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【コスパ最強自作術】③ CPU/マザーボード編 その2

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

POINT 5 マザーボードは廉価版チップセットを狙うべし

Intelでコスパ重視ならB660に注目
Intel B660は前世代の廉価版チップセットなので採用マザーボードの価格は安めだが、CPUは最新の第13世代Coreに対応しており、DDR4メモリ仕様が多いため、ご予算控えめな自作にぴったり

 CPUが決まれば、次はマザーボード選びだ。コストを抑えるならCPUが対応するチップセットから廉価版を選ぶのが基本だろう。たとえばIntelの第13世代CoreならB660が狙い目だ。前世代の廉価版だが、新世代のCPUでも動作し、1万円前後から購入が可能。DDR4メモリ対応が多いので、コスパ重視の自作に最適だ。

 ただし、下の表にまとめたようにB760/B660チップセットはレーン数やUSB 20Gbpsの対応ポートが少ないなど拡張性が低くなる。

 AMDはRyzen 7000シリーズのCPUを選択するならB650チップセットが候補だろう。PCI Express 5.0に基本非対応だが、現時点ではNVMe SSDがわずかに登場している程度でそれほどマイナスな要素ではない。Socket AM5は2025年まではサポートが約束されており、将来登場するCPUに載せ替えられるのが大きな強み。

AMDは将来性へのコダワリで選ぼう
AMDはSocket AM5のRyzen 7000シリーズを使うならB650チップセットに注目。メモリはDDR5しか使えないが、将来登場するCPUにも対応できるのが強み。Socket AM4のRyzen 5000シリーズならB550に注目

 Socket AM4のRyzen 5000シリーズではB550やA520が候補だ。8,000円台の製品もあるなど安さには優れるが、USB 20GbpsやPCI Express 5.0に非対応と機能面は若干弱く、旧世代なので流通量が減りつつある。

Intelチップセットの主な機能
Intel Z790Intel H770Intel B760Intel Z690Intel H670Intel B660
対応CPUソケットLGA1700LGA1700LGA1700LGA1700LGA1700LGA1700
PCIe 5.0 x16(CPU側グラフィックス用)
NVMe M.2(CPU側)PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4
倍率アンロックCPUのOC××××
メモリのOC
CPU側PCI Expressの分割××
チップセット側PCI Express4.0(最大20レーン)3.0(最大8レーン)4.0(最大16レーン)3.0(最大8レーン)4.0(最大10レーン)3.0(最大4レーン)4.0(最大12レーン)3.0(最大16レーン)4.0(最大12レーン)3.0(最大12レーン)4.0(最大6レーン)3.0(最大8レーン)
Serial ATA 3.0最大8最大8最大4最大8最大8最大4
USB 20Gbps最大5最大2最大2最大4最大2最大2
USB 10Gbps最大10最大4最大4最大10最大4最大4
USB 5Gbps最大10最大8最大6最大10最大8最大6
AMDチップセットの主な機能
AMD X670EAMD B650EAMD B650AMD X570AMD B550AMD A520
対応CPUソケットSocket AM5Socket AM5Socket AM5Socket AM4Socket AM4Socket AM4
PCIe 5.0 x16(CPU側グラフィックス用)○※1×(PCIe 4.0)×(PCIe 4.0)×(PCIe 4.0)×(PCIe 4.0)
NVMe M.2(CPU側)PCIe 5.0 x8PCIe 5.0 x4PCIe 4.0 x4※2PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4PCIe 4.0 x4
倍率アンロックCPUのOC×
メモリのOC
CPU側PCI Expressの分割×
チップセット側PCI Express4.0(最大12レーン)3.0(最大8レーン)4.0(最大8レーン)3.0(最大4レーン)4.0(最大8レーン)3.0(最大4レーン) 4.0(最大16レーン) 3.0(最大10レーン) 3.0(最大6レーン)
Serial ATA 3.0最大8最大4最大4最大12最大6最大4
USB 20Gbps最大2最大1最大1×××
USB 10Gbps最大12最大6最大6最大8最大2最大1
USB 5Gbps××××最大2最大2

※1 AMD X670はPCIe 4.0対応
※2 PCIe 5.0はオプション扱い。対応は製品による

POINT 6 マザーボードの価格差は装備の充実度

電源回路のフェーズ数
Z790のハイエンドマザーは20フェーズ以上の大規模電源回路(写真左)を持つものがあり、ミドルレンジで16フェーズ程度(写真中央)だ。B660のエントリークラスでは8フェーズ程度(写真右)だが、パワーリミットを定格で運用するなら上位CPUとの組み合わせでもこの規模の電源回路で問題ない

 マザーボードは20万円を超えるものから1万円以下まで幅広い価格の製品が存在する。上位よりも機能面で劣る廉価版チップセットを採用するマザーボードのほうが基本安くなるが、それでも同一チップセット搭載マザーボードの中でも価格の幅はかなり広い。では、何が価格差につながっているのか。

