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【コスパ最強自作術⑩】高性能GPUにこだわったPCを25万円で!コスパ重視の自作プラン

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

目指せ! 4Kでレイトレ、高画質!高性能GPUにこだわったPCを25万円で

 ここからはコスパ重視の自作プランを紹介していこう。1台目の予算は「25万円」に設定した。決して安い価格ではないが、最新世代のビデオカードをターゲットにするには潤沢な予算とは言えず、「コスパを意識してパーツをうまく選ぶこと」が非常に重要になってくる。NVIDIAとAMDの最新世代GPUを搭載したビデオカードは、2023年3月の原稿執筆時点では、下位モデルでも限りなくハイエンドに近いアッパーミドルしか存在しておらず、最低限13万円は必要になってくる。つまり、一つのパーツを選ぶ時点で予算の半分以上が吹っ飛んでしまうからだ。

 高性能のビデオカードを利用する以上は、CPUもそれをなるべく活かせるコア数の多いモデルのほうが当然よく、その勇姿が“映える”PCケースも欲しくなるというもの。それにCPUやビデオカードの性能が高くなれば、冷却力の確保も大切になってくる。ビデオカード以外には10万円強しか予算を使えないが、そこでベストを探るのが自作の醍醐味だ。

 というわけで、ここではAAA級のゲームを4K&高画質で楽しめるのはもちろん、動画の配信や編集などクリエイティブな作業もこなせる万能型のPCを可能な限り目指していく。ビデオカードとCPUに関しては予算と目的にマッチしたパーツ選択の候補を出しつつ、採用製品を決めていきたい。パーツ選びの参考になれば幸いだ。

ビデオカード コスパ重視でもGPUは最新世代にしたい

 このプランでキモになるのは、最新世代のビデオカード。NVIDIAならGeForce RTX40シリーズ、AMDならRadeon RX 7000シリーズが該当する。予算から考えると「GeForce RTX 4070 Ti」と「Radeon RX 7900 XT」のどちらかだ。RTX 4070 Tiはアップスケーラで描画負荷を強烈に減らしつつ、AIによるフレーム生成でフレームレートをより向上させる「DLSS 3」に対応でき、今後動画配信の主流になりそうなAV1コーデックのハードウェアエンコードが可能。さらにNVENCを2基備え、高速エンコードが行なえるなど前世代から機能が飛躍的に向上している。

RTX 4070 TiのOCモデルでは比較的低価格。ブーストクロックは2.625GHzで、ビデオメモリはGDDR6Xが12GB搭載されている。カード長は30.68cmだ
ビデオカード各社から発売されているリファレンス仕様のカード。ブーストクロック2.4GHz、ビデオメモリはGDDR6が20GBと大容量。Type-C出力を持つ
RTX 4070 TiはAIによるフレーム生成が可能なDLSS3やAV1のハードウェアエンコードに対応と充実した機能を評価した

 RX 7900 XTは3DMarkの結果から基本的なパワーはRTX 4070 Tiを上回る部分があり、ビデオメモリも20GBと大容量だ。ビデオメモリの容量が作業の快適度に大きく影響する動画編集アプリもあり、“万能性”を目指すなら、どちらにするか悩ましいところ。今回はレイトレーシング性能やDLSS 3対応を重視してRTX 4070 Tiを選択した。

予算を抑えるなら中古ビデオカードも一考の余地アリ!

 ミドルレンジ以上のビデオカードは前世代のモデルでもまだまだ高価だ。そこで注目したいのが中古。たとえば、GeForce RTX 3060は新品だと実売価格は5万円前後が中心で最安値でも4万円前後だが、中古ならタイミングがよければ3万円台で手に入ることがある。劇的に安くなるわけではないが、コストを少しでも抑えてGPU性能を稼ぎたいならチェックする価値はあり、と言えるだろう。もちろん、マイニングなど酷使する使い方をされていた可能性は否定できないが、思いがけずお宝に出会えることがあるのが中古を探す楽しさだ。

