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CPUの性能を限界まで発揮できる製品はどれだ!?簡易水冷CPUクーラー最強決定戦【性能アップのカギは冷却にあり!冷却最前線 ④】
DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!
2023年12月19日 10:10
Core i9とi7、両方の環境で優秀だった簡易水冷は?
CPU温度や動作音だけではなくパフォーマンスも含め製品を評価
今回の検証では、Blender Benchmark実行時を高負荷時、フルHD、最高品質設定でのFF14ベンチ実行時を中負荷時とした。PWM端子を通じてマザーボード側で制御するものについてはマザーボードのユーティリティからキャリブレーションを実行した上で計測している。また、専用ソフトウェアによる制御を行なうものはCPU温度をファン回転数やポンプ制御のトリガーに、プロファイルは標準を指定した。
まずCore i9の高負荷時については、事前の予想どおり、全製品がリミット上限の100℃に到達し、サーマルスロットリングが発生している。温度的には横並びだが、冷却性能が高いほどサーマルスロットリングの発動を遅らすことができ、ブーストの持続時間や動作クロックに反映される。この結果、Blender Benchmark3項目の合算スコアと平均動作クロックの値に少なからぬ差が生じている。また、実運用という点では中負荷時のCPU温度も参考になるだろう。
もっとも大きなラジエータの42cmクラスの結果はやはり優秀だ。36cmクラスも高い性能を持つものが多く、一部のモデルは42cmクラスに迫るほか、スコアと平均クロックでも上位を占める。28cmクラスの製品は大型高静圧ファンのおかげか中負荷時の冷却はまずまず、スコアも顕著というほどの低下は見られなかった。24cmクラスや空冷クーラーは中負荷時でも温度が高めであることに加え、Blenderスコアもハッキリと低く、平均クロックも4,900MHz台を割り込むといった傾向が見られた。
こうして見ると、Core i9クラスとの組み合わせで性能を重視するなら36cmクラス以上が推奨、搭載できるなら42cmクラスを狙いたいという結果だ。28cmクラスはハイエンド空冷を上回る性能を持っており、サイズ的制限がある場合に活用したい。ただ、24cmクラスやハイエンド空冷も、組み合わせ不可ではない。平均クロックにして100MHz以上落ちるが、スコアはそこまで大差はない。より冷却性能が高いクーラーを選べばブーストがより効くというプラスアルファの部分の話だ。
Core i7環境では高負荷時のCPU温度にも差が出てくる
やや負荷が下がるCore i7の場合、高負荷時もいくつかのモデルは90℃台に抑えられている。これに関してはCore i9との組み合わせで高い冷却性能を示していたモデルがこちらでも冷えているという印象だ。100℃に到達していない製品に関してはi7-13700の性能を完全に活かし切っていると考えてよさそうだ。中負荷時についてはバラけているように見えるが、実際はCore i9の中負荷時とそこまでグラフの長短は違わない。70℃台まで上がったのは28cmクラス以下だ。
Core i9とCore i7を総合して冷却性能で序列を出すとすれば、まず42cmクラスの2製品がラジエータの大きさもあってよく冷えていた。Corsair iCUE H170i ELITE CAPELLIX XTは、iCUEの標準制御がかなり積極的にファン回転数を上げる傾向のプロファイルだったため、ここでもトップクラスの結果。なお、36cmクラスで冷却能力の高いものとしてはDeepCool LS720 WH、NZXT Kraken360 RGB、ProArtist GRATIFY AIO5、玄人志向 KURO-AIOWC360の4製品。NZXT Kraken 360 RGBに関してはややプレミア寄りの価格の製品だが、ほか3製品は比較的手頃でとりわけProArtist GRATIFY AIO5は1万円台中盤という価格を考えると“鬼コスパ”と言ってよい。さらに安価なZALMAN Reserator5 Z36も冷却性能はまずまず。28cmクラス以下は一定の冷却性能はあるものの、できればi7までと組み合わせたい。設置サイズに制限がある場合などはよい選択肢だろう。
動作音に目を向けると、もっとも静かだったのはCorsair H100x RGB ELITE。先のグラフのとおり冷却性能はやや不足気味だが、ファンの最大回転数が1,500rpmと低く、空冷クーラーよりも高い静音性で活躍の場はありそうだ。次に静かだったのはARCTIC Liquid FreezerⅡ 420。高負荷時でも40dB台だった。42cmラジエータに最大1,700rpmに抑えた大口径14cm角ファンという組み合わせから静音指向の設計がうかがえる。一方、同じ42cmクラスでもCorsair iCUE H170i ELITE CAPELLIX XTの結果は振るわなかった。ソフトウェア制御の製品はNZXTも含めてアイドル時の動作音が高めに出ており、ここはカスタマイズする余地がありそうなところだ。上位2製品からは数値的に離れるが、36cmクラスで体感的に静かと感じたのはDeepCool LS720 WHと玄人志向 KURO-AIOWC360。この2製品は冷却性能も良好だったので、ファン自体が静かで高性能、ポンプを含め総合的な冷却性能が優れているのだろう。
簡易水冷10製品の中からレコメンドを決定!
