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【コスパ最強自作術⑪】予算15万円でWindows 11対応PCにアップグレードしよう!

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

 自作PCの大きな特徴は、パーツ単位でアップグレードでき、常に最新の性能を手に入れることができることだ。ただ、アップグレードしようと思っても、どのパーツが流用可能で、どこをアップグレードすべきかという判断は案外難しいもの。とくに、2021年にリリースされたWindows 11にはハードウェアに関するさまざまな制約があり、インストール時のTPM 2.0の必須化により、古いCPUはサポートしないことが話題になったことを記憶している読者も多いだろう。

 現在の最新プラットフォームであるIntelのLGA1700やAMDのSocket AM5に対応したCPUはWindows 11に最適化されており、Windows 11環境で使うことでもっとも性能を発揮する。ここでは、2017年頃に自作したPCからのアップグレードを想定し、15万円の予算でWindows 11上のゲームやアプリケーションでどのような性能を発揮できるか見ていこう。

旧PC Windows 11非対応のPCをアップグレードしよう

2017年頃のスタンダードマシン
4コアのCPU、メモリは8G×2、ビデオカードはGTX 1070でゲームをプレイしていた人も多いはずだ。当時は十分でも、高解像度化が進んだ今は非力を感じる場面もあるだろう

 昔のシステムを新しいWindows 11に対応させる際は、まずCPUとマザーボードにとくに注意する必要がある。Windows 11の動作環要件は下の表のとおりで、CPUは2017年11月発売の第8世代Coreや、2018年4月発売の第2世代Ryzen以降のものが必要だ。今回のようにそれより古いシステムを使用している場合は、アップグレードするためにはCPUの交換が必須となる。第8世代CoreはZ270マザーボードでは動作しないため、マザーボードも流用できない。

当時発売されていたIntelの4コア8スレッドのハイエンドCPU。初代Ryzenが発売された時期であり、多コア化の競争が始まった直後だった。最近のゲームには4コアでは少々力不足か。そしてなによりも、Windows 11が対応していないのだ
2017年はメモリ価格が高騰した時期。その中でもCrucialメモリは比較的流通量が多く価格がこなれており選択するユーザーは多かった。2枚で16G Bは容量的には十分だが、速度的にどうか?
80PLUS Goldの良質な電源が比較的安価に手に入るようになり、比較的使いやすい650~750Wの電源が人気を集めていた。現在も650Wあればミドルレンジのパーツの動作に支障はない

 また、インストールする際にTPM 2.0に対応していることが求められる。最新のマザーボードであれば最初からONになっていることが多く、とくに設定を行なう必要はない。対応状況については各社サポートページにて案内しているので一度確認してみてほしい。

Windows 11の主な動作要件

 そのほかのビデオカードやSSDは流用可能だが、6年間で相当性能が向上している。予算にもよるが、思い切って交換してもよいだろう。旧SSDを“サブ機”として再利用するという手もありと言えばありか。

基本構成 乗り換えにあたって選ぶべきはどのプラットフォーム?

 現在選べるプラットフォームは、主にIntelのLGA1700、AMDのSocket AM5とAM4の3種類だ。今回の趣旨である2017年のシステムからのパーツの流用を考えた場合、DDR4メモリが使えるのはLGA1700とAM4で、AM5はDDR5のみの対応となる点は注意が必要だ。DDR5メモリの発売直後は流通量も少なく、DDR4との価格差も大きかったが、最近は急激に流通量も増え値段も下がってきており、AM5も選択肢に入れてもよいだろう。

LGA1700 Windows 11に最適化したCPU&RTX 3060 Tiを選択
2021年11月に登場、第12世代と13世代Coreに対応している。メモリもDDR4とDDR5に対応しチップセットの種類も豊富で選択肢が多い。また、PCI Express 5.0を使用できるマザーも多く、将来性は高い
主なパーツ構成

 最新プラットフォームであるLGA1700とAM5にはPCI Express 5.0に対応したマザーボードも多く、現時点での必要性は薄いものの、将来M.2 SSDやビデオカードのアップグレードを検討するときの安心材料となる。

Socket AM5 DDR5とPCI Express 5.0対応で将来性も高い
2022年9月に登場、AMDの新世代CPU、Zen 4に対応している。Intelと同じくピンのないLGAに変更され、メモリはDDR5のみの対応。AM5ソケットは長期間使用される計画で将来のアップグレードも可
主なパーツ構成

 LGA1700で動作する第12世代Core以降は、Windows 11と組み合わせたときにタスクによってPコアとEコアに適切に振り分けるIntel Thread Directorと呼ばれる機能を搭載する。CPUが持つ性能を最大限活用できることも覚えておいて損はない。