CPU CPUはミドルレンジからベストを探る

 CPUも最新世代から選びたい。予算から考えるとミドルレンジからの選択になるが、Ryzen 7000シリーズはメモリ対応がDDR5だけ、マザーボードも高めなので今回のプランでは見送った。その一方で、Intelの第13世代Coreは、前世代のチップセット(Z690/H670/B660)でも利用でき、安価なDDR4メモリにも対応できるのがコスパ重視の自作において大きな強み。そのため、マザーボードは低予算で購入しやすいB660からDDR4メモリ対応のASUSTeKの「PRIME B660-PLUS D4」を選択した。CPUは、第13世代のCore i5シリーズから選ぶことにしたが、コスパ的においしいのは「Core i5-13500」だ。上位のCore i5-13600Kと同じ14コア20スレッドというメニーコア仕様で、定格とブーストクロックが若干低いというだけで実売価格は9,000円も安い。

Pコア6基、Eコア8基の合計14コア20スレッドで3万円台という圧倒的なコストパフォーマンスのよさが最大の特徴だ。CPUクーラーも付属するので、低予算自作にも向く
14コア20スレッドかつ最大5.1GHzという動作クロックの高さが特徴。電源回路の規模的にパワーリミット無制限で運用しにくいB660マザーボードと組み合わせるのは性能を引き出し切れず、ちょっともったいないか。CPUクーラーは別売り

 実際にこの組み合わせで動かしてみたところ、次のようなポイントが見つかった。電源回路がZ690チップセット搭載製品ほど強力ではないためか、Core i5-13500ではパワーリミットを引き上げるASUSTeKの自動OC機能「Performance Enhancement 3.0」が有効にできる一方で、Core i5-13600Kでは使えず(UEFIに設定項目が表示されない)、パワーリミットは定格での運用が基本になる、というものだ。手動でパワーリミット引き上げも可能だが、電源回路の規模的にK付きのモデルは定格運用が推奨ということだろう。そういう点でも、Performance Enhancement 3.0によって性能引き上げの余地があるCore i5-13500のほうがお得感がある。

PRIME B660-PLUS D4は、UEFIにパワーリミットを引き上げる「Performance Enhancement 3.0」を備えているが、今回のCPUでは使えたのはCore i5-13500のみ。13600Kでは設定が表示されなかった

CPUクーラー、PCケース ミドルレンジCPU/GPUはこう冷やせ!

 Core i5-13500はCPUクーラーが付属しているが、冷却力と静音性を高める意味でもCPUクーラーは別途用意したいところ。前ページのPerformance Enhancement 3.0を有効にしての運用を考えているならなおさらだ。そこでDeepCoolの大型空冷クーラー「AS500」を選択した。

14コアには大型空冷で対応
14cm径のファンと5本のヒートパイプで高い冷却力と静音性を両立する人気空冷クーラー。ただし、高さが16.4cmあるため、搭載できるPCケースは多少選ぶ。トップパネルにRGB LEDを内蔵
大型クーラーだがメモリには干渉しない薄さなのもポイント。高さはあるが、4000D Airflowなら問題はない

 PCケースは冷却力重視の構造、AS500やRTX 4070 Tiがしっかり収まるサイズ、見た目もよく価格も安め、という条件からCorsairの「4000D Airflow」をチョイスした。メッシュ構造でエアフローに優れ、付属のファンは前面と背面の2基だけだが、前面はGPUに直接風が当たる位置に設置できるのがポイントだ。左側面がガラスなので、RTX 4070 Tiの強そうな姿が眺められるのもうれしい。

ファン2基でも問題なし
メッシュ構造で冷却力重視のATXケース。低価格ながら前面上部のコネクタにType-Cを備えているのもポイント。ビデオカードは36cmまで搭載できる
PCケースは前後に1基ずつ12cm角ファンを搭載している。なお、前面に36cmクラスまで、天版に24cmクラスまでの簡易水冷クーラーを取り付けることも可能だ

 CPUの冷却力は右下のグラフのとおりだが、ビデオカードは3DMarkのStress Test(Time Spy)を10分間実行したところ最大74.3℃、平均69.5℃と心配のいらない温度となった。なお、CPUの設定はPerformance Enhancement 3.0有効、無効の両方で試しているが、GPU温度にほとんど変わりはなく、CPUの設定がビデオカードの冷却に影響することはなさそうだ。

完成 裏面配線もバッチリで美しい仕上がり

 ここからは完成したPCを試していこう。今回の構成は大型の空冷CPUクーラーとカード長30cmを超えるビデオカードを選択しているが、PCケースの4000D Airflowは手頃な価格で、クセのない構造をしているのがよいところ。パーツの組み込みがラクで、裏面配線のスペースも広いのでケーブルマネジメントもしやすく、すっきりと仕上げやすい。