今回の製品の中でのオススメは、ゴールドレコメンドがProArtist GRATIFY AIO5。静音性こそやや劣るが、冷却性能はトップクラス。それを反映してかBlender Benchmarkのスコアも高い。何よりハイエンド空冷+5,000円程度の価格は初めての水冷としても手を出しやすいだろう。ヘッドの水温表示ギミックもチャームポイントだ。
シルバーレコメンドの一つ目はARCTIC Liquid FreezerⅡ 420。Blender Benchmarkスコア、CPU温度、静音性のバランスに加えて2万円という価格は見逃せない。ただ、42cmクラスを搭載できるケースはまだまだ限られていることもあり、汎用性が高い36cmクラスからもう1製品選びたい。静音性も高いDeepCool LS720 WHとCPU性能を引き出した玄人志向 KURO-AIOWC360が僅差で悩んだが、価格面でも優秀な後者を選出した。余談にはなるが、同製品のLED搭載モデル「KURO-AIOWC360L」はなぜか無印モデルより安く売られている(2023年6月時点)。こちらも過去本誌でLS720と同水準の結果を出していた製品なので、ファンの仕様が違う点には注意だが、価格差によっては選択肢に入れてもよいだろう。ちなみに、LS720に関してはブラックモデルのほうがわずかに安いのでコスパを重視する場合はあちらのほうがオススメだ。
このように簡易水冷CPUクーラーは製品バリエーションも多く見るべき点が非常に多い。組みやすさや取り回しのよさといった性能以外の情報も参考にしつつ、この暑い夏を乗り切るため簡易水冷CPUクーラー選びを楽しんでいただきたい。
<Core i9-13900K環境>マザーボード | ASUSTeK ROG STRIX Z790-F GAMING WIF(I Intel Z790) |
メモリ | MicronCrucial CT2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
<Core i7-13700環境>マザーボード | ASUSTeK ROG STRIX B760-G GAMING WIFI D4(Intel B760) |
メモリ | Micron Crucial CT2K32G4DFD832A(PC4-25600 DDR4 SDRAM 32GB×2) |
<共通>ビデオカード | ZOTAC GeForce RTX 3080 AMP Holo(NVIDIA GeForce RTX 3080) |
SSD | MicronCrucial P5 Plus CT1000P5PSSD8JP[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
電源 | Thermaltake TOUGHPOWER GF3 1200W PCI Gen5.0 GOLD(1,200W、80PLUS Gold) |
グリス | 親和産業 OC Master SMZ-01R |
OS | Windows 11 Pro |
室温 | 26℃ |
暗騒音 | 30dB以下 |
高負荷時 | Blender Benchmark実行中の最大値 |
中負荷時 | ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(1,920×1,080ドット最高品質)実行中の最大値 |
アイドル時 | OS起動10分後の安定値 |
CPU温度 | HWiNFOのCPUPackageの値 |
動作音測定距離 | ファンから20cm |
[TEXT:清水貴裕]
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最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は12月28日発売!
今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。
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