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【PC自作の新常識】最近のIntel CPUの性能を引き出すにはUEFIの設定が必要?

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

Q:最近のIntel CPUの性能を引き出すにはUEFIの設定が必要?

 ここ最近はUEFIメニューをいじる必要がなかったけれど

A:MTP、XMPの設定は影響大です

  • MTPの設定でCPUの性能を限界まで引き出せる
  • 性能向上につながるかはCPUクーラーの性能がカギ
  • XMPを設定することでOCメモリ本来の性能を発揮

MTPの設定で第12世代Coreの性能を引き上げる

PBP(Processor Base Power)従来の熱設計電力指標であるTDP(Thermal Design Power)の代わりに、第12世代Coreから導入されたベースクロック時の消費電力指標。従来CPUのPL(Power Limit)1に相当する
MTP(Maximum Turbo Power)最大ブースト状態を維持するための電力指標。従来のPL(Power Limit)2に相当するもの。多くの電力を消費することでクロックを高め(ブースト)やすくなるが、その状態を維持するためには高い冷却性能が必要となる

 第12世代Coreは、Turbo Boost時の電力リミットであるMTPの数値を上げることでTurbo Boostの上限クロックを維持する時間を延ばし、性能を上げることができる。倍率をいじるわけではないので、いずれのCPUとチップセット搭載マザーボードの組み合わせでも有効だ。ただし、MTPを上げる場合は高性能CPUクーラーが必須だ。

MTPの値を上げればCPU性能が向上する
メーカーで多少表記が異なるが、UEFIセットアップのCPU電力設定メニューにある「Short Duralation Power Limit(W)」がMTPの設定項目。通常はAutoになっているので任意の数値を入力する。Z690マザーではMSI MEG Z690 UNIFYのように、Autoで4,096Wと事実上の無制限設定になっているものが多い

 下のグラフは、Core i5-12600のMTPを変えた場合の性能差を比較したものだ。比較的高性能なCPUクーラーを使用した場合は、MTPを定格から288Wに上げることで性能が大きく向上。しかし、CPU付属クーラーを使用した場合は発熱の増大によりサーマルスロットリングが発生し、性能が落ちてしまった。

Core i5-12600のMTP設定による性能の違い
【検証環境】
CPUIntel Core i5-12600(6コア12スレッド)
マザーボードMSI MEG B660M MORTAR WIFI(Intel B660)
メモリKingston FURY Beast KF552C40BBK2-32(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※PC5-38400で使用)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS500G1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、500GB]
CPUクーラーIntel Core i5-12600付属クーラー、サイズ KOTESTU MarkⅡ Rev.B
OSWindows 11 Pro

OCメモリはXMPの設定を行ない、本来の性能を引き出す

 OC(オーバークロック)メモリは、メモリモジュールメーカーが独自にメモリチップの定格クロックを超えた動作クロックを設定、動作を保証したものだ。

OCメモリにはOC動作プロファイルが書き込まれている
OCメモリにはJEDEC準拠の標準プロファイルに加え、モジュールメーカーが設定したOC動作のためのXMPプロファイルが、動作設定をUEFIに伝えるSPDデータとして書き込まれている

 JEDEC準拠の標準的なメモリであれば、メモリクロックや動作タイミングなどが自動で読み込まれるのでとくに気を使う必要はない。しかしOCメモリの場合は、メモリに書き込まれたOC設定をUEFIセットアップで読み出し、設定を保存する必要がある。

 OCメモリにはJEDEC準拠のプロファイルとXMPというOCのプロファイルが記録されており、ほとんどのマザーボードではJEDEC準拠のプロファイルが優先的に適用されるからだ。XMPの設定をしないまま動かしていると、メモリ本来の性能を十分発揮できないので注意したい。

テストに使用したASUSTeK H670-PLUS D4の設定例。Advanced ModeではAi TweakerメニューにあるAi Overclock Tunerの設定を「XMPⅠ」に設定して保存、EZ ModeではXMPの設定項目を「Enabled」に設定して保存、再起動する

 XMPの設定方法は上のとおり、UEFIセットアップのメモリ設定メニューで、XMPというOCプロファイルを適用するだけだ。

きちんと設定しないと各種アプリの処理性能が伸びない

 メモリクロックはゲーミング性能などにとくに影響をおよぼす。下のグラフはDDR4-4400対応OCメモリのXMP適用時と非適用時(JEDEC準拠設定:DDR4-2666)で3DMarkのCPUスコアを比較したものだが、4K解像度のTime Spy Extremeでは4.4%の差が、WQHD解像度のTime Spyで16%の差が出ている。

ファンの性能を引き出す設定ポイント
各メーカーのマザーボードにはファンコントロール機能が搭載されており、CPU温度などに応じて自動でファンの回転数を調整したり、手動で冷却性能を強化、あるいは静音化したりすることができる。画像はASUSTeKのマザーボードに搭載されている「Q-Fanコントロール」
Q-FanコントロールでCPUの温度などに応じて各ファンの回転数を自動的に調整するには、PWM制御に対応した各ファンの電源ケーブルを適切な端子に接続する必要がある。基板上のファン用電源端子の側には「CPU FAN」や「W_PUMP+」などといった説明が印字されているので、それをよく確認して接続しよう
【検証環境】
CPUIntel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK PRIME H670-PLUS D4(Intel H670)
メモリMicron Crucial Ballistix BLM2K16G44C19U4BL(PC4-35200 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS500G1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、500GB]
CPU クーラーASUSTeK ROG STRIX LCⅡ 360 ARGB(簡易水冷、36cmクラス)
OSWindows 11 Pro

[TEXT:滝 伸次]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2022年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

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