ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

遊ぶためには20分間待つ必要があった『ゼビウス for PC-8001mkIISR版』

ソルバルウとアンドアジェネシスが配置された縦長のパッケージは、PC-6001版『タイニーゼビウス』やX1版『ゼビウス』と同じく見えますが、背後のアンドアジェネシスの角度が他と比べて手前に傾いているため、迫力が感じられます。

 当時の懐かしい広告とゲーム画面で、国産PCの歴史とノスタルジーに浸れる連載コーナー。今回は、当時新機種として登場したPC-8001mkIISRの専用ソフトとしてマイコンソフトから発売された『ゼビウス』を取り上げます。

当時は、発売前から広告で“ここがスゴイ!”と大きくアピールしていました。合わせて、ゲームの必勝法を解説していたのもユニークなところです。

 1983年、ゲームセンターに傑作『ゼビウス』がデビューして以来、マイコンソフトからは幾度となくパソコンへの移植が行われてきました。最初は『タイニーゼビウス』という形でPC-6001向けに発売され、その後にPC-6001mkII以降対応の『タイニーゼビウスマークII』や、X1版とFM-7の『ゼビウス』がリリースされています。

 そして1985年、PC-8801mkIISRと共に登場したPC-8001mkIISRのスペックを最大限利用する形で移植されたのが、今回取り上げた『ゼビウス』 for PC-8001mkIISRです。余談ですが、X1版ゼビウスの記事で「5キーを押さないと止まらない」と書いたところ「それはFM-7版のことでは?」という返信がいくつかあったようですが、実機とテンキーでプレイするとそのような動作をしますので、ぜひ一度体験してみてください。

ゲームはテープ版のみで、遊ぶためには20分間待つ必要があります。しかし一括ロードだったため、一度読み込んでしまえば16エリア遊び放題でした。最初のロード画面で、スペルミスをしているのはご愛敬。

 ゲーム内容は従来と変わらず、プレイヤーはソルバルウを操作し、空中の敵はザッパー(Xキー)、地上の敵はブラスター(Zキー)で攻撃し、全16エリアを攻略していきます。これまでに発売されたどの『ゼビウス』よりも滑らかな、2ドット単位の縦スクロールになっているというのが非常に大きな特徴でした。これについては広告でも「まず地形スクロールのなめらかさでしょう。これはX-1やFM-7の比ではなく目を疑うほどのすばらしさです。パソコンソフトも、ついにここまできた!と、いうほどでとにかく感動なのです(原文ママ)」と書かれていたほどで、実際に動いている画面を目にすれば確かに納得することでした。

 また、「X-1やFM-7版は青系の色でしたが、PC-8001mkIISR版ではシルバー・グレイをベースにしたもので、見ていて重量感が伝わってきます(原文ママ)」と広告にあるように、よりアーケード版に近い色合いに変更されたことで、確かに重厚感を感じられるようになっています。ちなみに、このキャラクターデザインを担当されたのは、マイコンソフトの“ともこ”さんだそうです。

タイトル画面は、X1版などと同じレイアウトになっています。ここでESCを押すと右側の“AREA 01”と書かれた部分の数字が点滅し、テンキーの2と8で開始ステージが選べるようになっていました。

 サウンドに関しても「PC-8001mkIISRの特徴であるFM音源を使用しています。ビデオゲーム版のゼビウスを超えたのでは?と言われるほどのサウンドは、きっとアナタをとりこにするでしょう(原文ママ)」とあり、確かにゲーム開始時のファンファーレなどはアーケード版に近くなってます。こちらを担当したのは、金太さんという方と書かれていました。もちろん、メインプログラムは、あの“なにわ”さんです。

 X1版などでは気になる、アンドアジェネシスとザカートが重なって消えてしまうときなどの処理については、PC-8001mkIISRが2画面持っていることを利用して完全な重ね合わせ処理を行うことにより、下のキャラクターに穴が空くようなことはなくなっています。

実際のプレイ画面では、1ラインずつ隙間が空いているように見えますが、こうすることで2ドットスクロールを実現していました。登場キャラクターも基本的に白と黒をベースとしているため、アーケード版のメタリックな感じを再現するのに成功しています。

 なお、供給媒体はテープ版のみでロード時間は非常に長く、20分少々かかります。しかし、一度読み込んでしまえばその後はノーロードで16エリアすべて遊べるのはもちろんのこと、タイトル画面でESCキーを押せばプレイ開始エリアを選択できるサービス機能まで付いていました。さらに、X1版やFM-7版、PC-6001版などに挿入された隠しキャラクターもPC-8001mkIISR版にも入っているとのことで、それを探す楽しみもあります。ただし、X1版やFM-7版、さらには後にリリースされるMZ-2500版とも違い、ジョイスティック同梱版が発売されることはありませんでした。このためジョイスティックで遊びたい場合は、背面に用意された“PORT”と書かれた端子部分に接続する変換器を作るなど、一工夫が必要となります。

地上物、空中物共に、アーケード版を非常に良く再現しています。もちろん、スペシャルフラグゾーンを絨毯爆撃して運が良ければスペシャルが登場し、その上を通過すればソルバルウが1機追加されます。

 見た目以外の部分ですが、本作もいわゆる“目コピ”での移植となっているため、アーケード版をプレイした人ならば随所でアルゴリズムの違いなどが気になってしまうかもしれません。例えば、空中敵の動きが少々ぎこちなかったり、デロータやガルデロータからの攻撃がやや大人しいなど、見る人が見ればわかる部分もあるでしょう。とはいえ、アンドアジェネシスは浮遊しますし、自機がやられたときには一瞬反転するというギミックも盛り込まれるなど、あらゆる部分に渡ってアーケード版に近い作りになっているのは間違いありません。これだけのクオリティのソフトが、わずか4,300円で購入できたという部分も驚くべき部分です。

当然ながら、アンドアジェネシスも浮遊します。『ゼビウス』の醍醐味とも言えるシーンの1つで、浮遊しないと見た目の興奮度も半減してしまうだけに、これは外せない仕様だったと言えるでしょう。

 しかし、NECから同時に発売された名機種PC-8801mkIISRの前にPC-8001mkIISRは霞んでしまい、結果的に本体の売り上げは多くありませんでした。そうなると、ソフトもそれほど発売されず、リリースされたとしても売上本数に関しては芳しくないことに……。そういう事情からか、本作に限らずPC-8001mkIISR専用ソフトは現在でも見かけることはまれで、オークションなどでは出品されると高騰する事態となっているのが残念です。

タイトル画面から4面のアンドアジェネシス撃破までを、動画で撮影しました。PC-8001mkIISR→XRGB-3→GV-HDRECと接続し、HDMIでキャプチャした映像となっています。

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