ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
第14回・工学社『PiO』~想い出の“20世紀パソコン雑誌”たち~
2026年3月31日 08:05
現在ではあまり見かけなくなってしまったものの、20世紀には数多くのマイコン・パソコン雑誌が発売されていました。中には、その当時に読者だった雑誌に影響を受けて後の人生が決まった、という人もいるかもしれません。ここでは、それら20世紀に発売されたマイコン・パソコン雑誌を取り上げ、紹介していきます。
第14回目は、1983年に月刊『I/O』別冊として創刊されたものの、1986年には休刊してしまった雑誌『PiO』を取り上げました。
1980年代に入ってしばらくは、パソコン向けゲームはプログラムの規模が膨大ではなかったので、雑誌に掲載されていたリストを入力すればそれなりに面白い作品を遊ぶことができたといえます。ユーザーにとっては、“数百円の雑誌を購入”して“長い長いプログラム(BASICだったり機械語だったり)を辛抱強く入力すれば、タイトルによってはちょっとしたゲームセンター並みのゲームを(印象的には)タダで遊ぶことができたので、そのような雑誌のニーズには根強いものがありました。そのため、各種パソコン雑誌にはそういった読者投稿の面白いゲームプログラムが掲載され、それを目当てで購入するユーザーも増えていきます。
そんな雑誌の筆頭だったのが、当時としてはクオリティの高い読者投稿ゲームを、長いと十数ページにもわたるプログラムリストとして載せていた工学社の月刊誌『I/O』でした。そこから生まれた「読者の作ったプログラムを読者の皆さんに発表するという読者主体の本(創刊号編集後記より)」という形で誕生したのが、当初はI/O別冊として発売された雑誌『PiO』です。
初お目見えとなったのは1983年10月登場した「爆走開始号(650円)」で、続いて12月にNo.2「全開加速号(580円)」が、翌年84年1月にNo.3「全力疾走号(580円)」という名前で書店に並んだ後、1984年3月登場の4月号(550円)から毎月8日発売の月刊誌として刊行されていきました。雑誌のキャッチコピーは「マイコン・ゲームの情報誌」で、これは休刊となる1986年10月号まで変わることはありません。
『PiO』の特徴といえば、なんといっても1冊丸ごとゲームのプログラムリストが掲載されていることでしょう。特に、『I/O』本誌のゲームリストではあまり見かけない、マイナー機種のFP-1100やJR-100、SMC-777といったハードの作品が載っていたこともあり、市販ソフトがあまり発売されなかったそれらパソコンを所有していたユーザーにとっては、ありがたい雑誌だったのではないでしょうか。
似たようなスタンスといえば、電波新聞社から発売されていた『マイコンBASICマガジン』などがありますが、『PiO』に掲載されているゲームは機械語メインのものが多いため、アクションやシューティング、パズルゲームなどであれば中には市販作品に迫るクオリティのものもちらほら見受けられたなど、掲載プログラムの面白さという点では本誌に軍配が上がると思われます。
また、『I/O』本誌には及ばないものの1本のプログラムリストはそれなりに長く、数ページにわたることも珍しくありません。機械語のダンプリストがズラズラと並んでいるのもよくあることなので、巻末には掲載されている機種ごとのチェックサム(入力した機械語が合っているかどうかを確認するための)プログラムも載せられていました。
こういったゲームプログラムといえば、いわゆるデスクトップタイプのハードをターゲットとしているのが主ですが、『PiO』にはこの時期に発売されていた他の雑誌ではなかなか見かけることのない、ポケコン向けのゲームも豊富に掲載されていたことも特筆すべきことといえるでしょう。ポケコン向けプログラムといえば、先ほど話題に出した『マイコンBASICマガジン』や、徳間書店から発売されていた『テクノポリス』にも載っていましたが、『PiO』にはオール機械語の作品も取り上げられていたので、ワンランク上のゲーム体験を味わうことが出来ました。
そういった重厚長大なプログラムとは対照的に、サクッと入力してすぐに遊べる“miniPiO”というプログラムもあります。大物プログラムと比べると派手さなどには欠けるものの、投稿ライバルが多いと思われる『PiO』誌に掲載されるだけあって、オールBASICだとしてもなかなか面白い内容になっていました。
もう一つの特徴としては、「パソコンDJ」と題したソノシートが収録されていたことでしょう。ソノシートにはナレーションとプログラム音声が交互に収録されていて、レコードプレーヤで再生した音声をデータレコーダで録音したり、またはパソコンやポケコンに直接入力してロードすることができました。イメージ的には、テレビ東京系列で放映されていた番組『パソコンサンデー』の副音声でプログラム音声を流していたもの、と考えてもらえればイメージしやすいかもしれません。
とはいえ、実際に成功するかどうかはさまざまな要因が絡んでくるため、必ずしも上手くいくわけではありませんでした。そのため、ロードが成功した読者の声を取り上げて、それを参考に読み込みをしてほしい、というページも設けています。
もっとも、それであれば掲載プログラムを手入力した方が確実な場合もあるのですが、当時としては読み込めればこれ以上ないほどに楽ができるだけでなく、バグのないプログラムリストがロードされるのでデバッグに苦しめられなくて済む、という利点もありました。
しかし、時代が下ると市販のパソコンソフトでしか味わえないようなタイトルが増えていき、それに伴い誌面掲載プログラムを入力して遊ぶという文化は下火になっていきます。それに呼応するかのように『PiO』誌の部数も減少し、最終的には『I/O』誌に吸収されるような形で終わりを迎えることとなるのでした。






