ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

Jモジュールで違法コピー対策、ボーステックの『トップルジップ』

缶パッケージ第1弾として発売されたタイトルです。外からは化粧箱のみが見えますが、画面写真や機種名、説明文などは一切入っていない、非常にシンプルなものでした。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、ボーステックから発売されたコミカルなキャラクターがレースを繰り広げる、シューティングレースゲーム『トップルジップ』です。

広告によると、当初は11月8日発売予定だったようですが、最終的には1986年11月13日にリリースされたようでした。最初はPC-88版とX-1(広告ママ表記)版で、後にFM-7版とPC-98版、MSX版も登場しました。

 1980年代も半ばを過ぎると、いくつかのジャンルを混ぜ合わせたようなソフトが次々と登場します。そのユニークな発想に興味を惹かれ購入したタイトルがある、という人もいるかもしれませんが、今回取り上げた『トップルジップ』も、そんな作品の1つと言えるのではないでしょうか。本作は、以下のようなストーリーでした。

 ここはフロリック星。大勢の観客が集まってモニタを見つめていると、多数の宇宙船(ヒコーキ)たちが映し出された。なんと、ここで開催されるヒコーキレースで優勝すれば、フロリック星のプリンセスと結婚出来るのだ。とはいえ、このレースには何か隠された秘密があるらしい。果たしてキミは、試練を乗り越えて優勝をつかみ取ることができるだろうか?

PC-8801mkIISR/FR/MR/TR対応のJモジュールです。これを本体のI/Oポートコネクタに挿し込んで、V2モードで起動するとゲームが動きます。挿し忘れていたりすると、ゲーム起動後に「J MODULE NOT FOUND」と表示され先へ進みません。ちなみに、本作はPC-8801シリーズ対応ですが、PC-8801ではJモジュールは使用しません。なお、このJモジュールはシリアルナンバー部分を加工してあります。

 プレイヤーはヒコーキ“Zipping号”に乗り込み、多数のライバルを蹴落としてレースでの優勝を目指すのが目的でした。見た目がシューティングゲームっぽいため、弾をバリバリに撃って敵を倒すゲームのように思えるのですが、実はもう少しほのぼのした感じの謎解きレースシューティングというジャンルです。

 自機はテンキーで8方向に動くほか、スペースキーでミサイルを発射することができます。各面は横が2画面分あり、縦方向にはループする仕組みでした。ステージには青と黄色のツートンカラーのカプセルが落ちている事があり、ミサイルを撃ち込むと中に入っているアイテムが出現、これを回収することで装備が有利または不利になります。

パッケージ内には、『チョロQ』ではなく『チョロジップ』と呼ばれるヒコーキが6種類から1つ、その他にトップルジップシールなどが収められていました。マニュアルには、バックアップ方法も詳しく書かれていました……が、ゲームしか遊んでいないユーザーには思ったよりもハードルが高かったかもしれません。

 レースということで、ゲームが始まると画面内にはライバルのヒコーキが次々と登場し、ミサイルを撃ちながらZipping号にアタックをしてきたり、我関せずと通り過ぎていったりします。

 相手の撃ったミサイルに当たってしまうとダメージとなり、Zipping号のエネルギーが減少。0になると、以降はダメージを受けると地面へ回転しながら落下していくのですが、その際にスペースキーを連打することで復活することが可能でした。

ゲーム開始直後の1面が、最大の難関といえるかもしれません。最初は自機が今一つテンキーの操作通りに動いてくれなく速度も遅いため、ライバルからの攻撃や体当たりなどであっという間にゲームオーバーになる可能性が高いです。どこかにあるカプセルからマッハボーと呼ばれるアイテムを取ることで、この問題が解決します。

 反対に、ライバルのヒコーキにミサイルを当てると機体が炎上して動きが止まります。そこに(相手の機体が炎上していなくても)自機をぶつけるとカプセルを落とすことがあり、ミサイルを当てればそこからもアイテムが登場!ところが、回収しないと他のライバルヒコーキが取ってしまうことも……