Socket AM4 旧世代ながら12コア24スレッドのコスパに優れたCPUとRTX 3060 Tiの組み合わせ
2017年より使用されている長寿のプラットフォーム。最新の機能こそ少ないが、性能は十分。価格もこなれており、ハイエンドクラスのマザーボードでも比較的安価に入手できる
主なパーツ構成

 AM4プラットフォームは2017年から使われていて、UEFIの更新をすることで初期のマザーボードでも新しいCPUを搭載できる。発売期間が長かったので、安価なCPU、マザーボードが多いことも特徴だ。

予算的に選べるGPUはこのあたり
高解像度の環境や高いリフレッシュレートでゲームをプレイしたいなら4万円半ばから購入できるミドルクラス以上のビデオカードを選びたい。発熱も大きくなく、サイズもコンパクトなモデルもありアップグレードに適している

 こうした点を踏まえ、予算15万円からSSDとCPUクーラー代を差し引いた13万円程度で購入可能なCPU、メモリ、マザーボード、ビデオカードの組み合わせをプラットフォームごとに用意した。マザーボードとDDR5メモリで予算がかさむAM5では、CPUとGPUが1ランク下のものしか選べなかった。

基本ベンチで性能を比較

 各種ベンチマークを計測したところ、CPUの性能を計測するCINEBENCH R23では、14コア20スレッドCPUのLGA1700と12コア24スレッドCPUのSocket AM4が一歩抜けた性能となっており、6コア12スレッドにとどまるSocket AM5は苦戦している。

 日常的に利用するアプリの使用感を比較できるPCMark 10のスコアはどうか。どのモデルも快適に動作可能な目安とされている4,500を大幅に上回っており、動画や画像編集まで支障なく行なうことができる。

 定番ベンチマークである3DMarkでも計測を行なったが、RTX 3060 TiとRTX 3060の性能差はかなりのもの。ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークでもRTX 3060 TiはRTX 3060に比べフルHDで10%以上高いスコアとなり、WQHD環境ではその差はさらに開いた。フルHD環境で使用する場合は、どのプラットフォームでも高いフレームレートを維持することができ快適にプレイできるが、RTX 3060 Ti搭載の環境では、WQHDであっても平均120fps以上で快適に遊ぶことができる。

 同じビデオカード、メモリを使用しているLGA1700とSocket AM4では、Windows 11に最適化されているCore i5-13600KF(LGA1700)がRyzen 9 5900X(AM4)をすべての項目で上回った。

LGA1700ベースで決定!
4万円台半ばで購入することができる14コア20スレッドのCPU。Windows 11と組み合わせることで、処理に応じてPコアとEコアを割り当てるIntel Thread Director機能を搭載し、CPUの性能を最大限に引き出すことができる
今回は15万円という制限があるので、前世代のB660チップセット搭載マザーボードを選択。DDR4対応モデルを選択することでメモリを流用することが可能で、コストパフォーマンスは非常に高い。本機はこのの価格でWi-Fi機能付きなのも◎

 この結果を受けて、DDR4メモリの流用ができ、RTX 3060 Tiを搭載可能という点から、今回はアップグレードするのはLGA1700環境とした。各種ベンチマークの結果を見ても高レベルでまとまっており、高解像度環境下でも普段使いからゲーミングまでさまざまな場面で快適に動作してくれるだろう。今回、アップグレード予算が15万円という制約がある中で、LGA1700はマザーボードに最新世代のチップセットであるB760ではなく、互換性のあるB660チップセットモデルを選択することで価格を抑えることができたのも大きい。

 AM5環境はDDR5メモリ購入のために予算を割く必要があり、ビデオカードがRTX 3060となったことが響いた。ただし、AM5はAM4同様の長期間サポートとなる予定のプラットフォームであり、将来にわたってアップグレードを検討している場合には、ほかにはない大きな強みとなる。

 ミドルクラスのCPU、ビデオカードを採用したことで、消費電力も300W台に収まった。当時使用していた650Wの電源を使用しても問題ないと判断した。

完成 手持ちパーツを活かして超高コスパを達成!

