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【コスパ最強自作術⑫】コスパ自作はまだまだ健在!8万円で作る質実剛健ベースマシン

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

コスパ自作はまだまだ健在!8万円で作る質実剛健ベースマシン

 PCパーツ価格がここ数年で相場が上がったというのは確かだ。それなら自作PCにおけるコストメリットは消滅してしまったのだろうか? 今回はこの2023年において、標準以上の性能や機能を確保しつつ、どこまで安価にPCを自作できるかを検証してみた。

 実際に調べてみると、とくに値上がりしているのがビデオカード、最新世代のマザーボードで、CPUやケース、電源はやや高くなった。逆にDDR4に限ればメモリはかなり安くなり、SSDも値下がり傾向。決してすべてのパーツが高くなっているわけではないのだ。ここ数世代のC P Uは性能向上が大きく、安くてよいものを厳選していけば、確実に性能アップしたPCを自作できるだろう。

 ただ、とにかく安いものだけを寄せ集めたPCは性能や機能のバランスが悪く、不満が出がちだ。さすがに5万円では少な過ぎると判断し、予算8万円に設定。安価なパーツの中から厳選に厳選を重ね、十分満足できる基本性能、じっくり育てていける拡張性など、実用度の高いPCに仕上げた。今回は一番ネックとなるビデオカードの搭載をを見送っているためゲーム系のベンチ結果は振るわないが、動画再生・編集などのホーム用途や文書作成などのビジネス用途といった一般的なPCとしてのスコアは十分なものだ。今後不満が出たとしても、その拡張性を活かして、どのようにも変化できる。お値段以上の価値はあるその姿をご覧に入れよう。

CPU&マザーボード&ケース コストパフォーマンスならmicroATX

CPUの候補一覧

 8万円以内の自作PCプランを組むにあたり、最初にビデオカードを搭載しない(内蔵GPUを利用する)という方針を立てた。2万円程度で入手可能な製品は機能的に数世代前のもので、短期的にはよいものの、将来的には買い換え必至。改めて購入資金を貯め、より世代の新しいものを狙おう、という計画だ。そうなると、このPCのパフォーマンスを決定する最大の要因はCPUになる。これより下位モデルにはないEコアの存在が決め手で、まずCore i5-13400を選んだ。

P&Eコアを搭載したこれぞ新世代のCPU。ここに3万円強を注ぎ込むのは予算全体からするとかなりのウェイトだが、パフォーマンスを考えるとそれだけの価値がある

 第13世代Coreは、1世代古いIntel 600シリーズチップセットでも最新BIOSなら対応できるのがキモで、安価なB660マザーボードを使うことができる。その上で、安価なDDR4をサポート、拡張性がしっかりあり、信頼性も高いものとしてASUSTeKのB660搭載PRIMEシリーズに目を付けた。同シリーズにはATXのPRIME B660-PLUS D4とmicroATXのB660M-A D4があるが、 今回はより低価格なmicroATXモデルを選んでいる。拡張性を気にする方も多いかもしれないが、M.2SSDは2基搭載できるし、拡張スロット本数に関してはほとんど同じだ。今回はあくまで低予算。以前のように拡張スロットに何本もカードを挿していた時代ならともかく、現在においてmicroATXの拡張性は普通に使う分には十分なものとなっている。

もっと安いものもあるが、拡張スロットやメモリスロットの数も十分で、ほどよい拡張性を備えている点で選んだ。小さめながらVRMヒートシンク付きも◎
少しプラスすればATXモデルもある。LANが2.5GbEへ、M.2が増えるといったメリットはあるが、今回は価格的に見送った

 PCケースもmicroATXのほうが安く抑えられるが、安いケースはケースファンが付属しないものもある。低価格マザーボードはVRMヒートシンクが小さく、ファンによるエアフローがより重要になる。標準搭載で多くのファンを搭載しているモデルが理想だ。あれこれと比較検討し、選んだのはZALMAN Z1 Iceberg。3基のケースファン付きで6,000円という価格が決め手になった。同シリーズにはATX版のZ3 Icebergもあるが、価格が上がるわりにファン数が少なく、コンセプトが異なる。今回の路線ならやはりmicroATXケースが最適だ。

最安クラスではないが、3基のファンを標準搭載するところでお得感がある。板材は薄めだが質感は悪くなく、細部も価格以上を感じさせる
IcebergのATXモデルだがコンセプトが若干異なるようで、ファンはLED搭載となり2基に減る。コスパがよいのは確かだがZ1 Icebergほどではない