 出現アイテムは、特殊なミサイルや連射、エネルギー回復などの有利になるものが多いですが、装備を失うマイナスのものもあるので注意が必要でした。なお、レースでのライバルには、どれだけミサイルを当てても破壊することはできません。

カプセルの中からは、さまざまなアイテムが飛び出します。ただし、中には自機にマイナスの効果を与えるものも出現するので、何でもかんでも回収すれば良いというわけではありません。マニュアルには武器一覧表が書かれていますので、そのページを参照して適切なものだけをゲットしたいものです。

 こうしてプレイを進めていくと、時々トンネル(ワープゾーン)が出現します。そこへ入ると別の面(世界)へとワープし、再びレースが始まるのですが、トンネルは出現位置は同じでもワープするごとに行き先が変化する仕組みでした。ただ闇雲にワープを繰り返しているだけでは、いつまでもゴールにたどり着くことはできません。これを解決するためのアイテムが、特定のライバルが所持しているレーダーです。各面ごとに持っている相手は決まっていて、その機体に体当たりしてカプセルを出現させ中身を回収すれば、どのトンネルがどの面へと繋がっているのかが画面右側に表示されるようになります。これを手掛かりにして、どこかにあるゴールを目指すのでした。

 さらに、トンネルはワープするだけでなく、1-5面間での移動であれば入るたびにエネルギーも全回復します。道中はライバル達との接触や被弾でエネルギーが減りまくるので、ワープを繰り返せばエネルギーには困らなくなるでしょう。

 5面にたどり着きレーダーを回収すれば、ゴールのGというトンネルが見えるようになります……が、これはバッドエンドになってしまうゴールです。実は、途中でいくつかのカギとなるアイテムを回収しないと、真のゴールへと到着することはできません。とはいえ、それほど難しい条件では無いので、何度かプレイを繰り返せば自ずと分かるかと思います。

2面や4面では、この飛行機のような形をしたライバルがレーダーを所持しています。体当たりでカプセルを出現させ、サクッと回収しましょう。

 ここまではゲームの話でしたが、本作を語る上で外せないのがプロテクト事情でしょう。当時発売されていたソフトには、パソコン購入時に付属していたユーティリティでは簡単にバックアップができないよう、プロテクトが施されていました。

 しかし、時間の経過と共にプロテクトを回避してコピーされてしまうというイタチごっこが繰り返されていたということで、本作が採用したのがJモジュールと呼ばれるハードウェアプロテクトです。パソコン本体にJモジュールを接続しておかないと、ゲームが起動しない・プレイ中に抜けばゲームがストップする、という仕組みになっていました。

6面から先は、これまでと一変して出現する敵を倒せるようになるため、かなりシューティングゲームらしくなります。また、1-5面へのワープではエネルギーが回復しましたが、6面から先でのワープは回復しないので、難易度は一気に上がります。ただし、6面から戻ってくるワープならエネルギーは復活するので、ピンチに陥った時はうまく利用しましょう。

 ゲームソフト本体にコピー防止のプロテクトがかけられていないというのは、この当時としては珍しいことで、まずはバックアップを取りましょうとマニュアルにも書かれています。万が一、メインまたはバックアップのフロッピーディスクを破損したとしても、予備は作り放題だから問題無いという話でした。

 とはいえ、Jモジュールが壊れてしまえば遊ぶことはできなくなってしまうため、ある意味ではコピープロテクトのかけられた既存ソフトとなんら変わらないという話も……これらバックアップツールやコピープロテクトの件に関しては、いずれ紹介する機会があるかもしれません。

 さまざまな意味で話題となった『トップルジップ』ですが、ボーステックの缶パッケージは以前に紹介した『ザ・スキーム』など、その後も同社作品で使用されていきます。

5面にあるGに入ってしまうと、この画面が表示されてゲーム終了となります。果たして、真のエンディングはいずこに……

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