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なぜ最近のCPUには水冷クーラーが必要なのか?最強の水冷クーラーを見つけ出すには【性能アップのカギは冷却にあり!冷却最前線 ②】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

CPUの性能を限界まで発揮できる製品はどれだ!?簡易水冷CPUクーラー最強決定戦

 メニーコア化に加え動作クロックが大幅に向上した最新CPUは、性能面で大きな進化を果たした一方で、発熱は過去最大クラスとなった。その高い性能を活かしつつしっかりと冷却できるCPUクーラーはどれなのか。今回は高性能な簡易水冷クーラーを一同に集めその性能を検証する。

なぜ最近のCPUには水冷クーラーが必要なのか

 ここ数年、ハイエンドCPUを中心に発熱が急増したことで、簡易水冷クーラーを選ぶユーザーが増加。とくに初代Ryzenの発売以降、IntelとAMDの性能競争が加速し、メニーコア化が進んだことも背景にある。数年前は、メインストリーム帯の上位CPUと言えば、8コアモデルが多かった。しかし、現在ではIntelが第13世代で最大24コア、AMDがRyzen 7000シリーズで最大16コアとコア数が大幅に増加している。また、メニーコア化に加えて直近では高クロック化も顕著だ。IntelプラットフォームにおいてはCore i9-13900KSが最大6GHz、AMDプラットフォームにおいてはRyzen 9 7950Xが5.7GHzと非常に高クロック。これは、一昔前の手動オーバークロックをも凌駕するほどで、標準でかなり攻めた電力やクロックの設定がほどこされている。

CPUメーカーも水冷クーラーを推奨
AMD公式サイトにおいてもRyzen 9クラスのCPUを冷却するには最低でも28cmクラスの簡易水冷CPUクーラーを使うことを推奨している

 前述した二つの理由により最近のCPUの消費電力および発熱は大幅に増加し、メーカーが定義する最大性能を出すためには高い冷却能力が必要となった。旧来、より高性能なCPUクーラーを買う理由というのはCPU温度を下げてシステムを安定稼働させるためだったり、動作音を静かにさせたりというのが一般的だった。しかし、現在ではCPUの最高性能を引き出すために高性能な水冷クーラーが必要な時代になったのだ。

Intel/AMD最新CPUの挙動を理解する

 Intel CPUは基本的には電力制限に忠実に動作し、100℃に達するとサーマルスロットリングでクロックが下がる。Core i9においてはサーマルスロットリング発生前提の発熱設計で、ノートPCと同じ挙動になっている。

 AMD CPUの挙動はIntelよりも制御が細かく、温度ターゲットを維持しながら最大まで動作クロックをブーストする。消費電力値もクロックを決める要素となっている。クーラーの冷却力に合わせてブーストクロックが上昇するため、高性能クーラーを付けるメリットが大きい。

最強の水冷クーラーを見つけ出すには

Core i9-13900KとCore i7-13700の2パターンで検証
今回は幅広い環境を検証するためハイエンドでK付きのCore i9-13900Kと、アッパーミドルでKなしのCore i7-13700の2種類を用意した

 前述のように最近のCPUは、一定の温度をターゲットに限界まで性能を絞り出すという挙動になっているため、旧来の手法ではCPUクーラーの性能が測りにくくなっている。そこで今回は発熱の異なるCore i9-13900KとCore i7-13700の2モデルを用意して検証。最高温度だけでなく、テスト中の動作クロックやベンチスコアも取得して多角的に評価を試みた。下のグラフを見ると分かるように、最新CPUではクーラーの冷却力が動作クロックの高さに直結しており、単に冷えるだけではなくCPUの性能をより引き出せる製品を見付け出すのが目的だ。

 また、基本的な簡易水冷クーラーの選び方も覚えておきたい。水冷クーラーの冷却力はおおむねラジエータサイズに比例する。ハイエンドCPUを冷やしたい場合は36/42cmクラスの大型モデルを選べばよい。ただ、大型のものほどケースの対応状況が厳しくなってくるので、自分のケースに付けられるもののうち最大のものを選ぼう。

 ファンの性能も重要で、風量や静圧が低いとラジエータの性能を活かし切れない場合がある。とくに近年は静圧が重視され、フィンピッチの細かいラジエータに合わせて専用ファンが採用される場合も多い。

 別掲載のカタログではケーブルの取り回しやLGA1700用取り付け部品なども解説しているので、製品選びの参考にしてほしい。

2023年最新CPUグリス事情

LGA1700では心持ち縦長にグリスを垂らすとよし
ヒートスプレッダの端までグリスがしっかりと伸びるように、縦長やX字のラインでの塗布が人気となっている

 CPUクーラー選びと同じくらい重要なのがグリスだ。いくら高性能なクーラーを使ってもその間に使うグリスの性能が低かったり塗り方が十分でなかったりすれば、クーラーの性能を100%発揮できない。グリスの性能においてはヒートスプレッダの大型化により熱交換面積が増えた影響で8W/m・K以上あれば温度差が付きにくくなっている。そのため、塗布時に薄く均一に伸び、設置面のムラがない塗りやすい製品のほうが性能を発揮しやすい。塗り方に関しては、LGA1700ではCPUが縦長化したことによって、縦長やX字で塗布する人や、マスキングしてヘラやカードで伸ばす人が増えたが、基本的にはクーラー側の圧力で押し潰すだけでOK だ。なお、AM5に関しては塗り過ぎるとヒートスプレッダのでこぼこに入り込む点に注意。

塗りやすさが特徴のベストセラーグリス。熱伝導率は8.5W/m・Kと控えめだがしっかりと冷え、量も4gと多いので人気は衰えない
13.2W/m・Kと高い熱伝導率を誇り、低粘度素材の採用で塗りやすさも両立。伸びがよく空気の混入が起こりにくいのも人気の秘密
【検証環境】
<Core i9-13900K環境>マザーボードASUSTeK ROG STRIX Z790-F GAMING WIF(I Intel Z790)
メモリMicronCrucial CT2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
<Core i7-13700環境>マザーボードASUSTeK ROG STRIX B760-G GAMING WIFI D4(Intel B760)
メモリMicron Crucial CT2K32G4DFD832A(PC4-25600 DDR4 SDRAM 32GB×2)
<共通>ビデオカードZOTAC GeForce RTX 3080 AMP Holo(NVIDIA GeForce RTX 3080)
SSDMicronCrucial P5 Plus CT1000P5PSSD8JP[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源Thermaltake TOUGHPOWER GF3 1200W PCI Gen5.0 GOLD(1,200W、80PLUS Gold)
グリス親和産業 OC Master SMZ-01R
OSWindows 11 Pro
室温26℃
暗騒音30dB以下
高負荷時Blender Benchmark実行中の最大値
中負荷時ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(1,920×1,080ドット最高品質)実行中の最大値
アイドル時OS起動10分後の安定値
CPU温度HWiNFOのCPUPackageの値
動作音測定距離ファンから20cm

[TEXT:清水貴裕]

最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は12月28日発売!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、12月28日(木)発売の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!