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ASUS「ROG STRIX Z790-A GAMING WIFI Ⅱ」第14世代Coreシリーズ向けにマイナーチェンジしたZ790マザーボード【第275回 マザーボード完全攻略ガイド】

DOS/V POWER REPORT 2024年冬号の記事を丸ごと掲載!

ASUSTeK Computer ROG STRIX Z790-A GAMING WIFI Ⅱ 実売価格:66,000円前後 *実売価格は12月上旬時点のもの

オーディオ回路はUSB接続のRealtek ALC4080 CODECとSavitechのヘッドホンアンプSV3H712の組み合わせだが、ALC4080はシールドに覆われていて確認できない。384kHz/32bitのオーディオ再生能力はフロント出力に限られている
チップセットは引き続きIntel 700シリーズが使われる。旧製品でもUEFIのアップデートで最新CPUが使用可能だが、新世代CPUの投入に合わせてマザーボードに搭載する機能などが見直し・更新された新製品が発売されている
「Raptor Lake Refresh」のコードネームからも分かるとおり第14世代Coreは第13世代(Raptor Lake)からの改良版で、動作周波数やCPUコアの構成が変わったがCPUソケットはLGA1700のまま。3世代続けて同じソケットを使うことになる
マザーボード上に実装する有線LANは最大2.5Gbpsで、規格上はWi-Fiより低速なものの、実効速度はこちらのほうが出やすい。Intel製コントローラは定評があるが、より高い転送速度が欲しい場合は10GbpsのLANカードを使う必要がある
VRMの放熱のため、ヒートシンクをヒートパイプで結合したものもあるが、本機は二つのアルミブロック製ヒートシンクを採用している。ただし、一方はバックパネル周辺まで基板を覆う大型のもので、放熱性能を稼いでいる
ATX電源のデザインガイドでTDP 165WのCPUに8ピン構成のEPS12Vコネクタが推奨される状況。さらに上位ではMTP 253Wに達するCPUの消費電力を考えると、CPU電源をEPS12Vコネクタ2基で供給するのも妥当な実装と言えるだろう

第14世代Coreに対応した最新ゲーミングマザーボード

 ROG STRIX Z790-A GAMING WIFIⅡは、Z790チップセットを採用し、第14世代Coreシリーズ(Raptor Lake Refresh) に対応するゲーミングマザーボードです。ROGシリーズはASUSTeKの総合ゲーミングブランドで、マザーボードも数多くラインナップしています。ROG STRIXは購入しやすい価格設定が特徴で、ライトユーザーを含めた一般向けの設計がなされています。

 第14世代Coreシリーズはアーキテクチャやプロセスに関する見直しがなかったこともあって、対応チップセットに変更はなく、従来の700シリーズチップセットのマザーボードでも、ファームウェアの書き換えなどによって第14世代への対応が可能です。

 Z790は第12世代および第13世代Coreシリーズに対応するチップセットとして2022年10月に搭載マザーボードが発売され、現在のハイエンドマザーボードの主流製品です。第14世代Core向けには新しいチップセットが用意されませんでしたが、マザーボードは従来製品の発売から1年が経過したことから、新CPUの投入に合わせて機能を見直したものが製品化されていて、ROG STRIX Z790-A GAMING WIFI Ⅱもその一つです。

従来製品(ROG STRIX Z790-A GAMING WIFI)ではルネサス RAA 229131を採用していた。基本的な機能、性能は同等のOEM供給された製品だろう。最大20フェーズ、2系統の同期整流回路に対応
最大70Aの電流を駆動するパワーモジュール。ドライバ回路とPower MOSFETを一つのチップに集積することで、最適なタイミング設計と寄生インダクタンスの低減を実現し、より高効率な電源回路を実装することができる
CPUコアに16フェーズ、内蔵GPUに1フェーズ、これを一つのPWMコントローラで制御している。各フェーズは出力70Aのパワーモジュールを駆動し、OC時の動作マージンを想定した作り。アンコア用の2フェーズは別のPWMコントローラで制御する
これまでのマザーボードが搭載していたのはWi-Fi 6/6Eモジュールだったが、このマザーボードではWi-Fi 7対応のモジュールを搭載している。当然、規格上は通信速度が向上するが、Wi-FiルーターやOS、ドライバが対応している必要がある
CPU接続のGen 5対応が1基、PCH接続のGen 4対応が3基、PCHのGen 4/Serial ATAの排他接続が1基という構成になっている。いずれもヒートシンクが実装されているがCPU接続のスロットは裏面用のヒートシンクも用意されている
Thunderbolt 4はPCI Expressの信号線以外にサイドバンド信号があるため、拡張カードを増設するにはその信号線がマザーボード上に用意されている必要がある。本機では拡張スロットの側にピンヘッダ出力が用意されている

第14世代Coreとそのプラットフォーム

 第14世代Coreシリーズは第12世代および第13世代のCPUソケットであるLGA1700を引き継いでいます。コア構成の見直しや動作周波数の向上により在来製品からの性能向上を果たしていますが、基本的には従来製品の追加モデルと考えて差し支えありません。

 マザーボードも同様です。設計を見直した第2世代ですから機能や性能の向上がまったくないわけではありませんが、性能向上をはっきりとうたうCPUとは違い、劇的な変化は期待できません。とはいえ、少しでも新しい要素を盛り込みたいところです。ROGSTRIX Z790-A GAMING WIFIⅡでは、内蔵する無線LANモジュールがWi-Fi 7に対応した最新のものになっていて、これが従来製品との差別化の大きなポイントです。

