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【PC自作の新常識】マザー標準搭載の“2.5GbE”ってどうすれば有効活用できるの?

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

Q、マザー標準搭載の“2.5GbE”ってどうすれば有効活用できるの?

 貴重な高速インターフェース、ムダに眠らせておくのはもったいない!

A、最低限、有線LANハブを用意すれば簡単に乗り換えられます!

  • 5GbE、10GbEに比べれば導入コストはぐっとお安め
  • 従来のLANケーブルがそのまま利用できる確率大
  • 通信相手も2.5GbE対応がベスト。PCはもちろんNASや高速インターネットなどが効果的

移行のハードルは比較的低め。ハブ/ルーターを整えればひとまずOK

 2.5ギガビットイーサネット(2.5GbE)は、最大転送速度2.5Gbps(2,500Mbps)の有線LANの規格だ。正式には、2.5GBASE-TとしてIEEE802.11bzで規格化されている。最近では、ミドルレンジ以上のマザーボードやゲーミングノートPCなどにも標準搭載されており、最大1Gbpsの従来の1000BASE-Tを置き換える流れが高まってきている。

マザーとケーブルの準備は完了している場合も多い
ミドルレンジ以上のマザーボードであれば、標準で2.5GBASE-T対応となるモデルが大半だ。写真はASUSTeK「PRIME Z690-A」

 1Gbpsを大きく超える転送速度を実現可能な有線LANの規格には、最大5Gbpsの5GBASE-T、最大10Gbpsの10GBASE-Tが存在するが、2.5GBASE-Tは転送速度こそ控えめなものの“価格が安い”のが最大の特徴。

 マザーボードだけでなく、PCI ExpressやUSB接続の有線LANアダプタも安価かつ豊富に販売されている。対応したケーブルとハブも必要となるが、ケーブルも従来の1000BASE-Tと同じカテゴリー5eを流用できる(新たに購入するにしても安価)。

【POINT!】イーサネット規格と対応ケーブル
ケーブルは、1000BASE-Tと同じカテゴリー5e以上に対応するため、既存の配線を流用可能。新規に買う場合、現在店頭に並んでいるのはほとんどカテゴリー6以上なので、もっとも安いカテゴリー6で問題ない
写真はサンワサプライのカテゴリー6対応フラットケーブル

 ハブについては、2.5GBASE-T対応のハブ、または2.5GBASE-T対応Wi-Fiルーターが求められるが、2.5GBASE-T対応ハブ(スイッチングハブ)は、上位規格に比べるとかなり安く、実売1万円以下から購入できる。全体としては導入の敷居は5/10GBASE-Tに比べれば高くない。

プラネックスコミュニケーションズ FX2G-05E 実売価格:10,000円前後 プラネックスコミュニケーションズの2.5GBASE-T対応5ポートスイッチングハブ。実売1万円以下と低価格ながら、筐体から効率的に排熱する凝った設計を採用。既存のルーターや1Gbps対応スイッチに接続して、2.5GBASE-T対応機器を本製品に接続する

有効活用するには「つなぐ先」も速くなければ宝の持ち腐れ!?

 実際に2.5Gbpsで通信するには、PCだけでなく、つなぐ先の機器も2.5GBASE-T以上に対応していないと意味がない。

 たとえば、PCとハブを2.5GBASE-Tで接続したとしても、その先につながっている光ファイバーやルーターが1000BASE-T対応であれば、実効速度は遅いほうの1Gbpsで頭打ちとなってしまう。

 このため、2.5GBASE-Tの速度を最大限に活かしたいのであれば、つなぐ先も2.5GBASE-T以上にしておく必要がある。具体的には、インターネット接続であれば2.5Gbpsを超える速度に対応の光ファイバー接続サービスと2.5GBASE-Tに対応したWi-Fiルーター、ファイル共有であれば2.5GBASE-T対応のNASなどが必要になる。

Wi-Fiルーター、NASの高速化で2.5GbEを有効活用
アイ・オー・データ機器 WN-DAX3000QR 実売価格:20,000円前後 WAN/LANの両方とも2.5GBASE-Tに対応した数少ないWi-Fi 6対応ルーター。Wi-Fiでも最大2,402Mbps通信に対応しているので、2.5GbEに近い速度で通信できる
QNAP Systems TS-231P3-4G 実売価格:58,000円前後 1000BASE-T×1に加えて、さらに2.5GBASE-T×1も標準搭載した2ベイの個人向けNAS。豊富なアプリを追加可能で、AIを利用した写真の管理なども可能
バッファロー LUA-U3-A2G/C 実売価格:6,500円前後 USB 3.0接続の2.5GBASE-T対応LANアダプタ。1000BASE-Tにしか対応していないPCを2.5GBASE-Tに手っ取り早く対応させることが可能。Type-Cアダプタも付属する

 もちろん、一度に置き換える必要はない。同一のハブに2.5GBASE-Tと1000BASE-Tを接続することもできるし、既存の1000BASE-T対応のハブに2.5GBASE-T対応のハブを接続することもできる。最初はバックアップやデータ保存の高速化を目指してNAS、次はインターネット接続の高速化を狙って回線といったように、優先順位を付けながら、徐々に2.5GBASE-T化していくとよいだろう。

転送速度2.5倍も、回線やストレージの性能に要注意

 2.5GBASE-Tの実力を検証してみよう。オンメモリで動作するiPerf3を利用したPC同士の純粋な転送速度だが、2.5GBASE-Tが2.3Gbps前後と1Gbpsの2.5倍近くに到達。インターネット接続テストでは、回線の混雑状況の影響で下りが遅めだが、それでも上下とも1Gbpsの2.5倍を確保できた。

 CrystalDiskMarkでネットワーク間のファイル共有の速度を計測してみた。2.5GBASE-Tはシーケンシャルリードで295.61MB/sと2.5倍以上を実現。ここまで来ると、NASのHDDがボトルネックになる可能性もある。

2.5GBASE-T接続(画面左)、1000BASE-T接続(同右)の環境にてネットワークドライブに対してCrystalDiskMark を実行した計測結果

Q、マザーに乗ってる「Wi-Fi 6E」は使えるようになったの?

