 6E対応の無線LAN機能もサポート
10+2フェーズの電源回路をサポートするほか、VRMなどを冷却する大型ヒートシンクを搭載し、安心してPCを利用できる

 マザーボードは、Mini-ITX対応のASUSTeK「ROG STRIX B650E-I GAMING WIFI」を選んだ。前述のとおりBlazing Quad M.2 Cardで4台のM.2 SSDを利用するには、PCIe bifurcation機能に対応したマザーボードが必要だ。さらに、16レーンを4レーン×4に分割することが可能なマザーボードとなるとかなり限定され、IntelではW790チップセット搭載モデルしかないし、Blazing Quad M.2 Cardの対応マザーボードリストを見ると、AMD向けマザーボードがいくつかあるだけだ。こうしたことを踏まえると、リストにあるASRockのMini-ITX対応マザーボード「B650EPG-ITX WiFi」のほうが安全ではある。

HYPER M.2 X16 GEN 4 CARDの互換性確認リストを見ると、今回のマザーボードでも4基のM.2 SSDを利用できることが分かる

 ただ、PCIe bifurcation自体はメーカー固有の機能ではない。たとえばほぼ同じ機能をサポートするASUSTeKのM.2スロット増設カード「HYPER M.2 X16 GEN 4 CARD」でもPCIe bifurcation機能を要求しており、対応するマザーボードのリストを公開している。このリストを見れば、ASUSTeK製マザーボードのPCIe bifurcation対応モデルが分かる。今回はこのHYPER M.2 X16 GEN 4 CARDの対応リストから、ROG STRIX B650 E-I GAMING WIFIをピックアップした。実際の検証でも問題なく4台のM.2 SSDを認識し、各種テストを実行できた。

Step4 縦型で置き場所を選ばない&キュートな小型ケース

4面メッシュで通気性抜群
前面と背面、両側板など筐体のほぼ全面にメッシュ構造を採用しており、エアフローに優れる小型ケースだ
前面や背面、両側板はもちろん、内部のファンマウンタなども簡単に着脱できるため、組み込みやメンテナンスがしやすい

 コンパクトながら大容量のサーバーPC、という矛盾したコンセプトを最大限に活かす意味でも、PCケースにはサーバーPCらしさを感じさせないデザインが欲しい。そこで今回は、darkFlashのMini-ITX対応PCケース「DLH21」を選んだ。幅は17.5cm、奥行きは23.88cmと設置に必要な面積はコンパクトで、置き場所を問わない。またカラーもファンシーで温かみのあるピンクなので、リビングなど人が集まる空間に置いても違和感はなさそうだ。底面にアドレサブルLEDを搭載しており、周辺に淡い光が広がるのも美しい。

完成!

 今回の作例ではビデオカードや簡易水冷型CPUクーラーを組み込まないこともあって、各パーツ間には余裕がある。またCooler Masterの電源ユニット「V550 SFX GOLD」はフルプラグインタイプなので、余ったケーブルがジャマになることもない。

 ただメモリはJONSBOのCPUクーラー「HX6200D-BK」のファンで隠れてしまう位置にあるため、CPUクーラーの固定前に挿しておこう。ピンヘッダケーブルは、マザーボードベース背面のスペースでキレイに整理できる。予想外だったのがBlazing Quad M.2 CardのPCI Express補助電源コネクタで、これを挿さない状態だとM.2 SSDは2基までしか認識しなかった。

最終的なパーツ構成

サーバーPCとして設定し、その性能を検証してみよう

4台のデータ用SSDをどう使う?

