ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

リアルすぎる故に高難易度となった屈指の名作『ラグランジュ L-2』

宇宙服に身を包んだ相手を見つめる、という構図で描かれたイラストが採用されたパッケージです。この絵が、最初の場面のヒントになっているとは思いませんでした。ちなみに、後に発売されたFM-7版では、新規ルートが追加されています。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、コムパックより発売された高難易度アドベンチャーゲーム『ラグランジュ L-2』を取り上げました。

 1985年といえばRPGも数が増え始め、アドベンチャーゲームが徐々に本数を減らしていく時期でした。そんな中でも発売されるタイトルは、どれもこれも従来のアドベンチャーには無かった、一ランク上の面白さがあったと言えるでしょう。今回取り上げた『ラグランジュ L-2』も、そんな1本です。正式タイトルとしては『HARD SF ADVENTURE GAME "LAGRANGE L-2:ESCAPE FROM THE SPACE COLONY"となっていました。

ロードが一旦終わると、パスコードの入力を求められます。初プレイ時は00000となりますが、先のコードを知っている時はそれを入力します。なお、パスコードは機種ごとに違いますので注意が必要です。

 地球と月の間には5カ所の引力安定地点があり、そこを発見者の名前から“ラグランジュ・ポイント”と呼ばれていますが、地球から最も遠い月の裏にあるポイントがL-2です。惑星調査船ガリア201がポイントL-2付近にさしかかった時、謎のミサイル攻撃によって爆破させられてしまいました。かろうじて宇宙服に身を包み脱出した主人公のライルは、エアとエネルギーが無くなる寸前にスペース・コロニーL-2に辿り付きます。しかし肝心のコロニーL-2は、巨大容量のマザーコンピュータ“ZERA”が自我に目覚めたことで多くの人間は命を失い、残ったわずかな人々は脱出カプセルで逃げ出していました。既に無人のコロニーとなった内部で待ち受ける数々の危機と障害……そして謎の女性との出会いと別れ。SFを思わせる緻密なストーリーが展開されていく最後に待つ感動の結末とは!?

各シーンは、矢印で移動することができます。描画速度は非常に速いため、いわゆる瞬間表示でなくともストレスを感じるようなことはないです。

 プレイヤーは惑星探査船ガリア201から脱出したライルとなり、まずはスペース・コロニーL-2の内部に入り生き残りを目指します。用意された場面数は100と、この時期としてはそれほど多くはありません。また、描画方式も古くからあるライン&ペイントですが、処理が高速なので待たされる感は少ないです。移動はカーソルキーで行えるため、描画の早さとも相まって快適にプレイ出来ました。

最初のシーンは、コムパック調べによると悩んだ人が2番目に多かったようです。正解は、宇宙服のタンクに繋がっているホースを外して酸素センサへ接続する、となります。すると、異常を感知したコンピュータがドアを開けてくれるという仕掛けでした。

 操作方法は、コマンド選択式ではなくコマンド入力式を採用していますが、カナまたはローマ字入力が行えるため、現代でも難なくプレイ出来るのは嬉しいところではないでしょうか。さらに、直前に入力した名詞を“それ”で代用できる代名詞入力機能も備えているので、例えば“スペースコロニー ミル”の次は“ソレ ミル”で済むため、キーを叩く回数も減り思考に回すこともできました。

彼女の名前はメイ。ライフボートから助け出せれば一緒に行動できるようになりますが、その前にこの区画から660秒以内に脱出しなければなりません。ドアの隣にあるテンキーから暗号である数値を入力しなければならないのですが……そのヒントはマニュアルに。

 アドベンチャーゲームと言えば、危険な行動を試す前には必ずゲームセーブを行い状態を保存しておくのですが、本作にはセーブ機能は搭載されていません。代わりに、シーンごとにパスコードを入力する方法を採用していて、次回プレイ時はパスコードを入力することで先のシーンから遊べるようになっていました。

ここにも、これまでに見たことのある機械が設置されていますが、番号を入力しようとすると“カードを入れろ”と言われてしまいました。どこかで見つけてこなければ、先には進めないようです。

 そんな本作最大の特徴といえば、練り込まれたゲーム展開と、鬼のように高い難易度ではないでしょうか。例えば最初のシーンですが、ドアがあり非常レバーが見えてテンキーがあれば、通常ならばレバーを操作し番号を入力……と考えるものですが、実際はそんなコマンドではなかったりします。もはや発売から35年以上が経過しているということで答えを書くと、自らが着用している宇宙服のエアーを利用するという、見えているものに囚われているうちは絶対に思いつかない行動でした。オープニングシーンで映っている主人公の姿と、扉の右下に酸素センサが見えていることに考えを巡らせられればクリア出来る場面ですが、スタートシーンとしてはエニックスの『エルドラド伝奇』よりも難しいのではないかと思います。

マザーコンピュータZERAの手により人間が排除され、誰もいなくなったコロニー。そこではいくつかの障害が起きていることが家庭にあったコンピュータから調べられます。この知識をどう利用するかは、プレイヤー次第。

 この場面があまりにも難しいため、購入したものの挫折した、という人が少なくなかったようです。そのような事態を想定してか、マニュアルには「最初のドアが開けられない人へ」と題して、ドアが開いた次のシーンから始められるパスコードのヒントが掲載されていました。なお、次に登場するライフボートのシーンをクリアするにはパスワードの数字を入力しなければならないのですが、こちらもマニュアルにヒントが書かれていたので、当時ゴニョゴニョして遊んでいた人は先に進めなかったかもしれません(笑)。サービスとして、分からないシーンと直近のコードを書いて発売元に送ると、1度だけ先のパスコードを送ってきてくれるのですが、途中の話が飛んでしまうためスジが通らなくなる危険性もありました。

発売直後は、“最終シーンへの誰もが想像し得ない解答。”というキャッチコピーが書かれた広告が掲載されました。

 本作をプレイするには、今回取り上げたX1版ではBASIC CZ-8CB01が必要となるためハードルは高めですが、機会があればこの世界観をぜひ体験して欲しいものです。

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