 主要パーツの選択はこのように進めていった。最安パーツではないが、こだわりを盛り込んだ内容なので、組んだ者としてもその価格性能比に満足できるPCに仕上がった。

完成 Core i5で性能を確保、チープさもなく仕上がった

組み立てやすく完成後の保守も簡単

 Z1 Icebergは装備と価格で選んだが、非常に組み立てやすかったのが好印象だ。もちろん安いなりに疑問がわく構造もあったが、組み立ては終始スムーズ。裏面配線スペースも十分にあるので配線しやすく、余った直付けケーブルは電源カバーによってうまく隠せている。ヒンジ式のガラスサイドパネルは内部へのアクセスが楽で、気軽にPC内部をいじりたくなる。安ケースというとどうしても初心者には勧めにくい印象があるが、このレベルなら十分ありだろう

最近すっかりおなじみとなったガラスサイドパネルだが、本製品はヒンジ構造で簡単に開閉できるところが強み。増設・保守の際もらくらくだ
定格運用するならリテールクーラーでもよいが、エントリークラスの空冷クーラーを組み合わせるだけで静音性が変わる
映像出力はHDMI 2.1×2、DisplayPort 1.4×1。現行規格かつ普通の製品より1基多いところがマルチディスプレイ派に最適だ
価格は2.5インチSSDが安いものの、M.2 NVMe SSDとの価格差はそこまで大きくない。今回は安価なTLC NAND採用モデルにした。

 マザーボードも内蔵GPU機能の使用を前提に、仕事や趣味を十分カバーできるスペックで選定している。低価格マザーボードでは映像出力にクセのあるモデルも多い。Dsub15ピンやDVIといった古い規格を搭載する一方、現行のHDMIやDisplayPortが少ないこともよくある。PRIME B660M-A D4は、HDMI×2、DisplayPort×1と、現行規格でかつ最大3画面マルチディスプレイが構築できる。

十分な拡張性を有しアップグレード可能

 今回組んだ8万円PCのパフォーマンスをベンチマークで計測してみた。PCMark 10のスコアのとおり、内蔵GPUという点でゲーム向きのPCではないが、ホーム&ビジネス用途に使う分には十分な性能だ。SSDもPCI Express 3.0 x4対応のものを選んだのでアプリの起動時間の目安となるApp Start-upテストのスコアもよかった。実際、操作した際のレスポンスは快適だ。

しっかりとした基本性能を発揮
標準搭載ファンが多いため、追加コストなしに強力なエアフローを実現できる。CPUの冷却はもちろん、VRMにもM.2にも十分風が当たる
非力と言われる内蔵GPUでもフルHD&標準品質ならFF14ベンチマークでは「普通」評価。旧世代と比べると着実に高性能化が進んでいる

 内蔵GPUの性能だが、最新ゲームをメインと考えると性能不足でも、軽めのタイトルなら設定しだいで楽しめる。ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークで試したところ、フルHD、標準品質(デスクトップPC)設定で普通評価、HDで同設定なら快適評価に上がった。

ビデオカード増設も考慮しよう
上位GPUに手を出さなくてもミドルレンジクラスならそこそこの投資で快適にゲームがプレイできる。特価品を狙って増設するのは大いにありだ
今回はRTX 3060を挿してみたが、電源出力とケースサイズ的には3060 Tiや3070くらいまでなら増設できる余裕がある

 今回の8万円PCには拡張性も十分用意されている。電源出力にも余裕があるので、ビデオカードを搭載することでゲーミングPCに化けることも可能だ。現在、まずまずの値頃感があるGeForce GTX 1650カード(実売価格25,000円前後)とGeForce RTX 3060カード(実売価格5万円前後)を搭載した場合の3DMarkスコアと消費電力も計測してみたのでご確認いただきたい。高性能なCore i5を組み合わせていることもあり、3DMarkスコアはビデオカードの追加で大きく向上する。一方、3DMarkのTime Spyを実行した際の消費電力はGeForce RTX 3060でも最大300Wに満たず、今回選んだ電源の650Wで問題ない。

今回のPC構成はある程度の拡張性を備えている。メモリもM.2も増設可能。たいていの使い方なら不足はないだろう

 このほかメモリやM.2スロットにも拡張性を残している。現時点で性能に不満はないが、いずれビデオカード、2台目のストレージと、今後の拡張プランを考える時間も自作の楽しさと言えるだろう。

【検証環境】
ビデオカードMSI GeForce GTX 1650 VENTUS XS 4G(NVIDIA GeForce GTX 1650)、ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC(NVIDIA GeForce RTX 3060)
OSWindows 11 Pro
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時3DMark Time Spy実行中の最大値
CPU温度HWiNFOのCPU Packageの値
室温26℃

[TEXT:石川ひさよし]

最新号「DOS/V POWER REPORT 2023年秋号」は9月29日発売

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年春号」の記事をまるごと掲載しています。

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