 4台のストレージを組み合わせてボリュームを作る場合、RAID 0、RAID 1、RAID 5の設定が利用できる。リード/ライト性能がもっとも高いのはRAID 0だ。RAID 1やRAID 5でもリード性能は高いが、ライト性能は1台と同じか、あるいは低くなる。

 一方で信頼性が高いのはRAID 1とRAID5。ドライブを構成するSSDが1台故障しても、保存しているファイルに影響はない。ただし信頼性を高めるため、保存できるファイルの容量は少なくなってしまう。SSD複数台を束ねるJBOD(結合機能)もあるが、速度性能は1台構成と変わらず信頼性も低下する。今回のSSD構成ではメリットが活かせないので使用しない。

4台のM.2 SSDを認識させ、ボリュームを作成する

 PCIe bifurcation機能は標準では有効になっていないため、マザーボードのUEFIから機能を有効化する必要がある。今回のマザーボードでの作業内容は、右の画面で紹介しているとおりだ。

最初にUEFIの設定を行なう
UEFIを[Advanced Mode]に変更し、[Advanced]タブの「Onboard Devices Configuration]をクリック。さらに[PCIEX16 Bandwidth Bifurcation Configuration]を[PCIE RAID Mode]にして保存する
PCを再起動してUEFIを呼び出し、M.2スロット増設ボードに組み込んだ4基のM.2 SSDが認識されていることを確認しよう

 UEFI上でM.2 SSDがきちんと認識されていれば、Windows 11からも普通にストレージとして認識される。下は[ディスクの管理]機能からRAID 0対応ボリュームを作る方法だ。同じウィザードを使って、RAID 1対応ボリュームやドライブ結合機能を使ったボリュームも作れる。

RAID 0ボリュームを作る
[ディスクの管理]を起動したら、新しいドライブを右クリックして[新しいストライプボリューム]をクリック
RAID 0ボリュームに組み込みたいドライブを[追加]ボタンで右のウィンドウに追加し、すべてのドライブを追加したら右下の[次へ」
さらにファイルシステムを選択してドライブ名などを入力すれば、RAID 0ボリュームが作成される。ドライブのフォーマットも自動で行なわれる

各モードの読み書き性能を検証

 4台/ 2台のRAID 0設定、2台のRAID 1設定、4台のRAID 5設定、単体利用のリード/ライト性能を比較したのが右のグラフだ。CrystalDiskMarkでは設定を[NVMe]にするだけではなく、[スレッド数]も16に変更することで、4台のRAID 0設定でPCI Express 4.0 x16の限界に近い性能が出た。

 シーケンシャルリード/ライト性能がもっとも高いのは、4台でRAID 0を組んだときだ。シーケンシャルリード性能ではRAID 5設定がこれに続く。意外なのがRAID 1設定で、シーケンシャルリードは2台のRAID 0設定を超える。RAID 1の場合、2台のドライブに同じデータが書き込まれているため、これらを並行して効率的に読み出せるからだ。4Kサイズのランダム性能については、RAID 5設定以外は大きな違いはなかった。

もうちょっと大きくてもいいなら小型microATX/ATXプランもアリ

 今回のプランでは、「コンパクト」をテーマの一つとして掲げている。そのためMini-ITXプラットフォームを利用したのだが、これがコストを引き上げた一面はあるだろう。そんなに小さくなくてもよいなら、チップセットにAMD B650Eを搭載するATX対応マザーボードや、低価格でコンパクトなATX対応ケースを組み合わせるプランにしてもよい。この場合、電源ユニットももっと低価格なATX対応モデルを選択で
きるようになる。

ASRockの「B650E Steel Legend WiFi」は、今回のPCI Express 5.0に対応したM.2スロット増設カードが利用できるATXマザーだ。実売価格は30,000円前後で値頃感がある
Cooler Masterの「MasterBox Q500L」は、高さや奥行きが40cmを切り、置き場所を選ばず利用できるコンパクトなATX対応PCケースだ。実売価格は9,000円前後

 もう1段階安くしたいなら、マザーボードをAMD B650を搭載するmicroATX対応モデルにするという手もある。ただしAMD B650搭載マザーの拡張スロットはPCI Express 4.0対応なので、PCI Express 5.0対応というBlazing Quad M.2 Cardの強みがなくなってしまう。とはいえ速度を重視しないなら、それもアリかもしれない。

編集部から

3.5インチベイの減少をものともしないアグレッシブな構成に拍手

 大型Mini-ITXケースのベイをフル活用して3.5インチHDDを複数搭載というのが編集部の想定でしたが、ビデオカードの代わりに拡張カード、しかもM.2 SSDを4発とは参りました。予算が許せばGen 5×4というのもロマンがあります。

[TEXT:竹内亮介]

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