パワレポ連動企画

前面と天板、吸気と排気、いったいどの組み合わせがベスト?【性能アップのカギは冷却にあり!冷却最前線⑦】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

前面と天板、吸気と排気、いったいどの組み合わせがベスト?

 実際にラジエータを組み込むなら、ケース内のどこに付けたらよいのか、ファンの風向は吸気と排気のどちらがよいのか、実際に検証して確かめてみよう。

Lian LiのExtendedATX対応PCケース「LANCOOL Ⅲ RGB」に、Fractal Designの28cmラジエータを採用する簡易水冷型CPUクーラー「Lumen S28」を組み込んでテストを行なった

 検証ベースとして選んだLian LiのPCケース「LANCOOL Ⅲ RGB」は、14cm角ファンを前面に3基、背面に1基装備する。組み込んだFractal Designの簡易水冷型CPUクーラー「Lumen S28」は、14cm角ファンを2基備える。このためPCケースの前面に3基、天板と背面に3基組み込むことで、エアフローのバランスを取っている。ラジエータの取り付け場所は、前面または天板。またファンの風向は前面吸気/背面&天板排気と背面&天板吸気/前面排気で組み換え、CPUやGPU温度の変化を検証した。

検証環境で利用した「Ryzen 9 7900X」はそのままだとCPU温度が95℃の上限に達してしまうことが予想されたため、PBOとCPBを両方無効化したときの温度も計測した

 また検証環境のCPUが「Ryzen 9 7900X」なので、標準設定だとCPU温度が最大温度の95℃に張り付いてしまう可能性が高い。そこでRyzenの自動オーバークロック機能である「Precision Boost Overdrive」(以下PBO)と、「Core Performance Boost」(以下CPB)をUEFIから無効化したときの検証結果も比較対象とした。

CPU温度が低いのはパターン①、GPU温度が低いのはパターン③

 標準設定時については、どのパターンでもCPU温度は94 ~ 95℃で変わらなかった。Ryzen 7000シリーズの特性でもあるので、これは仕方ない。そしてPBOとCPBを無効化したときの結果を見ると、CINEBENCH時と高負荷時でCPU温度がもっとも低いのは、ラジエータは前面組み込みで前面吸気のパターン①。ラジエータを外気で直接冷却できるエアフローなので、当然の結果だろう。同じように天板のラジエータを外気で直接冷やせるパターン④は、パターン①ほど冷えなかった。ファンの配置状況を考えると、背面ファンの風が天板からの吸気を妨げている可能性があり、パターン①ほどエアフローがスムーズではなかったようだ。

各部の温度はどう変化した?

 GPU温度が低いのは、ラジエータは天板組み込みで、前面給気のパターン③。新鮮な外気を直接ビデオカードまわりに供給し、ビデオカードを冷却できるからだろう。二番手はパターン①だった。パターン③と同じ方向のエアフローながら、ビデオカードまわりに供給されるのがラジエータを冷却した後の空気なので、若干温度が上がっているのだろう。とはいえ1℃しか変わらない。天板と背面方向から給気するパターン②と④は、どちらもGPU温度が高い。このエアフローだとビデオカード自体に風の流れが妨げられ、GPUクーラー周辺まで外気が届きにくいことが予想される。

 こうしたテストを踏まえて考えると、ラジエータは前面設置でエアフローは前面吸気のパターン①がもっとも適している。CPU温度はもっとも低く、GPU温度も二番手に付けている上、トップのパターン③との差も小さい。

水冷の設置場所や風向でCPUの性能は変わらなかった

 ついでと言っては何だが、各設置場所や風向によってCPU性能が変わるのかどうかについても検証した。最近のCPUは、冷却性能に余裕があれば自動でオーバークロックして性能を引き上げる機能がある。CPU温度が違うなら、性能も違ってくる可能性があるからだ。

処理性能は変わるのか?

 性能負荷テストでも利用したCINEBENCH R23の結果と、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」を使った動画のエンコード時間を比較したのが左のグラフである。標準状態とPBO/CPB無効状態では違いはあったが、標準状態同士、あるいはPBO/CPB無効状態同士の比較では、どの場所、どの風向でも結果に大きな違いはなかった。

パターン1がベスト!
CPU温度がずば抜けて低いこと、そしてGPU温度も2番目に低いことを考えると、パターン1がもっとも適している
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B650-A GAMING WIF(I AMD B650)
メモリMicron Crucial CT2K16G48C40U5( PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 AMP AIRO(NVIDIA GeForce RTX 4070)
SSDMicron P5 CT1000P5SSD8JP[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
電源ユニットCorsair RM750x(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーFractal Design Lumen S28(簡易水冷型、28cmクラス)
PCケースLian Li LANCOOL Ⅲ RGB(ExtendedATX)
室温24.3℃
TMPGEnc Video Mastering Works 7解像度が1,920×1,080ドット、bitレートが18Mbpsで3分間の動画ファイルを、H.264/AVC形式でエンコードするのにかかった時間
CINEBENCH時CINEBENCH R23実行中の最大値
高負荷時OCCT 12.0.7のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値
Fan Xpertの設定1,200rpmで固定
各部の温度使用したソフトはOCCT 12.0.7でCPUはCPU(Tctl/Tdie)、GPUはTemperatureの値

[TEXT:竹内亮介]

最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は12月28日発売!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、12月28日(木)発売の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!