B660チップセット搭載のATXマザーボード。DDR4メモリに対応している。低価格ながらM.2スロットは3基とストレージの拡張性は悪くなく、1基にはヒートシンクも搭載されている
4000D Airflowは裏面配線のスペースが広めでケーブルをまとめやすく、美しく仕上げることができた。内部に出すケーブルも最小現にできるのでエアフローもさまたげにくい

 電源も12VHPWRケーブルを備えるATX 3.0製品を選んでおり、ビデオカードへの電源接続がケーブル1本で済んでいる点も配線の美しさにつながっている。とはいえ、ATX 3.0電源の価格は高めなので、コストを抑えるなら、避けるのもアリだろう。DDR4メモリは安価なこともあって32GB搭載している。

RTX 4070 Tiの補助電源は12VHPWRなので、電源はそれに直接接続できるATX3.0対応からHydro GT PROを選択。比較的安価で850Wと出力も十分だ
DRAMレス構造でエントリークラスの価格ながら、ハイエンドクラスのGen 4 SSDに近い性能を持っていることから大ヒット。コスパ重視で選ぶなら外せない存在と言える

 実ゲームでの性能をチェックしよう。レイトレーシングに対応しないオーバーウォッチ2ならば画質プリセットの最上位「エピック」でも4Kで平均107.5fpsと十分快適にプレイできる。ホグワーツ・レガシーやSpider-Manといったレイトレーシングに対応する重量級ゲームでもDLSSをパフォーマンス設定にすることで、4Kの最高画質でも快適にプレイできる平均フレームレートを出している。DLSSは高い画質を保ったまま強烈に描画負荷を軽減できる技術だが、ゲーム側の対応も必要になるため、どのゲームでもフレームレートを伸ばせるわけではない。しかし、従来のDLSSだけでなく、RTX 40シリーズだけで使えるフレーム生成(DLSS Frame Generation)を含めたDLSS 3対応タイトルは着実に増えており、そういう意味でもRTX 4070 Tiを選択したのは大いに意義があると言えるだろう。

4K&レイトレも快適
ホグワーツ・レガシーのような重量級ゲームを4K解像度かつレイトレーシング有効、最高画質でも快適にプレイできるパワーがある。DLSSの力があってこそだが、4Kゲーム時代を感じさせるPCに仕上がったことは喜ばしい

 RTX 4070 Tiは、低bitレートでも高い画質が保てるコーデックとして注目の「AV1」でのハードウェアエンコードに対応しているのも大きな強みだ。動画の配信、録画アプリの定番「OBS Studio」はすでに正式対応しており、その威力を早速試してみた。ビデオカードのNVENCを使って、3.5Mbpsという低bitレートでAV1、H.265、H.264それぞれでサイバーパンク2077のベンチ動画を録画。紙面だと若干分かりにくいが、H.265やH.264に比べてざらっとしたノイズ感が減っている。低bitレートでも美しく配信や録画が可能なのは配信者や動画編集者にとってはうれしいのではないだろうか。ゲームにも動画にも強いPCに仕上がって、筆者としては満足な結果だ。

AV1の画質を試す
配信、録画の定番アプリ「OBS Studio」はRTX 40シリーズのAV1ハードウェアエンコードに正式対応。ここではbitレートを3.5Mbpsに設定してサイバーパンク2077を各形式で録画した
これはOSB Studioで録画したサイバーパンク2077のベンチ動画からほぼ同じ箇所を切り出したもの。かなり拡大すると、AV1が一番クッキリしているのが分かる。H.265やH.264はよく見ると低bitレートでよく見られる輪郭が崩れたり、ざらっとしたり、もやっとしたりする箇所を確認できる
【検証環境】
CPUIntel Core i5-13500(14コア20スレッド)
マザーボードASUSTeK PRIME B660-PLUS D4(Intel B660)
メモリADATA AD4U3200716G22-D(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC(NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti)、AMD Radeon RX 7900 XTリファレンスカード
システムSSDWestern Digital WD_BLACK SN770 NVMe WDS100T3X0E[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
OSWindows 11 Pro(22H2)
オーバーウォッチ 2マップ“Eichenwalde”におけるbotマッチ観戦中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Call of Duty:Modern Warfare IIゲーム内のベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
ホグワーツ・レガシー寮内の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Marvel’ s Spider-Man: Miles Moralesセントラルパーク脇の大通りを60秒ダッシュした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

[TEXT:芹澤正芳]

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