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小型ケースでも進む水冷対応、最適な設置方法は?【性能アップのカギは冷却にあり!冷却最前線⑨】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

小型ケースでも進む水冷対応、最適な設置方法は?

 Mini-ITX対応の小型ケースでも、簡易水冷型CPUクーラーを組み込めるようになってきた。ただしすべての小型ケースで利用できるわけではない。

新しい構造を採用する「水冷特化型」の小型ケースが登場

 最近の小型ケースを、ケースのサイズと簡易水冷型CPUクーラーへの対応度を軸に整理したのが上の図だ。

 今回注目するのは大型ラジエータの組み込みに対応する「水冷特化型ケース」。キューブタイプケースと同じか、やや大きいくらいのサイズながら、28~36cmクラスの大型ラジエータやビデオカードを組み込めることが最大の特徴となる。ケースの内部構造を工夫し、ギリギリのところまで余裕を削ることで拡張性を高めている。ただそれだけに内部は狭く、組み込みの難易度はかなり高い傾向がある。

水冷特化型ケースは組み込み難易度が高い
内部が狭いため、冷媒を循環させるための太いパイプを取り回しにくい。ラジエータとの接続部分にムリな力がかかることもある
パーツ間の隙間や余裕はほとんどなく、内部がみっちりと埋めつくされた状態になる。自作PCの組み込みに慣れたユーザーでも、難易度は高い

 このタイプが登場するまでMini-ITX対応ケースと言えば、Mini-ITX対応マザーボードより一回り大きい程度の「超小型デスクトップケース」と、microATX対応ケースに近いサイズの「従来型ミニタワーケース」の二つが主流だった。前者は拡張性がまったくないため、小型でも強力なPCを作りたい場合は後者を選ばざるを得なかった。ただサイズが大きいので、置き場所に困ることはあったのだ。しかし水冷特化型ケースは机の上に置いてもジャマになりにくいちょうどよいサイズながらも拡張性が高く、今後の主流になる可能性はある。実際ここ数年、水冷特化型の小型ケースは増加傾向にある。

CPU温度が低いのはパターン② 自然なエアフローが功を奏す

 今回は、Mini-ITX対応の水冷特化型ケースの最新モデルであるCorsairの「2000D RGBAIRFLOW Mini-ITX PC Case」に、28cmラジエータを備えるFractal Designの簡易水冷型CPUクーラー「Celsius+ S28 Dynamic」を組み込んで検証を行なった。

 冷却最前線⑦からの検証と同様、本来はPCケースが装備する標準搭載ファンの風向も変更する予定だった。しかしパーツを組み込んだ後だと、このファンの向きを変えることは不可能に近い状態であり、仕方ないので今回は、ラジエータ用ファンの風向を変更してCPU温度とGPU温度を計測している。またせっかく36cmクラスまで対応するのだから、36cmラジエータを備えるFractal Designの「Celsius+ S36 Dynamic」も用意したのだが、ラジエータの突起部分がわずかに長く組み込めなかった。内部が狭い水冷特化型ケースだと、こうしたことはよくある。

ラジエータに付けたファンの風向を変更して温度を計測
2000D RGB AIRFLOW Mini-ITX PC Caseの側面に、28cmのラジエータを備えるFractal Designの「Celsius+ S28 Dynamic」を付け、ラジエータに付けるファンの風向を変更したときのCPU温度とGPU温度の変化を計測

 CPU温度がもっとも低かったのは、ラジエータ用ファンの向きを排気方向に設定したパターン②だ。標準の前面ファンが吸気方向なので、前面から右側面に抜けるスムーズなエアフローになったことがよい影響を与えたのだろう。逆に吸気方向で設置するパターン①では、高負荷時では4℃も高くなる。各部にメッシュ構造を採用する通気性のよいケースではあるが、バランスの悪いエアフローだと冷却性能が低下するようだ。

各部の温度はどう変わる?

 このようにCPU温度には違いが出た一方で、GPU温度はどちらの設置方法でも大きな違いはなかった。これには理由がある。というのも組み込み後の状態を見ると、ビデオカード本体が標準ファンやラジエータファンからの風を遮る位置にあったのだ。そのためGPUクーラーはエアフローから切り離された状態になり、ラジエータ用ファンの風向がほとんど影響しなかったのだろう。

 水冷特化型PCケースはそれぞれ構造が異なり、ファンやラジエータの位置も変わる。そのため今回の検証結果がすべての水冷特化型PCケースで有効とは限らないのだが、スムーズな流れのエアフローが冷却によい影響を与えることは間違いないようだ。

専用の簡易水冷型CPUクーラー付きケースなら組み込み簡単!
天板に専用の28cmクラス簡易水冷型CPUクーラーを備え、850WのSFX対応電源ユニットも組み込み済みの小型ケース。専用なので冷媒用パイプの長さもぴったりで、組み込みやすい。
14cmラジエータを備える簡易水冷型CPUクーラーと、750WのSFX対応電源ユニット組み込み済みの小型ケース。電源ケーブルやピンヘッダケーブルの長さや場所が最適化されており、ラクに組み込める。
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B650E-I GAMING WIFI(AMD B650E)
メモリMicron Crucial CT2K16G48C40U5( PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 AMPAIRO(NVIDIA GeForce RTX 4070)
SSDMicron P5 CT1000P5SSD8JP[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
電源ユニットCooler Master V750 SFX GOLD(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーFractal Design Celsius+ S28 Dynamic(簡易水冷型、28cmクラス)
PCケースCorsair 2000D RGB AIRFLOW Mini-ITX PC Case(Mini-ITX)
室温24.3℃
CINEBENCH時CINEBENCH R23実行中の最大値
高負荷時OCCT12.0.7のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値
CPUの設定標準設定またはPBO/CPB無効
Fan Xpertの設定1,200rpmで固定
各部の温度使用したソフトはOCCT 12.0.7でCPUはCPU(Tctl/Tdie)、GPUはTemperatureの値

[TEXT:竹内亮介]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

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