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あのハイドライドよりも先に発売されたアクションRPG『カレイジアスペルセウス』

パッケージに描かれているのは、主人公の勇者ペルセウスと美の女神の一人、そしてドラゴンです。左上に書かれた対応機種名の下にシールでメディアと値段が貼られていますが、背中部分も同様でした。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、1984年に発売された“リアルタイムロールプレイングアドベンチャー”ゲームを謳った、『カレイジアスペルセウス』です。

 1980年代前半、海外で大人気のアドベンチャーゲームが日本でもブームになり、続いてRPGも同じように盛り上がっていきます。RPGは当初、難しいものと考えられていましたが、それをシンプルに再構成してアクション要素と合体させたRPGが、1984年秋にコスモス・コンピューターから発売された『カレイジアスペルセウス』でした。

1984年10月号のI/Oに載った、『カレイジアスペルセウス』最初の広告です。広告掲載と同時期に発売されたのであればリリースは1984年9月ということになりそうですが、他の雑誌を見てもそれらしき記載は見当たりませんので、本記事では1984年秋発売という表記にしてあります。その後の広告では、ジャンル名のスペルをミスをしたまま掲載されていたことも。

 アクションRPGとしては、同年12月にアクティブロールプレイングゲームとして登場した『ハイドライド』よりも早いタイミングで市場デビューを果たしたのですが、こちらはそれほどメジャーではないソフトハウスだったためか、発売時期はあまり知られていないようです。本作のストーリーは、以下のようになっていました。

 南の島にたった一つ浮かぶ島があった。そこは以前、マイア、ケレーノ、アステロペという美の女神の住む平和な花園であったが、妖魔ゴルゴン一味に侵略されてしまう。花園の美しさは消え、代わりにゴツゴツとした岩肌が顔を出し、不気味なミドリゴケがはびこる魔の島と化した。女神たちは花園の住人に12星座を託し、助けを求めに出ようとしたが、妖魔ゴルゴンに見つかってしまった。その怒りは、女神たちを岩に閉じ込め、住人たちの心を悪に変えてしまった。女神たちの悲しみの声は、岩肌をなでる風に乗ってやがて天界の大神ゼウスの元へ届き、その涙は雨となって大地を濡らすのであった。そこでゼウスは勇者ペルセウスを呼んだ。知恵の女神アテナと伝令の神ヘルメスから聖なる盾と剣を授かり、美の女神を助けるためまた住人の悪の心を消滅させ元の平和な花園に戻すために一路、南の島へ乗り込むのであった。

以前のコスモス・コンピューターはパソコンを販売したり、ワープロソフトやデジタイザソフトなど自前のビジネスソフトを売るなどしていました。

 「美しいグラフィックで作られた広大なマップに展開されるリアルタイムの戦闘に、アドベンチャーの要素を加えたまったく新しいタイプのリアルタイムロールプレイングアドベンチャーゲームです」とマニュアルに書かれていて、当時はどのようなジャンル付けにするのかで悩んだようでした。今ならば、“アドベンチャー要素”は謎解き要素で、リアルタイムロールプレイング=アクションRPGと考えれば、かなりわかりやすくなるかと思います。また、この時代のゲームらしく「一回のロードですべてのプログラムが走り、ゲーム進行中にテープ、ディスクをアクセスしません」というのもウリにしていました。

スタート地点は大海原のまっただ中なので、まずは右に移動して上陸し一番弱い水色の敵を倒すことから始めます。主人公が勝てる敵を根絶やしにするまでは、他の敵に手を出さないのが得策です。

 タイトルの“カレイジアス”は勇敢な、勇気のあるという意味なので、ざっくり訳せば「勇者ペルセウス」といった感じです。プレイヤーは、その勇者ペルセウスとして戦い、敵を倒して12星座か、または3人の女神を集めるのが目的でした。使用するのはプレイヤーの移動にテンキーの2、4、6、8で、6と8を同時に押せば右斜めへの移動も可能です。敵と接近した際には、その方向のキーとスペースキーと同時に押せば相手への攻撃となり、ダメージを与えることができました。

いくつかの場所に置いてある鐘は、回収するとパワーが1000増えます。数は限られていますが、MAXになることはないので見つけたときが獲得のタイミングです。取ったタイミングでセーブしておき、様々な相手に戦いを挑んで次に倒せる相手を探したらロードして再プレイというのが、クリアまでの流れでした。

 ペルセウスには、攻撃力(SWORD)・防御力(SHIELD)・パワー(持続力)というパラメータが用意されていて、パワーは時間経過と共に少しずつ減っていきます。回復させるには敵を倒すか、島のどこかにある鐘を取るしかありません。敵を倒すと攻撃力と防御力が少しずつアップしていくので、ペルセウスが勝てる相手を見つけて倒し自身を鍛え、ある程度成長したところで次に倒せる敵を探す……ということを繰り返してゲームを進めていきます。ただし、経験値やレベルといったパラメータは用意されていませんでした。敵を倒すと即座に攻撃力と防御力に反映される仕組みなので、今や当たり前の経験値が増えて一定以上になるとレベルアップするシステムを知ってしまうと、少々わかりづらい感じがしてしまいます。

水色の敵を倒しまくっていると水瓶座を落としますが、これが回収すべき12星座の一つです。他にも射手っぽいのを倒すと射手座を落としたりするので、同様に他の星座も集めるか、女神を3人助ければクリアになりました。

 出現する敵の種類は多いのですが強さは決まっているため、何度もプレイして弱い敵を見つけ、そこから順番に強い敵へと戦うようにしていかなければなりません。身の丈に合わない相手と戦ってしまうとパワーの減少が大きいので、後々に響いてきます。メモリへのセーブ&ロードができるので、あらかじめ戦う前にセーブしておき、ダメージが大きかったら即座にロードして違う敵を探すという行動が、攻略に直結してくるのでした。

 一部の敵は、倒すと星座を落とすことがあります。これを12種類集めることができればクリアとなるわけですが、それが早いか、それとも3人の女神を助け出すのが簡単か……この時代にしては、クリアまでの方法が複数あるのが珍しかったです。

水色の敵の次に狙うべきは、白い羊のような敵で、その次は射手や牡羊と戦っていきます。勝てない敵と戦うと一気にパワーを減らされてしまうので、あらかじめメモリセーブを忘れずに行っておきましょう。テープ版はカセットに保存できますが、手間がかかるのでおすすめしません……ディスク版なら早いので、こまめに保存するのも手です。

 経験値やレベルという概念がないために成長度合いが感じづらいのと、敵の情報が表示されないために相手が強いのか弱いのかがわかりにくいという、ある意味、暗闇の中を手探りで歩くような感じのシステムでした。そのあたりが原因なのか、当時は残念ながら盛り上がった感じはなかったように思われます。やや遅れて登場した『ハイドライド』は、似たようなジャンルでもそれら欠点を取り除きつつシンプルさを失わなかった、などの要因で大ヒットとなりました。

 現在ではプロジェクトEGGにてプレイすることができますので、アクションRPGの初期作を体験してみたいと思った人は、ぜひプレイしてみてください。

ゲーム中には、主人公の何倍もある巨大な敵キャラも出現します。一番有名なのは、パッケージや広告にも掲載されたカニですが、山中にはドラゴンも鎮座していました。

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