ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ナツメ社『はるみのプログラミング・レッスン』&「はるみのゲーム・ライブラリー」シリーズ ~想い出の“20世紀パソコン雑誌”たち~

機種別にシリーズ本が出ていたので、自分が当時所有していたハードのバージョンを買った人も多かったのではないでしょうか。今回撮影に使用したのは、筆者所有のPC-8001対応版です。

 現在ではあまり見かけなくなってしまったものの、20世紀には数多くのマイコン・パソコン雑誌が発売されていました。中には、当時その雑誌を読んでいた人が影響を受けて後の人生が決まった、という人もいるかもしれません。ここでは、それら20世紀に発売されたマイコン・パソコン雑誌を取り上げ、紹介していきます。

 今回は一休みして、1983年に発売されて大勢の人がお世話になったと思われる、ナツメ社の『はるみのプログラミング・レッスン』&「はるみのゲーム・ライブラリー」シリーズを取り上げました。

高橋はるみさんらしい一面が垣間見られる、女子高生らしさが分かるページです。日記の内容などは、当時同じ高校生だった読者にとっては、懐かしさを感じられるかと思います。

 マイコン・パソコンが発売され、家庭でも少しずつメジャーな存在になっていくと、それに合わせて情報を提供するマイコン・パソコン雑誌が登場してきます。さらに「マイコン・パソコンが人気!」というのが分かってくると、興味を持つ人も増えてくるわけで、そういったユーザーをターゲットにした初心者向けの書籍やムック本も数多く出版されました。昔は、今と違って地味な書籍が多かったのですが(例えば、本のタイトルが『初歩のマイコン』『初めてのパソコン』という感じで、表紙自体も地味なカラーリングを使用)、その中にあって目を引く表紙&現役女子高生(!)が書いたパソコン初心者向け書籍という位置づけで登場したのが、著者である高橋はるみさんが手がけた『はるみのプログラミング・レッスン』&「はるみのゲーム・ライブラリー」シリーズです。

 高橋はるみさんといえば、電波新聞社の雑誌『マイコンBASICマガジン』などで活躍していた女子高生……という印象が強く残っているのではないでしょうか。そんな彼女の正体はともかく、この時代に発売されていた初心者向け書籍といえば、文字の入力方法やBASICのPRINT文を使用した簡単なプログラムの解説などを、お堅い説明文と地味なイラストなどで紹介しているものがほとんどでした。その中にあって、高橋はるみさんの書籍では非常に砕けた、いわゆる女子高生言葉で解説していただけでなく、そこで紹介されているプログラムに使用されているキャラクターも、他の地味な書籍と違って非常に可愛らしく、格好良く作られているのが特徴的だったと言えます。

 しかも、非常に分かりやすくBASICでプログラムを組むための方法が解説されていたので、掲載リストを打ち込んでいくうちに少しずつBASICのコマンドを覚えていくことができました。筆者も、高橋はるみさんの著書から“INP”関数や当たり判定に“PEEK”コマンドを使うといったことを学べたおかげで、現在でもBASICを忘れずにいられるのかもしれません。

 当時発売されたのは『はるみのプログラミング・レッスン』と『はるみのゲーム・ライブラリー』『はるみのゲーム・ライブラリーPART II』の3種類で、それぞれPC-8001向け、PC-6001向け、FM-7向け(除く『はるみのプログラミング・レッスン』)が出版されていました。

 いずれも当時彼女が所属していたフォーサイト企画部の協力の下、「プログラミング・レッスン」では高橋はるみさんがBASICを覚えてゲームを作れるようになるまでが書かれています。解説文も、当時の女子高生っぽい言葉遣いで「でもでも『カンタン!』だからって、このゲームをバカにしたら、はるみ、ぶっちゃうんだから!!」(あるけあるけゲームより)という感じで掲載されていたので、これを読んだ当時としては「女子高生がプログラムを作れるくらいなんだから、きっと自分にも作れるのでは」と思いつつも、載っているゲームプログラムを片っ端から打ち込んで遊ぶ日々に……。ちなみに、このフォーサイト企画部ですが、これはクラブ単位で活動するマイコンクラブとは違い、部員一人一人が自分の道を進み、それをいろんな面(精神的なものが中心)でバックアップしてくれる集団と、高橋はるみさんは書いています。

 『はるみのゲーム・ライブラリー』では、5ページにわたるプログラムが25本掲載されていて、そのどれもがBASICを学び始めた人にとってはインパクトのある完成度となっていました。登場するキャラクターやタイトル画面、ゲームオーバーの文字なども凝っていて、いわゆる“高橋はるみ書体”を真似て自作プログラムのタイトルなどを作った人も多いはずです。各プログラムの頭ページには、高橋はるみさんが書いたと思われるフローチャートが掲載されているのですが、それを見ると非常に可愛らしい丸文字で書かれていました。

 『はるみのゲーム・ライブラリーPART II』では、横40文字×縦25行の1画面内に収まる“1画面プログラム”を、1か月で60本以上作ったとのことで、それらがズラリと収録されていました。プログラムはともかく、アイデアを60以上出すのが難しいのは間違いなく、時折挿し込まれている“はるみのプライベート日記”コーナーでも、とにかくアイデアを出すのが大変だったと書かれていました。

 これらの本は、収録されているプログラムを収めたテープも販売されています。1冊分のプログラムが入って価格は2,500円。9割以上がBASICのプログラムだったということもあってか、自分の手で入力してバグが出たら直して遊んだ人が多かったようで、現在見かけることはほとんどありません。書籍もそれなりの数が出回ったと思われますが、現在ではちょっとしたプレミア価格になっているようです。今後、実物を見る機会はあまりないかもしれませんが、BASICでプログラムを組んだことがある人には、ぜひとも一度は見てもらいたい、そんな仕上がりになっていました。

 ちなみに、著者の高橋はるみさんが実在するのかについてはさまざまな説がありますが、以前に連載されていたPasocom mini PC-8001の企画にて、高橋はるみさんと親交のあった森巧尚さんのインタビュー記事にて言及されている部分がありますので、そちらも読むと新しい発見があるかもしれません。

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