ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
シンキングラビットのミステリアドベンチャー『鍵穴殺人事件』
2021年8月31日 00:00
当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、当時は『倉庫番』が有名だったソフトハウス・シンキングラビットが、満を持して世に送り出したディスクアドベンチャーシリーズNo.1『鍵穴殺人事件』を取り上げます。
1980年代前半の流行りはアドベンチャーゲームで、さまざまなソフトハウスが数多くのタイトルをリリースしていました。そんななか、今林氏が制作した『倉庫番』が大ヒットしたことで一躍有名ソフトハウスに躍り出たシンキングラビットが発売した、同氏による傑作ミステリアドベンチャーゲームが『鍵穴殺人事件』です。そのプロローグは、以下のようになっていました。
1955年9月4日、殺人予告を受けたギルズ・ウィルコック氏の護衛のためにロンドン警視庁から派遣された主人公は、郊外にある彼の別荘に来ていた。ウィルコック氏は2階の書斎に、あなたはその部屋に通じる唯一のドアの前で殺人者の手から彼を守るべく、予告時間の午前0時がくるのを待っている。現在、この家にいるのは秘書・メイド・客・コック・使用人・ウィルコック氏、そしてあなたの7人のみ。予告通りに殺人が行われるなら、犯人はこの中にいるはず……その時、部屋の中から“バン!”とピストルの音と共に、悲鳴と人の倒れる音が! 急いでドアを開けようとするものの、鍵がかかっていて開かない。そこで、とりあえず鍵穴から部屋の中を覗くと、そこには……。
プレイヤーは、ロンドン警視庁から派遣された探偵として、事件を解決に導くことが目的です。プロローグ部分の最後にあるように、鍵穴から部屋を覗くとウィルコック氏の死体が見つかるのですが、この部分に関してはマニュアルに「それでは“カギアナ ノゾク”と入力してください」と親切に書かれていました。
操作方法は一般的なコマンド入力式となっていますが、英語ではなくカナで打ち込むため、ある程度は単語探しから逃れることができます。また、コマンド入力時に“2”“4”“6”“8”を入れることで、それぞれ後・左・右・前へと移動しました。画面は常に正面が北なので、分かってしまえば方向感覚を掴みやすいのはありがたい部分です。
移動できる場面数は全部で20ちょっとと少な目ですが、『ミステリーハウス』のように一本道で攻略していくのではないというのが大きな違いでした。しかも、入れる部屋や移動できるシーンへはいつでも行けるだけでなく、別荘にいる5人の関係者を「×× ヨブ」と入力するだけで、好きな時に尋問することができるのも当時としては目新しかったと思います。新たな証拠を見つけるたびに、それを見せて手掛かりを掴んだり、あるいはアリバイを崩していくわけですが、一筋縄ではいかないのが難しいところでした。この尋問シーン以外では、人物は登場しないのも本作の特長と言えるでしょう。
通常のゲーム中は線画で進行していきますが、「イロ ツケル」と入力すればカラーの画面に、その状態で「イロ ケス」と打ち込むとモノクロ画面に変わります。これは実際にプレイすると分かるのですが、塗っている場所がそれほど多くないにもかかわらず、ペイント時間が非常に遅いためだと思われます。
肝心のグラフィックですが、それほど描き込まれているわけではないため、コマンドを入力する際に“これは何だろう?”となる物体がいくつか存在します。この辺りについては月刊ログイン1983年11月号に、グラフィックに凝らなかった理由として「今林さんはあまりグラフィックを重要視してないんだ。ないよりはある方がいいっていう程度。だから絵を描くスピードが遅くても構わない。」と書かれていました。
同じ号にはゲーム完成まで6カ月間かかったことも記されていて、「もともと推理小説の下描きがあったんだ。だけど小説は書けないからっていうんでゲームにした。ディクスン・カーの小説が好きだそうだ。だから舞台もイギリス。」と解説されています。