 現行のWi-Fi 6との違いは? 無線LANは今より速くなる?

A、2022年9月、ようやく認可されました!


    •対応ルーターが必須だが、干渉や混雑の解消に期待
    •ハード的に対応していても既存PCでの機能開放は不透明な状況

最高速度自体は据え置きも、混雑緩和で実効速度はアップする!?

 Wi-Fi 6Eは、利用可能な周波数帯域として新たに6GHzを追加した新しいWi-Fiの規格だ。海外で先行して展開されていたが、日本でも9月2日の省令で利用可能になった。新しい規格と言っても変調方式などの基本的な仕組はWi-Fi 6(802.11ax)と同一、転送速度も従来のまま(端末側で2,402Mbps)だ。

 では、何がメリットなのか?と言うと、“空いている6GHz帯を活用できる”点にある。6GHz帯の追加によって、干渉しないチャンネルが160MHz幅で3系統追加され、合計五つのチャンネルを干渉せずに利用可能になった。また、現状はそもそも6GHz帯の利用者がほとんどおらず空いている上、従来の5GHz帯のように、レーダーとの干渉を避けるためのDFSという仕組を利用する必要がなく、レーダーを検知したときの一時的な停波やチャンネル変更が必要なくなった。

 実際に利用するにはWi-Fi 6E対応ルーターが必要になるが、それだけでなくPC側の対応も必要だ。マザーボードによっては、すでにWi-Fi 6E対応モジュール(Intel AX210など)が搭載されているモデルもあるが、6GHz開放前のPCの場合、ハード的には対応していても利用できない状況にある。メーカーによっても異なると思われるが、9月中旬現在、利用可能になる時期や具体的な対応方法は明確になっていない。

【POINT!】Wi-Fi 6E対応ルーターは早速登場
バッファロー WNR-5400XE6 実売価格:21,000円円前後 Wi-Fi 6Eの6GHz帯に正式対応したWi-Fiルーターはすでに登場済み。右は2,402Mbps(6GHz)+2,402Mbps(5GHz)+574Mbps(2.4GHz)の3系統の通信を同時利用できるトライバンド対応製品。メッシュWi-Fi対応のセットモデル(実売価格40,000円前後)もある。

発売済み製品の対応については現時点では未定

 発売済みのモジュールでWi-Fi 6E を使えるようにするには、モジュールベンダー(Intelなど)が、いわゆる“技適”として6GHz 帯に関する申請を新たに行なう必要があり、その際に別の登録番号を新たに取得することになる。つまり、ファームやドライバの更新だけでは既存のモジュールで6GHz帯が利用可能にならないのだ。そのため、現時点では既存製品での対応化/機能開放の状況は不透明だ(編集部注:マザー各社に確認中だが、具体的な予定に言及した回答は得られていない。モジュールベンダーの対応を待ってから今後が明らかになるものと思われる)。

マザーボードにWi-Fi 6E対応モジュールが搭載されていても、ドライバ/ファームが対応していないため6GHz帯の接続先(SSID)は表示されない
Wi-Fi 6E対応モジュールを搭載するマザーボードも少なくないが、日本では機能をロックされた状態だ
【検証環境】<テストPC>
CPUAMD Ryzen 9 3900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK TUF Gaming B550-PLUS(AMD B550)
メモリPC4-25600 DDR4 SDRAM 32GB×2
SSDNVMe M.2 SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
オンボードLANRealtek RTL8125B 2.5Gbps Ethernet(2.5GBASE-Tおよび1000BASE-Tで使用)
OSWindows 11 Pro
スイッチQNAP QSW-2104-2T
iPerf3テストPCサーバー上でiPerf3をサーバーモードで起動後、テストPCでiPref3を実行して計測
SpeedTest.netテストPCからSpeedTest.netにアクセスして計測
CrystalDiskMark 8.0.4テストPCサーバー上に作成した共有フォルダをテストPC上でネットワークドライブとして割り当て、このドライブに対してテストを実行
【検証環境】<テストPCサーバー>
CPUIntel Core i3-10100(4コア8スレッド)
マザーボードMSI H510I PRO WIFI(Intel H510)
メモリPC4-21300 DDR4 SDRAM 16GB×2
SSDNVMe M.2 SSD(PCI Express 3.0 x4、1TB)
オンボードLANRealtek RTL8125B 2.5Gbps Ethernet(2.5GBASE-T)×1
OSWindows Server 2019
スイッチQNAP QSW-2104-2T
iPerf3テストPCサーバー上でiPerf3をサーバーモードで起動後、テストPCでiPref3を実行して計測
SpeedTest.netテストPCからSpeedTest.netにアクセスして計測
CrystalDiskMark 8.0.4テストPCサーバー上に作成した共有フォルダをテストPC上でネットワークドライブとして割り当て、このドライブに対してテストを実行

[TEXT:清水理史]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2022年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

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