ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

20万円以下の破格値で登場した東芝「Dynabook J-3100SS」

A4用紙よりも若干大きい、A4ファイルサイズのフットプリントとなっています。右側面には薄型のフロッピーディスクドライブを内蔵していて、操作性も申し分ありません。撮影に使用した本機は、1990年初頭にバリエーションとして追加されたホワイトモデルです。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、ノートパソコンという単語がまだまだ珍しかった1989年の夏に、東芝から登場したブック型(いわゆるノート)パソコンの、Dynabook J-3100SSとなります。

キーボードを真上から撮影した写真です。キータッチは非常に軽快で、長時間の入力も苦になりません。Aキーの左側にCTRLキーがあるので、筆者のようにファンクションキーを使わずCTRLキーのコンビネーションでカタカナ英数変換などをする人にも便利です。本体左上に各種インジケータが設定されているので、視認性も高いです。

 パーソナルコンピュータが登場したときから、ユーザーの要求として「持ち運べるデスクトップパソコン」というものがありました。モニタと記憶装置、そして本体とキーボードがすべて一体化しているパソコンを持ち運びたいというニーズです。1980年代前半は、それは不可能なものの機能を限定したパソコンとして、ポケコンやハンドヘルドコンピュータなどが、ニーズの一部を満たすような感じで活躍していました。例えば、エプソンのHC-20や東芝のPASOPIA mini、NECのPC-2001PC-8201、キヤノンのX-07、ナショナルのJR-800といった機種などが該当するかもしれません。

 その後、デスクトップをダウンサイジングさせて膝の上に載せられるまで小型化されたモデルとして、ラップトップパソコンが誕生します。AppleのMacintosh Portable(ニークラッシャーと言われましたが)やNECのPC-98LTPC-9801LV22などがこれに該当するでしょう。

 こうしてデスクトップパソコンの小型軽量化は進んでいき、1989年にはついにA4ファイルサイズのコンピュータが東芝から登場することとなります。それが、1989年6月26日に発表されたブック型コンピュータ、Dynabook J-3100SSです。本来のDynabookとは、アメリカの科学者であるアラン・ケイ氏が1972年に提唱した理想のパーソナルコンピュータで、この名前を通称として使用していましたど。なお初登場時は、雑誌での紹介記事に「A4ノートサイズのラップトップコンピュータ」と表現されたり、広告でも“ブックコンピュータ”を謳っていたなど、今ではお馴染みとなった“ノートパソコン(ノートPC)”といった単語は使われていません。

 ちなみに、この時期に日本国内で“Dynabook”の商標を取得していたのはアスキーで、東芝はアスキーと交渉して名称を使用できるようになったという話が、株式会社BCNの運営するウェブサイト「BCN+R」のこちらに掲載されていました。

背面は、左側の蓋を開けるとRS-232Cコネクタとプリンタ/FDD兼用ポートが配置されていて、右下には拡張コネクタが設置されています。

 Dynabook J-3100SSの本体サイズは幅310mm×奥行254mm×高さ44mmで、バッテリ込みでの重量は2.7kg。当時としてはかなり小型軽量ですが、今現在手に持ってみるとやはり“ズッシリ”とした重さを感じてしまいます。

 CPUにはクロック周波数10MHzの80C86を採用し、RAMはメインメモリ640KBに加えてEMSまたはハードRAMとして使える896KBを内蔵していました。もちろん増設することも可能で、その場合は最大で3.5MBまでの拡張ができます。

 ディスプレイには、バックライト付きSTNブルー液晶を搭載。日本語モードでは640×400ドットで2階調、英語モードならば640×200ドットのCGA相当表示ができました。

 外部記憶装置として、容量720KBまたは1.2MBの薄型3.5インチフロッピーディスクドライブ1台を内蔵しています。2HDはいわゆる日本式のセクタ長1024bytesで、IBM PCで普及しているセクタ長512bytes、容量1.44MBとは互換性がありません。

本体右側面には、手前側に拡張メモリスロット、奥にフロッピーディスクドライブがあります。左側面は、手前側にコントラスト/ブライトネス調整つまみ、奥に電源スイッチ、ACアダプタ接続端子、リセットボタンとなっています。

 OSには日本語MS-DOS Ver.3.1を標準添付していたほか、オプションで英語MS-DOS Ver.3.3も提供していました。日本語入力FEPとしてはROMベースでATOK7を搭載しているので、変換速度はなかなかのものです。

 キーボードは、ステップスカルプチャ・シリンドリカル方式を採用していて、実際にタイピングしてみるとカチャカチャと心地よい音と共に入力しやすいのが特徴と言えるでしょう。

 内蔵バッテリで2.5時間の運用ができるほか、約4時間で満充電することができました。また、電源を切っても再び電源をオンにすれば元の画面を再現できる、レジューム機能も装備しています。

 これだけの機能を持ちながらも、価格は20万円を切る198,000円という破格値で登場したDynabook J-3100SSは、当時F1ドライバーだった鈴木亜久里さんをイメージキャラクターとして採用したことも含めて、大いに話題になりました。特に、鈴木亜久里さんが広告中に本機を片手で持つ写真を見せることで、従来のパソコンより軽く、機動力があることを印象づけるのに成功したといえるのではないでしょうか。

広告は、いくつものバリエーションが作られたようです。初登場時は「ブックコンピュータ、出現。」として、キャッチコピー「みんなこれを、目指してきた。」を謳っていました。今回調べたものでは、いずれも鈴木亜久里さんが片手で本機を持ち、軽さをアピールしています。

 そんなDynabook J-3100SSの出現に危機を覚えたNECが、3ヶ月という短期間でPC-9801Nを生み出し、イメージキャラクターに大江千里さんを起用して攻勢に出たのは、以前にもお伝えした通りです。

 本機から始まったDynabookの名称ですが、今でもシャープ株式会社の完全子会社となる、Dynabook株式会社から発売されるノートパソコンのブランド名として使われていて、息の長いシリーズとして今も新機種が登場しています。