余談ですが、本作と同じ時代に発売されていたアドベンチャーゲームとして主に挙げられるのは、『惑星メフィウス』(T&E SOFT)、『ポートピア連続殺人』(ENIX)、『ホラーハウス』(日本ファルコム)、『あどべんちゃーインはかた』(リバーヒルソフト)、『不思議の森のアドベンチャー』(ボンドソフト)、『熱海温泉アドベンチャー』(BASIC SYSTEM)などでした。そのラインアップを見ると、本作の完成度はさまざまな面において高いことが分かるかと思います。
ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち 連載一覧
- デカキャラが衝撃的だった「ザナドゥ」
- RPGが一気に身近なものに感じられた「ハイドライド」
- “スペースキーに重し”がキーワード!? 「夢幻の心臓II」
- PC-8801mkIISRの人気を不動のものにした「テグザー」
- ボクたちの堀井雄二さん作品といえば、コレ!「ポートピア連続殺人事件」
- 誰もが知っている“ボンバーマン”の元となった「爆弾男」
- “ボンドソフト”の名前を一躍有名にした名作「タイムシークレット」
- 日本での初期RPGの代名詞とも言える「ザ・ブラックオニキス」
- MSX用のベストゲームとして挙げる人も多い「グラディウス2」
- コンピュータRPGの原点とも言える「ウィザードリィ シナリオ#1」
- 光栄の歴史シミュレーションシリーズ、その柱となる1本にして今も新作が続く「三國志」
- ザインソフトの名前を広く知らしめた「トリトーン」
- 数多くの機種にハイクオリティな移植を実現したマイコンソフトの「パックマン」
- スクウェアとサンライズがタッグを組んだ「クルーズチェイサー ブラスティー」
- 可愛らしい絵柄とは裏腹に歯ごたえあるアクションゲームだった「メルヘン・ヴェール」
- 全世界で大ヒットを記録した歯ごたえあるアクションパズルゲーム「ロードランナー」
- テレネットの底力がいかんなく発揮されたアクションゲーム「夢幻戦士ヴァリス」
- これぞハードボイルドゲームの傑作といえる1本「マンハッタン・レクイエム ~闇に翔ぶ天使たち~」
- X68000の機能を活かしたアーケードクオリティのアクションゲーム「GENOCIDE」
- シンプルな画面に隠された謎に夢中になった「MYSTERY HOUSE」
- ポニカの強み、版権ものタイトルの1本として登場した「南極物語」
- 今も続く「A列車で行こう」シリーズの元祖がここにある
- 木村明広氏の美麗なビジュアルシーンが印象的なRPG「エメラルドドラゴン」
- シンキングラビットがおくるミステリアドベンチャーの傑作「道化師殺人事件」
- ボーステックから発売された、謎多きゲーム「レリクス」
- 敵をよけつつ岩を運ぶアクションパズルの名作 デービーソフトの「フラッピー」
- 初期アドベンチャーゲームの傑作にして、今も語り継がれる「デゼニランド」
- 巨大なスケールと隠された謎の多さに驚かされた名作第2弾「ハイドライド2」
- シリーズ1作目にして高い完成度を誇った光栄の「信長の野望」
- あの名作シューティングがついにPC-88シリーズにも移植された!「ゼビウス」
- デカキャラとの戦いが3Dアクションで展開された呉ソフトウェア工房の「アルゴー」
- モンスターヒット作があらゆる面でパワーアップして帰ってきた!「ザナドゥ シナリオII」
- 「テグザー」に続く、ゲームアーツの傑作タイトル「シルフィード」
- 中村光一氏の大ヒット作にして、数多くの機種へと移植された名作「ドア・ドア」
- コンテストグランプリを受賞した、シミュレーションRPGの先駆けとも言える「ボコスカウォーズ」
- “集まれ!”“散れ!“の吹き出しがユニークだった「大脱走」
- 「スペシャル」「パンチボール」じゃない元祖「マリオブラザーズ」が、パソコンに移植されていた!
