ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

可愛らしいキャラクターと考えられた謎にプレイヤーが魅せられた「サラダの国のトマト姫」

パッケージ表面には、キュウリ王子とトマト姫が中央に、後半でお世話になるダイコーンが奥に描かれています。“野菜を擬人化したゲーム”の先駆け的な存在なのは間違いないでしょう

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、ハドソンソフトを代表するアドベンチャーゲーム「サラダの国のトマト姫」です。

 1980年代当初、マイコン・パソコン向けゲームと言えばアクションやシューティング、シミュレーションというジャンルが大勢を占めていましたが、「ミステリーハウス」などをきっかけとして徐々にアドベンチャーゲームがブームになっていきます。最初のうちこそ、家などの閉鎖空間内を探索して宝物を見つけるというパターンが多かったのですが、時が経つにつれそのバリエーションを増やしていきました。そんな時代に、「デゼニランド」で名を挙げたハドソンソフトから発売されたタイトルが「サラダの国のトマト姫」でした。「デゼニランド」で当時の雑紙などに登場し、一躍スターとなった中本氏と竹部氏の通称“竹中コンビ”が担当した作品で、前作とは毛色が違うファンタジーアドベンチャーとなっています。

「デゼニランド」よりもページを割いていた印象がある、「サラダの国のトマト姫」の広告ページです。発売中となっている機種の画面写真が掲載されていますが、これを見るといかに数多くのパソコンへ移植されたのかがわかります。SMC-777やS1でも遊べたのは驚きです。左ページは、任天堂から許諾を得て作られていた「マリオ」シリーズと「ドンキーコング」シリーズの広告になっています

 元はオニオン国王が治めていたサラダ王国でしたが、パンプキング率いるカボチャ族がクーデターを行い、国を乗っ取ってしまいます。パンプキングはカボチャ大王と名乗り、国民から重い年貢を取り立てますが、それに抗う反乱軍が蜂起。オニオン国王の一人娘であるトマト姫が、そのリーダーとして軍を率いました。戦況が一進一退するなか、カボチャ大王はトマト姫の誘拐を思いつき実行、トマト姫はカボチャ大王の手に落ちてしまいます。絶体絶命のピンチに陥った反乱軍ですが、そこに諸国を旅するキュウリ戦士が立ち寄り、話を聞いた彼はトマト姫の救出に向かうのでした。

タイトル画面を表示し終わると、軽快なBGMが流れます。PC-8001mkIIやPC-8801のようなBEEP音源しか搭載していない機種でもメロディが鳴るため、初プレイ時には驚いたものです

 実際のゲームはキュウリ戦士がサラダ王国に立ち寄った場面から始まりますが、物語は上記のようにマニュアルに書かれていますので、プレイヤーはキュウリ戦士として反乱軍と出会い、力を貸し、カボチャ大王からトマト姫を助け出すのが目的というのが分かります。

 当時はまだコマンド選択式ではなく、動詞+名詞でコマンドを入力するタイプでしたが、「デゼニランド」から進化し英語+英語または日本語+日本語でも可能になりました。これまでは辞書を片手にプレイしなければならなかったのが、本作ではカタカナ入力で済んでしまうというのは、非常にインパクトが大きかったです。動詞のみを入力したり、同じ動詞を何度も入力するといったシーンも一部にはありましたが、それを除けば想像力を膨らませることでほぼクリアすることができたため、かなりの人がエンディングを見たのではないかと思います。

最初に出会う柿の少年から話を聞きたいところですが、初めて遭遇したときには手助けできません。先に進めば、その解決方法がわかります
わからないうちは、ここで何度も追い返されてしまいます。広告や攻略記事でも使われたシーンなので、覚えている人も多いと思います。この場面はダミーなので、ここへ来る前の門の所で一工夫が必要です

 野菜の擬人化というファンタジー路線を採用したこと、理不尽さをそこまでは感じない展開などが、当時大ヒットした要因と考えられます。現在では難しい部分に関してのヒントが出回りすぎているので(笑)、今遊んでも楽しめるのではないでしょうか。パソコン版は、プロジェクトEGGでの配信が終了してしまったためにプレイするためのハードルが上がってしまいましたが、ぜひ体験して欲しいものです。

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