 DDR4対応のマザーボードを選択することで、DDR4メモリを流用しつつ、最新のCPUとWindows 11を組み合わせることで性能を最大限活かすことのできるシステムが完成した。マザーボードに前世代のB660チップセット搭載製品を選んだことで、よりコストパフォーマンスの高い万能機となった。6万円台で選択できるRTX 3060 Tiの性能は高く、WQHD解像度でも快適にゲームをプレイできることは大きなメリットと言える。

24cmクラスのラジエータの簡易水冷クーラー。基本的に2017年当時発売されていたタワー型ケースに搭載可能なサイズで、発熱の多いCPUにも対応できる冷却性能を持っている
今回のPCケースはいわゆる密閉型と呼ばれるタイプのため、側板を閉じたら見えなくなってしまうクーラーのLEDは消してしまおう。UEFIセットアップのAuraやArmoury CrateでLEDをOFFにする
Define R6は5インチや、3.5インチのデバイスを搭載するために、マウンタが多数搭載されている。このマウンタを外すことで、大型のVGAを搭載することができエアフローも向上する

 2017年当時は大容量M.2 SSDが高価で、2.5インチSSDとHDDを組み合わせて使っていたユーザーも多いはずだ。現在はさらに高速になったPCI Express 4.0に対応した1TBのSSDが手頃な価格で手に入るが、古いSSDを流用すればよりコストダウンも可能だ。ただし、規格が合っているからと言って使い続けるのはリスクがあるパーツもある。経年劣化などで少しでも不安を感じるようであれば、思い切ってこのタイミングで交換してしまってもよいだろう。

当時流通量が多く手に入りやすかったMicron製チップ搭載メモリ。現在でも重量級のゲームや高解像度の動画編集をしないのであれば、8GB×2でも比較的快適に動作する

 今回DDR4メモリを流用したわけだが、1万円も出せば、高速で大容量の製品が手に入る。そうした製品に交換するとどの程度性能が伸びるか試してみたのが右のグラフだ。一般的な用途では高速化や大容量化の効果は数%。あえて今購入する必要はない。

メモリはDDR4-2400で大丈夫?
重量級のゲームや処理の重い画像処理をしないのであればDDR4-2400でも動作には問題ないが、今やより高速なDDR4-4200の16GB×2でも1万円前後。余裕を持たせたいなら追加購入するのも悪くない

 なお、DDR5メモリは発売当初の品薄も改善され入手性がよくなり、DDR4モデルとの価格差は小さくなっている。マザーボードも今後は徐々にDDR5モデルに切り換わっていく。動画編集など大容量メモリが効果的な用途にPCを使うなら、DDR5対応マザーボードを選択肢に入れてもよいだろう。

 折からの物価の上昇でパーツ価格が高騰している中、新規に組むより安価にアップデートできることは大きなメリットとなる。本作例を参考にしてぜひチャレンジしてほしい。

あなたのPCケース、水冷クーラーに対応してる?

定番のゲーミングケースとして人気が高く、内部も広く組み込みが容易な製品だが、シャドーベイを外すことで底部に24cmクラスのラジエータの取り付けが可能
シンプルなデザインと高い品質でロングセラーを記録した大人気ケース。この時期は水冷に正式対応したものが増え、本製品も天板は42cm、前面は36cmのラジエータにまで対応可能

 現在のハイエンドCPUをフルに活かすには、クーラーは空冷では不十分で、その発熱に対処するには水冷が望ましい。古いPCケースを流用する今回のアップグレードのように、内部システムを交換する際にはラジエータの対応状況をチェックしておこう。以前に発売されたPCケースは36cmや28cmクラスのラジエータには対応せず、24cmまでの対応にとどまっているものも多い。パーツを購入したのに取り付けることができないとなれば目も当てられない。

 気を付ける点はほかにもあり、天板に搭載可能となっている場合でもマザーボードのヒートシンクが干渉し取り付けられない場合もあり、その場合は前面に取り付け位置を変更することになる。また、密閉型ケースの天板にラジエータを搭載した場合は、天板のパネルを外さないと熱がこもってしまうので注意したい。

【検証環境】
<LGA1700>CPUIntel Core i5-13600KF(14コア20スレッド)
マザーボードASRock B660 Steel Legend(Intel B660)
メモリMicron Crucial CT8G4DFS824A(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
<Socket AM5>CPUAMD Ryzen 5 7600X(6コア12スレッド)
マザーボードASRock B650E Steel Legend WiFi(AMD B650E)
メモリMicron Crucial CT16G52C42U5(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB)×2
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC ZTA30610H-10MLHR(NVIDIA GeForce RTX 3060)
<Socket AM4>CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MAG B550 TOMAHAWK(AMD B550)
メモリMicron Crucial CT8G4DFS824A(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
<共通>SSDMicron Crucial P5 Plus CT1000P5PSSD8JP[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
OSWindows 11 Pro
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

[TEXT:Windlass]

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