CPU VRMや基板の実装

 ROG STRIXはもともとROGの中ではエントリークラス向けとして始まり、現在もミドルレンジからハイエンドの中でも比較的安価な位置付けの製品に与えられる名称です。ROGのハイエンド製品と比べるとコストパフォーマンスを重視して、拡張性やCPU VRMの設計などを抑制することでシステム全体の価格を抑えることが特徴の一つです。

 またZ790は700シリーズチップセットのハイエンドとしてCPUのオーバークロックに対応しますが、インターフェースが下位チップセットより豊富なこともあって、ミドルレンジクラスまで幅広く採用されています。

 CPU VRMは16+ 1+ 2フェーズとされていて、ハイエンドマザーボードに見劣りしない構成です。PWMコントローラはASUSTeKのブランドであるDIGI+ EPUの刻印がされたASP2306を採用しています。このPWMコントローラでCPUコア用の16フェーズと内蔵GPU用の1フェーズの同期整流回路を制御しています。またスイッチング回路にはハイサイドとローサイド両方のPower MOSFETとドライバ回路、保護回路などを1パッケージにして最大70A出力に対応するDrMOS仕様のMP86670が使われています。アンコア部はM2940C PWMコントローラを用いて、2個のMP86670をスイッチング回路に使った2フェーズ同期整流回路を実装しています。

 DDR5に対応するメモリスロットはオーバークロック動作のためさまざまな機能がサポートされています。DIMM Flexは動作温度に応じてパフォーマンスを向上させたり、安定性の問題に対処する回路を採用しています。ASUS Enhanced Memory ProfileⅡ(AEMPⅡ)は、XMPやEXPOプロファイルを持たないメモリモジュールを使用している場合でも、モジュールを4枚使う場合の動作の最適化などで威力を発揮するとしています。

新機能Wi-Fi 7が使えるのはまだ先の話

 ROG STRIX Z790-A GAMING WIFIⅡが機能的にこれまでのマザーボードと差別化される最大のポイントは、Wi-Fi 7に対応したモジュールを採用していることでしょう。Wi-Fi 7ではWi-Fi 6Eよりも高速で安定した高効率のデータ転送が可能です。

 しかし、現在、国内ではWi-Fi 7で新たに導入された通信帯域幅はまだ利用できず、いつ利用可能になるのかは不透明です。また、現状、Wi-Fi 7の対応はWindows 11のみですし、Wi-Fi 7での通信は対応するルーターやアクセスポイントも必要です。

使いやすく工夫された拡張スロットとM.2スロット

 拡張スロットはCPU側のPCI Express 5.0は16レーン接続のものが一つ、チップセット側のPCI Express 4.0で4レーン接続のx16スロットが一つ、3.0でx1接続が一つという3本構成です。16レーン接続のスロットは重いビデオカードにも耐えられるように金属プレートで強化されています。

 ビデオカードの搭載を想定したx16スロットにはカード固定用のラッチがあるのが普通ですが、このラッチがあることでビデオカードを外すのに苦労することが増えました。PCIe Slot Q-Releaseはその対策として、拡張スロットから離れた場所にボタンを用意し、これ一つ押せばワイヤーでラッチを解放することができます。

 M.2スロットは5基実装されていて、CPU内蔵のPCI Express 4.0が1基、Z790チップセットのPCI Express 4.0が4基という構成です。すべてのスロットに統一されたデザインの大型ヒートシンクを実装し、サーマルスロットリングの抑制を図っています。

拡張スロットのラッチ機構によりビデオカードなどの大型カードの取り外しは少しカードを傾ける必要があるが、Q Releaseによって一時的にラッチを解放して、カードをまっすぐ引き抜くことが可能になり、つけ外しにかかる手間を減らすことができる

2023年末のトレンド機能が充実使い勝手への配慮も光る

 ROG STRIX Z790-A GAMING WIFIⅡは新CPUに対応するマザーボードとして発表されたとはいえ、最大の特徴はWi-Fi 7への対応です。システム的な目新しさには欠けますが、ほかにも細かな改良が加わっています。ROG STRIXシリーズはミドルレンジの価格設定でハイエンドクラスにも対抗できる機能、性能を目指したブランドであり、その実装がアップデートされたのは大きなメリットとなり得るものです。これからLGA1700のシステムを組むユーザーであれば、1年分の進化というアドバンテージは十分に魅力があるのではないでしょうか。

連載の最後に

 275回続いてきたこの連載も今回が最終回です。IBM PCの登場以来、PCは絶えず進歩を続けており、この連載を始めたときと現在とではマザーボードに注がれる技術も大きく変わりました。それゆえ、マザーボードというものへの興味を失うことなく、連載を続けることができたわけです。これからもマザーボードの、PCの進化は続きますし、私の興味もつきることはないでしょう。いずれまた、どこかでお目にかかりましょう。

バックパネル

バックパネルにはさまざまなインターフェースがバランスよく配置されている。右のアンテナ端子がWi-Fi 7対応のもの。2.5Gの有線LANポートも備え、次世代ネットワークへの備えは十分だ

付属品

ホワイト基調のデザインは上で紹介したバックパネルカバーや、付属の無線LANアンテナまで徹底されている。最近は白いPCが人気を集めているが、ここまで徹底しているのは最新世代のマザーボードらしいところ
【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
メモリKingston Fury Beast KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
SSDCFD販売 CSSD-M2B1TPG3VNF[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3070 Founders Edition
電源Corsair RM Series RM850(850W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時OCCT V12.1.12 CPUテスト10分間実行時の最大値
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

[TEXT:Ta 152H-1]

DOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載

 今回は、2023年末に休刊したDOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載しています。

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