- あの「グラディウス」が、ついにPC-8801mkIISRシリーズに移植された!が……
- デモシーンやBGMに心を震わせた、日本テレネット初期の名作「ファイナルゾーン」
- とんでもない難易度は数々の悲喜こもごもな思い出をもたらした「ロマンシア」
- スターアーサーシリーズ3部作はここから始まった「惑星メフィウス」
- あの「ゼビウス」っぽいゲームをPC-8801でも遊べた!~1983年発売「アルフォス」~
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- いつまでも耳に残るサウンドが印象的だった珠玉の1本「ボスコニアン」
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- チェスとアクションゲームが融合した、ユニークな名作「アーコン」
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- “アイコンで行動を選ぶ”斬新なシステムに感心した「太陽の神殿 ~ASTEKA II~」
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- 100部屋全部をひっくるめてのパズルゲーム「ザ・キャッスル」
- 人間の心理を突いたマップに悩まされる人が続出したアクションRPG「ゼリアード」
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- 光栄の歴史三部作シリーズ、その一翼を担った『蒼き狼と白き牝鹿』
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- 執刀医ではなく麻酔科医の仕事がゲームになった!? 『Dr.麻酔科医』
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- 可愛らしい“ちゃっくん”が自宅のパソコンでも動いた! 『ちゃっくんぽっぷ』
- 難易度 五つ星のファンタジーアドベンチャー『ドリームランド』
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- スターアーサー伝説3部作のラストを飾った『テラ4001』
- 基本ゲームシステムはロードランナーと同じ!? 『ファンキーモンキー』
- 描画速度の速さに驚いた日本ファルコムの『デーモンズリング』
- “ハイドライド”の内藤時浩氏による商業デビュー作『コスモミューター』
- 90年代にゲームセンターで見かけた、あのゲームの元祖がここに『キャノンボール』~
- 名プログラマの森田和郎氏が手がけたフルカラースクロールアクションRPG『リグラス』
- 家族4人+1匹でドラゴンに立ち向かう『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』
- コンテストで最優秀賞を獲得、マジカル ズゥのアドベンチャー『黄金の墓』
- 幾千通りものシナリオを体験できた『ティル・ナ・ノーグ <ダーナの末裔>』
- 現在も続く「大戦略」シリーズの始まり『現代大戦略』
- 驚くほど滑らかに縦スクロール、名作シューティングゲーム『NOBO』
- PC-8001とは思えない滑らかな動きに驚かされた『FAN FUN』
- マイクロキャビンの名作アドベンチャーゲーム『ミステリーハウス』、その2作品目の難易度は!?
- 飛んでいくボールに合わせてスクロールする画面が斬新だった『アルバトロス』
- アーケード版と遜色ないクオリティで移植された名作『源平討魔伝』
- あまりにもカルト過ぎる問題が一部で話題を呼んだ『試験に出るうる星やつら』
- あの名作シリーズの3作目『ウィザードリィ #3 - Legacy of Llylgamyn』
- 魔城伝説シリーズの第2弾はアクションRPGとして登場! 『魔城伝説II ガリウスの迷宮』
- 当時としては驚くほどリアルなピンボールが遊べた『スーパーピンボール』
- 前作から大幅にパワーアップして舞台は全国に! 『信長の野望 全・国・版』
- 当時の移植作の中では秀逸な出来だったMSX版『グラディウス』
- 「あべしっ!」「ひでぶっ!」あの名台詞がゲーム中にも登場!~1986年発売『北斗の拳』~
- ギルに助け出されたカイがパソコンでも大活躍!『ザ・リターン・オブ・イシター』
- アーケードゲームを中村光一氏が移植、のちに改名されたPC-8001版「スクランブル」
- ザインソフトが手がけた SFハードアクションRPG『未来』
- ファルコムタイトルの中でも、群を抜いてレア度の高い1本『バードランド』
- より戦略性が増した「大戦略II」、生産タイプが増え、同時攻撃や間接攻撃も可能に!
- アドベンチャーゲームに新たな流れをもたらした『は~りぃ ふぉっくす』
- スクウェアの『アルファ』、ほぼ全シーンでアニメーション処理が導入されたADV
- ボクらのマリオ!ハドソンソフトの『マリオブラザーズスペシャル』
- 「Lotus 1-2-3 R2.1J」 あの頃の表計算ソフトと言えば、Microsoft Excelじゃなかった!
- 3機の合体シーンが印象的だった超メカシューティング『ヴォルガード』
- ファルコムのFM-7向け初アドベンチャーゲーム『異次元からの脱出』
- 「死体蹴り」の元祖といえばこのゲーム! 『エグゾアII ウォーロイド』
- 主役はマリオ、でも中身はハドソンオリジナルの「パンチボールマリオブラザーズ」
- みんな使った!日本を代表するワードプロセッサソフト『一太郎Ver3/Ver.4』
- サイバーパンクな雰囲気に飲み込まれ、そしてエンディングに驚かされた『ザ・スクリーマー』
- 歯ごたえたっぷり!全50面のパズルゲームでモグラのツラさを知る!?『モール・モール』
- 『SAVIOR(セイバー)』その滑らかなアニメーションは僕らの心を掴んで離さなかった……
- デジタイザで取り込まれた美しい映像に、心躍らせた作品 ~1984年発売 『英雄伝説サーガ』~
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- マイコンソフトのアーケード移植作品、MSX用『エクセリオン』
- 全国のパソコン・マイコンユーザーに衝撃を与えた『タイニーゼビウス』
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- 意外と知られていない移植作、ソードm5版『ディグダグ』