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CPU 28製品をガチ比較、ベストCPUはこれだ!【PCパーツ100選 2024 CPU編/CPU定点観測所 特別編②】

DOS/V POWER REPORT 2024年冬号の記事を丸ごと掲載!

8コアだから確実に“効く”ゲーム特化の最強CPURyzen 7 7800X3D

コア数/スレッド数:8コア/16スレッド●定格/最大ブーストクロック:4.2GHz/5GHz●3次キャッシュ:96MB●対応メモリ:DDR5-5200/2ch ●倍率アンロック: 対応●PCI Express:24レーン(Gen5)●内蔵GPU( 最大クロック):Radeon(2.2GHz)●TDP:120W

 AMDの3D V-Cacheとは、Ryzenだけが利用できるコアの上に積層された巨大3次キャッシュだ。ゲーム以外の用途ではまったくと言ってよいほど効果が期待できない技術だが、ゲームに限ってはフレームレートを劇的に向上させ、ハイエンドGPUのポテンシャルを限界まで引き出してくれる。3D V-Cacheの長所はRyzen 7 5800X3Dで証明済みだが、これをZen 4ベースにしたRyzen 7 7800 X3Dを今回のゴールドレコメンドとした。

 CPUのスペックで言えばコア数の多いRyzen 9 7950X3Dのほうが上だが、3D V-Cacheが使えるコアはどちらも8基のみ、かつ7950X3Dの場合、ゲームによっては3D V-Cacheのないコアに処理が割り振られてパフォーマンスが下がることもある(下グラフ参照)など、チップレット構造というRyzenの強みが弱点になるシーンもある。どんなゲームも確実に速くするというこの1点においては、Ryzen 7 7800X3Dがシンプルかつ究極のアンサーなのだ。

14世代で唯一のEコア増量で高まるマルチスレッド性能Core i7-14700K

コア数/スレッド数:20(8P+12E)コア/28スレッド●定格/最大ブーストクロック:3.4GHz(P)2.5GHz(E)/5.6GHz(P)4.3GHz(E)●3次キャッシュ:28MB●対応メモリ:DDR5-5600/2ch、DDR4-3200/2ch ●倍率アンロック:対応●PCIExpress:16レーン(Gen5)、4レーン(Gen4)●内蔵GPU(最大クロック):UHD 770(1.6GHz)●MTP:253W

 残念ながらCoreプロセッサ(第14世代)は第13世代ほどのインパクトを与える製品ではなかった。アーキテクチャから動作クロックにいたるまで、ほぼ第13世代を継承しているためだが、その中で唯一大きな性能向上を果たしたのがCore i7-14700Kだ。

 その理由はCore i7-14700KはCore i7-13700KよりもEコアのクラスタが1基増え、12基のEコアを搭載したため。Eコアはマルチスレッド処理のスケーラビリティにおいてPコアより有利になるため、処理の並列度が高いほど輝く。処理によっては前世代のCore i7-13700Kを大きく上回り、格上のCore i9-13900Kに肩を並べる性能を発揮する。 消費電力もその分増えているが、Core i9-14900Kや13900Kよりもマイルドで扱いやすい。CPUソケットが来期は継承されないLGA1700という点はデメリットではあるが、価格と性能のバランスでは第14世代の顔というべき製品に仕上がった。これがゴールドレコメンド受賞の理由だ。

Zen 4世代のHEDTで使いやすい32コアが決め手Ryzen Threadripper 7970X

コア数/スレッド数:32コア/64スレッド●定格/最大ブーストクロック:4GHz/5.3GHz●3次キャッシュ:128MB●対応メモリ:DDR5-5200/4ch●倍率アンロック:対応●PCI Express:88レーン(Gen5)●内蔵GPU( 最大クロック): なし●TDP:350W

 2023年はIntelもAMDもハイエンドデスクトップ/ワークステーション向けCPUを更新した。IntelはXeon W-2400/W-3400シリーズ、AMDはThreadripper/PRO 7000シリーズがこれに該当するが、シルバーレコメンドはその中でも物理32コアのThreadripper7970Xとした。Zen 4ベースに移行したことでDDR5やPCI Express Gen 5といった最新規格が利用可能になっただけでなく、コア自体の処理性能も前世代のThreadripper(無印Threadripperの前世代はZen 2)から大きく性能を飛躍させた。32コア版の7970XではWindows環境におけるプロセッサグループの壁を気にする必要がないという運用上の気楽さも受賞の理由だ。

ゲームも仕事も快適に これぞ万能性CPURyzen 9 7950X3D

コア数/スレッド数:16コア/32スレッド●定格/最大ブーストクロック:4.2GHz/5.7GHz●3次キャッシュ:128MB●対応メモリ:DDR5-5200/2ch●倍率アンロック:対応●PCI Express:24レーン(Gen5)●内蔵GPU(最大クロック):Radeon(2.2GHz)●TDP:120W

 ゴールドレコメンドこそRyzen 7 7800 X3Dに譲ったものの、Ryzen 9 7950X3Dを選外とすることはできない、という理由でシルバーレコメンドとした。物理16コアのうち8コアだけに3D V-Cache搭載という“同種ハイブリッド”的な構造だが、Intelのように処理振り分け専用の回路を作ることなく、Windowsのゲームモードを利用するというAMDの賢さが光る。ゲームによってはRyzen 7 7800X3Dに負けるシーンもあるし、性能を引き出すためのセットアップに注意が必要ではあるが、ワットパフォーマンスも高くオールラウンドで強い。何よりAM5なので長く使える。隙のない仕上がりだ。