M.2スロットの数やヒートシンク
M.2スロットの数は価格の高いマザーボードほど多くなる傾向だ。ハイエンドマザーではM.2 SSD用のヒートシンクを全スロットに備えるなど、ストレージを充実させたいなら確認しておきたいポイント

 分かりやすいのは電源回路の規模だ。CPUは近年消費電力が増えているのに加え、Z790/Z690など上位チップセット搭載マザーボードではCPUの電力上限を事実上なくす“パワーリミット無制限”での運用がデフォルトになっているケースもめずらしくない。CPUのパワーを最大限発揮するため電源回路の規模も大きくなっている。CPUソケット周辺の限りあるスペースに大規模な回路を置くためには、複数の部品を一つに集積した高価なチップが多数必要になる。最上位クラスのCPUと組み合わせるならその意義もあるが、コスパを重視した自作でミドルレンジのCPUを選ぶなら、そこまで重要なポイントではない。シンプルな電源回路で低価格の製品でも問題はない。

フロントType-Cの仕様
最近ではエントリークラスのマザーボードでもPCケースのフロントType-C用コネクタを備えているが、問題は速度だ。5Gbpsや10Gbpsが多く、20Gbps対応は少ないので欲しいなら確認を
ゴージャスな付属品
ハイエンドマザーは付属品も充実している。無線LANのアンテナが大きかったり、Gen 5対応のM.2スロットを備える拡張カードを同梱したりと、使い勝手や拡張性の面でも優れていることが多い

 また、NVMe SSDを複数搭載したい、PCケースのフロントType-Cを20Gbps対応にしたいといった拡張性を求める場合も仕様のチェックは不可欠。M.2スロットの数やフロントType-Cの仕様は製品によって異なり、原則として変更できないからだ(別途拡張できるものもあるがそのたび出費がかさむ)。また、M.2スロットにSSD用ヒートシンクが用意されているかどうかもチェックポイント。低価格のマザーボードは無線LANを備えていないことが多く、有線LANもギガビットイーサが多い。Wi-Fi 6Eや2.5Gの有線LANなどネットワークの充実を求める場合も、製品選びに気を付けたいところだ。

インターフェースの豊富さ
バックパネルに搭載されるポートの数や種類もマザーボードによって大きく異なる。USBデバイスを多く接続したい人は、その数や種類を確認しておくとよいだろう。また、ミドルレンジ以上では当たり前のバックパネルカバー一体型も、エントリーではカバーが別というケースが多い

POINT 7 メモリはDDR4で十分? 容量は16GBでよい?

 最後はメモリ選びだ。容量は16GB(8GB×2枚)でよいのか、32G B(16G B×2枚)のほうがよいのか悩む人も多いだろう。今回試した限りでは、一般的な処理で性能を測定するPCMark 10では誤差レベル。4Kでのプレイではメモリ32GBが推奨されているゲームのReturnalでも、実際にはほとんど差が見られなかった。唯一、PhotoshopとLightroom Classicを使ってさまざまな処理を行なうUL Procyonだけは、Photoshop中心のImageRetouchingのテストで容量32GBが明確に上回った。その一方でLightroom Classic中心のBatch Processingは誤差レベルだった。クリエイティブ用途以外では16GBでも十分と言えそうだ。

16GBと32GBで性能差はあるのか?

 また、Intelの第13/12世代CoreはDDR4とDDR5の両方に対応しているが、コスト重視なら安価なDDR4でもよいだろう。3DMarkのPhysicsやHandBrakeによるエンコードなどCPU負荷が非常に大きい処理ではややDDR5が有利だが、それでもその差はわずか。DDR4を選ぶことによるデメリットは現状ではまださほど大きくない。

DDR4とDDR5で性能差はあるのか?
【検証環境】
<メモリ容量比較>マザーボードASUSTeK PRIME B660-PLUS D4(Intel B660)
メモリMicron Crucial BL2K8G36C16U4BL(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)、Corsair Vengeance RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18(PC4-28800 DDR4 SDRAM 16GB×2)
<DDR4/DDR5比較>マザーボードASRock Z790 Pro RS(Intel Z790、DDR5)、ASRock Z790 Pro RS/D4(Intel Z790、DDR4)
メモリKingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、Corsair Vengeance RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18(PC4-28800 DDR4 SDRAM 16GB×2)
<共通>CPUIntel Core i7-13900K(24コア32スレッド)
ビデオカードMSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC( NVIDIA GeForce RTX 3070)
システムSSDキオクシア EXCERIA PRO SSD-CK2.0N4P/N[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
OSWindows 11 Pro(22H2)
Returnalゲーム内のベンチマーク機能で計測
オーバーウォッチ 2マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

[TEXT:芹澤正芳、検証協力:加藤勝明]

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