ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

魔城伝説ここに完結!コナミの『シャロム 魔城伝説III 完結編』

横位置でデザインされたパッケージなので、写真も横で掲載しています。「この箱を開けるべからず」と書かれていますが、ゲーム内では主人公が箱を開けてしまったところから冒険が始まります。ちなみに“シャロム”とは、マニュアルによると「ヘブライ語で、正しい発音はシャローム。ユダヤ人の伝統的な挨拶(別れ)の言葉であり、平和の意味。古くは、「平安あれ、神があなたとともにおられますように……」という意味を持つ」とありました。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、長きにわたって続いたコナミの「魔城伝説」シリーズの最終作品となった『シャロム 魔城伝説III 完結編』を取り上げます。

 1985年に1作目『魔城伝説』がアクションゲームとして、その翌年にはアクションRPGとなった2作目『ガリウスの迷宮』が発売された「魔城伝説」シリーズですが、その最終作となったのが1987年12月にリリースとなった『シャロム 魔城伝説III 完結編』です。RPGのように見えますが、今作でのジャンルはアドベンチャーでした。

プロローグでは、クラスメイトからシャロムを借りて起動したところ異世界へと転移してしまい、ブタのブタ子に起こされます。ここから、長い旅が始まりました。

 主人公は、とあるハイスクールの学生で、パソコンクラブのリーダー。ある日の放課後、クラブ活動のために部室へと入ると、そこにはクラブメンバーのクラスメイトが『シャロム』と書かれた1本のゲームソフトを持ってたたずんでいた。彼女は密かに主人公に思いを寄せていたものの、彼はそれに気づくことができない鈍感野郎だったというのは、この手の物語ではお約束だ。そんな主人公は、彼女の持つ『シャロム』を強引に借りてパソコンにセットする……と、突然パソコンに吸い込まれてしまう。次に気づいた時、彼はゲームソフト内の国・グリーク王国に、なぜかブタのブタ子と一緒にいたのだった。

 プレイヤーの目的は、王国の危機を救い、元の世界に戻ることです。しかし、そのためには王国中に分散している8匹の魔王を退治し、最後に大魔王ゴグを倒さなければなりません。

前半はこのような感じで、ギャグやお笑いが入った会話が展開されていきます。ちなみに、ここに登場しているセーブを司る人物の名前はキヨハラですが、他のセーブをしてくれる村人は全員、当時の西武ライオンズに所属していた選手名です。

 メイン画面は、「ハイドライド」シリーズのようなトップビューとなっているため、さながらRPGのような印象を受けますが、“アドベンチャーゲーム”です。プレイヤーはカーソルキーやジョイスティックで主人公を移動させ、王国の住人から話を聞いてヒントをゲットし、さまざまな謎を解決しながら8匹の魔王退治、そして大魔王ゴグとの対決へと進みます。

序盤では、隣の島へ渡るためにオノを入手する必要があります。この会話の後に、“何かする”を選ぶと「じゃあ俺が渡します」という会話になり、オノがゲット出来ます。これを使い別の島に渡り、そこでまた別のアイテムを……という感じに、フラグを立てて進めていきましょう。

 ゲームは移動モードのほかに、住人と会話をしたりアイテムを使用する際のコマンドモード、そして魔王との対決モードがありました。通常のアドベンチャーゲームであれば、1場面1場面を東西南北といったコマンドやカーソルキー、テンキーなどで移動しつつ、各種コマンドを入力または選択して謎を解いていくわけですが、本作では自由にあちこち移動できるので、違いすぎる勝手に最初は戸惑うこと間違いなしです。しかし、移動できる範囲内で人に話を聞くと、“あちらで人が行方不明になった”や、“主人が仕事道具を忘れた”などの情報が得られるので、それを解決していくことで先に進むことができました。

8匹の魔王たちにたどり着くと、いきなりアクションゲームやパズルゲームをプレイすることになります。これは、最初に出会う魔王デビル“弟”。頭を狙ってジャンプしながらショットを撃ち、倒すことが出来ればお礼を言われた後、隣のオーマン地方に移動できるようになります。なお、オーマン地方には湖もあるとかないとか?

 『シャロム』はフラグ管理が徹底しているので、“AさんにXという話を聞いてフラグを立てないと、Bさんのところへ行って会話をしても話が先に進まない”という仕組みになっています。よくあるアドベンチャーゲームであれば、答えをいきなり選択したり、あまつさえ犯人の名前を入力しても解決ということがありますが、そのようなショートカットは一切効かないので、とにかく地道に謎をクリアして行く必要があるのが難しい部分でした。

広告(左)では、“登場人物174人、美しさを競う全600画面(以下略)”と、2Mビットカートリッジの大容量を活かしたボリュームになっていることが打ち出されていました。この174人は全員に名前がつけられていて、マニュアル(右)には“彼らが何を教えてくれるのか”をメモ書きするページが用意されています。グラフィックも、MSX1とは思えない美しさでした。

 実際に、この記事を書くため数十年ぶりにプレイしたのですが、最初のボスに出会うまで5時間近くかかっています。特に悩ましいのが、カギとなる会話までたどり着けても、そこからどうすればいいのかが分からない場面ですが、そんなときはコマンド“何かする”が役に立ちました。そんな感じで一度コツを把握できれば、ある程度はスムーズに進めることができると思います。なお、最初と最後のボスは決まっていますが、それ以外はどのような順番で攻略しても問題無いというのも特筆すべき所でした。

 『シャロム』は現在ProjectEGGにて配信されているので、当時クリア出来なかったり今から遊びたくなったという人は、この機会にプレイしてみるのもいいかもしれません。今の、大人になった頭脳なら、すんなりクリア出来るかも!?

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