Intel Core i9シリーズ

クロック設定は13900KSと同じだが、消費電力は大きい傾向

 Raptor Lakeおよび同Refresh世代のCore i9はPコア8基+Eコア16基というメインストリーム向けでは最多コア数を誇るシリーズ。MTPはK付きで253Wだが電力制限なしで運用すると消費電力が非常に大きくなる一方、アイドル時は非常に省電力という極端な二面性を持つ。最上位のCore i9-14900Kは通常版(KS以外)で初めて最大6GHzの大台に到達した。

Intel Core i7シリーズ

12基のEコアを搭載することで一気に性能アップ

 Pコア数はCore i9シリーズと同じ8基で、Eコア数を減らしたのがCore i7シリーズ。最大ブーストクロックもCore i9より低いが、これはTVB(Thermal Velocity Boost)がCore i7では無効化されているため。Raptor LakeではEコアは8基までだったが、第14世代(Raptor Lake Refresh)では12基に増量され、第13世代よりも大きくマルチスレッド性能を伸ばした。

Intel Core i5シリーズ

K付きでもCore i7やi9より消費電力が大幅に低いのが特徴

 MTPを181Wに抑えているため上位シリーズより圧倒的に扱いやすい。4基または8基構成のEコアを搭載することで、競合となるRyzen 5シリーズよりもマルチスレッド処理性能において優れる。Core i5-13500以下は実質Alder Lake(第12世代、PコアがGolden Cove)であるため最大定格メモリもDDR5-4800と低い上に、最下位の13400はEコアも4基と少ない。

Intel Core i3シリーズ

予算を圧縮しつつそこそこの性能を考えているならよい選択

 Core i3はEコアが搭載されず、Pコア4基のみで構成されるコストパフォーマンス重視のシリーズだ。これも中身はAlder Lakeベースであるため、DDR5は4800までが定格。K付き(倍率アンロック)のないシリーズであるため、どのモデルを購入してもリテールクーラーが付属する(Core i9〜i5はKなしモデルのみ付属)。

Intel Pentium Gold/Celeronシリーズ

極限まで低予算でPCを組むときにはコレ!

 LGA1700でもっとも安く提供されているシリーズ。物理コアはPコア2基のみで、PentiumはHyper-Threading対応、Celeronは非対応だが、3次キャッシュの搭載量もコア数に連動している。第12世代がベースと世代交代はまだ行なわれていない。安価なB660やH610マザーに装着し低予算PCを組むためのものだが、最新世代の700シリーズのチップセットでも利用可能

Advanced Micro Devices Ryzen Threadripper/Proシリーズ

コア数よりもメモリチャンネル数やGen 5のレーン数の多さが重要

 Zen 4を採用することでDDR5やGen 5に対応した最新のHEDT /ワークステーション向けCPU。メインストリームのRyzenと異なり、DDR5はECC(R-DIMM)が必須。その分最大メモリ搭載量も1TB(PROは2TB)と巨大だ。メモリチャンネルやGen 5のレーン数においても強力だが、Threadripper PROの場合組み合わせるチップセットで上限が変わる。

Advanced Micro Devices Ryzen 9シリーズ

論理コア数は14900Kと同じだが消費電力は圧倒的に低い

 物理コア数12ないし16基の上位シリーズ。チップレットデザインを採用した関係でRyzen 9は2基のCCDで実装されるが、それが理由でRyzen 7に負けることも。しかしそのハンデを基本性能の高さでカバーしている。現行のSocket AM5版は内蔵GPUが搭載され、ゲーム特化の3D V-Cache搭載モデルが追加された。旧世代のSocket AM4版もリストに加えている。

Advanced Micro Devices Ryzen 7/5シリーズ

内蔵GPUが標準搭載されたことで低予算PCでも使いやすくなった

 物理コア数8ないし6基なので内部のCCDは1基で実装される。とくに3D V-Cache搭載の7800X3Dは上位の7950X3Dや7900X3Dよりゲーム性能が出ることも。Socket AM5は少なくとも2025年まで使われるため、将来CPUをアップグレードできるのもポイント。一方旧世代のSocket AM4版は新CPU投入は終わったがコア数の多い製品が安価で購入できるのが強み。

【検証環境】
<LGA1700>マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 HERO(Intel Z790)
<Socket sTR5>マザーボードASUSTeK Pro WSTRX50-SAGE WiFi(AMD TRX50)
<Socket AM5>マザーボードASUSTeK ROG STRIX X670E-F Gaming WiFi(AMD X670E)
<Socket AM4>マザーボードASRock X570 Taichi Razer Edition(AMD X570)
<LGA1151>マザーボードASUSTeK Z170-A(Intel Z170)
<共通>メモリG.Skill Zeta R5 Neo F5-6400R3239G32GQ4-ZR5NK(PC5-51200 DDR5 SDRAM Registered 32GB×4)、Micron Crucial DDR5 ProCP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2※各CPUの定格で動作)、G.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2 ※各CPUの定格で動作)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4080 Founders Edition
システムSSDMicron Crucial T700 CT2000T700SSD3[M.2(PCI Express 5.0 x4)、2TB]
電源Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(23H2)
Call of Duty HQ内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Mount & BladeⅡ:Bannerlord内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
順位Cinebench 2024はCPU(Multi Core)のスコア、CrossMarkはOverallのスコア
Call of Duty HQとMount & Blade ⅡBannerlordは平均fps※Intel系マザーボードのパワーリミットはすべて無制限

[TEXT:加藤勝明]

PCパーツ100選 2024

DOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載

 今回は、2023年末に休刊したDOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載しています。

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