ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

ファルコムのFM-7向け初アドベンチャーゲーム『異次元からの脱出』

ドアの奥からこちらを見つめている巨大な目玉が一つという、いかにもオカルティックなイラストが描かれたパッケージになっています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、アドベンチャーブーム時に日本ファルコムが発売したタイトル『異次元からの脱出』を取り上げました。発売は1983年。

 1980年代前半は、『ミステリーハウス』などのヒットによるアドベンチャーゲームブームが巻き起こっていたわけですが、その流れの中で日本ファルコムが発売したタイトルのうちの1本が『異次元からの脱出 ESCAPE FROM TWILIGHT ZONE』です。パッケージ裏には「Falcomが放つ電子冒険小説シリーズ FM-7 第一弾」と書かれていました。

 広告には「ファルコム初のFM版アドベンチャーゲーム。FMユーザーの熱い要望にお応えし、本格的アドベンチャーを知って頂く為、低価格・充実内容を実現しました!(中略)電子冒険小説と呼ぶにふさわしい、スムーズなゲーム展開が楽しめます。」とあり、本作が日本ファルコムにとってのアドベンチャーゲームFM参入第1弾作品となっているのがわかります。そんな本作はFM-7以外では発売されていないので、“聞いたことのあるタイトルだけど、プレイしたことはない”という人も多いかもしれません。導入部分のストーリーは、このような感じでした。

『デーモンズリング』と同じ年に発売されているためか、両タイトルが掲載された広告が目立ちます。「関係各誌で話題沸騰!」の文字からも、人気のほどがうかがえます。

 主人公のサラリーマンはその日、山と積み上げられた書類を片付けるのに1日を費やし、気がつけば時計は夜の1時を指していた。真夜中の自宅への帰り道、誰も居ない通りを一人で歩いていると、濃い霧があたりに漂い始める。恐怖を感じた主人公は走って自宅まで戻ろうとするが、自宅のドアだと思ったそれは公衆電話の扉だった。その中で鳴り響くベルの音に、受話器を取ろうと扉を開けて手を伸ばすと、突然奈落の底へと落ちていってしまう。気づけば、そこは暗い森の中。しばらくうろついてみたものの、これが現実なのは間違いないようだ。この道の世界から脱出し、元の世界へ帰ることはできるのだろうか……。

タイトル画面には『異次元からの脱出』という文字は表示されず、英語のタイトル『Escape from Twilight Zone』が描かれます。

 プレイヤーは知力を駆使し、謎だらけの異次元世界から脱出することが目的となります。アドベンチャーゲームといえば、難易度を高めるためだけに普段使わないような単語探しをさせられたり、変則的なコマンド入力を求められることもありますが、本作は使用する動詞がすべてマニュアルに掲載されているほか名詞も必ずメッセージ中に表示されるため、謎解きに集中することができます。つまり、ゲーム中に悩んで動詞探しをしていた人は……ということでした(笑)。

 画面の描画方式は、瞬間表示ではなくライン&ペイント方式を採用しています。それでも描かれる範囲は広く、速度も速い部類でしたので、なかなか快適にプレイを進めることができました。手強いのは、思った以上に広大なマップでしょう。確実なマッピング手腕が要求されるのですが、後半にはつながり方が難しいシーンも登場するため、ここで挫折してしまった人も多かったのではないでしょうか。

 また、当時ありがちだった“コマンドを入力した途端にゲームオーバーになる”というトラップも、あちこちに仕掛けられていました。それにくわえ、途中でのセーブゲームが一切できないのも、なかなかにツライ仕様です。とある地点までたどり着ければパスワードが表示されるので、次回以降のプレイでは中盤から続けられるのですが、そこに辿り付くまではゲームオーバーになるたびに最初からのやり直しを強制されます。

ゲームは、動詞+名詞のコマンド入力式で進みます。使われる全動詞はマニュアルに掲載されているので、単語探しで悩んだ人は“ピー”なもので遊んでいたかもしれません(笑)。ハチが飛んでいるシーンではブーンと、クマ出現場面ではうめき声などの効果音も鳴ります。

 さらに恐ろしいのは、ゲームオーバー時に「もう一度チャレンジしますか。Y/N」と聞いてきた時、誤って“N”を押してしまうとリセットがかかり、ロードからやり直さないといけないところです。この当時は、他にもそのようなタイトルがいくつかあり、珍しくはありませんでした。しかし、ロードし直しは精神的ダメージが大きいので、もしかするとそれを狙って製作者側が仕込んだものかもしれません(笑)。

目の前に骸骨が見えますが、ここで「TAKE SKELETON」とすると呪われてしまい、ゲームオーバーに。“もう一度チャレンジしますか”にYと答えると、最初からやり直しとなります。しかし、Nを押してしまうとリセットに……。

 マニュアルの最後にはスタッフクレジットが記されていて、原作が倉田佳彦さん、制作を倉田さんの他に井上忠信さんと加藤仁さん、効果に宮本恒之さん、そして協力として超常現象調査協会とありました。

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