ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

敵のトリッキーな動きに今でも熱くなれる『激戦!南太平洋』

自軍のタンクを駆り、占領された島を奪還すべく侵攻していく様子が、パッケージイラストとして描かれています。上空からは敵航空部隊が攻撃を行っていますが、ゲームに登場するのはヘリでした。なお、パッケージイラストとデザインを担当したのは、この時期のエニックスのソフトではお馴染みの、さにい・パンセ氏です。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回取り上げたのは、1983年にエニックスから発売されたPC-8001用ゲーム『激戦!南太平洋』です。

「エニックスニューゲームシリーズ」としては、これらのタイトルがラインアップされていました。そうそうたるメンバーが顔を揃えているのもわかります。片ページになっているのは、第1回のコンテストで入賞した作品たちです。

 エニックスは1982年に「第1回 ゲームホビープログラムコンテスト」を開催し、入賞した作品などを商品化しました。その後、「全国のマイコンファンより第2作目をとのご要望が殺到(マニュアルより)」したことで、その作者たちに第2弾を依頼することになります。そうして誕生したのが、「エニックス・ニューゲームシリーズ」の作品でした。例えば、『森田のバトルフィールド』の森田和郎氏は『アルフォス』を、『マリちゃん危機一髪」の槇村ただし氏は『女子寮パニック』を、それぞれリリースします。

 このとき、『地底のモンスター』で入選した作者の長谷川修氏が誕生させたゲームが、今回取り上げた『激戦!南太平洋』でした。ストーリーは以下のような設定です。

 真珠湾奇襲攻撃で火ぶたが切られた太平洋戦争も、日本への本土上陸が間近に迫っていた。日本軍最後の砦というべきここI島では、壮絶な戦いが繰り広げられていた。しかし、少数の部隊を除いて、日本軍はほぼ壊滅状態に陥った。その知らせを聞いた日本軍総司令部は、I島奪還作戦を発表。全勢力を南太平洋へと集結させる。アメリカ軍にほぼ占領されたI島へは、闇夜に紛れて輸送機が救援物資を投下し、それを小型ボートに乗った日本兵が受け取るという作戦が採られた。しかし、アメリカ軍は哨戒機を飛ばせてボートに集中攻撃を加えると、ボートは次々と海の藻屑に……

 しかし、救援物資の中には食料品はもちろんのこと、敵陣へ攻め込むために必要なタンクを組み立てる部品も入っていた。一台でも多くのタンクを造り、S山に要塞を構える敵陣へ最後の総攻撃をかけろ! ジャングルを突き進むタンクの勇姿は、残り少ない日本兵に最後の勇気を奮い起こさせる。突撃あるのみ!! 壮絶なる南太平洋での戦いが、確実に歴史の流れを変えるだろう。

海上戦、陸上戦共にタイトル画面で操作説明が描かれます。これを見れば、マニュアルいらず。

 ゲームは、海上戦と陸上戦の2パターンで構成されています。最初の海上戦では、プレイヤーはボートを操り、輸送機(ランブセア・タンカー)が落とす荷物“+”を、敵(ゾークスナイパー)の攻撃を避け、かつ撃ち落としながら集めて島に届けるのが目的でした。荷物を2つ、3つ、4つ届けるたびにファンファーレが鳴り、敵の攻撃が激しさを増します。見事に9個集めることができれば、その時点で残ったボート(シャーマスレスキュー)の数が、そのままタンクの数として引き継がれました。

 敵のヘリは1機10点で荷物を届けると50点となり、得点が500点を越えるごとにボートが1隻増えます。ボートからは真上だけでなく左上、右上にも撃てますが、敵弾は斜め方向にしか降ってきませんので、それを見極めて移動する必要がありました。なお、ボートに乗っている水色の人に当たるとミスとなりますが、ボート部分にはどれだけ敵弾を受けても壊れることはありません。

1パターン目は、海上戦です。ここでは荷物を受け取りつつも敵を大量に破壊し、得点を稼いでボートの数を増やすのが目的となります。敵弾は斜めに飛んでくるなどトリッキーな動きを見せるので、それを読み切ってかわすのが大事でした。

 輸送機が落とす荷物は、タイミング良く受け止められれば1つとしてカウントされますが、失敗して海に落ちたときは、真上まで移動してテンキーの5を押しっぱなしにし船上まで引き上げる必要があります。途中でキーを離したり移動してしまうと、その荷物は泡となって海の藻屑に……。また、引き上げた荷物は残念ながら価値が半分になってしまいました。

 荷物を受け止めたら、そのまま画面左端の陸地まで移動すると弾薬が満タンに補給され、受け取った証として最下段右端の丸の部分が1つ(海から引き上げた場合は半分)緑で塗られます。これを繰り返して、最終的に荷物を9個集めれば陸上戦に! もし、途中でボートが全滅しても陸上戦になりますが、その際に与えられるタンクは1台だけになってしまいました。

4つ荷物を集めるシーンになると、敵弾が文字通り雨あられと降り注ぎます。腕に自信があるならば、このあたりで粘って点数を稼ぎ、タンクの数を増やしておきたいところ。そのためには、荷物をわざと海中に落としてから回収するというテクニックも必要になります。

 2パターン目の陸上戦では、プレイヤーはタンクを操作することになります。今回は砲撃の方向を上下するための操作が加わるため、海上戦と比べても難易度が上がりました。頭上からは敵が襲ってくるので、先に撃ち落とすか敵弾を左右に動いて逃げなければなりません。敵を破壊すると破片が飛び散り、これを地面に敷設されている地雷群に当てれば地雷を無効化できました。ただし、地形は山あり谷ありと険しく、そのたびに砲撃の射線も変わるため、一筋縄ではいきません。さらに、タンクの燃料は急激に減っていくので、タイミングを見計らって補給する必要も。

 画面後ろを飛んでる輸送機の色が、水色から黄色、そして赤に変わるとオイルを落としてくれますので、これを画面左端に戦車を移動させて受け止めれば補給完了です。そんな敵の猛攻をかいくぐり、4ラウンドあるステージを越え、最深部の要塞を破壊することはできるでしょうか。

2パターン目は、タンクを駆っての地上戦です。テンキーの2と8で砲塔を上下させ、スペースキーで弾を撃ちます。5キーを押すと、砲塔の角度に関係なく正面に弾を撃ちますが、これは怪獣(?)などの障害物や敵タンクを破壊するときに使用しました。オイルが減ってきたら、輸送機の色を見て一番後ろに移動して補給を受け取りましょう。端から少しでも離れていたときは、受け取り失敗になります。

 1983年のPC-8001用ゲームとしては固定画面が多かった中、本作はスクロールして進んでいくというところがアーケードゲームっぽく、非常に熱くなったのを覚えています。全体的な難易度も少々高めで、今プレイしても手こずるほど。1パターン目の海上戦では、補給物資となる荷物を受け取らないと弾薬切れになってしまい、荷物を陸に運ぶまでは逃げ回るしか無いというのも演出としては秀逸でした。

 この時期のエニックスのタイトルは、有名作品以外は出回り数がそれほど多くないようで、現在では見かけることがあまりありません。それでも、本作はPC-8001向けのゲームの中でもずば抜けて面白いので、何かの機会にぜひプレイしてみてください。

上空からは、謎の兵器や人工衛星と思われるものも弾を撃って攻撃してきます。地面には地雷が埋まっている場面もありますが、それは上空の敵を撃破した際に落ちてくる破片で壊すしかありません。

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